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鏡山

1999年5月23日 日帰り 新潟オフミ8名グループ(鈴木、吉田、川田、川村、久保田、長島夫妻、岡本) 晴

鏡山 かがみやま(1338.9m) 三等三角点 飯豊連峰(福島県) 5万 大日岳 2.5万 大日岳
ガイド:会津百名山ガイダンス(歴史春秋社)、山を訪ねて(歴史春秋社)、新潟の低山薮山(白山書房)、山と高原地図「飯豊山」(昭文社)

5月23日(日) 6:10 新潟発=(磐越自動車道、津川IC、R.49、徳沢、R.459、奥川飯里 経由)=7:35 弥平四郎〜7:45 発―7:57 堰堤〜8:28 発―8:54 尾根取り付き〜9:00 発―9:56 弥生分岐―10:10 水場〜10:19 発―10:40 七森峰―11:24 鏡山〜12:55 発―13:20 上ノ越―14:35 払川駐車場=(奥川飯里、R.459、角神温泉赤湯入浴、津川IC、磐越自動車道経由)=17:45 新潟着

 飯豊連峰の実川源流部の左岸、三国岳から南東に延びる尾根上には、疣岩山、卷岩山、鏡山、七森山、立石山、高森山、高陽山といった峰々が連なっている。最近になって、福島県側における飯豊の代表的登山口の弥平四郎から鏡山に登り、北上して疣岩山に至り、従来から歩かれてきた飯豊本山へのルートに合わさる登山道が整備されている。鏡山は、実川を挟んで大日岳と向かい合っており、その山頂からは飯豊連峰の大展望を楽しむことができる。飯豊連峰の展望台というべき山はいくつも挙げられるが、その中でもトップを争う山頂といって良い。
 1998年9月19日に鏡山に登り、その山頂からの飯豊の大展望に魅了された。秋のために残雪もごく僅かになっていたため、もう一度、残雪の時期に登ってみたいなと思い、インターネットの山の集まりを鏡山で開くことにした。今回は、思ったよりも参加者は少なかったことから、知り合いも誘っての山行になったが、宇都宮から川田さんがはるばる参加してくれて、あまり知られていない山の紹介という点では、目的を果たすことができた。
 直前になって、現地に問い合わせた川村さんからの連絡で、山開きが重なることを知った。入・下山口は弥生からということで、山頂はともかく、途中は静かな歩きを楽しむことはできそうであった。
 前回は単独行であったため、1時間程の林道歩きを行ったが、今回は、車をあらかじめセットして、林道歩きを省略することにした。新潟からは、吉田さんが運転の川村さんの車と、鈴木さんの車を出すことになった。
 県境を越して会津に入ると、まず黒々とした高陽山がお出迎え、その向こうには残雪を抱いた飯豊連峰の姿もかいま見ることができた。弥平四郎の集落に入り、小さな橋を渡った先にゲートがあると説明したら、橋のたもとにゲートが移し替えられて、川田さんの車が脇の空き地で待っていた。手前右手の家で、鍵を借りることができた。このゲートは、山菜やキノコ採りのシーズンには閉められるようで、前回の9月19日は、キノコ採りのオフシーズンだったのか開いていた。
 車のセットには、パズルのように頭を使う。3人のドライバー以外の5名には登山口の堰堤まで歩いてもらい、3台の車が祓川に行き、2台の車を置いて、ドライバー3人を1台の車に乗せて堰堤まで来てもらうことにした。
 車を見送り、沢沿いに広がる田圃を通り過ぎ、堰堤までは10分ほどの足慣らしであった。車の回送組を待つと、30分程もかかって、待った分だけ楽をできるので文句は言えない。全員揃った所で、鏡山に向かって出発した。初めは杉林が広がるものの、じきに谷間に入ると、大木も点在する美しいブナ林が広がった。山頂で山菜汁を食べようということで、歩きながら探すと、ミズナが見つかり、昼に食べる分だけ採らせてもらった。頂上までには、山ウドとヒメタケノコも1,2本見つかり、具を調達することができた。山菜やキノコに強い鈴木さんが同行してくれると、このような時には心強い。沢は何回か渡ることになったが、丸木橋がかかっており、水量もたいしたことは無かった。
 沢から分かれて、尾根に取り付くと、急な登りが始まった。前回は、足下がザラザラで、新しく切り開いたような感じであったが、今回は落ち着いた登山道になっていた。一旦傾斜は緩やかになるものの、前方に横たわる稜線めざしての登りはさらに続いた。前回の通過時に気になった988mピーク手前の崩壊地のトラバースも、道がしっかり切ってあった。ここで、ようやく、これから歩く稜線と鏡山の長めが目に飛び込んできた。
 僅かに下ると、弥生からの合流点に到着した。山開きの人間がここからは列を作っているかと思っていたが、周囲のブナ林は静まりかえり、鳥のサエズリが聞こえるだけであった。七森峰が前方に迫る所で水場に到着した。「清水あります」の看板に、なぜかカキ氷の旗を思い出してしまった。コップを持って、僅か下の沢に下りると、冷たい湧き水を汲むことができた。昨年の秋にもお世話になったが、今回は気温も高くなっており、冷たさが腹にしみいった。七森峰を越して登りを続けていくと、左手に大日岳の眺めが広がった。普通なら、その場でこの展望に見とれるところであたが、山頂での大展望を楽しみに、歩きを続けた。
 山頂をめざす登山者を追い越すようになった。下山してきた人に尋ねると、山頂は腰を下ろす所も無い程の大混雑とのことであった。登山道周辺は静かであったため、それ程の混雑とは予想もできなかった。ようやく鏡山への最後の登りにかかる鞍部で、残雪が現れた。さっそく、残雪をビニール袋に入れて、ビールを冷やす態勢を整えた。飯豊の良い所は、ビールを冷やすための残雪を遅くまで手に入れやすいことか。
 最後の急坂を登り詰め、山頂が目に入ると、思わず絶句。かなりの広さのある山頂は、人で埋め尽くされていた。山開きは80人の定員のようであったが、もっといそうであった。幸い、どいたグループの後に陣取ることができた。まずは、ビールの栓を抜いて乾杯。周囲は、宴会もたけなわ。こちらも負けずに追いつく必要がある。知らない人が、にごり酒を注ぎにきて、吉田さんがご相伴。鍋の準備もして、山菜汁を作った。一同舌鼓をうっていると、知らない人が、お椀を持って、一杯もらいにやってきた。青空のもと、山頂にいる人は、皆仲間のような気分になっていた。
 残雪に彩られて、緑と白の立体感のある展望が広がっていた。目の前には、おんべ松尾根が一気に櫛ヶ峰へ突き上げていた。昨年、川田さん達と歩いた長い登りを思い出した。牛首山と大日岳は高くそびえて、御西岳から飯豊本山、種蒔山にかけての稜線はなだらかに続いていた。白い残雪が微妙な陰翳を見せていた。今は、飯豊への辛かった登りは忘れて、登り詰めた稜線のお花畑を思い出すのみ。今年は、どのコースをたどって、天上のお花畑に行こうか。それぞれの飯豊の思い出話に時が経つのも早かった。
 山開きの集団にも、下山の声がかかっていたが、我々も下山を開始することにした。山頂を越して、さらに北上を続けた。鏡山の山頂から一気に下るものの、その後小ピークを二つ程越さなければならないため、下降点の上ノ越を通り過ぎたかと思って不安になる所である。登山道を残雪が覆う所もあったが、辿るのには問題はなかった。上ノ越から先の卷岩山方向の稜線は残雪で覆われていた。少し心配をしていた、尾根に乗るまでのトラバース部分でも、登山道は現れており、サンカヨウやスミレ等の花が目を楽しませてくれた。尾根の周りには、見事なブナ林が広がっていた。鏡山は、ブナの森林限界に収まっているためか、コースを通して、新緑のブナ林の眺めを楽しむことができた。
 払川の駐車場に飛び出して、歩きも終わった。車を回収して、弥平四郎の集落内で自販機のジュースを飲んでいると、地元のケーブルテレビが、こちらを撮影していた。今日は、田植えが終わったお祭りの日とのことであった。
 この週末は、天候に恵まれ、蒜場山と鏡山という、二つの飯豊の展望台を楽しむことができた。どちらも、標高が1300m台なのが面白い。蒜場山は人里離れた健脚向きの山なのに対し、鏡山は裏山の登りやすい山という感じがする。どちらも大展望を楽しむことができるが、見える山は異なっているので、甲乙付け難しということか。


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