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蒜場山

1999年5月22日 日帰り 2名グループ(川田、岡本) 晴

蒜場山 ひるばさん(1363.0m) 三等三角点 飯豊連峰(新潟県) 5万 津川、大日岳 2.5万 東赤谷、蒜場山
ガイド:新ハイキング98年6月512号、山と高原地図「飯豊山」(昭文社)

5月22日(土) 5:05 新潟発=(R.7、新発田、上赤谷、東赤谷 経由)=6:00 加治川治水ダム〜6:27 発―7:29  独標―8:00 岩岳〜8:10 発―8:49 烏帽子岩〜8:53 発―9:50 山伏峰―10:04 蒜場山〜12:10 発―12:26 山伏峰―13:08 烏帽子岩〜13:20 発―13:51 岩岳〜13:58 発―14:20 独標〜14:24 発―15:05 加治川治水ダム=(新三川温泉入浴、R.49 経由)=17:30 新潟着

 蒜場山は、飯豊連峰最高峰の大日岳より西に延びる長大な尾根の途中にある山である。ボリュームのあるその山容は、周辺からの展望で一際目立ち、登頂意欲をそそられずにはいられい。これまで登山道は無く、残雪期に山中一泊で登頂がかなえられる秘峰であった。この蒜場山に、新発田の下越山岳会の手によって登山道が切り開かれ、1997年10月に登山道開きが行われた。現在、新潟周辺では、二王子岳と並ぶ、歩きでのある日帰りの山として人気の山になっている。
 蒜場山は、登山道開きのあった1997年の11月2日に、インターネットのオフミとして、仲間を募って登った思い出の山である。晴天にも恵まれて山頂からの新雪に彩られた飯豊の展望を楽しむことができた。
 峡彩ランタン会でも今年の冬山合宿を行い、また会のメンバーの韮沢氏の山行文が新ハイキングに掲載されるなど、関わりの強い山になっている。
 春のオフミを鏡山で開催することになり、宇都宮からはるばる参加する川田さんを前日の土曜日にもどこかの山に案内することになった。飯豊周辺の山としては、二王子岳と赤津山を一緒に登っていたので、次のファーストチョイスは蒜場山ということになった。インターネットは、山の打ち合わせには便利な道具で、数回のメールのやりとりで、山の打ち合わせを済ませることができた。
 約束の時間よりも30分も早く加治川治水ダムに到着したが、川田さんはすでに到着していた。いそいで朝食のパンを流し込み、出発の準備を整えた。快晴に誘われてか、すでに数台の車がとまっており、数組の出発していく登山者も見送ることになった。谷の奥には真っ白な大日岳が頭をのぞかせ、山頂での展望の期待がふくらんだ。
 ダムの堰堤を渡り、登山ノートに川田さんに記入してもらった。新潟の住所よりも、宇都宮の住所の方が、他の人に与える印象も強い。途中で会った人も、車の宇都宮ナンバーを見ていて、よくぞ遠くからと言っていた。蒜場山は、300名山に匹敵する登り甲斐のある山で、次第に名前も全国的に知れ渡っていくはずである。
 潅木帯の中に付けられたジグザグの登山道は、前回よりも良く踏まれて、おちついた道に変わっていた。いきなり汗が吹き出てくるが、この急登も長くはなく、水平な道に変わって息を整えることができた。登山道の周辺には、レールの跡や草にうもれたトロッコを見つけることができ、よくぞこのような山奥に鉱山が稼働していたものだと、往時を思ってみた。痩せ尾根の上に出ると、加治川右岸に連なる赤津山方面の稜線の眺めが広がった。ブナ林の新緑もすっかり濃くなっていた。木立の間からは、俎倉山が見え隠れして、歩くに連れて次第にその高さも低くなっていった。738mピークの独標で、尾根は少し右手に方向を変えた。以前は、この標識は無かったと思うのだが。さらに登りを続けると、第一の目標の岩岳に到着した。ここでようやく蒜場山の全貌が姿を現し、汗を拭く手も止まって、眺めに見入ってしまうことになる。登山道のある痩せ尾根は、一旦下った所から、山伏峰に向かって一気に競り上がっていた。その途中には、烏帽子岩と幾つかの小ピークが連なり、天然杉がアクセントを付けていた。前回は、ここから新雪を踏むことになったが、今回は、谷には豊富な残雪は残っているものの、登山道上には雪は無さそうであった。
 気合いを入れ直して、先に進んだ。岩岳直下のブナ林も、緑に彩られて、泊まっておいでよと招くかのようであった。尾根には痩せた所もあり、注意は必要であるが、前回よりも歩き易くなったという感じがした。急斜面であるだけ、足を前に出し続けることさえできれば、一気に高度を上げることができた。烏帽子岩の鎖場を登れば、高度感のある展望が広がった。俎倉山から馬ノ髪山を経て棚橋山に至る稜線は、すでに見下ろす高さになっていた。前回は、枯れ草色に染まっていたが、今回は様々な濃淡の緑色。休む間に、小さな虫が寄ってくるのも、初夏のためか。
 烏帽子岩の先で山の斜面に取り付くと、残雪も現れ、雪融けもつい先頃であったのか、カタクリの花が一面に咲いていた。花が少し小ぶりなのも、気象条件が厳しいためなのか、佐渡のカタクリは葉に斑が入っていないと会の例会で聞いたが、ここのカタクリも斑入りのものはほとんど無いか、かすかであった。登りもあと少しという所で、残雪をビニール袋に取ってビールを冷やすことにした。山頂に着く頃には、うまく冷えているはず。最初のひと口を目の前にぶる下げたニンジンとして、足を前に出し続けることにした。
 山伏峰に登り着いて、ようやく急な登りからも開放された。潅木の陰には、清楚なシラネアオイが花を開いていた。今年初めてのシラネアオイであった。姿を現した大日岳を気にしながら緩やかな稜線を辿れば、蒜場山の山頂に到着した。登ってくる途中では、岩岳や烏帽子岩等の休憩ポイントで登山者にあっただけの静かな歩きを続けてきたが、山頂にはすでに何組もの登山者が到着していた。前方の残雪上で休んでいるものもいて、そちらの方が気持ち良さそうであったため、薮を少しこいで残雪に降り立った。
 頂上からは、大日岳を中心とした飯豊の展望が広がった。空も青空。人を案内すると、いつもより天候が気に掛かるものだが、文句の無い展望であった。まずは、乾杯。ビールは冷え切っていた。すっかり汗をかいていたこともあり、1本がすぐに空いてしまったのが、思わぬ誤算。残雪の上にビニールを敷いて、頭の脇には、ビールのロング缶を3本も並べて寝ているものもいた。昼寝には最高の場所であるが、酔っぱらってしまうと、下りは少々危ないのではと、ひと事ならが思った。残雪の残る稜線は、烏帽子岳に続き、その先は大日岳がそびえていた。誘いこまれそうな眺めであった。いつか、この道を歩くことはできるだろうか。左手には赤津山が姿を見せ、その向こうには、北股岳を中心とした主稜線が広がっていた。飯豊の眺めは飽きることなく、山頂での時間はあっという間に過ぎてしまった。
 帰りも長いことから、写真を撮りながら、下りにかかることにした。前回は、雪融けで登山道はドロドロになって滑りやすかったが、今回は乾いており、その点は歩きやすかった。烏帽子岩へはそれ程でもなかったが、岩岳への登り返しは辛く感じた。山頂で飲み過ぎた者は、ここで後悔することになろう。その先も、小さな登り返しがあり、次第に足も重くなった。蒜場山は、新潟周辺の日帰りの山としては、トップクラスの健脚向けの山といって良いと思う。
 ダムサイトの駐車場に戻ると、登山者の車が、路上まであふれていた。午後になっても太陽は明るく輝き、翌日の晴天も期待できそうであった。



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