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葡萄鼻山、立烏帽子

1999年5月8日 日帰り 単独行 晴

葡萄鼻山 ぶどうはなやま(798.3m) 三等三角点
立烏帽子 たちえぼし(680m) 無し 飯豊連峰(新潟県) 5万 小国 2.5万 安角
ガイド:片雲往来語らいの山々 阿賀北の山々

5月8日(土) 6:30 新潟発=(R.7、蓮野IC、R.113、十文字、R.113、関川、大石ダム、東俣林道 経由)=7:45 林道入口ゲート〜8:13 発―8:32 林道終点―9:01 梁山泊〜9:07 発―9:28 尾根取り付き―9:47 稜線上―10:04 葡萄鼻山〜10:15 発―10:31 山稜尾根の突端―10:44 葡萄鼻山―11:04 稜線上―11:17 尾根取り付き―11:30 梁山泊〜11:35 発―11:58 立烏帽子〜12:16 発―12:37 梁山泊―12:59 林道終点―13:15 林道入口ゲート=(往路を戻る)=16:00 新潟着

 飯豊連峰の主脈は、頼母木山で、大石山から杁差岳へと続く稜線と、県境線をそのまま北上して西俣ノ峰、枯松山、大境山を経て荒川に終わる稜線の二つに分かれる。この県境稜線上には登山道は無いため、一般には関心の薄い一帯になっている。葡萄鼻山は、大境山から北西に延びる稜線上にあり、杁差岳の北の登山口である大石ダムの背後にたたずむ山である。また立烏帽子は、葡萄鼻山の北東の稜線伝いにある岩壁をめぐらせた岩峰である。この両山の麓には、峡彩会時代に上村氏が精力をそそいだ梁山泊の山小屋がある。
 先月、若ぶな山に登って、葡萄鼻山が正面に広がるのを見て、登りたいと思った。峡彩ランタン会ゆかりの山であるが、これまで訪れる機会が無かった。ガイドは、上村氏の片雲往来んpコピーと地図、これが揃っていれば、たとえ道は明瞭でなくとも登れるはずであった。
 荒川峡から大石ダムに向かった。大石ダムを訪れるのも、今回が始めてであった。新潟周辺でも訪れたことのないところがまだ多く残っている。大石ダムまでは、車の走行に問題のない良い道が続いた。ダムサイトから東俣林道に進んだ。湖面の縁をたどっていくと、左手から車道が合わさり、その先に梁山泊への林道の入口があったが、ゲートが閉ざされていた。少しダムの方へ戻った路肩のスペースに車を停めた。ダム周辺には、車が何台も入り込んでいたが、山菜採りのシーズンのようであった。新緑の美しい谷沿いの林道を進んだ。昨晩は本格的な雨が降ったようで、雨で洗われて、よけいに緑が鮮やかになっているようであった。地図では、林道はすぐに終わるように記載してあったが、それよりも奥まで延びているようであった。ガッコウ沢を横断し、ひと登りした所で舗装道路は終わり、この終点には駐車もできる広場になっていた。この先は、杉の植林のために使われたらしい荒れた林道になった。前方には、立烏帽子の鋭鋒が姿を現した。歩いていくうちに道も細くなって、植林地の中に踏み跡を辿る必要が出てきた。どうやら、昔のガッコウ沢右岸の道は林道の延長と共に歩かれなくなって、林道からの植林のための作業道が利用されているようであった。左に方向を変えて谷の縁によっていくと、明瞭な道に変わった。周辺に杉の大木が連なるようになると、梁山泊に到着した。上村氏の記録で読ませてもらっていたが、思ったよりも大きく立派な山小屋であった。屋根のペンキも青く塗り立てのように輝いていた。中をのぞくと、誰もいなかったがきれいにかたずいていた。入口上の梁山泊の題字の書かれた板は、上村氏が新潟の浜辺で探し出した船板であったという。記録に書かれているとおりの小屋がそこにはあった。
 葡萄鼻山と立烏帽子のどちらを先にするか迷ったが、より時間のかかる葡萄鼻山に向かうことにした。杉林に向かって直進すると、踏み跡は落ち葉に覆われて判りにくくなった。葡萄鼻山から南に下ってくる尾根を乗り越す所で、周囲に立派なブナ林が現れ、道も幅3m程のはっきりした道に変わった。昔は鉱山道であったというのがうなずける道であった。ここは伐採した材木をワイヤーケーブルで下ろした所で、出発点の意味からハッテンと呼ばれていたという。葡萄鼻山への道は、ここから分かれているはずであった。尾根を良く眺めると、踏み跡らしいものが上に向かっていた。ブナ林の中で、どこでも歩けそうなため、かえってコースを見定め難かった。尾根を登っていくと、踏み跡は明瞭になってきた。ブナの木には名前が刻まれているものもあり、大六という名前も二ヶ所で見つけることができた。今では決して行ってはいけないことなのだが。踏み跡は明瞭なものの、周囲からは枝がうるさく倒れかかって、腕でかき分けていく必要があった。ちょっと初心者だけのハイキングとはいかない道であった。岩を抱いたようなブナの大木の脇を過ぎると、その先で稜線に出た。思ったよりも短い時間で登ることができた。立烏帽子も稜線をたどった先に見えたが、その間は薮漕ぎになりそうであった。下降点にはテープが残されていたので、これを忘れないようにした。ここに目印が無いと、下降点を見失うので、もしテープが無い時には、つけてから先に進む必要がある。後は稜線歩きだけかと思ったが、もう少し登りを頑張る必要があった。細長い山頂の一画に出ると、北側には残雪が残り、弧状を描く登山道も、少し前なら、残雪の上をショートカットできそうであった。葡萄鼻山の山頂は、笹が刈り払われて、三角点が頭をのぞかせていた。山頂からの眺めは、杁差岳が木に半分程隠されて、良くは無かった。昨晩の雨の影響か、雲が薄く残っているのも、展望を妨げていた。
 ひと休みした後、山頂の先をうかがうと、踏み跡はさらに先に続いていた。葡萄鼻山の山頂は、地図を見ると、東の方に三角点よりもわずかに高い800mピークが二つ連なっている。地元では、山頂の突っ端の鼻のピークを葡萄鼻山と呼んでいるらしい。先に進んでみることにした。幸い稜線の周囲はブナ林となり、歩くのにも支障は無かった。一旦下った後にピークに登りかえすと、その先にもうひとつのピークが現れた。その先のピークまで進み、下り斜面に転ずる付近で踏み跡は消えた。山頂らしい印も無かったが、東の突っ端まで歩いたことは確かであった。この一帯もブナ林に遮られて、展望は開けていなかった。
 稜線からの下降点まで戻って、立烏帽子への道をうかがった。少し先までは、踏み跡は確認できた。ただ、立烏帽子からの下降点が分かり難いと、岩壁をめぐらした山であるだけ、危ないかもしれなかった。安全第一で、梁山泊まで戻ってから登り返すことにした。実際には、立烏帽子への道は明瞭で、下降点についての心配はいらなかった。逆に立烏帽子から登ってきて、葡萄鼻山から下ろうとすると、この下降点が判らないおそれはある。
 下りは早く、あっという間にハッテンに戻ることができた。梁山泊に戻って、小屋の脇から水場に向かった。ガッコウ沢の源頭の流れは多くはないと思ったら、岩の間からの湧き水であった。気温も上がって、水筒の水も減っていたので、この湧き水に入れ替えた。コップで汲んだ水は冷たく美味しく感じた。キクザキイチゲやスミレに彩られた道を山に向かうと、次第に傾斜も強まってきて、木の根を足がかりにする急登に変わった。長いザレ場に出ると、ロープが固定されていた。登りはともかく、下りはこのロープに助けられた。もう一ヶ所短いロープを越すと、跳梁部が迫ってきて、左手にトラバース気味に進むと稜線上に出て、左に曲がるとその上が立烏帽子の頂上であった。もう少し鞍部よりに登ってから稜線伝いに山頂へと思っていたので、このコース取りは予想外であった。
 山頂からは、トップクラスの高度感のある眺めが広がっていた。青い屋根の梁山泊は、ミニチュアのような杉林の中にたたずんでいた。残雪に染まった杁差岳は目の前に広がっていた。大石ダムの湖面や荒川峡も眺めることができた。朝日連峰も、遠望がきけば、はっきりと見えるはずであったが、霞に隠されているのが残念であった。これだけの展望の山頂を誰にも邪魔されず独り占めとは贅沢なことであった。これだけの山が、一般登山愛好家には知られていないのは、不思議であった。下りの急斜面では足元に注意する必要はあったが、ロープにも助けられて、問題なく下ることができた。
 立烏帽子へは一般登山道、葡萄鼻山へは、軽い薮道といったところであった。


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