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棒掛山

1999年3月28日 日帰り 4名グループ(岡本、鈴木眞、玉木、吉田) 晴

棒掛山 ぼうかけやま(1025.0m) 飯豊連峰(新潟県) 二等三角点 5万 大日岳 2.5万 日出谷、蒜場山

ガイド:新潟の低山薮山

3月28日(日) 5:20 鳥屋野潟公園発=(磐越道、津川IC、R.459、水沢 水沢・長走線 経由)=6:20 林道分岐点〜6:35 発―7:35 南尾根500m地点〜7:40 発−8:33 東尾根合流点〜8:38 発−9:05 棒掛山山頂〜10:00 発−10:55 南尾根500m地点〜11:00 発−11:30 林道終点−11:50 林道分岐=(赤湯入浴(200円)後往路を戻る)=13:45 鳥屋野潟公園着

 棒掛山は、飯豊連峰の大日岳の西に位置する烏帽子岳から南西に延びる尾根上にある山である。棒掛山は、阿賀野川にそのドーム型のボリューム館のある姿を写し、角神付近からはひと際目に付く山である。
 棒掛山をそれと知ったのは、阿賀野川河畔にある赤崎山からの展望であった。黒崎山を半周するように大きく迂回する阿賀野川の奧に一際目に付くどっしりとした山が棒掛山であった。3月7日に豊栄の吉田さんが棒掛山に登ったと聞き、残雪期に登りたいものと思っていたところ、再び登りに行くのでという誘いがあり、同行させてもらうことにした。土曜日は、雪もちらつくあいにくの天気であったが、日曜にかけて一時的に天気は回復しそうであった。鳥屋野公園に早朝集合し、吉田さんの車で山に向かった。夜明けとともに、山々の眺めが広がり、あの山この山と、登った山や登りたい山を指さしながら、話がはずんだ。
 棒掛山の登山コースとしては、「新潟の低山薮山」にも出ている南尾根をたどる予定であった。その他に、峡彩ランタン会の記録にある林道を使って上ノ峠に至り、そこからビールのカッチ経由で稜線を辿るというコースにも心引かれるものがあったが、林道歩きと稜線歩きで時間がかかるのが難点であった。南尾根ルートは林道をどこまで上がれるかが、ひとつの関門であった。津川付近から眺める周辺の山、さらに角神付近から見え始めた棒掛山の姿からは、雪が少ないということがまず気になった。阿賀野川沿いのR.459から水沢の集落に入り、水沢川沿いの林道水沢・長走線に進んだ。除雪も終わっており、未舗装の林道を一気に高度を上げた。林道の分岐には、広い駐車スペースがあり、車が一台停まっていた。棒掛山の南斜面に延びていく林道をうかがうと、路面を雪が覆っており、ここから歩き出すことにした。谷越しに見る竹ノ倉山からは、完全に雪が消えており、この山には残雪期に登ろうと思っていたのだが、今年は機会を失ったようである。
 プラブーツに10本爪アイゼン、2本ストックに加えてピッケル、ワカン、8mm×20mロープ、ツエルトにガスコンロ他の完全装備で歩きだした。5分程林道を進んだ所に、沢状の窪地があり、雪を伝って一段高い台地に上がった。台地には杉林が広がり、棒掛山は見えず、竹ノ倉山が背中になるように方向を定めて、山の斜面をトラバース気味に進んだ。緩い窪地が入り込んできて、同じ道を戻るのは極めて困難なようであるが、帰りは、竹ノ倉山を目標に進み、林道のどこかに出れば良いという作戦であった。杉林を抜けて雪原に出ると、目の前に棒掛山が大きく現れた。雪は少なくなっていた。急な斜面からは雪が落ち、白い斜面は僅かになっていた。
 南尾根目指しての雑木林の中の登りが始まった。吉田さんが先回登った3月始めの時は、ヤブは雪の下であったとのことだが、今回は、枝を避けながらコースを選ぶ必要があった。高度を上げて、尾根が近づいた所でトラバース気味に進んで尾根にのった。北五葉の生えた500m地点で、ここで尾根に上がる者も多いのか、テープも残されていた。雪が消えた痩せ尾根には、踏み跡が続いていた。背中のワカンとピッケルに枝がひっかかるのがわずらわしいものの、踏み跡が続いているだけ、ヤブコギも楽であった。幸い、5分程進むと、尾根が広がり、雪原上の歩きになった。雪はほどほどにしまって歩きやすかったが、傾斜がきつくなってきたため、アイゼンをつけた。足が滑る心配は無くなったものの、ジグザグに登るよりも直登の方が足元が安定するため、急斜面の登りに体力を消耗することになった。途中から小雪が舞い始めたが、幸いなことに青空が広がり始めた。東尾根の合流点で、単独行の足跡に遭遇した。林道分岐にあった長岡ナンバーの車の持ち主のようであった。山頂も近づいたところで尾根が痩せて、5m位の急斜面になっていた。吉田さんと私がピッケルを使って登った後、ロープを出して、二人に登ってきてもらった。登りはともかく、下りには、安全のためにロープが必要そうであった。その上からは、傾斜も緩くなり、足は重くなってきたものの、近づいてくる山頂に心は軽くなった。見通しの良い林の中を登ると、広い山頂に到着した。先行の単独行が休んでいた。東の尾根を登ってきたが、かなりの急斜面であったようである。思ったよりも早い2時間30分という時間で登ることができた。吉田さんに引っ張られたようである。最高点と思われる奧に進み、阿賀野川を見下ろす山頂のへりに腰を下ろした。
 まずは、山頂からの風景に目がいった。山の間を緩やかな曲線を描きながら流れる阿賀野川。津川周辺にいくつも見られるとんがり山。ひときわ目に付くのが、兎倉山であろうか。遠くに御神楽岳が、大きな山容をみせていた。登ってきた尾根は、残雪に彩られながら急角度で落ち込んでいた。至福の山頂であった。登頂を祝って乾杯をしようとした時、思わぬミスに気が付いた。アイゼン歩行に充分注意をしていたつもりだったのだが。雪の中に埋めて置いたビールを見ると、穴が開いて中身が無くなっていた。風景に気を取られているうちにアイゼンでふんずけてしまっていたようである。コップにビールを分けてもらい乾杯をした。青空も広がり、ビールは格別の味がした。最高点と思われる所からの北の眺めは木に遮られていた。東よりに移動すると、大日方面の眺めが広がり、真っ白に雪を付けた蒜場山がすぐそこに見えた。一同で記念写真。残雪の春山の風景を満喫することができた。
 山頂でのんびりしていたかったが、天気の良いうちに下山することにした。雪原を快調に下ると、あっというまに登りの時に手こずった急斜面に到着。ロープを立木に回してひとりづつ下っていると、二人連れの中年の夫婦が登ってきた。普通の長靴のようで、山頂まであとどれくらいかと繰り返して聞いてきた。地図を良く見ているのか、下りにその装備で大丈夫なのか、ちょっと不安な気持ちを感じさせる二人連れであった。気温が上がって、雪はゆるみはじめ、アイゼンはダンゴになりやすく、足を滑らさないように注意が必要になった。急斜面なだけ、尾根を下るのも早かった。杉林のはずれまで下降し、最後に棒掛山を振り返って、山に別れを告げた。
 杉林の中は、一歩ずつ雪に足がとられる状態になった。ピンクのテープの列が続くのに従って南東に下っていくと、最後は林道の終点に飛び出した。雪に覆われた林道を歩いて、車を置いた林道分岐に戻ることができた。林道の終点から杉林を歩き出した方が、距離は少し長くなるかもしれないが、方向を決めやすいかもしれない。
 帰りに、角神の赤湯温泉に入浴し、汗を流してから帰路についた。風が吹きだし、振り返る棒掛山には雲がかかり始めていた。途中で雨も降り始め、良いタイミングで山に登ることができた幸運に感謝した。


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