9845

石黒山

1998年9月27日 日帰り 単独行 曇り

石黒山  いしぐろやま(967.8m) 三等三角点 朝日連峰周辺(新潟県) 5万 塩野町 2.5万 円吾山
ガイド:片雲往来PARTIII(第二部)-阿賀北の山々- p.57〜63

9月27日(日) 6:20 新潟発=(R.7、蓮野IC、R.113、荒井浜、R.345、村上、三面ダム、朝日スーパー林道)=8:30 石黒山登山口〜8:45 発―9:18 石黒沢渡渉点―9:36 段丘の渡渉点―9:41 沢の渡渉点―10:19 見晴らし―10:37 ザレ場―10:48 避難小屋〜10:51 発―10:59 石黒山〜11:30 発―11:38 避難小屋―11:47 ザレ場―12:01 見晴らし―12:29 沢の渡渉点―12:33 段丘の渡渉点―12:47 石黒沢渡渉点―13:13 石黒山登山口=(往路を戻る)=16:15 新潟着

 石黒山は、朝日連峰西端の新潟・山形県境をつらぬく朝日スーパー林道沿いの、猿田川右岸にある山である。朝日村によって「郷土の森」として登山道が整備されている。山腹には見事なブナの原生林が広がり、この山の一番の見所になっている。
 石黒山は、ブナの新緑の頃に行ってみようと思っていたものの、土砂崩れによる朝日スーパー林道の不通もあり、つい行きそびれていた。先日、浅草岳の沼の平で見事なブナ林を見て、再びブナ林の歩きを楽しみたいと思い、石黒山に行くことにした。以前、鷲ヶ巣山に登った時に、朝日スーパー林道の入口まで行っただけで、その先に進んだことはなかった。林道は、路面の状態も良く、車のすれ違いは問題の無い道幅があったものの、渓谷にそって曲がりくねる道が延々と続いた。三面ダムから、小国への分岐、猿田ダム入口を通り過ぎて、ようやく登山口近くになった。周辺には、ブナの原生林が広がり、キノコ採りか、何台もの車が停められていた。朝日スーパー林道入口から19kmの標識を過ぎると、ようやく石黒沢に出て、橋の向こうに登山口があった。入口付近は駐車スペースが設けられ、石黒山登山口の標識や、朝日村の観光案内板、郷土の森という看板が立てられていた。もうひとつあった入口にある看板を読んでみると、キノコ採りの行方不明者の情報提供のお願いであった。急に、山奥深くに踏み込んでしまったような、心細い感じがしてきた。
 森に一歩入った広場には、コンクリート製のテーブルとイスが置かれ、登山ポストがあった。ここから、右手の尾根に向かって上がっていく道と沢沿いの道が分かれており、どちらも整備された道のために、歩き始めから地図を確認することになった。沢沿いに進むのが登山道で、右手は散策コースのようであった。背の高いブナを眺めながらの沢沿いの歩きが始まった。明瞭な道が続いているので、ひと安心した。登山道の上には、枯葉が積もっていたが、台風の風のために、紅葉を待たずに落ちてしまったものか。新緑や紅葉の時期に歩いてみたいブナ林であった。小さな虫がたかってきて、顔のまわりにまつわりつき、うっといしい思いをした。沢をさかのぼる道は、足場の悪いへつりや、小さなアップダウンもあり、涼しい陽気になったとはいえ、汗が吹き出てきた。石黒沢を飛び石伝いに右岸に渡ると、本格的な登りになった。ひと登りすると、山の稜線に周囲を囲まれた段丘に出た。周囲は、美しいブナの森となっていた。森の中を静かに流れる小川を、分解しかかった丸太橋を伝って恐る恐る渡った。続いて、少し先で、左手から落ちてくる沢の渡渉。雨が続いていたためか、水は白く濁っており、飛び石伝いに渡るコースをちょっと考える必要があった。ブナの森を登り続けていき、急な斜面を登りきると、右手に延びる枝尾根が刈り払われて、北の朝日連峰方面の展望台になっていた。その先で、右手に水をたたえた小さな沼が現れた。山の稜線を目で追っていくと、石黒山の山頂は、稜線を左に回り込んでいくようであった。稜線が近づいてくると、トラロープも張られた足場の悪いザレ場の登りが現れた。ここを登り切ると、稜線上の緩い登りになった。ブナの大木に囲まれた小広場に出ると、三角屋根の避難小屋に出た。小屋の中をのぞくと、少し泥で汚れているものの、寝泊まりもできそうであった。ここが頂上かと思ったので、少しがっかりしたが、この先は平らな道であった。登山道の上に、頭の丸い主三角点を見ると、その先で山頂と思われる最高点になった。道は下り気味にさらに続いていた。少し先で木立が刈り払われた展望広場に出た。
 正面には鷲ヶ巣山が、三つのピークを連ねていた。鷲ヶ巣のプロフィールを見て、辛かったわけだと納得した。その右手には、鹿森山が北に向かって長い尾根をひいていた。東には、山が幾重にも重なり、山岳同定は難しかった。村上市周辺の海岸線も眺めることができるのに、山の奥深さを感じさせる眺めであった。山頂には、ひとりの先客がいた。言葉をかわすと、キノコ採りに来たが、見つからないまま、山頂まで来てしまったとのことであった。そういえば、登山道に、毒キノコなのか、投げ捨てられてあるのを幾つか見た。晩秋にはナメコがとれるとのことであった。三角点が見つからないというので、地図を見ると、この広場ではなく、最高点付近にあるようであった。三角点を捜しに道を戻った。登山道脇を良く見ながら歩いていくと、最高点を通りこして、主三角点標石まで戻ってしまった。かたわらの木には、誰かがここを山頂と思ったのか、赤布が付けられていた。再び逆戻り。今度は、頂稜部のヤブに踏み込んで、下をのぞきながら歩いた。最高点付近のヤブの下に、折れた紅白の測量棒が腐葉土に埋まっているのが見つかった。この付近のはずと、足の先で落ち葉をかき分けていくと、下から三角点が頭を出した。捜し物を見つけて、すっきりした気分になった。展望広場に戻る途中、下山を始めたキノコ採りに、三角点が見つかったことを教えた。帰る時に三角点をみると、ナタで周囲の潅木が刈り払われて、整理されていた。これからは、この三角点は、登ってきた人に頭をなでられて大事にあつかってもらえるだろうか。登山道は定期的に刈り払いが行われているので、これからは、この三角点も潅木の下に隠れることも無さそうである。
 一人っきりになった山頂で、昼食をとった。家にあまり遅くならないうちに帰りたく思い、山を下ることにした。落ち葉の積もった道に足を滑らさないように注意しながら、帰り道でもブナの森の眺めを楽しんだ。

山行目次に戻る
ホームページに戻る