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唐松山

1998年6月21日 日帰り 単独行 曇り

唐松山 からまつやま(1079.3m) 三等三角点 越後三山周辺(新潟県) 5万 須原 2.5万 大湯、須原
ガイド:関越道の山88(白山書房)

6月21日(日) 6:20 新潟発=(関越道、堀之内IC、R.17、R.252、新保、中子沢 経由)=8:13 手ノ又登山口〜8:17 発―8:20 登山口―8:40 滝見台―9:13 権現堂山分岐―9:26 鏡池―9:50 いっぷく平―10:13 猫岩頂上―10:13 前ピーク―10:43 唐松山〜11:05 発―11:15 前ピーク―11:32  猫岩基部―11:45 いっぷく平―12:03 鏡池―12:13 権現堂山分岐―12:36 滝見台―12:47 登山口―12:50 手ノ又登山口=(中子沢温泉羽川荘入浴(250円)、往路を戻る)=16:10 新潟着

 小出の町の北側に位置する権現堂山は、中越のハイキングの山として登山者の多い。しかし、その峰続きの唐松山は、登山道が整備され、標高もより高く、きれいな三角形をした山頂からは、守門岳、浅草岳、毛猛山塊、越後三山などの360度の展望が楽しめ、山頂手前には猫岩というスリルの味わえる岩場の通過もあり、下山口には温泉まである、といった好条件が揃っているにも拘わらず、なぜか知名度は高くない。
 95年9月2日に権現堂山に登った時に、上権現堂山の山頂で測量の一行と出会い、唐松山まで作業に行くというのを聞いて、始めて唐松山のことを耳にした。地図を確かめると、稜線伝いに登山道が付けられ、南の中子沢からも登山道が上がってきていることを知った。最近出た打田氏の「関越道の山88」に唐松山が紹介されており、このガイドに従って登ることにした。
 昨日の雨とは異なり、天候は一応曇りであった。天気の回復が遅れているためか、小出に近づいても、越後駒ヶ岳の山頂は雲で隠されていた。中子沢温泉羽川荘の白い建物の直ぐ先の橋のたもとから左に分かれる林道に進んだ。直に未舗装の道に変わると、沢沿いの狭い道になった。対向車が来ないことを祈りながら先に進んだ。というよりは、引き返すにも引き返せず、先に進むしかなかった。尾根の張り出しの後ろに大きく回り込むと、山奥にもかかわらず水田が現れ、駐車場という標識の立つ、4台程の車で一杯になる小広場に出た。駐車場から、錦鯉の養殖池に変じた休耕田を脇目に見ながら200m程歩くと、右手の尾根に登山道が始まった。尾根は、傾斜もそこそこにあり、足元は砂地で滑りやすく、登り始めるとすぐに汗が吹き出てきた。尾根の周囲は背丈の低い潅木で囲まれて、見晴らしは良好のよう。ひと息ついて後ろを振り返ると、ガスの切れ間から越後駒ヶ岳の山頂が頭をのぞかせていた。山頂は、鋭角的に切り落ち、高くそびえていた。ひと登りして、中子沢からの登山道が合わさるT字路に出ると、正面の山腹に滝を見下ろすことができ、ここが第一の目標地点の滝見台であった。めざす山頂部はガスで隠されていたが、右手から回り込んでいくはせ尾根には、登山道が小ピークを越しながら高みに向かっていくのを見ることができた。その先の傾斜はさらにきつくなった。急登をひとしきり終えて、周囲にブナ林が混じるようになると、権現堂山との分岐に出た。権現堂山へは、さらに急登が続くようであったが、唐松山へは、右方向に折れ曲がって下りになった。せっかく登ったのにと、恨めしく思った。もっとも、鞍部に登りつくのは、沢沿いの道ならあり得るが、尾根道というのはめったに無いはずなので、登っている途中に気が付いても良いものであった。唐松山への登山道に入ると、道の状態は明瞭ではあるが、歩く者が少ないのか、草がかぶり気味の所も出てきた。鞍部から登りに転じ、少し進んだ所で鏡池に出た。名前を書いた標識は、道の左肩に草に埋もれるように立てられ、右手の潅木の茂みの奥の水たまりが、鏡池であった。ちょっと名前負けといっても良さそうであった。その先で、痩せ尾根の登りになり、再び周囲の展望が広がった。背後には、上権現堂山が大きくそびえていた。登り返しのことを考えて、分岐の位置が気になった。痩せた岩稜帯を過ぎると、今まで以上の急な登りになった。足だけでは、前に進めず、登山道脇の潅木の枝を掴んでは、体を持ち上げた。登り着いた所がいっぷく平で、小広場には、四等三角点が埋められいた。急登を終えて、どうしても休憩したくなる所であった。この先は、稜線歩きではあったが、山頂までには、四つ程のピークを越していく必要があった。稜線の両側には、とても1000m級の山とは思えない大きな展望が広がった。小ピークを越していくと、猫岩の岩場が近づいてきた。手前の岩場は難なく通過。大きな岩の基部に出て、コースを良く見た。道は、岩場に登っていくものと、右手の潅木帯に下っていく迂回路の二つあった。一般道なら通れないことは無いはずと思って、猫岩の頂上をめざした。足場も明瞭で、潅木の枝も掴めて、そう難しい登りではなかったが、北側は、すとんと切り落ちていた。落ちたら、まず助かりそうもなかった。登り切ると、猫岩頂上の標識が立っていた。その先は、巻き道が右手に下っていた。ここまで来た以上は、稜線上の道を進むつもりで少し下ってみたものの、わずか先に見える稜線上の登山道との間には、最後の部分でかなりの段差がありそうであった。岩登りは対象としないハイカーの本分に戻って、卷き道を通ることにした。卷き道は、猫岩の中間部のトラバース道になっており、高度感は結構あり緊張した。下は潅木帯で、落ちても必ず死ぬとは限らなかったが。岩に手がかりが少なく、後ろ向きになっての下りのトラバース道は、足場を探すのが難しく、通常なら鎖が張ってある所であった。帰りに、潅木帯の迂回路を通ってみたが、やぶがかぶさり気味で、何回か木の根につまずいたが、少なくとも転落の心配はなかった。初心者は、安全のために、潅木帯の迂回路を通った方が良さそうであった。猫岩頂上からの卷き道は、一旦下った後に、岩場東面の基部に登り着いた。猫岩の東面を見上げると、最後は3メートル程に垂直に切り立った壁になっており、下りる道は見あたらなかった。岩場の緊張感から解放され、山頂をめざして、疲れてきた足を運んだ。山頂手前のピークからは、めざす唐松山はもうひと頑張りの距離にあった。鋭い三角形の唐松山の山頂に立つと、360度の展望が広がっていた。曇りではあったが、雨上がりのせいか、意外に遠くまで良く見ることができた。守門岳は、二筋の残雪に覆われた谷を山腹に刻み、その右手の奥に浅草岳。稜線の先には、毛猛山塊が大きく広がっていた。毛猛山自体は見えないようであるが、鋭くそびえた檜岳が一際目立っていた。唐松山は、毛猛山塊の絶好の展望台であった。毛猛山、登ってみたいが、その日は来るのであろうか。遠い目標がまたひとつ生まれた。未丈ヶ岳、これも宿題の山である。荒沢岳の奥に頭を除かせている双耳の山は、燧ヶ岳であろ。越後駒ヶ岳は、他の山を圧倒的するように大きく、鋭くそびえていた。右手の八海山は、頂上部の岩稜は目立たずに、おとなしく平らな山頂に見えていた。振り返ると、遠く佐渡ヶ島も望むことができた。空気の澄んだ日に登ったなら、どんな展望が得られるのか、楽しみな山頂であった。休んでいる間にも、南からガスが上がってきて、上権現堂山が見え隠れしはじめた。帰りは、猫岩を迂回路で安全に通過し、急な下りは、潅木の枝を頼りに止められない勢いで下った。権現堂山への分岐まで登り返すと、後は、気持ちの良い稜線歩きで山を下った。唐松山は、事前に予想していた以上に楽しめる山であった。私のとっておきの山のリストに加えておくことにしよう。

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