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弥彦山

1996年2月17日 日帰り 単独行 晴

弥彦山 やひこやま(634m)標高点
多宝山 たほうさん(634m)一等三角点本点 西蒲原丘陵(新潟) 5万 弥彦  2.5万 弥彦

ガイド:新潟ファミリー登山(新潟日報社)、新潟の山旅(新潟日報社)、新潟50山(新潟日報社)、越後の山旅上巻(富士波出版社)

2月17日(土) 8:20 新潟発=(新新バイパス、新潟西バイパス、R.116、県道新潟・寺泊線 経由)=9:33 弥彦神社駐車場〜9:44 発―9:48 弥彦山登山口―10:22 五合目(尾根道分岐)―10:38 御神水―10:48 九合目頂上分岐―11:02 弥彦山〜11:32 発―11:46 九合目頂上分岐―12:10 多宝山登り口―12:27 多宝山〜12:38 発―12:48 多宝山登り口―13:12 九合目頂上分岐―13:18 尾根道入口―13:29 五合目(尾根道分岐)―13:53 弥彦山登山口―14:07 弥彦神社駐車場=(岩室温泉「よりなれ」入浴後、往路を戻る)=16:20 新潟着

 弥彦山は、水田の広がる越後平野の上に頭をもたげ、今は数が少なくなってきた「はざ木」とともに、新潟を代表する風景を形づくっている。毎日、通勤の途中の万代橋の上から、角田山とともに眺めて、四季の移り変わりを楽しんでいる山である。山麓の弥彦神社は、越後一ノ宮としての歴史を誇っており、深田百名山の後書きでも、「昔から聞こえた名山に違いはないが、高さが足りないので選からもれる」と書かれている。山頂は、テレビアンテナの立ち並ぶ弥彦山と、気象レーダードームと一等三角点のある多宝山の二つに分れている。山頂まで、ロープウェイあるいは自動車道の弥彦スカイラインが伸び、登山の趣が損われたところがあるが、新潟周辺で通年登ることのできる貴重な山のひとつである。冬に登れば、道路は閉鎖で、ハイカーだけのものになった静かな山を楽しむことができる。登山道は、新潟周辺部の学校登山の場として親しまれ、過去に児童の事故が起きたこともあるため、現在では良く整備されている。
 新潟の冬も、ようやく峠を越した感じの陽気になった。この週末は、関東で雪になっているという。とりあえずは、新潟で「山と温泉」を楽しむことにする。朝は小雪がまっていたが、弥彦に向かって車を走らせるうちに、青空が広がり始めた。冬のためか、弥彦神社の拝殿近くの駐車場も、空きが目立っていた。弥彦山山頂のアンテナ群や、ロープウェイ駅が、すぐそこの様に見えるが、山に入ればそんなに甘くは無い登りが続くことは、3年前の経験から判っている。今年は、5年ぶりの大雪であったということだが、神社奥の登山口から、残雪歩きが始まった。杉林の中で気温が低いためか、雪はよくしまって歩きやすかった。ジグザグの登りを続けていくと、下山してくるハイカーに何人も出合うようになった。ほとんどは手ぶらでゴム長靴の、地元の健康登山愛好家のようであった。四合目の先から尾根上に出て、頂上も良く見えるようになった。五合目には鳥居があり、電柱が立てられたやせ尾根に向かって登山道が分かれていたが、通常の整備された登山道を行くことにした。緩やかなトラバース気味に進んだ後に、ロープウェイの山頂駅を頭上に見あげての雪の斜面の登りになった。九合目の鞍部から先、階段状に整備されているはずの遊歩道は雪に覆われて、雪のやせ尾根の登りといった感じになっていた。3年前のやはり2月に登った時には、雪はほとんど無かったが、登山道表面が凍って、滑らないように歩くの大変であった。弥彦山の展望台からは、雪で覆われた碁盤の目のように区切られた稲田を見下ろし、その奥には白き粟ヶ岳や守門岳、大きな弧を描く日本海の海岸線の彼方には、三角形をした米山も眺めることができた。休んでいる間も、いれかわりに何人ものハイカーが登ってきた。下りに備えてストックを用意して、多宝山に向かった。頂上のレストハウスは冬季閉鎖中であったが、聞く者もいない音楽をたれ流していた。観光地のレストハウスというのは、どうして、馬鹿のひとつ覚えのようにあたりに騒音でしかない音楽を流すのだろうか。以前、美ヶ原の王ヶ頭のレストハウスで、ベートーベンの「田園」を流しているのにはあきれて、こんな山が「日本百名山」だなんてと、腹が立ったものだ。私の趣味はクラシック音楽であり、もちろんベートーベンは嫌いではないが、山中の音楽は、鳥の声、風の音、木々の枝のきしむ音、登山道の状態によって次から次に変わる足音、自分の息づかい、それだけで充分である。弥彦山と違って、多宝山に向かう登山道のトレースは、一人歩いているだけになった。昼を過ぎると気温も上がって、春山のような陽気になった。大平園地を越して、弥彦スカイラインの自動車道を横断すると、多宝山への急登が始まるが、数歩に一回は、足がももまで雪にうまる状態になった。登山道に倒れ込んだ枝をかきわけながら、汗をたっぷり流して、山頂にようやく到着した。以前と違って、頂上周辺は潅木が苅り払われて、お弁当を広げるのによさそうな、明るい雰囲気になっていた。一等三角点は、広場の真ん中に、それほど厚くない雪の上に頭を出していた。下山は、登る時よりも足がもぐるようになったが、もがきながらの体力まかせで、坂を下った。ワカンがあると、もっと楽なのかもしれないが、長靴で登ってくる者が多い弥彦山に、ワカンを背負って登ってくるのは、ちょっと恥ずかしい気がする。帰りは、少しでも楽をしようと思って、自動車道路をたどることにしたが、雪に足がもぐることには変わらず、なかなかのアルバイトになった。九合目の分岐まで戻ると、、多くの人に踏まれて歩きやい道になった。八合目から少し下った所から、尾根道に入った。やせ尾根の急坂で、ストックと枝に頼りながら、一気に高度を下げた。途中、数カ所固定ロープもあり、また登ってくる者もいて、半公式ルートになっているようであった。急坂で滑らないように緊張する必要があったが、五合目の鳥居の脇に飛び出すと、後は雪道を楽しむ余裕も出てきた。下山口付近まで下りても、これから登り始めようとする人が何人もいた。
 山を下りて、もう一つの今日の目標の温泉に向かった。岩室温泉の遊雁の湯「よりなれ」は、弥彦神社から県道を新潟に向かい、温泉病院を過ぎて、左手の丸小山公園へ曲がった先にあった。案内標識も小さく、始めは、気づかずに行き過ぎてしまった。タオル付きで500円の入浴料。きれいな施設で、浴槽からは、角田山の眺めがよかったが、浴槽がやや小さいのが少し減点。

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