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双六岳、三俣蓮華岳

鷲羽岳、水晶岳、黒部五郎岳

笠ヶ岳

1994年8月17日〜19日 前夜発3泊4日 単独行 晴/晴後雨/晴後雨

双六岳 すごろくだけ(2860m) 二等三角点 (長野、岐阜)
三俣蓮華岳 みつまたれんげだけ(2841m) 三等三角点 (富山、岐阜、長野)
鷲羽岳 わしばだけ(2924m) 三等三角点 (富山、長野)
水晶岳(黒岳) すいしょうだけ(くろだけ)(2986m) 測定点 (富山)
黒部五郎岳 くろべごろうだけ(2840m) 三等三角点 三等三角点 (富山、岐阜)
笠ヶ岳 かさがたけ(2897m) 二等三角点 (岐阜)
 北アルプス南部 5万 上高地、槍ヶ岳 2.5万 笠ヶ岳、三俣蓮華岳、薬師岳

ガイド:上高地・槍・穂高(山と渓谷社)、北アルプス(山と渓谷社)、烏帽子・雲ノ平・笠ヶ岳(東京新聞出版社)、日本百名山登山ガイド(下)(山と渓谷社)、日本300名山ガイド西日本編(新ハイキング社)、ヤマケイ登山地図帳「上高地・槍・穂高」(山と渓谷社)、山と高原地図「上高地・槍・穂高」(昭文社)

8月16日(火) 18:40 新潟発=(北陸自動車道、富山IC、R.41、神岡、宝橋経由)=23:35新穂高温泉第3駐車場  (車中泊)
8月17日(水) 5:06 新穂高温泉第3駐車場発―6:04 笠新道分岐―6:21 わさび平―6:41 小池新道登山口―7:42 イタドリヶ原―8:05 シシウドヶ原―8:43 鏡池〜8:48 発―9:37 笠ヶ岳分岐〜9:42 発―10:42 双六小屋〜11:00 発―11:15 上の台地―11:45 双六岳〜12:11 発―13:13 三俣蓮華岳〜13:20 発―13:32 下の巻道分岐―14:00 三俣山荘  (三俣山荘泊)
8月18日(木) 4:28 三俣山荘発―5:25 鷲羽岳〜5:46 発―5:59 鞍部―6:11 ワリモ岳―6:28 ワリモ岳分岐―6:58 水晶小屋―7:26 水晶岳〜7:44 発―8:08 水晶小屋―8:36 ワリモ岳分岐―8:43 岩苔乗越―9:31 黒部源流雲ノ平分岐―9:57 三俣山荘〜10:14 発―11:00 三俣蓮華岳巻道分岐―11:45 黒部五郎小舎〜11:55 発―13:20 黒部五郎岳肩部―13:31 黒部五郎岳〜13:50 発―14:00 黒部五郎岳肩部―(五郎沢左俣を下ってしまい1時間のロス)―16:30 黒部五郎小舎  (黒部五郎小舎泊)
8月19日(金) 4:33 黒部五郎小舎発―5:32 三俣蓮華岳巻道分岐―5:58 三俣蓮華岳〜6:05 発―6:36 双六岳中道分岐―7:10 上の台地―7:23 双六小屋〜7:36 発―8:26 笠ヶ岳分岐―8:37 弓折岳―8:57 大ノマ乗越―10:05 秩父平―11:40 笠新道分岐―12:33 笠ヶ岳山荘〜13:49 発―14:02 笠ヶ岳〜14:49 発―15:02 笠ヶ岳山荘  (笠ヶ岳山荘泊)
8月20日(土) 6:00 笠ヶ岳山荘発―6:40 笠新道分岐―7:30 杓子平―9:39 笠新道登山口―10:29 新穂高温泉第3駐車場=(往路を戻る)=17:40 新潟着


 双六岳は、双六谷の源頭にあり、三俣蓮華岳に高原状に連なっている。北アルプス中央部、すなわち黒部川源流を取り巻く山々の入り口にあり、烏帽子岳からの裏銀座コース、三俣蓮華岳を経て雲ノ平、薬師岳へのダイヤモンドコース、笠ヶ岳への稜線コース、西鎌尾根から槍ヶ岳へと五つの縦走コースの分岐点となっている。また、三俣蓮華岳は、双六岳の北に連なり、富山、岐阜、長野の3県の境に位置している。双六岳より北に向かってきた縦走路は、ここで烏帽子岳、雲ノ平、薬師岳の3方向に分岐する。昔はこの三俣蓮華岳を鷲羽岳と呼び、現在の鷲羽岳は東鷲羽岳と呼んでいたのが、近世になって現在のように変更されたらしい。昔は、東鷲羽岳あるいは竜池ヶ岳と呼ばれていた鷲羽岳は、黒部川の源頭になっており、三俣蓮華岳方面から見ると、三角形の均整の取れた姿をみせている。また、水晶岳は、鷲羽岳の北に連なり、山の最も奥深い場所に位置する山である。烏帽子岳へと続く裏銀座コースから少し外れているが、日本百名山のおかげで、この山を割愛して先を急ぐ者は少ないようである。水晶岳という名前は、水晶を産することに由来し、また、周りの明るい山稜の内で、この山だけが黒い岩塊のために黒岳と呼ばれるようになったという。雲ノ平をはさんで水晶岳と向かい合う山が黒部五郎岳であり、カール地形で有名である。五郎は、山中の岩場をさすゴーロの当て字で、黒部にあるゴーロに由来するといわれている。笠ヶ岳は、双六岳より南西に派生する支脈の主峰であり、槍ヶ岳から穂高岳に続く稜線と向い合っている。名前は、その特徴的な笠の形に由来し、播隆上人で有名なように、古くからの信仰の山になっている。
 37℃の連日の記録的な猛暑を後にして、黒部源流の山に向かった。新穂高温泉に到着し、駐車する所を捜した。橋向こうの村営駐車は有料で管理人が夜中でいなかったため、深山荘の対岸にある第3駐車場まで少し道を戻った。入口が判り難く、バスターミナルまで5分程離れているせいか、広い無料駐車場は空いていた。双六岳への道は、かなり長い林道歩きで始まり、登山道の小池新道は、急な所は無く良く踏まれて歩き易いものであった。いつもより荷物が多く、雲ひとつない青空の下で日差しが強いためか、直に汗が浮んできて体力の消耗が激しかった。鏡平に登りつくと、槍・穂高連峰の眺めが広がった。鏡平山荘から稜線へは、さらにもうひと頑張りする必要があった。登るにつれて展望が広がったが、暑く、前をビールを運ぶボッカが歩いており、喉が渇いてたまらなかった。縦走路の要所である双六小屋に到着すると、多くの登山者が休んでいた。水は自由に汲めたが、朝で雪渓の水が融けていないため、貯水槽の底に溜まった水を汲む必要があった。水を補給して元気を取り戻し、浮き石の多い急な斜面を双六岳へ登った。双六岳の頂上からは、穂高岳は少し遠く、槍ヶ岳が第一の展望であった。双六岳から下って登り返した所は丸山で、三俣蓮華岳はさらにその先であった。三俣蓮華岳からも素晴らしい展望が広がっていた。目の前には鷲羽岳がピラミッド型にそびえたち、その麓を見降ろすと三俣山荘が小さくたたずんでいた。しかし、黒部五郎岳と雲ノ平方面は雲と逆光のため、あまり良く見えなかった。三俣山荘への下りは、一日の疲れも出て、結構長く感じられた。三俣山荘は、建物は古びていたが、槍ヶ岳を眺めることのできる展望食堂があった。寝るスペースは、一人2/3畳程で夏山の混雑も峠を越した感じであった。荒々しい硫黄尾根を前景にし、左手に長く北鎌尾根を横たえた槍ヶ岳を目の前にしながら、ビールを片手に夕暮れ時を過ごした。
 翌朝は霧になった。ライトを頼りに、急坂を鷲羽岳目指して登った。日が登るにつれ霧は消えたが、カールを抱いた黒部五郎岳から薬師岳方面以外は雲が多かった。先を急いで、水晶岳へ向かってガレ場を下った。ワリモ岳を越すと草原のトラバース道となり、小さな水晶小屋に到着した。水不足とは聞いていたが、水晶小屋では、1リットル500円のミネラルウォーターを売っていた。水晶岳は、岩場を左手から回り込むように登った。山頂は岩場で狭く、三脚を立てての記念写真の撮影も難しかった。眼下には雲の平が箱庭のように見え、黒部川の流れと、周囲を取り巻く山々の眺めが素晴らしかった。帰路は黒部源流コースを歩くことにした。岩苔乗越えからガレ場を下っていくと、水の流れが現われ、しだいにその流れは太くなっていった。さっそく、流れの水を汲み、黒部川源流の水を味わった。登山道は、夏草が被さり気味で足を運ぶのに注意が必要で、三俣山荘に戻るまで、鷲羽岳山頂経由とそれほど変らない時間がかかった。三俣山荘からは、三俣蓮華岳のトラバース道を通って黒部五郎小舎に向かったが、この道も細かいアップダウンがあり、それほど近道にはならなかった。黒部五郎岳のカールを眺めながら緩やかな稜線を歩き、急坂を下ると草原の一角に佇む三角屋根の黒部五郎小舎に到着した。時間はまだ早いので、宿泊手続きをしてから、明日に予定していた黒部五郎岳に向かうことにした。お花畑が広がるカールでは、すでに花は終わり、黄色に色付いた葉が秋の訪れを感じさせた。カール壁をジグザグに息を切らして登り、最後の岩の転がるゴーロをつめると、黒部五郎岳山頂に到着した。1日で三つ目の日本百名山に満足し、頂上から眺めを楽しんだ。誰もいなくなってしまったカールまで下り、残雪から流れ出る小川のほとりで休憩した後、下山を急いだ。細い沢に沿って下って行くうちに、沢の中の道となり、登りのコースと違うことに気がついた。沢には微かなペンキマークやあり、しかも歩き易いため、心の中で迷いながらさらに下ってしまった。ようやく引き返す決心をして登り返す途中、沢の上にあがって見ると、小屋の周囲に広がっていた草原の一角に出た。草原を歩いて小屋に戻ることができるかと思ったが、潅木の茂みが迷路のように入り組んでいたため、沢に戻った。ようやくコースマークのある所まで戻った時は、さすがにホットした。登山道が、沢から右手に折り曲る所を直進してしまい、迷ってしまったものであった。後でガイドブックを読んでみると、この沢は、五郎沢左俣だったらしい。にわか雨が降る中を、ようやく小屋に戻ることができた。小屋は満員になっていた。小屋の2階は蒲団が敷き詰められ、寝るスペースは余裕があるものの、人を踏まないように歩くのが難しい状態であった。夕食は、揚げ立ての天夫羅、コロッケにスパゲティの付け合わせ、トロロソバ等が添えられた豪華版であり、満腹になった。
 前日に黒部五郎岳を登ってしまったため、双六小屋泊りを変更して、笠ヶ岳山荘まで頑張ることにした。暗い中を出発したが、いつものことではあるが、いきなりの急登で苦しい思いをした。雲が低く、天気は下り坂のようであった。三俣蓮華岳に登り、中道を経由して見晴しの良い草原を抜けて双六小屋に順調に到着した。双六小屋では、お盆の最中に消費したビールやジュースをヘリコプターのピストン輸送で荷上げの最中であった。連日の猛暑で、山の上の飲み物の消費量も多かったようである。以前、穂高岳から笠ヶ岳を眺めた時、ほぼ水平な稜線の上に山頂だけが三角形にとびたしているのを見た記憶があった。そのため、笠ヶ岳分岐から先は、それほどの登り下りはないだろうと期待して先に進んだが、大ノマ乗越や秩父平のさきのガレ場の登り等、きつい登りがあった。雲が低くなって展望が閉ざされ、長い稜線上で、笠ヶ岳までどれくらい近づいているかが判らなくなったことも疲れを増した。笠新道分岐付近で雨が降り始め、雨具を付けての登りになった。笠新道分岐に荷物を置いて笠ヶ岳を往復しようとした登山者が、雨具を持たないでずぶぬれになって戻ってくるのに出会った。雲の切れ間に、笠ヶ岳の肩に建てられた笠ヶ岳山荘を見ることができた時は安心した。笠ヶ岳山荘は、外は古びた感じがしたが、中は新しく改装されたようできれいであった。宿泊手続き後、ラーメンを食べながらビールを飲んでいると雨が止み、展望が広がってきた。少し酔っていたが、笠ヶ岳の頂上に登ることにした。常念岳や蝶ヶ岳方面とは反対方面からの眺めになるが、槍ヶ岳から穂高連峰の眺めはさすがに素晴らしかった。再び雲が上がってくるまで、展望を充分に楽しんだ。日の入りは白山の右手になり、空は赤く染った。
 翌朝、出発前に笠ヶ岳にもう一度登った。朝は槍ヶ岳・穂高連峰は逆光になり、黒いシルエットを空に浮かべていた。展望が遠くまで開け、乗鞍岳、木曽御岳山、南アルプス、そして富士山も甲斐駒ヶ岳の脇に見えた。昨日は充分に眺めることができなかった笠ヶ岳を何度も振り返りながら稜線を下った。最後の笠ヶ岳眺めでは、雲が上がってきて山頂を隠そうとしていた。笠新道は、始めはガレ場の急な下りで、カールの底の草地を抜けて尾根を越すと、ジグザグの長い下りになった。後半になって、登ってくる登山者にも出合うようになったが、気温も上がっている中で、疲れの色が濃かった。下山後、新穂高温泉に入浴して外に出てみると雨になっていた。新穂高温泉の公衆浴場は、無料であったが、流しの湯が出ないため、体を洗うのに湯舟の湯をかぶるしかなかった。


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