9428

爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳

五竜岳、唐松岳

1994年8月6日 前夜発1泊2日 単独行 晴/晴

爺ヶ岳 じいがたけ(2670m) 三等三角点 後立山(富山、長野)
鹿島槍ヶ岳 かしまやりがたけ(2889m) 二等三角点 北峰(2849m) 後立山(富山、長野)
五竜岳 ごりゅうだけ(2814m)三等三角点 後立山(富山)
唐松岳 からまつだけ(2696m)二等三角点 後立山(富山、長野)  5万 大町、立山、白馬岳 2.5万 黒部湖、十字峡、神城、白馬町

ガイド:立山・剣・白馬岳(山と渓谷社)、北アルプス(山と渓谷社)、日本百名山 登山ガイド 下巻(山と渓谷社)、日本300名山ガイド 西日本編(新ハイキング社)、山と高原地図「鹿島槍、黒部湖」(昭文社)

ガイド:新潟ファミリー登山(新潟日報社)、新潟の山旅(新潟日報社)、越後の山旅上巻(富士波出版社)、山と渓谷93年2号

8月5日(金) 20:00 新潟発=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、信濃大町、大町アルペンライン) 8月6日(土) =1:25 扇沢柏原新道登山口  (テント泊)
4:45 扇沢柏原新道登山口発―7:15 種池山荘〜7:20 発―8:00 爺ヶ岳南峰〜8:05 発―8:22 爺ヶ岳中央峰―8:59 赤岩尾根分岐―9:10 冷池山荘―10:01 布引岳―10:40 鹿島槍ヶ岳〜11:00 発―11:26 北峰分岐―11:32鹿島槍ヶ岳北峰〜11:41 発―11:48 北峰分岐―13:05 キレット小屋  (キレット小屋泊)
8月7日(日) 5:00 キレット小屋発―6:15 北尾根ノ頭―7:48 五竜岳〜8:27 発―9:00 五竜山荘―10:40 唐松岳頂上山荘〜10:45 発―11:00 唐松岳〜11:10 発―11:24 唐松岳頂上山荘―11:50 丸山ケルン―12:29 第3ケルン―13:00 八方池山荘=(ロマンスペアリフト、アルペンペアリフト、ゴンドラリフト)=13:25 ゴンドラリフト八方駅―13:40 八方口〜14:00 発=(松本電気鉄道バス)=14:06 白馬駅=14:21 発=(大糸線 特急しなの22号)=14:53 信濃大町=13:00 発=(北アルプス交通) 15:32 扇沢柏原登山口=(往路を戻る)=21:45 新潟着

 富山県側から見て立山の後に連なる山を後立山連峰という。後立山連峰の範囲は、一般には白馬岳から針ノ木峠あたりまでを呼び、この内、白馬三山から唐松岳あたりまでは、特に白馬連峰と呼ぶことが多い。爺ヶ岳から鹿島槍ヶ岳、五竜岳を経て唐松岳に至る稜線は、後立山連峰縦走の核心部ということができる。爺ヶ岳は、緩やかな三つの山頂を持ち、その山名は、春先に現われる種まき爺さんの雪形に由来している。鹿島槍ヶ岳は、後立山連峰の盟主といった存在で、美しい双耳峰の山である。この山の名前は、鹿島集落の背後にある槍ヶ岳という意味である。五竜岳は、鹿島槍ヶ岳と伴に後立山連峰を代表する山となっている。この山の名前は、武田菱に似た岩が見られることから「武田の御菱(ごりょう)」と呼んだことに由来するとか、後立山(ごりゅう)に五竜の字を当てたとか言われている。唐松岳は、後立山連峰の北部にあって、比較的地味な山容であるが、白馬連峰との境界部に位置し、八方尾根のロープウェイを利用して比較的容易に登ることができるため、多くの登山者で賑わう山になっている。
 昨年とは大違いの晴天と40℃近くの猛暑が続いている。夏は、涼しい北アルプスということで、日本百名山を二つ登ることのできる後立山連峰の縦走を計画した。北上するか、南下するかで迷ったが、ロープウェイの始発時間を待つと出発が遅くなるので、扇沢から登って北上し、唐松岳から八方尾根を下り、最後に鉄道とバスを乗り継いで車を回収しに戻るというコースを、山中二泊の予定で計画した。
 扇沢手前の柏原新道登山口に夜半に到着し、テント泊を行った。92年の9月に鹿島槍ヶ岳に登ろうとした時は、雨のため引き返して明星山に目的地を変えたが、今回は満天の星空になった。早朝から立山アルペンルートに向かう車が多く、朝早くから目が覚めてしまった。柏原新道は、モミジ坂と名付けられた急な尾根にコースが付けられていたが、ジグザグの道で実際の傾斜はそれほどきつくはなく歩き易い道であった。しばらくすると、岩小屋沢岳付近の稜線が見え始め、歩くに従って、稜線上の種池山荘や朝日に輝く針ノ木岳と蓮華岳が目に飛び込んできた。谷を巻くようにして種池山荘まで登ると、扇沢のバスターミナルが小さく見降ろすことができた。小屋の前は、爺ヶ岳方面と針ノ木岳方面に向う人で賑わっていた。爺ヶ岳への登りを開始すると、背後に立山と剱岳がせり上がってきて、思わず足が止まってしまった。剱岳は、残雪の残る沢を抱き、ギザギザの岩稜を横たえていた。今回は、終始左手に剱岳を眺めながらの縦走になった。爺ヶ岳の山名標識は南峰にあり、360°のパノラマを楽しむ登山者で賑わっていた。爺ヶ岳の主峰は、三つのピークの内で最も高くて、三角点が置かれているにもかかわらず、山名標識が無いためなのか、5名のグループが降りてしまうと、誰もいない静かな山頂になってしまった。ほとんどの登山者は、巻道を通って主峰は通過してしまうようであった。爺ヶ岳の北峰は、明確な道はついていなかった。爺ヶ岳の下りにかかると、鹿島槍ヶ岳が頭上に迫ってきた。信州側からガスがわいてきたが、風に押し戻されて、富山側に稜線を越すことはなかった。冷池山荘に到着した所で、先に進むか迷うことになった。鹿島槍ヶ岳までは、かなりの登りでがあるように見えたが、宿に泊るには時間が早すぎた。鹿島槍ヶ岳に登ってしまえば、後は下る一方で、雷雨の心配もなさそうなので、キレット小屋まで頑張ることにした。お花畑の広がる稜線を登っていくと、大人数の団体が鹿島槍ヶ岳から下ってきた。週末の冷池山荘は、かなり混み合っていたようである。次第に傾斜のきつくなる道をようやく登りついた所は、布引岳で、本当の鹿島槍ヶ岳の頂上は、まだそのかなり上であった。山頂に立つ人影が見分けられるくらい近づいているが、最後のツメは苦しい登りになった。今回の目的地のひとつである鹿島槍ヶ岳に登ったことに満足している暇もなく、キレット小屋まで一旦急激に落込み、その後、小さな上下を繰り返しながら五竜岳に上っていく険しい縦走路が目に飛込んできて、緊張感が高まった。キレット方面から山頂に登ってきた登山者は、一様にかなり疲れた様子であった。景色を眺めながらひと休みし、先に進む元気を取り戻した。北峰に向う下りは、急で浮き石も多く、一歩づつ足下を確かめながら足を運ぶ必要があった。つり尾根の下部には雪渓が残り、涼を求めて休憩する登山者で賑わい、雪を食べている者もいた。北峰へは、縦走路から僅かな登りであったが、ガスのため南峰は見え隠れの状態であった。鹿島槍ヶ岳を後にして、遥か下に見えるキレット小屋目指して、慎重な下りを続けた。岩場の道は、太陽を遮るものがなく、小屋のビールを飲みたい一心で歩くことになった。八峰キレットは、鎖や梯子が整備してあり、危ないようなことはなかったが、登ってくるグループをやり過ごすのに、待つ必要があった。キレット小屋は、写真で予想はしていたが、よくこのような所に小屋を作ったものだと思ってしまう、岩場を降り立った狭い鞍部に建っていた。最近建て替えられたのか、きれいな小屋であった。2階全体が、廊下をはさんで上下2段の寝床になっていた。さっそくビールを飲み、剱岳の風景を楽しみながら他の登山者と山の話をして、夜までの時を過ごした。夕食は、チキンソテーに、山盛の野菜が添えられたのが驚きであった。夕日は、毛勝山に落ち、鮮やかな夕焼けになった。昨晩の五竜山荘は、一畳に二人でかなり混んだようであったが、キレット小屋は、かなりの空きもでて、楽に眠ることができた。
 翌朝、早立ちしようとしたが、ガスのため5時近くになるまで歩き出すことができなかった。心を決めて出発すると、ガスが消え始め、振り返るとキレット小屋と鹿島槍ヶ岳へ向う登山者の列が姿を現した。五竜岳に取りつくまでに、小さなピークの上り下りがいくつもあり、鎖場が連続した。岩場には浮き石が目立ち、岩の表面に細かい砂がついているため滑りやすかった。最後の急なガレ場を登りきると、人で混雑した五竜岳の一画に到着した。山頂は団体に占領されていたため、朝食の弁当を食べながら、空くのを待つことにした。昨日から歩いてきた縦走路を振り返ると、険しい岩稜の向こうに鹿島槍ヶ岳が美しい双耳峰を見せていた。また、これから進む方向には、唐松岳がかなり低く見え、その先には白馬の山々が広がっていた。山頂が空いたので、記念写真を撮りに、山頂に登った。時間を計算すると、もう一泊しなくても、唐松岳に登った後に八方尾根を下ることができそうであったので、その先は足を早めることにした。五竜山荘までは、気を抜けないガレ場の下りが続き、山に慣れない登山者が登るのに苦労していた。五竜山荘から唐松岳への縦走路は、はじめは草原の中につけられたゆったりとした道であったが、大黒岳付近で一旦かなり下ってしまい、その後の登りに苦労した。最後の牛首の岩場を通過すると、唐松岳山頂小屋に到着した。小屋の周囲は、八方尾根から登ってきた登山者で大混雑の状態であり、もう一泊しないで下山する決心がついた。僅かな登りで唐松岳に到着した。五竜岳は、重厚で厳しくそびえていた。縦走路は、さらに不帰のキレットに続いていたが、次の機会にということにした。八方尾根の下りは、登ってくる人々で混雑し、ほとんど日陰が無いため、露出部が日焼けして痛くなった。暑さと、喉の乾きに悩まされるようになった頃、八方大池に到着し、そこからは観光客の中に交じって下山を急いだ。リフト二本とロープウェイを乗り継いで、一気に麓まで下ることができた。
 山歩きが終わると、最後に、扇沢に戻る仕事が待ち受けていた。ロープウェイ駅からバス停までの道は、案内版が無いため判り難く、途中2回人に尋ねて、たどり着くことができた。ガイドブックにこの部分の道が詳しく載っていないのは、手落ちである。列車、バスと順調に乗り換えて、最後は、バスの運転手にたのんで柏原新道登山口で降ろしてもらった。とりあえず、大町温泉の薬師の湯まで車を走らせ、300円で入浴した。腕がすっかり日焼けしてしまったため、温泉に腕をつけることができず、バンザイをしての入浴であったが、心身ともにサッパリすることができた。


山行目次に戻る
ホームページに戻る