9417

天狗岳、ニュウ

御座山

1994年5月21日〜5月22日 前夜発1泊2日 単独行 晴/晴

天狗岳
 東天狗岳 ひがしてんぐだけ (2640m)
 西天狗岳 にしてんぐだけ (2646m)  二等三角点
にゅう (2351m)  三等三角点
  八ヶ岳(長野) 5万 蓼科山 2.5万 松原湖、蓼科
ガイド:アルペンガイド「八ヶ岳・北八ヶ岳」(山と渓谷社)、八ヶ岳を歩く(山と渓谷社)、東京周辺の山(山と渓谷社)、山と高原地図「八ヶ岳・蓼科」(昭文社)、日本300名山ガイド 東日本編(新ハイキング社)

御座山 おぐらさん (2112m)  二等三角点 西上州(長野) 5万 十石峠 2.5万 信濃中島
ガイド:東京周辺の山(山と渓谷社)、山と高原地図「西上州・妙義」(昭文社)、日本300名山ガイド 東日本編(新ハイキング社)

5月20日(金) 18:38 新潟発=(関越道、上信自動車道、佐久IC、R141、松原湖、稲子湯 経由)
5月21日(土) =0:15 唐沢橋 (車中泊)
4:35 唐沢橋発―5:47 みどり池―6:50 本沢温泉―7:45 夏沢峠〜7:51 発―8:32 根子岳〜8:38 発―8:58 東天狗岳〜9:24 発―9:40 西天狗岳〜9:52 発―10:05 東天狗岳―11:08 黒百合平〜11:11 発―11:18 中山峠―12:17 ニュウ〜12:28 発―12:39 白駒池分岐―12:56 白駒林道分岐―14:00 林道―14:31 唐沢橋=(稲子湯、小海、南相木、栗生 経由)=16:30 林道終点 ( テント泊 )
5月22日(日) 4:37 林道終点発―4:39 分岐―5:10 不動ノ滝―5:47 2040ピーク―6:07 御座山〜6:35 発―6:50 2040ピーク―7:08 不動ノ滝―7:27 林道終点=(小海、R141、佐久IC、上信自動車道、関越道)=13:30 新潟

 天狗岳は、原生林に覆われた北八ヶ岳にありながら、南八ヶ岳のようなアルペン的風景を楽しむことのできる山である。山頂は、縦走路上にある東天狗岳と、最高点で三角点の置かれた西天狗岳の東西二峰に分れている。東天狗岳に天狗岩と呼ばれる岩塔があり、これが名前の由来となっている。北八ヶ岳の中心的存在で、四方より登山道が通じており、人気のある山である。また、にゅうは、北八ヶ岳の主稜線から僅かに東にそれた所にある小岩峰で、周囲の眺めは雄大であるが、訪れる人はそれほど多くない。
 御座山は、千曲川を挟んで八ヶ岳と対峙しており、中腹以上は黒木に覆われ、山頂に古城のように岩頭をそばたたせている。大島亮吉や深田久弥の紹介によって世に知られるようになった山である。かつては、小倉山とも書かれていたのが、現在のようになったらしい。
 高気圧に日本がすっぽりと覆われて快晴の期待できる天気図になり、遠出することにした。展望の良さそうな山ということで、300名山リストの内から、北八ヶ岳の天狗岳に決めた。昨年の秋の赤岳の際には、快晴に恵まれ、これ以上の展望は無いであろうといった経験をした。雨で展望の得られなかった山よりも、快晴の山のほうがもう一度行ってみたいと思うのは妙なことである。昨年2度も出かけた甲武信岳への道と途中まで一緒なので、車を走らせるのも気分的に楽であった。松原湖を過ぎると、稲子湯の案内標識が数多く現われた。稲子湯を過ぎると未舗装の林道となり、僅かな走りで、林道が二股に分れ、登山案内の立った広場に出た。左手の林道は、唐沢橋のたもとでゲートが降ろされていた。夜明けとともに起きて歩きだした。冷え込みが厳しく、セーターを着込み、手袋、帽子を身に付けた。新緑のカラマツ林の中の登りは、いかにも高原といった風情であった。途中からところどころ細いレールが残ったトロッコ軌道跡をからみながら登るようになり、みどり池に到着した。林の中に小さな沼は静かにたたずんでいた。林の中をさらに行くと林道に飛び出し、本沢温泉に到着した。日本第2の高所にある温泉ということで入浴してみたい気持ちにかられるが、登山の出だしでは諦めるしかなかった。露天風呂は、10分程登山道を登った沢のほとりで、げた履きでは無理な所にあった。夏沢峠への登りから残雪が現われたが、早朝で気温が低いため堅くしまり、歩くのにそれほど支障は無かった。急な登りを続け硫黄岳の絶壁が頭上に迫ってくるようになると、夏沢峠に到着した。2軒の山小屋は閉っていた。樹林帯の緩やかな登りを続けると、夏はコマ草の群生地になるという砂れき地が広がった根子岳に到着した。根子岳の頂上からは、天狗岳の両ピークが一足到の距離に眺められた。展望は遠くの山まで広がっていたが、赤岳が硫黄岳の影になっているので、展望を楽しむ大休止は天狗岳でということになった。東天狗岳の山頂には、女性の二人連れが休んでいるのみであった。両横綱といった風に赤岳と婀弥陀岳が並び立ち、その後には甲斐駒ケ岳が一際目立つ南アルプス、さらに中央アルプス、北アルプス、蓼科山から霧ヶ峰、浅間山、奥秩父の山々が360度の全方角に広がっていた。昨年の赤岳山頂からの展望に匹敵する眺めであったが、山頂に雪が残っている分、北アルプスなどの遠くの山の陰影がはっきりしていた。西天狗岳は、鞍部に一旦下ってから登り返すことになったが、雪田の急な登りがあり、登りは坪足で充分であったが、下りはストックが必要になった。西天狗岳の山頂は、潅木で取り囲まれた広場になっていた。東天狗岳に戻り、岩場を黒百合平に下る途中、何組かのグループが登ってきた。摺鉢池付近の下りは、大きな岩を飛び移って行く歩きづらい道になった。黒百合ヒュッテ前のベンチは、澁ノ湯方面からの登山者で賑わっていた。中山峠に出た所て、稲子湯に下るべきか迷ったが、さらに北上を続けることにした。林の中に残雪がかなり残っており、踏跡をたどるが、途中で道を失い赤札に助けられる場面もあった。にゅうは、樹林帯から飛び出した岩峰の展望台で、富士山を天狗岳の左に見ることができた。にゅうを後にして白駒林道を下るが、倒木や木の根が多くて歩きにくく、長く感じる道であった。登山道から林道に出た所で、再び登山道に入るべきところを、林道を歩き続けたため少し遠回りをしてしまい唐沢橋に戻った。唐沢橋の上にはバードウォッチングの団体が陣取り、林の中の植物を観察して歩くカルチャー教室の団体で賑わっていた。これらの団体は、稲子湯に宿泊しているようであった。稲子湯に520円で入浴し、一日の汗を流した。湯舟は大きくはなかったが、透明な泉質で、熱い湯であった。稲子湯は、朝食が7時半からの普通の温泉旅館のようであるため、宿泊は諦めて野宿を決心した。
 車を走らせ、途中夕食ともつかない食事をとった後に、御座山の南面からの登山口の栗生に向った。御座山への案内板に導かれて広い砂利の敷かれた林道を進んだが、御座山への登山口が現れないまま、林道終点までかなり山を登ってしまった。林道終点の広場から先には、明確な登山道が続いていたが、西群馬幹線116という真新しい標識が立っていた。ガイドブックの記載とは様子が違っていた。他に道は無いので、この道を偵察のため登ってみると、2分程先で御座山方面という標識が現われた。ガイドブックでは放棄された林道と記載されている道は、現在では車の通行が可能な林道に整備されなおしたようであった。登山口であることを確認できて安心し、テントを張り一夜を過ごすことにした。
 充分眠ったので、翌日は早朝に目を覚ました。涸れた沢沿いの道を登っていくと、しだいに水音がするようになり、不動の滝に到着した。水の量は僅かであり、岩からしたたり落ちる程度であった。滝の落ち口に登るためと思われる道が滝の左手に付いていたが、ガイドブックの記載に従って右手の道に進んだ。急斜面の電光型の登りとなったが、落葉の積もった道は歩き易いものであった。黒木の林の中を登り続けると、鎖場が現われた。山を下ってくる夫婦連れと出合い、早朝なのに足が速いのかと不思議に思ったが、山頂の避難小屋に泊ったものであったようであった。ピークの上に出ると、鞍部を挟んで御座山の岩壁がそそり立っていた。最後の登りを頑張ると、避難小屋の前に出た。内部を覗くと、半分は板張りがしてあり、水場は無いものの、泊ることは可能なものであった。小屋の左手に回ると、足下が切り落ちている岩壁の上に出た。岩場の上に三角点を探したが見つからず、現在は無くなっているようであった。昨日と比べると雲がかかっているものの、目の前に八ヶ岳連峰が横たわり、天狗山・男山を前景として甲斐駒ヶ岳や北岳等の南アルプス、山頂脇の五丈岩でそれと判る金峰山、幾重にも重なった西上州の山々、360度の眺めが広がっていた。風が強くて寒いので、眺めを楽しんだ後に下山に移った。鎖場を越した後は、急斜面であるが歩き易いため、走るように下ることができ、僅かな時間で林道終点に戻ることができた。辺鄙な所にあり、ガイドブックにも1泊2日の日程とされている御座山であったが、車を利用すると3時間程で往復できる日帰り登山の山に変っていた。


山行目次に戻る
ホームページに戻る