粟ヶ岳

粟ヶ岳


【日時】 2020年5月28日(木) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 川内山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 粟ヶ岳・あわがたけ・1292.7m・二等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/加茂/粟ヶ岳
【コース】 五百川コース
【ガイド】 分県登山ガイド「新潟県の山」(山と渓谷社)

【時間記録】 5:10 新潟発=(R.49、R.403、加茂、R.290、森町、R.289 経由)=6:18 北五百川登山口〜6:33 発―6:54 元宮―7:58 4合目(粟薬師奥の院)―9:26 8合目―10:13 粟ヶ岳〜10:35 発―11:03 8合目―12:17 4合目(粟薬師奥の院)―13:11 元宮―13:36 北五百川登山口=(往路を戻る)=15:10 新潟
 粟ヶ岳は、新潟平野から福島県境に広がる川内山塊の最高峰である。川内山塊の山々は、標高は低いながら雪崩に磨かれたスラブをまとい、険しい渓谷に囲まれて容易に人を寄せ付けない、現在では少なくなっている秘境である。その中にあって、粟ヶ岳は、新潟平野に接する位置にあり、麓からその姿を良く眺めることができ、信仰あるいは登山の対象として、親しまれる山になっている。

 平日だが時間があいたので粟ヶ岳に出かけた。北五百川からは 2008年5月以来歩いていないことと、昨年歩いた袴腰山から粟薬師奥の院までの「ぶなのみち」のGPSトラックデーターを粟ヶ岳までつなげるという目的もある。また、粟ヶ岳は人気の山で、週末には山頂に大勢が座り込むといって状態になるようなので平日に歩くことにした。
 以前は、南五百川集落から駒出川に架かる橋を渡った先は細い砂利道であったが、現在は舗装されて、登山口までの案内板も整備されている。棚田の間を抜けていくと、登山口の駐車場に到着する。現在は、かなりの広さの駐車場が設けられており、人気のほどがうかがわれる。バイオマストイレも設置されている。早朝であったが、すでに二台の車が停まっていた。
 歩き出しがいきなり1合目ということで、不思議に思う者もいるかもしれないが、以前は南五百川集落の橋詰めに粟ヶ岳登山者用駐車場が設けられて、そこが起点になっていた。棚田の中を歩いてきて、花立場と呼ばれる1合目に到着ということになっていた。現在は1合分を楽していることになる。
 歩き出しは、砂利敷きの林道歩きになり、用水路の取水口を過ぎると山道に変わる。川岸のへつり道を進み、金網状の横板が敷かれた橋を渡ると、2合目に到着となる。猿飛び橋と呼ばれる滝の落ち口になった枝沢を渡ると、杉木立に囲まれた元宮に到着する。神社の跡としては、石段だけが残されているだけである。
 ここまではほぼ平坦な道が続き、ようやく本格的な登りの開始になる。尾根沿いの登りを続けていき、ブナ林が広がるようになると3合目となる。ここの標識には八汐尾根とも書かれている。尾根上に岩が目立つようになると、4合目・粟石跡に到着。「粟石に登ると妻が安産する。粟石を欠いて持ち帰るとお産が軽い」という民間信仰があったようであるが、跡と書かれているように、それらしい岩は見当たらない。その先は岩場の通過になるが、岩にはステップが彫られているので、通過は難しくはない。振り返ると、青空を背景に残雪豊富な守門岳が姿を現しており、山頂での展望の期待が高まった。
 岩場を通過して、一旦左にトラバースしていくと、薬師の水場が現れる。帰りに寄ってみることにして先に進んだ。美しいブナ林の中を登っていくと、五合目・粟薬師奥の院に到着する。奥の院といっても、小さなお堂の中に石仏が並んでいるだけである。広場の片隅には避難小屋も置かれている。
 ブナ林の中を斜上していくと尾根上に出て、「ぶなのみち」との合流点となる。粟ヶ岳へは右折することになる。尾根沿いに登りを続け、二か所の短い岩場を通過すると六合目・天狗の岩場に到着する。この水場も後で確認することにして先に進んだ。その先で尾根の合流点に出ると、見晴らしが開けた。谷向こうに、水源地からの中央登山道の通っている尾根が延びており、粟庭の頭や粟ヶ岳ヒュッテを眺めることができた。ただ、中央登山道で7合目にあたる粟ヶ岳ヒュッテよりもまだ低い位置にいるのは、残念なことであった。このコースでの7合目は、まだ先であった。
 尾根沿いの歩きは、緩急の繰り返しであったが、歩くペースは上がらず、足を前に出し続けるのに努力することになった。先の週末、土曜日の風倉山でかなりのダメージを受け、日曜日には整理体操として葡萄鼻山を登った。木曜日では休みが足りないのか、足の軽い筋肉痛と疲労感から回復していなかった。また、五合目の粟薬師奥の院から先が長いなと感じたが、歩き初めがすでに1合目で、2合目まではほぼ平坦な道。本格的な登りは、粟薬師奥の院までは3区間しかなかったことを忘れていた。体力的には、6合目と7合目の間の見晴らしを5合目と考えた方が良いと思う。
 8合目の小ピークを越すと牛の背の岩尾根と三つのピークを連ねた粟ヶ岳の眺めが広がった。素晴らしい眺めであるが、この先の急登には気を奮い立たせる必要がある。ほぼ水平に延びる牛の背の岩尾根は幅もあり、通過に問題はない。牛の背を過ぎると、山頂から南西に落ち込む尾根に向かっての急登になる。尾根上に出た所で9合目となり、ようやく山頂への最後の登りになる。牛の背から粟ヶ岳の山頂へは標高差210mの急登になるので、この最後の区間の登りはきつい。
 山頂には2名の先客がいるだけで、平日ならではの静けさが広がっていた。済んだ青空のもと、久しぶりに遠望が広がっていた。一本岳の向こうには川内山塊が広がり、磐梯山も見えていた。権ノ神岳、宝蔵山を経て白山へと続く稜線の向こうには飯豊山塊。南には守門岳や浅草岳。その奥の遠くには、越後駒ヶ岳や中ノ岳、燧岳、白根山も望むことができた。新潟平野を見下ろすと、その先には日本海が広がり、里に近いにもかかわらず山の奥深さを感じる山頂であった。
 下山は、前夜の雨の影響か泥斜面が滑りやすく、足元に注意でペースは上がらなかった。途中の水場にも寄ってみたが、天狗の水場は岩の表面を流れる水で、汲むも難しいため水は飲まなかった。薬師の水場は、水が流れ落ちる所があり、コップに水を汲むことができ、汗を流した後なので美味しく飲んだ。下山途中でも、何人もの登山者とすれ違った。平日でも登山者は多く、三密を避ける上でも平日に登ったのは正解であった。

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