会津駒ヶ岳、中門岳、大津岐山、唐倉山

会津駒ヶ岳、中門岳、大津岐山
唐倉山


【日時】 2014年9月19日(金)〜21日(日) 2泊3日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 20日:晴 21日:晴

【山域】 南会津 【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 会津駒ヶ岳・あいづこまがたけ・2132.4m・一等三角点本点・福島県
 中門岳・ちゅうもんだけ・2060m・なし・福島県
 大津岐山・おおつまたやま・おおつまたやま・1944.7m・三等三角点・福島県
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/檜枝岐、燧ヶ岳/檜枝岐、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳
【コース】 滝沢口からキリンテへ
【ガイド】 アルペンガイド「尾瀬、南会津の山」(山と渓谷社)、新・分県登山ガイド「福島県の山」(山と渓谷社)、南会津、鬼怒の山50(随想舎)、山と高原地図「尾瀬・燧ケ岳・至仏山」(昭文社)
【温泉】 駒の湯 500円

【山域】 南会津
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 唐倉山・からくらやま・1175.8m・三等三角点・福島県
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/針生/会津山口
【コース】 八久保沢登山口より
【ガイド】 南会津・鬼怒の山50(随想舎)、会津百名山ガイダンス(歴史春秋社)、うつくしま百名山(福島テレビ)、

【時間記録】
9月19日(金) 14:35 新潟=(R.49、会津坂下、R.252、会津川口、R.400、佐倉、R.401、界、R.289、R.401、R.352 経由)=7:30 桧枝岐  (車中泊)
9月20日(土) 5:40 駒ヶ岳登山者用駐車場―6:05 林道終点登山口―7:14 水場―8:05 草原ベンチ―8:27 駒ノ小屋―8:42 会津駒ヶ岳―9:23 中門岳―10:12 駒ノ小屋―10:41 小ピーク―11:43 大津岐峠〜12:35 発―14:26 キリンテ登山口=(自転車)=14:43 駒ヶ岳登山者用駐車場=(R.352、R.401 経由)=16:00 唐倉山登山口  (車中泊)
9月21日(日) 6:28 登山口―7:05 尾根上―7:24 見晴台―7:53 唐倉山―8:42 登山口=(R.401、R.289、只見、R.252、上条、R.290、栃尾、R.290、下田、R.290、加茂、R.403、茅野山、R.49 経由)=12:20 新潟
 会津駒ヶ岳は、山頂に広がる湿原とそこに咲く花のために、全国に数ある駒ヶ岳の中でもトップクラスの人気のある山になって、日本百名山にも選ばれている。山名は、黒馬として現れる雪形に由来しているという。中門岳は、会津駒ヶ岳から北に延びる稜線の先に位置する山である。山頂標識にも、「この一帯を中門岳という」と書かれているように、明瞭な山頂を持つピークではない。会津駒ヶ岳から中門岳に至る稜線は、湿原が広がり、池塘が空を映し、高山植物に彩られて、会津駒ヶ岳の最大の見所になっている。会津駒ヶ岳登山のためには滝沢登山口からの往復が一般的だが、南西に延びる尾根沿いに設けられた富士見林道と呼ばれる登山道を経て、大津岐峠からキリンテに下るコースも用いられている。

 唐倉山は、南会津町の旧・南郷村にある険峻な岩尾根を持ち、修験道の霊場にもなっていた信仰の山である。少し前までは、登山道も不明で、岩場の通過が困難な山であったが、現在では登山道も整備され、山開きも行われるまでになっている。鎖や岩に埋め込まれたボルトで登山道が整備されているといっても、緊張の強いられる岩場を持つ山であることには変わりはない。

 紅葉の始まりの山を楽しむため、まず湿原を持つ山を考え、会津駒ヶ岳に出かけることにした。会津駒ヶ岳はこれまでにも何度か登っているが、富士見林道を経由してキリンテに下山したことはなかった。このキリンテコースで問題になるのは、キリンテからどうやって滝沢登山口に戻るかということである。下山時に使える会津バスとしては、キリンテ発は13:30と14:50のみで、後は17:00まで無い。両登山口の間は4kmほどなので、歩けないことは無いが、長い登山の最後の車道歩きは辛い。そこで、自転車を利用することにした。幸い、キリンテから滝沢登山口までは、幅広の道で緩やかな下りが続く。自転車にまたがっているだけで車に戻れるはずである。
 二日目は、会津百名山とうつくしま百名山で残されていた唐倉山に登ることにした。
 今回は、西会津方面から国道401号線を使ったが、途中で道幅が狭く、カーブも連続して、疲れる道であった。距離は短くなるが、このコースは使えない。
 桧枝岐に到着して、まずはキリンテ登山口に自転車をデポした。続いて、滝沢登山口のテニスコート脇の駐車場に移動してここで夜を過ごそうと思った。トイレもあったが、広場の奥に用途不明の建物があった。看板のようなものは無く、なんだろと思って、建物に取り付けられたプレートを見ると火葬場であることが判った。火葬場の脇で夜を過ごすのは不気味なので、ここでの車中泊は諦めた。冬山登山では、ここに駐車して車中泊する者も多いのではないだろうか。一旦移動して、尾瀬公園前の駐車場に移動した。
 いつもは林道終点まで車で入るが、今回は滝沢登山口からの歩き出しになった。トイレ脇には数台の車が停められており、出発の準備を行っているグループがいた。秋になって日の出も遅れており、歩き出しの時間も遅くなってきている。
 しばらく林道を歩いた後に、ショートカット道に進んだ。急坂で、早くも息が切れてきた。幸い、ひと登りで再び林道に飛び出した。林道終点部の駐車スペースは、早くも満杯状態になっていた。林道終点部の駐車スペースは朝早くから満杯になってしまうので、最初から下の駐車場から歩く覚悟をしておいた方が気が楽かもしれない。
 カーブ地点で林道は通行止めになっており、そこからひと登りした所が、木の階段が設けられた駒ヶ岳の登山口になる。登山口からは、ブナ林の広がる尾根の登りが続く。カーブを交えながらの登りで歩きやすい道であるが、この日は足が重かった。久しぶりに他の登山者と前後になりながらの登りで、ペースが早めになってしまったようである。
 オオシラビソなどの針葉樹が現れ始めると、水場入口の広場に到着した。この先は、傾斜は少し緩やかになったが、足も疲れてきており、登りに使う体力はそう変わらなかった。
 見晴らしベンチに到着すると、駒の小屋や駒ヶ岳山頂、谷向こうの大戸沢岳の眺めが広がった。木々の紅葉には早かったが、草原は茶色に色づいていた。期待していた秋色の風景が広がっていた。
 この先は、草原の中に続く木道の登りが続くようになった。写真を撮りながらの登りになった。燧ヶ岳の山頂も姿を見せていた。
 駒の大池の周りのベンチは、朝食をとる登山者で賑わっていた。駒ヶ岳の山頂への木道は、崩壊が進んでおり、雨の日は滑って危険そうであった。山頂下の分岐からまずは駒ヶ岳の山頂を目指した。ひと登りで会津駒ヶ岳の山頂に到着するが、木立に囲まれて、僅かに燧ヶ岳の山頂が見えるだけである。立派な山頂標識が置かれていて、登頂の記念写真には良いだろうが、展望を楽しむ場所ではない。山頂の写真を撮った後、中門岳への道に進んだ。
 少し下ると展望が広がり、中門岳へ至る台地状の稜線の眺めが広がった。草原は茶色に染まって美しい姿を見せていた。ここからは、カメラを首に下げて、写真を撮りながらの歩きになった。
 中門岳へは、途中二つの小ピークを越え、全般的には下りになる。登頂を頑張るというよりは、周囲の風景を眺めながらのプロムナードコースということになる。2094mピークを越えた先の中門大池には中門岳の山頂標識が立っているが、山頂はその先の高まりになる。ここには、休憩に良い木製のテラスが設けられていたが、水没状態に変わっていた。
 中門大池からひと登りすると、湿原の広がる台地状の中門岳に到着した。池を一周するように木道が巡らされている。
 帰りも、燧ヶ岳や平ヶ岳、越後駒ヶ岳などの眺めを楽しみながらの歩きになった。
 会津駒ヶ岳の山頂下のトラバースコースを通って、駒の小屋に戻った。
 ここから、今回の目的のキリンテへの道が始まる。駒の小屋奥の有料トイレへの道に進むと、そこからキリンテへの道が始まっていた。最初は、急な下りになった。笹の刈り払いが行われたばかりで、足元が隠されており、滑らないように注意が必要であった。燧ヶ岳を正面に見ながらの歩きになった。ほぼなだらかな稜線が続いていたが、途中に鋭く山頂を持ち上げた小ピークがあった。
 緩やかな稜線を進んでいくと、小ピークの乗り越しになった。木の階段で段差を登ると、続く木の階段は脇のステップを使って登ることができた。登りは急な所があったが、乗り越した先は、緩やかな道が続いていた。登山道沿いには、時折湿原が広がり、目を楽しませてくれた。もう少し時期が遅くなれば、笹原の緑の中に灌木の紅葉が広がって美しい風景を見せてくれるはずであった。紅葉の時期に歩いてみたいコースであった。
 大津岐峠は、中腹に草原の広がるピークを越した先であった。先行者の2グループ3名が休んでいた。大きな峠の標柱が設けられていたが、倒れて横たわっていた。
 荷物を置いて、大津岐山のピークを踏むために先に進んだ。登山道は、大津岐山の山頂手前で、下を巻くように続いていた。山頂に至る踏み跡は見当たらなかったため、南の稜線沿いに戻ったところで、草原を横断して笹薮に突入した。身動きの取れない笹薮で、なんとか台地状のところまで登った所で先に進むのを諦めた。三角点を探るのもままならぬ状態であった。
 大津岐峠に戻って大休止にした。休んでいると二人連れも到着した。会津駒ヶ岳からキリンテへのコースは、両登山口間の交通が不便なために、歩く者も少ないのかと思っていたが、意外に登山者が多いことに驚かされた。さすがに御池まで歩く登山者は少ないのであろうが。
 他の登山者が出発してからゆっくりと歩き出した。キリンテへの道は、昔から山仕事に入る人が使っていた道とあって、良く踏まれて歩きやすい道であった。小さなカーブを交えながらの下りが続いた。尾根を左にはずして下っていくと、キリンテ沢沿いの谷間に出た。ブナの大木が並んで気持ちの良い谷間であった。キリンテ沢を左岸に渡ると、その先でキリンテ登山口に到着した。
 最後のひと仕事として自転車にまたがって走りだすと、キリンテバス停の前に先に下っていった登山者全員がバスを待っているのを見かけた。こちらに気が付いて驚いた顔を見るのも些細な優越感であった。予想通りに、まったくペダルを漕がないままの自転車走行が続いた。途中一ヶ所だけ登りがあったが、そこも通過すると駐車場まで緩やかな下りになった。
 無事に駐車場に戻り、自転車を車に積み込み、汗を流すために駒の湯に向かった。
 桧枝岐方面にやってきて問題になるのは、コンビニは会津田島まで戻らないとないことである。山口付近にヤマザキストアはあるものの弁当が買えるか判らない。アルザ尾瀬の里のレストランで夕食をとってしまうことにした。本来なら名物の裁ち蕎麦ということになるのだろうが、腹持ち優先で生姜焼き定食を食べてしまった。おなかも一杯になったところで、唐倉山に向かった。
 国道401号線の青柳の林道入口に唐倉山を示す案内標識が立っている。何度もこの前を通過しているが、そのままになっていた。八久保沢沿いの舗装された林道が続いた。途中で枝道が分かれる所には、唐倉山を示す標識が置かれていた。道幅は、乗用車同士なら徐行してすれ違えるが、大型車が通行しますと書かれているのが気にかかった。奥で伐採が行われているようであった。幸い、休日の夕方とあって、他の車に出会うことはなかった。途中で右に分かれる林道に進み、600mほど進むと、左にヘアピンカーブ状に分かれる道があり、この道に進むとすぐ上が登山口の広場であった。水場やトイレも設けられ、立派な登山案内の看板が置かれていた。萱原の向こうには、唐倉山の山頂が広がっていた。一見、普通の里山のように見えるが、中腹に岩場も見られた。
 唐倉山のガイドブックとしては、古い順に、南会津・鬼怒の山50(随想舎)、会津百名山ガイダンス(歴史春秋社)うつくしま百名山(福島テレビ)があり、あまり知られていない山としては充実しているように思われるが、登山道の整備が行われている現状とは大きく異なっている。ネット上の新しい登山情報を探した方が参考になる。
 一夜明けて、出発の準備をしていると、早朝にも関わらず一台の車が到着した。これは登山者ではなく、キノコ狩りのようであった。
 萱原の中に自動車幅の切り開きが設けられていた。すぐ先で分岐になったが、右は下山に使う尾根コースのようであった。そのまま直進していくと、山裾で山道に変わった。コースの途中には、木の名前を記した標識が取り付けられていた。
 谷間に入っていき、山の斜面に突き当たると、急な登りが始まった。ひと登りすると天邪鬼の足跡という標識が現れた。岩に足跡のような窪みがあるのをさしているようであった。岩を右に巻くと、急斜面の登りになった。土の斜面にステップが切ってあり、ロープも取り付けられているのが助けになった。大岩の下で屏風岩という標識が現れたが、頭上の岩をさすのか、右手の斜面奥に見える切り立った岩場をさすのか良く判らない。
 急斜面を登り終えると、尾根上に出た。山頂とは反対の左手にも踏み跡が続いていたので進んでみると、左右が切り落ちた岩の上に出た。ここは幡岩と呼ばれるようであった。岩尾根が下っているが、修験道の行者はそこを通過して登ってきたのだろうか。
 山頂に向かうと、尾根上に次々に岩場が現れたが、下部に巻き道が付けられ、ロープも設けられていたので、問題なく進むことができた。岩の上をそのまま通過できそうな所もあったが、無理はしないのが無難。
 尾根上に現れた御柱岩(石の御柱)は、柱状節理の岩が崩壊したもののようであるが、面白い光景を作っていた。続いて、細い岩尾根の通過になり、ここは見晴らし台という標識が取り付けられていた。細尾根であったが、ロープも張られて安全は確保されており、風景に目を運ぶ余裕はあった。
 尾根を進んでいくと唐倉山の山頂は迫ってきたものの、最後は急な登りになるようであった。標高1080m地点で、「この先は危険です」という警告看板が現れた。初心者は引き返すようにと書かれていたが、初心者ではないので進むしかない。ここまでは充分な整備が行われているので、岩場の通過にも問題は無いはずであった。
 岩場をひと登りすると、前方が切り落ちた岩場の上に出た。先をうかがうと、前方の赤松に左を示す矢印が置かれているのが見えた。岩場の左を見ると、ロープが横に張られ、岩の中間部にボルトが埋め込まれているのが見えた。下の岩棚に踏み跡が続いており、進んだ先に尾根上に出るためのロープが取り付けられているのも見えた。岩棚にうまく着地しないとそのまま崖から転落することになる。ロープとボルトを頼りに下ったが、最後に少し足が届かない。最後はずり落ちて、岩棚に軟着陸した。ロープを使って尾根上に出て飛びつき岩を振り返ると、岩の先端の切り落ちた部分に、U字型のボルトが数個埋め込まれていた。これを使って階段状に下れば良かったようである。ただ、このコースも斜めになった岩に着地することになるので、油断はならない。
 その先は、ステップが左に離れており、垂れ下がっている鎖にブル下がって体をスウィングする必要があった。難しい岩場は、ここまでで後は急な登りに汗するだけになった。 到着した唐倉山の山頂は、小広場になっており、岩が付き出ていた。ここまではスリルのある登りで、充実感のある登頂になった。
 下りは、尾根沿いのコースに進んだ。登りよりは岩場の危険は無いといっても途中で露岩帯の通過があり、足元には注意が必要であった。2014年の山開きでは、下山中に滑落して意識不明の重体になった事故が起きたという。危険個所は通過したという油断であろう。
 尾根の途中には、下りの千年松、下りの万年松という大木が現れた。尾根の末端部で左の谷間に下りたが、トラバース気味に進んで再び尾根上に戻ると、登山口近くの萱原に戻ることができた。
 駐車場には、多摩ナンバーのワン・ボックスカーが増えており、登山グループが入山したようであった。
 唐倉山は、現在ではコース及び岩場の整備とも十分で、岩山好きには楽しめる山になっている。
 これで、うつくしま百名山終了、会津百名山リーチとなった。ただ、原発事故によって、登れなくなった山が含まれているうつくしま百名山を終えることができても、複雑な気持ちが抜けない。
 
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