蝶ヶ岳

蝶ヶ岳


【日時】 2012年8月24日(金)〜26日(日) 前夜発テント1泊2日
【メンバー】 単独行
【天候】 25日:晴 26日 晴

【山域】 常念山脈
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
蝶ヶ岳・ちょうがたけ・2677・なし・長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高山/松本、上高地/信濃小倉、穂高岳
【コース】 三股より
【ガイド】 アルペンガイド「上高地・槍・穂高」(山と渓谷社)、山と高原地図「上高地・槍・穂高」(昭文社)

【時間記録】
8月24日(金) 15:20 新潟=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、穂高 経由)=21:00 三股駐車場  (車中泊)
8月25日(土) 4:35 三股駐車場―4:51 三股―5:05 吊り橋―6:27 豆打ち平〜6:32 発―8:42 最後のベンチ―9:17 蝶ヶ岳テン場  (テント泊)
8月26日(日) 6:43 蝶ヶ岳テン場―7:01 最後のベンチ―8:18 豆打ち平〜8:25 発―9:14 吊り橋―9:27 三股―9:40 三股駐車場=(往路を戻る)=14:40 新潟
 常念山脈は、最高峰の大天井山から徳本峠に至る山稜で、安曇野から見ると、槍穂高連峰を隠すように、その東に広がっている。蝶ヶ岳は、その盟主ともいえる常念岳の南に隣りあうピークで、山頂一帯はなだらかな稜線が続き特徴のある姿をしていないが、槍穂高連峰が目の前に広がる展望は素晴らしい。

 8月最後の週末になってしまった。昨年から海外旅行に精力を注いでおり、山も少しおろそかになってテント泊山行を行っていなかった。ここらでテント泊山行を行っておかないと、体力的な自信が無くなってしまう。1泊2日の山行で、適当な山を考えていき、結局蝶ヶ岳を登ることにした。これまでにもコースを変えて蝶ヶ岳を登ってきたが、山頂で槍・穂高連峰を眺めながらのんびりするというのが、今回のテーマになる。
 高速料金を節約するため、北陸道の糸魚川ICから白馬経由で車を走らせた。三股駐車場には、夜の早い時間に到着したが、それでも多くの車が停められていた。ここは蝶ヶ岳と常念岳の登山口であるため、山頂で宿泊している登山者も多い。広場の縁に空いたスペースを見つけて車を停めた。車の中で寝ていると、深夜になってから到着する車も多かった。
 山頂での泊りのために時間の余裕はあったが、涼しいうちに高度をかせいでおくため、薄暗いうちに歩き出した。いずれにしても、最初は林道歩きのため、ヘッドランプをつけての歩きも問題はない。
 林道終点広場に到着した時は薄明るくなっていたが、登山道に進むと、木立が広がって薄暗く、もうしばらくヘッドランプを付けて歩く必要があった。すぐに常念岳への登山道を右に分けると、河原沿いの道が続く。吊り橋で本沢を渡り、緩やかに登っていくと、力水の水場に到着した。登りは、ここで水を飲む必要はないが、顔を洗って、気合を入れた。
 力水からいよいよ本格的な登りが始まる。次なる目標の豆打ち平までは、標高差450mの登りになる。地図上では、急斜面に登山道が続いているが、細かい九十九折になっており、登りやすい道になっている。久しぶりのテント泊装備のため、ザックが重く感じ、意識してペースを落として歩くことになった。
 傾斜が緩むと1916mの豆打ち平に到着した。ベンチも設けられた広場になっており、良い休憩ポイントになっている。豆打ち平からしばらくは、針葉樹の広がる台地の緩やかな登りが続くので、疲れた足を慣らすことができる。
 2050m地点から再び急登に変わる。2100m地点からは、地形図の破線から反れて、低い位置でトラバースと登りを繰り返すようになった。気温も上がって、汗がしたたり落ちるようになった。2350m付近からは急斜面の直登になって、足も停まり気味になった。標高2500m地点の最終ベンチまでが、一番の難所になる。
 下山してくる登山者にも多くすれ違った。登り優先ということで道を譲ってくれるのは有難いが、一気に何人もの登山者の脇を抜けるのは、足が辛かった。
 最終ベンチからは、北に延びる稜線部を眺めることができ、もうひと頑張りという元気を取り戻すことができた。暑さは厳しかったが、青空が広がり、山頂からの展望が期待できた。
 この先は、草付きや灌木帯のトラバース気味の登りになって、足の負担も軽くなってきた。大滝山への登山道の分岐に出ると、もうひと頑張りの歩きで、蝶ヶ岳に到着することになる。
 山頂に到着すると、まずテント場が現れる。設営場所を選んでザックを下ろした。張ってあるテントも幾つか残っていたが、テント泊の登山者としては一番乗りであったので、場所は自由に選ぶことができた。前夜は雷雨に襲われていたので、窪地の奥で風当たりの弱く水はけの良い場所を選んだ。
 テントの設営は後回しにして、まずはカメラを持って、テント場の背後にある蝶ヶ岳の山頂に向かった。尾根上に出ると、槍ヶ岳から穂高岳に至る稜線の眺めが広がっていた。蝶ヶ岳の山頂自体は、常念岳から南に延びる幅広尾根のちょっとした高まりにしか過ぎないが、展望はぴか一である。
 テントを設営してから小屋に受付をすれば、後は風景を眺めながら丸一日をのんびり過ごすことになった。蝶ヶ岳付近は幅広尾根になっており、穂高側の斜面に腰を下ろしてぼんやり過ごす登山者も多かった。テントを張った窪地は風が当たらず暑かったが、尾根上に出ると、吹き抜ける風は涼しく心地よかった。
 時折、雲が高く上がったが、雷雨にならずに夜になった。テントも50張り近くに増えて、ほぼ満杯状態になった。日暮れ近くなってから到着して、場所を探している者も見かけられた。早い時間に到着という山の常識を守らない者が多い。
 夕焼けは、残念ながら赤く染まらないままに日が沈んだ。夜中に起きて外に出ると、安曇野の街明かりが煌めいていたが、星は薄雲に覆われていた。夏用の山シャツ、薄いフリース、雨具の上着では、外に出ていると寒くなった。日の出見物でも寒くなったので、薄いダウンを持ってくるべきであった。
 翌朝は、日の出に合わせて起きれば良かったのだが、4時頃から起きだした物音で目を覚ました。太陽が姿を現すのを待つことになった。
 太陽が顔を出す際のシャッターチャンスは、ごく短い。安曇野側の日の出を撮影した後に、すぐに穂高連峰側を良く眺められる場所に移動した。山頂部が赤く染まりはじめたが、山腹はまだ暗いままにとどまっていた。北穂高小屋、穂高岳山荘、涸沢の山小屋の灯りが明るく輝いていた。眺めるうちに、空は赤く染まった。
 一旦テントに戻ってから朝食をとり、テントを撤収してから、再び、展望のために戻った。太陽も昇って、山々は朝の空気の中に輝くようになっていた。左から、御嶽山、乗鞍岳、霞沢岳、焼岳、前穂高岳、奥穂高岳、涸沢岳、北穂高岳、南岳、槍ヶ岳、西岳、大天井岳、常念岳と体の向きを変えないと見切れないパノラマは見事であった。前日は、早い時間に到着したが、それでも雲が一部かかったりしていたので、このパノラマは、山頂で夜を過ごした者しか見られないものであった。
 展望を堪能した後に、下山を開始した。歩き出すとすぐに暑くなって、Tシャツ一枚になる必要があった。途中から、登ってくる登山者にも多くすれ違うようになった。豆打ち平までの登りで、ばてているような者もいたが、その後の本格的な登りを突破できたのであろうか。最後は、下りにもかかわらず暑さにうだりながら歩くようになった。力水の湧水が美味しかった。駐車場が近づいた頃でも、登りを始める登山者がいるのには驚かされた。コースタイムから逆算すれば、昼から登りを開始しても山小屋に到着はできる計算だが、猛暑の中を登り切る自信は、私には無い。
 駐車場は満杯で、車を動かすと、林道脇の駐車の列が長く続いていた。人気の山では、早い駐車場到着を心がける必要がある。
 高速料金の節約のため、糸魚川経由で家に戻った。

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