唐松岳、風吹岳

唐松岳
風吹岳


【日時】 2012年7月27日(金)〜29日 前夜発二泊二日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 28日:曇り 29日:曇り

【山域】 北アルプス北部
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 唐松岳・からまつだけ・2696.4m・二等三角点・長野県、富山県
【コース】 八方尾根往復
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳、黒部/白馬町、欅平
【ガイド】 アルペンガイド「立山・剣・白馬」(山と渓谷社)、山と高原地図「鹿島槍・黒部湖」(昭文社)
【温泉】 倉下の湯 500円

【山域】 白馬岳周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 風吹岳・かざふきだけ・1888m・なし・長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳/白馬岳
【ガイド】 「長野県 中信・南信 日帰りの山」(章文館)、山と高原地図「白馬岳」(昭文社)

【時間記録】
7月27日(金) 15:00 新潟=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、白馬 経由)=18:50 黒菱平  (車中泊)
7月28日(土) 4:23 黒菱平―5:08 八方池山荘―5:53 八方池―6:56 丸山ケルン―7:37 唐松岳山頂山荘―7:58 唐松山〜8:07 発―8:25 唐松岳山頂山荘〜9:45 発―10:28 丸山ケルン―12:07 第三ケルン―13:00 八方池山荘―13:50 黒菱平=(R.148、北小谷、来馬、北野 経由)=16:30 稗田山展望台  (車中泊)
7月29日(日) 5:25 稗田山展望台―5:44 林道終点広場―6:23 枝尾根の稜―7:40 風吹山荘―8:00 風吹岳入口―8:17 風吹岳〜8:25 発―8:34 風吹岳入口―9:00 神の田圃―9:40 風吹天狗原分岐〜9:56 発―10:10 風吹山荘―11:06 枝尾根の稜―11:37 林道終点広場―11:50 稗田山展望台=(北野、高車、石坂、中土、下里瀬、R.148、糸魚川IC、北陸自動車道 経由)=16:00 新潟
 唐松岳は、北アルプス北部の後立山連峰にあり、八方尾根の上部に位置する山である。八方尾根にかかるロープウェイとリフトを乗り継げば、1850m地点からの歩き出しになり、コース上で難しいところもないため、北アルプスの入門コースになっているが、白馬岳や五竜岳の眺めも素晴らしく、高山植物も豊富な山である。

 北アルプスでも人気の白馬連峰の一画に、風吹大池という北アルプス最大の湖がある。風吹岳は、風吹大池の東岸に位置する山である。風吹大池の周囲には、小さな池や湿原が点在した秘境になっており、白馬岳周辺の喧噪とは違った静かな山歩きを楽しむことができる。

 いよいよ夏本番となったが、猛暑が襲ってきている。高い山で花を見ようと思い、唐松岳に出かけることにした。唐松岳は、毎年のように登っていたと思っていたが、黒菱平への道路が不通のために、一昨年と昨年は訪れていなかった。二日目の山は、幾つかの案を立てて、唐松岳から下山した後で決めることにした。  白馬のペンション街を抜けると、林道が始まる。カーブが連続するが、薄暗くなって車のライトを点灯する必要があるため対向車が判りやすく、昼よりもドライブしやすい。到着した黒菱平には、かなりの車が停められていたが、山小屋泊りの者が多いようである。
 空が白みかけたところで、歩き始めた。駐車場脇から始まるコンクリートで固められた道に進む。頭上にリフト山頂駅の建物が見えているが、そこまでは急登で、いきなり息が切れる。背後に登ってくるはずの太陽は雲に隠されており、真っ赤な日の出は見られなかった。
 リフト終点の八方池山荘に到着すると、山荘泊りの客が散策していた。まずは混み合わないうちにということで、八方池までは急ぐことにした。昼にはハイカーが数珠つなぎになる尾根であるが、この時間は静かな中を歩くことができる。団体を含めた数組を追い抜いて八方池に到着した。
 八方池には、先行グループが腰を下ろしており、三脚が立てて置かれていた。白馬三山の眺めを期待して登ってきたが、稜線は雲に覆われていた。雲は晴れそうにないので、先に進むことにした。八方尾根では、大型三脚を持ち込んで、山の写真を狙うカメラマンが多いが、花の写真に専念している者はあまりいないようなのは不思議である。
 八方池を過ぎて露岩帯の尾根をひと登りすると、下ノ樺の林に入る。その先で急登になるが、この付近はニッコウキスゲやタテヤマウツボグサなどの花が多い。帰りに花の写真を撮るため、咲いている花を頭にいれながら先に進んだ。その先のトラバースを過ぎてジグザグの登りが始まるところで、オオサクラソウの花を見ることができた。今年は大雪のため雪解けが遅れて、花の時期も遅れ気味のようであった。
 雪渓の脇をかすめて登りを続けていくと、丸山ケルンに到着した。雲の中に入ってしまい、展望は閉ざされていた。
 丸山ケルンまで上がれば、後は緩やかな登りが続く。岩稜の下をトラバースする道が続くが、小屋泊りの登山客が下山してくるのに多く出会うようになった。
 唐松岳山頂山荘は、増築工事も終わって、新しい棟が増えていた。雲に覆われて、目の前の唐松岳の山頂は隠されていた。山頂からの展望は諦めるしかないが、登りをもうひと頑張りすることにした。
 唐松岳の山頂は、展望が閉ざされているため、登ってきた登山者もすぐに下山していく状態になっていた。山頂の写真を一枚撮っただけで、下山に移った。
 山荘の周辺のコマクサやミヤマクワガタの写真を撮り、下山を開始しようとした時、雲が切れ始めた。ベンチに腰を下ろし、食事をとりながら待っていると、青空が広がって、唐松岳や五竜岳の山頂が姿を現してきた。山荘付近で休んでいた登山者も、唐松岳の山頂に向かって登り始めた。山頂まで登り返すのも面倒なため、山荘から少し下った鞍部付近から五竜岳や白馬岳方面の写真を撮ることにした。結局、山荘付近で1時間半近くを過ごした後に、下山を開始した。
 下山には、登ってくる登山者が途切れないような状態になっていた。大人数の団体や家族連れも目立っていた。山小屋やテント場は超満員になりそうであった。この日の山頂泊りは行いたくないものであった。
 八方池が近づくと、都会のプール並みの叫び声が響く大混雑になっていた。ケルンの回りも、腰を下ろすハイカーで埋め尽くされていた。八方池までのハイカーも膨大な数になっていた。この状態の山は訪れる気にはなれないが、リフトが動き出す前の早朝なら、静かな山が楽しめるので、何度も唐松岳を訪れることになる。
 混雑にうんざりして、翌日は静かな山を楽しむために、風吹大池を目指すことにした。風吹大池は、以前に蓮華温泉を起点に白馬大池へと回ったことがある。R.148を通るとき、北小谷に風吹大池への大きな看板が置かれているのが目に入って気になっていた。ガイドブック「長野県 中信・南信 日帰りの山」に従って登ることにした。
 道の駅のある北小谷から旧道に進むと、来馬への道が分かれる。来馬の集落からは、高度を上げていく林道に変わった。舗装道路ではあるが、道幅は細く、ガードレールがないため、転落が心配になった。T字路に出ると、ガイドブックにも記載されている登山案内板が置かれていた。ここで、土沢コースと北野コースが分かれるので、どちらから登るか決める必要がある。土沢コース方面は未舗装の林道で、20分と書かれていた。北野コースは、登山口手前までは舗装道路が続くようなので、こちらに進むことにした。
 林道を1kmほど進むと、開けた感じの北野集落に出た。この先は、工事用車両優先の案内板が掲示されていたが、この日には対向車は現れなかった。山奥へと分け入る長く感じる林道が続いた。途中で、野外活動施設が設けられていたが、わざわざこのような奥地まで足を延ばす者もいないように思われる。
 車のナビにもこの林道は表示されるず、地形図でも途中までしか記載されていない。車を根気よく走らせていくと、ようやく吹風大池の大きな看板が置かれた分岐に到着した。右に分かれる未舗装の林道を進めば登山口であるが、ガイドブックによれば、この道は車高のある車なら乗り入れ可能な荒れた砂利道と書かれていた。分岐の先の稗田山展望台の広場に車を停めて歩き出すことにした。稗田山展望台の先に続く林道には鎖が掛けられており、夕暮れが迫ろうとする時、二台の工事関係者の車が出てきた。奥で工事を行っているようで、平日にここまでの林道を走るには対向車に注意する必要がありそうであった。
 当然ながら、夜は邪魔する者もおらず、静かに過ごすことができた。
 翌朝は曇り気味の朝になった。未舗装の林道歩きがしばらく続いた。林道は砂利道ながら整備されており、普通車でも乗り入れることができる状態であった。林道のこの部分は地図にも記載されていないので、GPSで林道の走り具合を記録するためにも歩いてみる必要があった。幸い、20分ほどの歩きで林道終点広場に到着した。車が二台停められており、これは山小屋泊りのもののようであった。
 広場の手前から左に分かれる道が、風吹大池への登山道であった。地形図では、1333mピークの南東部であった。また、稗田山展望台は、その東の幅広尾根の1230m地点であった。登山地図に記載されている駐車場マークの位置はどちらも違っており、この先の登山道の走り具合もいいかげんであるが、特徴の無い地形のため、歩いているぶんには判らないであろう。
 駐車場からしばらくは緩やかな下りになった。幅広の登山道で、最近刈り払いも行われたようで、刈られた草が登山道脇に積み重なっていた。登山のために切り開かれたというよりは、昔の鉱山道の跡といった感じもした。
 山の斜面に突き当たると、急登が始まった。急斜面であったが、土の斜面に足場が掘り込まれており、歩きやすい道になっていた。直登をしばらく続けると、時折カーブを交えて高度を上げながら、左にトラバースしていくようになった。
 1627m点から南東に落ち込む尾根に出てひと息つくことができた。この先は、ブナの大木も並ぶ幅広尾根の登りになった。1627mからは緩やかな下りになるが、再び急登が始まった。二日目の歩きとあって足も疲れ気味ではあったが、順調に歩くことはできた。ただ、暑さは堪えるようになって、汗がしたたり落ちるようになってきた。二組の登山者にもすれ違ったが、前夜を小屋に泊まったようである。混雑した山小屋はごめんだが、風吹山荘は、その心配はなさそうなので、いつか泊まってみようか。
 傾斜が緩んで細尾根に出ると、右手に風吹岳の南斜面を眺めることができるようになった。丸太の段々が整備された登山道を下ると、窪地に出て、土沢コースに合流した。左に曲がると、すぐ先が風吹山荘であった。泊り客も出発した後で、誰もおらず、静けさに包まれていた。ベンチの置かれた木製テラスの上でひと息付いた後に、湖岸周回コースに進んだ。
 湖岸周回コースを歩いたのは、2001年8月なので、記憶も薄れている。風吹大池は、コメツガなどの針葉樹の森に囲まれて静かに広がっている。河畔には、ヒオウギアヤメの花が咲いて彩りを添えていた。木道も整備されている河畔の道を北に向かっていくと、小敷池の手前で、風吹岳への登山道が分かれた。再び急登になるが、それもそうは長くなく、台地状の風吹岳山頂に到着した。木立に囲まれた中、吹き抜けになった休憩所が設けられていた。その背後に進むと、木立の間から高妻山方面の眺めが広がっていた。風吹岳の山頂は、さほど面白くはないが、風吹大池が目的としても、ピークを踏まないことには満足がいかない。
 周回道に戻り先に進むと、すぐ先で小敷池の眺めが広がった。風吹岳と横前倉山の間の鞍部に岩が立っているのが面白いが、そこへの道は無い。
 さらに進んで、西岸尾根への登りが始めるところで、神の田圃への道が分かれる。北に向かって涸れた沢を辿ると、血の池が現れた。ミツガシワの生えた静かな池であるが、風景に見とれていると、アブと蚊にさされた。
 その先で、谷間に広がる湿原の神の田圃に出た。木道の終点まで進むと、小さな池塘が重なって、美しい風景を見せていた。
 分岐に戻り、西岸尾根への登りに汗を流した。風吹大池を見下ろしながら南に進むと、右手に科鉢池が現れ、その先で広い湿原に飛び出した。湿原の向こうに、雪を残した山も見えていた。雲のために一部しか見えていないのは残念であったが、雪倉岳であったのだろうか。
 湿原に延びる木道に腰を下ろして大休止にした。人声がして登山者が近づいてきたが、湿原には進まず、そのまま風吹大池に下っていった。蓮華温泉から登ってきたのか、白馬大池から下ってきたのかは判らない。
 湿原からは、階段状の下りで、風吹山荘に戻ることができた。その後は、下りに専念することになった。最後の急坂もあらかた終わろうとするところで、山小屋への食糧を運んでいる人にすれ違った。北沢コースは山小屋関係者が利用している道のようである。  車に戻って、国道まで戻るのにもうひと頑張りすることになった。北沢の集落から中土駅を目指した方が早そうに思えたので、こちらを走ってみたが、上り下りも多く、道幅も広いというほどでもないので、やはり来馬からの往復の方が正解であった。
 風吹大池は、アプローチの林道が少々長いが、北アルプスにはめずらしい静かな山歩きを楽しめるコースである。

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