苗場山、菱ヶ岳

苗場山
菱ヶ岳


【日時】 2010年10月22日(金)〜24日(日) 2泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 23日:晴 24日:雲

【山域】 苗場山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 苗場山・なえばさん・2145.3m・一等三角点補点・新潟県、長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/岩菅山、苗場山/佐武流山、苗場山
【コース】 苗場山三合目登山口より
【ガイド】 山と高原地図「谷川岳・苗場山・武尊山」(昭文社)
【温泉】 リバーサイド津南 500円

【山域】 関田山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 野々海山・ののみやま・1135.8m・三等三角点・新潟県・長野県
 菱ヶ岳・ひしがたけ・1129.1m・一等三角点補点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/松之山温泉、高田東部/松之山温泉、柳島
【コース】 深坂峠より須川峠の途中より周回
【ガイド】 なし

【時間記録】
10月22日(金) 15:40 新潟=(関越自動車道、越後川口IC、R.117、津南、R.405 経由)=19:30 和山登山口  (車中泊)
10月23日(土) 5:45 和山登山口―6:27 上ノ原分岐―7:01 徒渉点―7:17 尾根上(四合目)―9:12 小赤沢分岐―9:51 苗場山〜10:30 発―11:02 小赤沢分岐―12:40 尾根上(四合目)―13:00 徒渉点―13:30 上ノ原分岐―14:00 和山登山口=(R.405、津南、R.117、平滝、野々海池 経由)=16:30 深坂峠  (車中泊)
10月24日(日) 6:51 深坂峠―7:14 野々海山―7:31 野々海峠―7:57 ゴンドラ駅分岐―8:40 ゴンドラ登山道―8:54 須川峠分岐―9:07 菱ヶ岳―9:19 須川峠分岐―9:35 トレイル分岐―9:45 須川峠―9:52 トレイル分岐―10:35 ゴンドラ駅分岐〜10:48 発―11:09 野々海峠―11:38 キャンプ場―11:48 深坂峠=(野々海池、平滝、R.117、越後川口IC、関越自動車道 経由)=14:40 新潟
 上信越国境にある苗場山は、4キロ四方に及ぶ平らな山頂を持ち、矮小化したオオシラビソの原生林の間に湿原が広がっている。この山の名前は、日本有数の豪雪地の辺境秋山郷を著した鈴木牧之の「北越雪譜」によって世に広められた。登山道は各方面から通じており、和田小屋より神楽峰を経ての祓川コースや、車を利用すると短時間で登ることのできる小赤沢コースの利用者が増えている。

 信越トレイルは、長野・新潟県境に沿って延びる関田山塊に開かれた総延長約80kmの長距離歩道である。標高1000m程の稜線部に続き、古くからの交易路が横断する峠を結んでいる。

 2004年5月に2泊3日で、上ノ倉山から白砂山、佐武流山を経て赤倉山までの残雪期縦走を行った。本当は苗場山まで縦走を延ばしたかったが、日程と体力の関係で、この区間は残されてしまった。秋山郷起点で、佐武流山から苗場山までの縦走を行いたいと思っていたが、その前に和山登山口から苗場山までの登山道を偵察がてら歩く必要があると考えていた。ところが、昨年の9月に苗場山三合目登山口から赤倉山までを往復したことによって、縦走路をつなげることができた。
 紅葉の盛りに、静かな山歩きを楽しむコースを考えていき、この和山コースが思いついたので、出かけることにした。
 今回の山行では、一つ気になることがあった。最近は、熊の出没が異常とも思える頻度で起きており、連日新聞を騒がせている。うるさいので日頃は使わないのだが、ザックにカウベルを付け、加えてiPODに小型スピーカーを取り付けて音楽を流しながら歩くことにした。登山者のいる山で、音楽を流しながら歩くのは、迷惑以外のなにものでもないが、このコースでは、登山者よりも熊の方が出合う可能性が高そうである。
 秋山郷への道は何度も通っているが、山奥で、辿りつくだけでも草臥れる。和山登山口は山荘があり、車中泊には適していないので、少し戻った所で夜をあかした。
 明るくなった所で出発するつもりであったが、秋も深まり、6時近くの歩きだしになった。
 テニスコート脇の林道を進むと、すぐ先で鎖が掛けられて、車の侵入はできなくなっていた。ほぼ水平に進む林道を辿ると、栃川に行き当たった。鉄製の橋が掛けられており、対岸に渡ることができた。
 橋を渡った先で、沢沿いの林道を登っていくと砂防ダムの堰堤下で行き止まりになった。左手の尾根に取り付くはずだと思いながら引き返すと、結局、橋のたもとまで戻ってしまった。よく見ると、小さな標識が、水平方向を示していた。
 導水管からと思われる流れを渡ると、その先の法面の崖下に再び登山標識が置かれていた。崩壊気味の崖を斜上して尾根の末端に上がると、登山道が続いていた。
 この先しばらくは、急斜面の登りが続いた。登山道は落ち葉に隠されていたが、テープが列状に取り付けられていた。  上ノ原方面からの登山道が合わさると、方向を東に変えて、緩やかな登りが続くようになった。谷奥に進んでいき、枝尾根を乗り越すと、沢に向かっての下りになった。
 沢には、徒渉点の印にロープが渡されていた。飛び石伝いに渡ることができたが、もう少し水量が多くなると、靴を濡らす可能性が高くなりそうであった。
 徒渉後は、急な崖の直登になった。ロープが掛けられていたが、泥斜面のトラバースや緑の苔に覆われた岩場の登りがあり、気を抜くことができなかった。
 苗場山から佐武流山への周回を考えると、この斜面を下るのは、テント泊の大荷物で体力を消耗した最後になるので、避けた方が良さそうである。この斜面を登りに使うと、次に問題になるのは水場の問題である。
 尾根上に出ると、四合目の標識が置かれていた。この先は、平太郎尾根と呼ばれる細尾根の登りが続く。途中で急な個所も現れる標高差400mの登りを頑張ることになった。
 ようやく傾斜が緩むと、山頂台地の縁に到着した。針葉樹の広がる台地を進んでいくと、ヨモギドウ沢の源流部の横断になった。ここで水が得られるかと思っていたが、大石が転がる涸れ沢になっていた。その手前で、細い流れがあったが、汲んで飲む気にはなれない淀んだ水であった。
 沢の右岸沿いに登山道が続いた。草原に出ると、草の上には霜が下りて、白く光っていた。左上のピークは、坪場ピークを南から見上げているようであった。小さな草原を辿って、時々見晴らしが開けるのは楽しいが、コースを見失わないように注意が必要であった。
 再び左岸に移り、ヨモギドウ沢の源頭部の窪地に広がる草原を登っていくと、小赤沢からの登山道に飛び出した。メインの登山道ということで、登山者も行き交っていた。音楽を流すのは、ここまでにしてスイッチを切った。
 この秋一番の晴天で、大展望が広がっていた。苗場山の草原の縁に広がる灌木の紅葉は終わっていたが、草原は明るい太陽に照らされて黄金色に輝いていた。坪場の左手には、岩壁を纏った鳥甲山が鋭い稜線を見せていた。その向こうには、白馬連峰や後立山連峰を眺めることができた。妙高・火打連山も青空に浮かんでいた。
 写真撮影のためにしばらく足が停まったが、風景を楽しみながら山頂を目指した。分岐の先しばらくは、岩が露出して足場の悪い区間が続くが、すぐに木道が続くようになる。 昨年歩いた赤倉山の分岐に出て、佐武流山方面への縦走路を目で追った。昨年、赤倉山の山頂直下で足をひねって、ほうほうの体で引き返し、辛い下山になったことも遠い昔のことに思える。
 山頂の三角点を訪れてから、山頂台地を望むテラスに腰を下して昼食にした。秋も深まったせいか、快晴にもかかわらず、登山者は少な目であった。
 写真を撮影しながら、和山分岐まで戻り、その後は再び誰にも合わない道になった。平太郎尾根の下りは、登り以上に急に感じられた。崖を慎重に下って沢に下り立てば、後は問題の無い道になった。
 苗場山から佐武流山への周回は、平太郎尾根を登り使うとして、問題は水場である。龍ノ峰手前の大きな池で水を汲み、浄水器で濾過して使うのが、確実のようにも思われる。
 紅葉の時期ということで、秋山郷への観光客もかなり入り込んでおり、車の往来も多かった。山道の運転に慣れていないドライバーから事故に巻き込まれるのは怖いので、寄り道はせずに秋山郷を後にすることにした。秋山郷では、鳥甲山の紅葉を楽しめるのだが、今回は色づきが悪かった。苗場山までの登山道沿いの紅葉も、今回はあまり良くなかった。
 津南に戻り、駅付属の温泉で汗を流し、コンビニで食料を買い込み、野々海をめざした。
 今回は、深坂峠から須川峠までの信越トレッキングコースを歩き、合わせて菱ヶ岳を登ることにした。最近、新潟山岳会によって選定された「新潟100名山」では、「関田峠〜伏野峠(信越トレイル)」と「伏野峠〜深坂峠(信越トレイル)」の二つが選ばれている。ピークでない信越トレイルが、どうして100名山なのかという疑問が生ずるが、文句は歩いてからのことになる。信越トレイルは、県境ピークがらみで、とぎれとぎれで歩いているが、関田峠から深坂峠までを結ぶことを目標にした。この両脇の、深沢峠から先の雨水山までと、関田峠から鍋倉山までは、ピークハントを目的に歩いている。
 信越トレイルは、車一台では、歩くことが難しい。峠からの往復ということで、関田峠から深坂峠までを三つの区間に分けて、9月12日に関田峠から宇津ノ俣峠までを歩いている。
 夕暮れ間近に、野々海池に到着した。周辺の紅葉は、盛りになっており、薄暗い中でも、紅い色が目に飛びこんできた。
 キャンプ場には灯りがともり、テントも二張り設営されていた。雨水山登山口手前に駐車スペースがあったので、車を停めて寝た。夜は寒く感じられて、冬の訪れが感じられた。
 翌朝はゆっくりと起きて、出発の準備をした。登山者の車が到着して、脇に停まった。出発する様子を見ていると、雨水山を目指していった。信越トレイルが開通した時の雰囲気では、雨水山を目指すものはほとんどいないようだったので、新潟100名山効果が表れているようである。
 峠名が書かれた大きな石碑が置かれた深坂峠から歩き出した。小さなアップダウンがあり、方向も細かく変わるので、現在地が判りにくいコースであった。登山道の周囲のブナ林は紅葉の盛りであった。
 緩やかに登っていくと、三角点の置かれたピークに出た。ここは野々海山と呼ばれるようであった。ピークから下りを続けていくと、車道の通過している野々海峠に到着した。 今日は信越トレイルの往復であるが、野々海峠からは、野々海山の登り返しを避けて、車道歩きでキャンプ場に戻ることができるのはありがたい。
 野々海峠からは、小さなアップダウンが続いた。登山道の北側は崖状で、歩いていくうちに菱ヶ岳と山頂下のゴンドラ駅を眺めることができるようになった。前方には1150mピークが待ち構えており、このピークを越さなければならない。気を引き締めながら歩いて行くと、1131m小ピークで、ゴンドラ駅への登山道が分かれた。一旦大きく下る必要はありそうであったが、須川峠まで進んでから同じ道を引き返すよりは面白そうであった。
 ゴンドラ駅への登山道は、ブナ林の広がる急斜面の下りで始まった。泥斜面で足元が滑りやすかったが、ロープも張られており、一気に高度を下げることができた。
 色づいたブナ林の台地に下りると、沢を横断しながら、西のゴンドラ山頂駅に近付いていった。このコースは、「ブナ林と湿原コース」と書かれていたが、途中で分かれるブナ林遊歩道は立ち入り禁止になっており、また湿原遊歩道は少し入ってみたが草が茂っていたので引き返した。
 ゴンドラ山頂駅手前で、菱ヶ岳への登山道にのったので、ゴンドラ山頂駅にはよらずに菱ヶ岳山頂をめざした。
 沢沿いの登りが続いた。稜線近くにもかかわらず豊富な水量である。信越トレイルを歩いて、須川峠付近で幕営するならば、この水場が利用できる。
 須川峠への分岐からは、菱ヶ岳の山頂をめざした。急な登りであるが、標高差70mほどなので、じきに山頂に到着する。
 菱ヶ岳の山頂は、一等三角点ピークにふさわしく、南側を除く三方の展望が開けている。キューピットバレーのスキー場は眼下に広がり、妙高連山や米山を望むことができた。山麓のブナ林の紅葉も美しかった。
 展望をひと通り楽しんで後は、分岐に戻り、須川峠への古道に進んだ。水平の続く山道の周辺には見事なブナ林が広がっている。信越トレイルの問題点は、せっかくブナ林の広がる山塊を抜けていくにもかかわらず、登山道の通じている頂稜部は、気象的な問題で灌木や笹藪が広がっていることである。この須川峠への古道と菱ヶ岳は、寄り道をするべきであろう。
 トレイル分岐から須川峠まで進んでから引き返した。分岐からは、大きな登り下りで、ピークを越えていくことになった。二人連れを追い越し、ゴンドラ分岐まで引き返すと団体に追いついた。本格的な山登りではなくトレッキングコースであるためか、かなりの年配者も混じっていた。個人的には、トレイルは小さなアップダウンが続き、通常の登山よりもかえって疲れるような気がする。
 団体には先に行ってもらい、分岐でひと休みすすことにした。
 分岐からは、意外に短い時間で野々海峠に戻ることができた。キャンプ場へは車道歩きになったが、この車道沿いの紅葉はひときわ美しかった。
 キャンプ場に戻ると、一般の観光客の集団がいた。キャンプ場に入ると、すぐに脇の湿原への道が分かれた。木道も敷かれた湿原で、縁の灌木が美しく紅葉していた。車道脇の湿原だが、名前が知られていないのは荒らされずに良いことである。草原の中に、コンクリート製の流し跡があることから、昔はこの湿原の中をキャンプ場をしていたのかもしれない。
 木道を進み、灌木帯の中をひと登りすると、車の近くで車道に飛び出した。
 菱ヶ岳は、一般にはキューピットバレイを起点とするが、野々海峠から歩き出すのも、面白いコースであることが判った。

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