障子ヶ岳、鷹返山、楯山、月山森

障子ヶ岳
鷹返山と楯山
月山森


【日時】 2010年10月8日(金)〜11日(月) 3泊3日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 9日:曇り後雨 10日:曇り 11日:曇り時々雨

【山域】 朝日連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 障子ヶ岳・しょうじがだけ・1481.6m・三等三角点・山形県
【コース】 南俣沢出合より周遊
【地形図 20万/5万/2.5万】 村上/大鳥池/大井沢
【ガイド】 新・分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「朝日連峰」(昭文社)
【温泉】 大井沢温泉湯ったり館 300円

【山域】 船形連峰周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 鷹返山・たかかえしやま・360m・なし・山形県
 楯山・たてやま・209.8m・三等三角点・山形県
【コース】 南沢出合より周遊
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/楯岡/楯岡
【ガイド】 なし
【温泉】 鳥海山荘 500円

【山域】 鳥海山 【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
【コース】 滝ノ小屋コースより千畳ヶ原周遊
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/鳥海山、大沢口/鳥海山、湯ノ台
【ガイド】 山と高原地図「鳥海山、月山」(昭文社)

【時間記録】
10月8日(金) 14:30 新潟=(日本海東北自動車、荒川胎内IC、R.113、赤湯、R.13、山形上山IC、東北中央自動車道、山形自動車道、月山IC、大井沢 経由)=19:30 南沢出合  (車中泊)
10月9日(土) 4:55 南俣沢出合―5:14 林道終点―6:48 大クビト―7:22 紫ナデ―8:23 障子ヶ岳―9:18 粟畑―12:02 登山口―12:06 南沢出合=(大井沢、山形自動車道、東北中央自動車道、東根IC、R.13 経由)=16:00 東沢公園  (車中泊)
10月10日(日) 7:23 バラ園駐車場―7:45 鐘楼―7:55 鷹返山(奥ノ院)―8:44 東沢稲荷―8:58 展望台コース登山口―9:29 楯山〜9:48 発―9:56 七曲コース登山口―10:20 バラ園駐車場=(R.13、金山、R.344、上青沢、草津、湯ノ台 経由)=15:00 滝ノ小屋登山口  (車中泊)
10月11日(月) 6:33 滝ノ小屋登山口―6:52 滝ノ小屋―7:38 河原宿小屋―8:19 月山森―8:53 河原宿小屋―9:36 滝ノ小屋―9:52 滝ノ小屋登山口=10:06 のぞき―10:37 鶴間池〜10:40 発―11:07 のぞき=(湯ノ台、草津、八幡、酒田港IC、山形自動車道、鶴岡IC、R.7 経由)=14:50 新潟
 障子ヶ岳は、朝日連峰の寒江山付近から東に延びた支綾線上にあり、障子を巡らしたような岩壁を有する鋭峰である。朝日連峰の主稜線から離れた位置にあるため、連峰を通して眺めることができる。

 バラ園で有名な村山市の東沢公園の東西に並ぶ山が、鷹返山と楯山である。鷹返山は、虚空蔵尊の奥の院があり、また楯山の山頂には最上氏の山城が置かれていた。

 鳥海山は、日本海にその裾野を洗う成層火山であり、秀麗な山容から出羽富士あるいは秋田富士と呼ばれている。北関東・東北では燧ヶ岳に次ぐ標高を持ち、山頂部は複式火山特有の変化に富んだ地形になり、花の山としても名高い。月山森は、登山者の多い湯ノ台道途中の河原宿の北西に位置するピークである。また、鶴間池は、鳥海青沢公園線途中ののぞきから見下すことができるが、そこに至るには急斜面の上り下りが必要になる秘境になっている。

 体育の日がらみの三連休は、紅葉の山を楽しむ絶好のチャンスである。ただ、今年の連休の天候は、低気圧を伴う前線が通過し、最終日の天候だけが期待できそうであった。事前には、ひさしぶりに大朝日岳を登ろうと思っていたが、ロングコースのためよほどの快晴に恵まれるという保証がないかぎり歩く気にはなれない。
 結局、朝日連峰の障子ヶ岳と月山あるいは鳥海山をメインの目標にして、二日目の雨の日には、山形県内の低山を登ることにして出かけた。
 金曜日の午後、早めに家を出て障子ヶ岳の登山口の大井沢を目指した。新潟から大井沢へは朝日連峰を挟んだ反対側にあり、山形経由か鶴岡経由かに迷うことになる。現在、山形県内の高速が無料のため、山形経由で入ることにした。
 途中で眺めた夕暮れ時の飯豊や朝日連峰の稜線は、雲に覆われていた。翌日の天気予報は、曇り後雨というもので、速攻で歩く必要がある。
 月山ICで高速を下りて大井沢に向かった。大井沢温泉湯ったり館の手前で、登山口への林道が始まるが、標識が置かれてて判りやすくなっている。未舗装の林道を進んでいくと、二又に出て、右手の沢に向かって下っていく。下った所が南俣沢出合で、直進して橋を渡って進めば障子ヶ岳登山口、橋の手前で左に進めば天狗角力取山登山口になる。左に曲がった先にスペースがあったので、車を停めた。大井沢川にかかる橋は欄干がないので、夜中に車で渡るのは怖い。天狗角力取山登山口側は、大井沢川と南俣沢に挟まれた河原になるが、登山口までの間に駐車スペースは多い。
 朝食は、ウイダーinゼリーで手早く済ませて、ヘッドランプを頼りに出発した。夏山なら普通に歩きだす5時であっても、秋になってまだ明るくなっていない。林道の終点へは20分かかるが、まだ暗いままであった。登山道に入り、出合吹沢を渡ると、尾根の急登が始まった。ひと汗かくと、ようやくヘッドランプも仕舞うことができた。
 ブナ林に囲まれた尾根を登っていくと、尾根も痩せて前方の展望が広がった。歩き始めは、山の天気の様子は判らなかったが、稜線は厚い雲に覆われていた。天気が崩れるのも早そうであった。
 ザレて足元が悪く、ロープもかかる急登が始まった。先回訪れたのは2005年6月24日で、この時はヒメサユリの花を楽しみながら登ることができたが、今回は黙々と登り続けることになった。
 1196m小ピークの脇を通過すると一旦下りになり、鞍部には大クビトの標識が置かれていた。この先も登りは続いたが、傾斜は少し緩くなってきた。谷を取り巻く稜線に出たためか、風も強くなり、山シャツの上にさらに雨具の上着を着込み、毛糸の帽子もかぶる必要が出てきた。猛暑に悩まされていたのも、ついこないだの話である。
 最初の目標地点の紫ナデに到着したが、この山の楽しみである障子ヶ岳の岩壁や朝日連峰の眺めは閉ざされていた。周囲の灌木はツツジやカエデが多く、美しく紅葉しているが、ガスのために見えるのは身の回りだけであった。
 風は霧雨を運んできたが、本降りにはなっていないので、障子ヶ岳へと先に進んだ。幸い、紫ナデから先は、そう大きな標高差ではない。
 障子ヶ岳の山頂に到着したが、風も強く、休む気にもなれず、そのまま歩き続けた。今回は、せっかくの紅葉の盛りの山であるが、体力維持のための訓練山行になってしまった。
 障子ヶ岳から粟畑の間も、小さなアップダウンがあるだけで、歩きやすい。途中の障子池は、茶色に染まった草原に覆われていた。
 天気は悪くなる一方のため、今回は天狗角力取山には寄らず、粟畑から下ることにした。以前あった粟畑の迂回路は保護のために廃止になっており、その代わりにか、粟畑からの下山路は石畳状に整備されていた。整備は有難いのだが、濡れた石の上は苔がついていることもあって滑りやすく、しばらくは足元に注意しながらの下りが続いた。
 尾根沿いの下りから竜ヶ池方面へ方向を変えるところで、泊り装備の若者グループとすれ違った。連休を利用して朝日連峰の縦走を行う計画なのかもしれないが、この先の天気予報からすれば苦労しそうである。
 下った後は、水場になる沢を横断するトラバース道に変わる。この付近は、地形図に記されている破線と実際の登山道は異なっている。
 ブナ林の紅葉が美しくなったので、腰を下してひと休みした。朝日連峰の稜線を彩る灌木の紅葉の眺めは素晴らしいが、ブナ林の紅葉は雨の日でも美しい。
 どこがピークか判らない長尾根の焼峰に出て、後は下りの足を速めることになった。雨も本降りになってきた。このような天気の状態でも、登ってくる数組の登山者とすれ違った。
 最後にカラマツの植林が行われた台地を進み、砂防ダムを右に見下してからひと下りすると、天狗角力取山の登山口に到着する。ここから車を停めた南俣沢出合までは近い距離にある。
 車に戻り、林道入口近くの大井沢温泉湯ったり館で汗を流した。温泉から出ると、雨は本降りになっていた。車を走らせて、寒河江SAで昼寝をして様子見をした。午後遅くなって、雨は一旦止んだ。周囲の山の稜線部は雲に覆われているので、二日目の山は低山で済ますことにして村山市の東沢公園に隣接する鷹返山と楯山を登ることにした。
 東沢公園はバラ園で有名だが、花の時期は終わっており、公園は無料開放になっていた。広い駐車場が設けられていたので、夜をすごしたが、朝方に警察のパトロールによる不審尋問で起こされた。これまでも不審尋問には何度もひっかかっているが、山形県内が多い気がする。
 鷹返山へは虚空蔵尊の参道を使えば良いことは判っていたが、楯山への登山道は何本もあるようだが、はっきりしていなかった。駐車場向かいの大沢貯水場の堰堤を渡った先に楯山の案内図があるのが見えたので、近寄って確かめた。大沢溜池の堰堤を渡った先から展望台コースを登り、七曲コースを下れば良いことが判った。まずは、鷹返山を登ることにして駐車場に戻った。
 バラ園入口の山側に、虚空蔵尊参道の標識があった。参道を進むと赤い鳥居があり、ここから先は石段の登りになった。急坂が続き、なかなかきつい登りであった。一般の参拝客では、休み休みしながら登ることになり、ベンチも各所で置かれていた。
 尾根沿いの登りになってようやく傾斜が緩むと、虚空蔵尊の本堂に到着した。その先、もうひと登りすると、鐘楼が現れた。鐘楼までは幅広の参道であったが、この先は登山道に変わった。斜面はかなりの急傾斜であったが、大きなジグザグを描くように道が付けられており、順調に登り続けることができた。
 下方に遠ざかった鐘楼から鐘の音が聞こえてきた。この鐘は、朝早くにも鐘の音が聞こえており、住職が突くというよりは、健康登山で登ってきた地元の人が突いているようであった。
 鷹返山の山頂はなだらかで、その中央に奥の院の祠が置かれていた。祠の前には、お賽銭を入れるための穴が開いた岩が置かれていたが、裏を見ても出口が見当たらないのは不思議であった。陶器の貯金箱のように、お金を取り出すのに、岩を割るわけでもないだろう。もしかすると、岩を持ち上げると、下に穴が開いているのであろうか。
 下山は、北に向かう尾根道に進んだ。草がかぶり気味であったが、踏み跡はしっかりしていた。尾根が西に方向を変えると、東沢溜池が下に見えてきた。
 215m標高地点で、踏み跡が二手に分かれた。尾根通しに下れば東沢溜池の西寄りに出ることは確実であったが、バラ園方向に折り返す道の方がはっきりしていた。メインのように思えたバラ園の方に向かう道に進んだが、これは失敗であった。
 山腹をトラバースする道が続いた。沢が入るたびに大きく曲がるため、歩く距離は長くなった。一旦バラ園脇に出たが、先に進むとバラ園は下に遠ざかった。結局、虚空蔵尊の西参道入口になる、赤い鳥居脇の緑地の上部にある東沢稲荷に出た。
 咲き残りのバラを眺めながらバラ園を通り抜け、東沢溜池の堰堤を渡った。湖畔の道を進むと、展望台コース登山口に出た。緑地帯から尾根に向かうと、登山道を草が覆うようになった。ひと登りで、コンクリートの土台が残る稜線上に出た。バラ園や鷹返山、甑岳を眺めることができた。
 展望台から進むと航空障害灯の鉄塔があり、この一帯は東楯山と呼ばれるようであった。一旦下った後に登り返したピークは中楯山と呼ばれ、横掘や土塁跡が広がっていた。 七曲コースが合わさる十字路に出て、そこからはひと登りで楯岡城跡のある西楯山の山頂に到着した。台地になった山頂には、城跡の石碑が置かれ、木の展望台が設けられていた。この山城は、最上氏のものであったようである。
 展望台の上に出ると、村山の市街地の眺めが広がっていた。天気予報にもかかわらず薄日のさす曇り空であったが、朝日連峰や葉山の稜線は厚い雲に覆われていた。
 下山は、手前の十字路に戻り、七曲コースを下った。七曲という名前であるが、溜池側はまっすぐな道が続き、すぐに溜池脇に下り立った。溜池脇の道を辿ると、すぐに展望台コースの登山口に戻ることができた。
 楯山を登り終えた時間は早かったが、雨あがりの歩きで服が濡れてしまっているため、他の山へと移動する気持ちもなくなり、登山は終わりにした。
 金山から鳥海山の湯ノ台に向かい、ゆっくりと温泉に入った。連休にもかかわらず、独り占めの温泉であった。雨のために、紅葉見物客も出控えてしまったようである。
 滝ノ小屋登山口に向かうと、ガスがかかって車のライトを点灯しながらの運転になった。車道脇の木立は美しく紅葉していた。車道終点の駐車場は、悪天候にもかかわらずかなりの車が停められていた。登山口の駐車場は、夜中や早朝に到着する車の騒音がうるさいので、一段下の駐車場で夜を過ごした。日が暮れると、本降りの雨になっていた。
 当初の予定では、先回と同じような鳥海湖を回る周回と思っていたが、この分では無理そうに思えた。
 翌朝は、霧雨状態であったが、雲の切れ目ものぞいていた。駐車場に移動して様子見をしていると、周囲の展望も広がってきた。鳥海山の山頂部は無理そうなので、月山森を目的地として登ることにした。
 早朝から到着していた登山者が歩きだすのを見送ってから歩きだした。雨上がりの歩きということで長靴登山としたが、大正解であった。
 登山口から滝ノ小屋までは、石畳状に整備された道である。滝ノ小屋の先で、沢の徒渉が二ヶ所現れるが、増水して、登山道も沢状になっていた。長靴なので、問題なく水の中を歩けたが、通常の登山靴では、水を避けて歩くのに苦労する状態になっていた。
 その先は、八丁坂と呼ばれる急坂であるが、露出した岩の間が水溜りになっており、ここも歩くのに苦労した。  雲が上がってなだらかに広がる稜線が紅葉に彩られているのも見え始めてきた。虹も現れたが、朝の虹は下り坂の印ということで、あまり喜べなかった。
 急坂を登りきって台地に出ると、河原宿小屋に到着する。鳥海山の頂上部は雲に隠されており、これ以上の天気の回復は期待できそうもなかった。
 予定通りに月山森に向かうことにした。月山森への登山道に進み、茶色に染まった草原の写真を撮っていると、単独行が二人追いついてきた。不思議に思ってどこへ行くのか聞いてみると、新山とのことであった。先行者を見て、ついてきたとのことであった。違う道であると教えて、引き返させた。河原宿小屋から先は、雪渓跡を辿るのでルートが判り難いはずであるのだが、不安の残る登山者であった。
 木道を進んでいくと、月山森の下に出る。標識に従って踏み跡に進むが、歩く者も少ないためか、道を辿るのも難しくなっていた。山頂近くは、笹が登山道を覆い、ストックで笹を分けて道を確かめながらの歩きになった。月山森の山頂は、台地状で、慰霊碑が置かれているものの、山頂標識のようなものはない。ガスが一瞬晴れて鳥海山の山頂部が見えたが、すぐに隠されてしまった。
 今日は、ここまでで充分ということで下山することにした。歩いている間に、鶴間池を訪れてみようという気になっていた。
 下山途中でも、大勢の登山者とすれ違ったが、山頂まで行きつけるのか疑問の者も多かった。
 登山口に戻り、車を走らせた。少し下った所にのぞきと呼ばれる展望地がある。駐車スペースがあり、何台もの車が停められていた。三脚を立てて、鶴間池のシャッターチャンスを待っているカメラマンが三名もいた。
 鶴間池への登山標識に従って、登山道に進んだ。しばらくは尾根沿いの緩やかな下りであったが、左に曲がると、ロープや金属梯子に頼る急降下になった。途中で、避難小屋の装備品に使うのか、長い板を持った一団を追い抜いた。標高差120mほどの急降下で、距離は短いものの、登山装備でないと歩けないコースであった。
 谷間に下りて、沢を仮橋で渡ると、鶴間池の畔に出た。静かな湖面には、草の生えた小さな島が浮かび、紅葉の林を水面に映していた。鶴間池の愛好家から話を聞いたことはあったが、確かに一度見るとお気に入りになる風景であった。すぐ先のブナ林の中に避難小屋が佇んでいた。
 鶴間池には、天気の良い時にまた訪れてみたいと思いながら、急坂を引き返した。

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