蝶ヶ岳、王ヶ頭、茶臼山

蝶ヶ岳
王ヶ頭、茶臼山


【日時】 2010年8月20日(金)〜22日(日) 前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 21日:晴 22日 晴

【山域】 常念山脈
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
蝶ヶ岳・ちょうがたけ・2677・なし・長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高山/松本、上高地/信濃小倉、穂高岳
【コース】 三股より
【ガイド】 アルペンガイド「上高地・槍・穂高」(山と渓谷社)、山と高原地図「上高地・槍・穂高」(昭文社)
【温泉】 四季の郷 500円

【山域】 美ヶ原
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 王ヶ頭・おうがとう・2034.1m・三等三角点・長野県
 茶臼山・ちゃうすやま・2006.11 mm・三等三角点・長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 長野/和田/山辺、和田
【コース】 三城いこいの広場
【ガイド】 アルペンガイド「美ヶ原・霧ヶ峰」(山と渓谷社)、山と高原地図「八ヶ岳・蓼科・美ヶ原・霧ヶ峰」(昭文社)

【時間記録】
8月20日(金) 19:00 新潟=(北陸自動車道、長野自動車道、豊科IC 経由)
8月21日(土) =1:00 三股駐車場  (車中泊)
4:25 三股駐車場―4:37 三股―5:54 まめうち平―7:45 最終ベンチ―8:25 蝶ヶ岳〜9:50 発―10:13 最終ベンチ―11:30 まめうち平―12:30 三股―12:45 三股駐車場=(R.147、松本 経由)=16:00 三城いこいの広場  (車中泊)
8月22日(日) 6:35 三城いこいの広場―7:02 広小場―7:58 百曲園地―8:16 美の塔―8:48 王ヶ頭〜9:05 発―9:47 百曲園地―10:50 茶臼山―11:05 避難小屋―11:29 管理道―11:55 三城いこいの広場=(松本、松本IC、長野自動車道、北陸自動車道 経由)=16:00 新潟
 常念山脈は、最高峰の大天井山から徳本峠に至る山稜で、安曇野から見ると、槍穂高連峰を隠すように、その東に広がっている。蝶ヶ岳は、その盟主ともいえる常念岳の南に隣りあうピークで、山頂一帯はなだらかな稜線が続き特徴のある姿をしていないが、槍穂高連峰が目の前に広がる展望は素晴らしい。

 美ヶ原は、松本の東に、東西5km、南北8kmにわたって広がる高原である。日本百名山にも選ばれているが、高原一帯に牧場が広がるのは良いにしても、最高点の王ヶ頭にはアンテナ群やホテルに占領されて、車道も通じている。その中にあっても、下から登る登山道は維持されており、茶臼山のように自然の姿が残されている山もある。

 例年に無い猛暑が続いており、登る山も暑さ対策を考える必要がある。標高の高い山を考えていき、北アルプスのうち蝶ヶ岳を登ることにした。蝶ヶ岳には、これまで二回山小屋泊りとテント泊で登っているが、今回は日帰りで登ることにした。コースタイム的に、日帰りに問題はないが、山頂に到着する時間が問題である。蝶ヶ岳の魅力は、山頂からの槍・穂高岳の眺めであるが、昼近くになれば雲が出て展望は閉ざされてしまう。10時前には山頂に到着したく、それに合わせた早立ちが必要になる。
 高速道の週末割引の関係で、高速を土曜日に下りる必要があるが、豊科ICから登山口の三股駐車場までは比較的近いのはありがたい。
 三股駐車場は、公称70台の広い駐車場が設けられていた。外周部には車がほぼ満杯の状態で並んでいた。うまく平らなスペースを見つけて車を停めた。到着したてで、仮眠のためのテントを張っている者も数組いた。
 翌朝は、目覚ましをかけて4時前に起床。昨晩寝たのが遅くて睡眠時間が短いため、頭がもうろうとした状態で歩きだした。小屋泊りの者が多いのか、歩きだしている者はいなかった。
 ヘッドランプの灯りを頼りに、未舗装の林道を歩いた。ひと歩きしたところで林道の広場に到着した。登山届のポストが置いてある管理小屋も設けられていた。
 登山道に進むと、すぐに右手に常念岳への道が分かれた。蝶ヶ岳へは、左手の本沢沿いの道に進む。橋を渡ると、尾根の取り付きとなり、力水の清水が現れる。登りはそのまま通過したが、下山時に飲むと冷たく美味しい水であった。この清水が登りの途中ならありがたいのだが、取り付きにあるので、残念ながら最後の水場としては利用価値が少ない。
 ここからはひたすら登りが続くようになる。幸い、小さなジグザグが切られて歩きやすい道である。
 ヘッドランプを仕舞ってからしばらくすると、真っ赤な太陽が昇ってきた。木陰から日向に出ると、暑さが堪えるようになった。
 ようやく傾斜が緩むと、まめうち平に出た。登りの途中の中間地点に到着してひと安心となったが、この先の方がきつい登りが続いた。しばらくは台地の緩やかな登りが続いたが、じきに急斜面に行き当たり、右方向にトラバースを交えながらの登りに変わった。
 トリカブトの花が咲き乱れる草付きが現れると、常念岳への稜線の眺めも広がり、山頂まであともう少しということが判った。
 最後のベンチに到着して、ひと安心ということになったが、ここからの最後の登りはきつく感じられた。韓国旅行もあったりて、二週続けて充分な山歩きを行っていなかったためか、足が重く感じられた。
 幅広の稜線に到着すると、小屋がまず目の前に現れた。展望を期待して小屋脇の高まりの蝶ヶ岳の山頂を目指した。
 とりあえず山頂を踏んだ後に、槍・穂高岳の眺めの良い場所を選んで、ガレ場に腰を下した。槍・穂高岳の上高地側からの登山道を目で追うことができ、涸沢ヒュッテ、奥穂高山荘、北穂山荘、殺生ヒュッテ、槍岳山荘といった山小屋もはっきりと見分けることができた。焼岳や乗鞍岳も眺めることができる。展望を楽しんでいるうちに、早くも常念岳方面の稜線はガスに覆われてしまった。幸い、ガスは稜線でとまって、槍・穂高方面の眺めは開けたままであった。
 大汗の喉の渇きをいやすためにビールを飲んだが、一気に回って睡魔がおそってきた。ザックを枕にしばらく横になった。
 常念岳方面の稜線を少し歩こうかと思ったが、ガスが上がってきていたため、小屋脇の展望盤まで進んでから下りに移った。
 下りでは、大勢の登山者とすれ違ったが、いちように疲れた顔をしていた。ガスがでてきたせいか、気温はさほど上がらないのには助けられた。
 駐車場に戻ると、駐車場にあふれた車が、かなり手前まで路肩に並んでいた。
 足も疲れていたため、翌日は、美ヶ原を軽く歩いて帰宅することにした。下界は猛暑になっており、低い山では夜を過ごすのに大変だが、美ヶ原は車が高い所まで通じている。 以前に行った日本百名山巡りでの美ヶ原は、常念ヶ岳から蝶ヶ岳へ周回し、蝶ヶ岳下山後に車で移動して美ヶ原高原の駐車場から王ヶ頭に登って登頂ということにした。今回は、まじめに下から登ることにして三城を目指した。
 登山口の三城いこいの広場に到着してみると、駐車場は夜閉鎖されてしまうことが判った。先に進んで適当な路肩広場をみつけて夜を過ごした。
 朝になってから三城いこいの広場に移動してから歩き出した。今回の目標は、茶臼山であるが、三城いこいの広場からはいくつもの登山道が開かれており、迷ってしまう。まずは広小場に出て、百曲がりを登ることにした。管理棟の左脇から沢沿いの登山道に進んだ。今は使われなくなった牧場の縁を緩やかに登っていくと、オートキャンプ場の中に出た。車道に一旦出てから左にこれを少し辿った後に、再び登山道の歩きになった。
 緩やかな登りが続いた。山道が数か所で分かれたが、まっすぐに進んだ。広小場は、草地の広場になっており、この脇まで車で入れるようであった。テントが二張り設営されていた。
 広場の左手から、百曲と呼ばれる登りが続いた。地図上ではかなりの急斜面であるが、カラマツ林の中の大きなジグザグ道で、無理なく歩くことができた。汗も噴き出てきて、本格的な登りになった。
 周囲の木立の背も低くなって、美ヶ原の台地までもう少しかと思われる頃、パイプが流れ出る水場に到着した。飲んでみると、冷たく美味しい水であった。歩きやすい登山道に加えてこの水場。百曲は良いコースである。
 茶臼山からの稜線の眺めが広がって、台地の縁を見上げるようになると、う回路と直登の分岐に出た。ガレ場を急登すると、ようやく百曲がり園地と呼ばれる台地の縁に出た。空が一気の大きく広がった。
 王ヶ頭への道が左に分かれたが、まずは塩くれ場から美ノ塔をめざした。先回の訪問でも、美ノ塔は訪れていない。
 左右には牧場が広がり、牛がのんびり草を食んでいた。広大な台地の向こうには、王ヶ頭が、山頂にアンテナを並べた姿を見せていた。その左手には、槍・穂高の稜線が姿を見せていた。
 牧場の中には砂利道が通じているが、王ヶ頭山頂のホテルと山本小屋の駐車場を結ぶシャトルバスが時折り行き来していた。僅かな距離なので、歩けば良いと思うのだが。
 広大な牧場の中に美ノ塔が立っている。この塔には、尾崎喜八による「美ヶ原熔岩台地」の詩のレリーフが取り付けられている。

 登りついて不意に開けた眼前の風景に               
 しばらくは世界の天井が抜けたかと思う              
 やがて一歩を踏みこんで岩にまたがりながら            
 此の高さにおける此の広がりの把握に尚もくるしむ         
 無制限な おおどかな                      
 荒っぽくて 新鮮な                       
 此の風景の情緒はただ身にしみるように本源的で          
 尋常の尺度にはまるで桁がはずれている              
 秋が雲の砲煙をどんどん上げて                  
 空は青と白との目も覚めるだんだら                
 物見石の準平原から和田峠の方へ                 
 一羽の鷲が流れ矢のように落ちていった   

 下から登ってくると、確かに「世界の天井が抜けたかと思う」という感じを味わうことができる。
 今回は、美ヶ原のうち茶臼山が目的であったが、王ヶ頭を眺めると、やはりそこまで足を延ばしたくなった。牧場に遊ぶ牛や馬を眺めながら王ヶ頭をめざした。
 王ヶ頭は、アンテナが並び、ホテルが立てられて、登山の対象とは言いにくくなっている。ホテルの脇を抜けて裏手に出ると、露岩があり、王ヶ頭の山頂標識が置かれていた。隣りの王ヶ鼻の向こうに槍・穂高の眺めが広がっていたが、山頂部はすでに雲に隠されていた。朝食を取りながら腰を下してしばらく休んだ。
 百曲園地へは、登山道を歩いて戻った。台地の縁に続く、展望の良い道であった。王ヶ頭の山頂一帯は、マツムシソウやウメバチソウの花によるお花畑になっていた。
 百曲園地から塩くれ場に少し進んだ所の牧柵の隙間から、茶臼山に向かった。牧場の中の踏み跡を辿る歩きになった。再び牧柵を抜けると、茶臼山への登りが始まった。そろそろ足も疲れてきたが、登りはそう長くはなく、茶臼山の山頂に到着した。
 ガスが出てきて遠望は利かなくなっており、茶臼山山頂からの展望の状態は確かめることはできなかった。
 茶臼山からの下りは、三本のコースが設けられているようであった。ガイドブックに従い、尾根の一番下まで下るコースを歩くことにした。少し下ると、山荘が現れたが、営業は停止していた。位置的にも、営業は難しそうである。
 尾根は刈り払いも行われていたが、中央コースを分けると、歩く者が少なそうな感じになった。
 小ピークに登り返すと、三角屋根が崩れ込んでいる避難小屋が現れ、その先で尾根から分かれて下る道が始まった。
 カラマツ林の中のジグザグの下りになった。最後は車道に飛び出したので、そのまま車道歩きで車に戻った。後で地図を確認すると、広小場経由で歩いた方が少し近かったようである。
 美ヶ原は、やはり下から汗を流して登らないと、その魅力は味わえないことを再確認することになった。

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