早池峰山、岩手山、月山

早池峰山
岩手山
月山


【日時】 2010年7月16日(金)〜19日(月) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行 
【天候】 16日:曇り 17日:曇り 17日:曇り

【山域】 早池峰山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 早池峰山・はやちねさん・1913.6m・一等三角点本点・岩手県
 剣ヶ峰・けんがみね・1827m・なし・岩手県
【地形図 20万/5万/2.5万】 盛岡/早池峰山・川井/早池峰山、高檜山
【コース】 河原坊より小田越
【ガイド】 アルペンガイド「八甲田・白神・早池峰」(山と渓谷社)、新分県登山ガイド「岩手県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「栗駒・早池峰」(昭文社)
【費用】 シャトルバス 往復1200円
【温泉】 東和温泉 600円

【山域】 岩手山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 犬倉山・いぬくらやま・1408m・なし・岩手県
 姥倉山・うばくらやま・1517.3m・三等三角点・岩手県
 黒倉山・くろくらやま・1570m・なし・岩手県
 鬼ヶ城・おにがじょう・1841m・なし・岩手県
 岩手山・いわてさん・2038.2m・一等三角点本点・岩手県
【コース】 網張温泉より
【地形図 20万/5万/2.5万】 秋田、盛岡、/雫石、盛岡、沼宮内、八幡平/篠崎、松川温泉、大更、
【ガイド】 新・分県登山ガイド「岩手県の山」(山と渓谷)、山と高原地図「岩手山・八幡平」(昭文社)
【温泉】 網張温泉 500円

【山域】 出羽山地
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 月山・がっさん・1984m・なし(1979.5m・一等三角点補点)・山形県
【コース】 ネイチャーセンターより
【地形図 20万/5万/2.5万】 村上、仙台/湯殿山、月山/湯殿山、月山
【ガイド】 アルペンガイド「鳥海・飯豊・朝日」(山と渓谷社)、分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「鳥海山、月山」(昭文社)
【時間記録】
7月16日(金) 15:30 新潟=(磐越自動車道、東北自動車道、釜石自動車道、東和IC、大迫、早池峰ダム 経由)
7月17日(土) =0:50 岳 (車中泊)
5:30 岳=(シャトルバス)=5:50 河原坊〜6:00 発―6:47 頭垢離―8:37 早池峰山〜8:55 発―9:09 剣ヶ峰分岐―9:50 剣ヶ峰―10:40 剣ヶ峰分岐―11:11 五合目―12:02 小田越〜12:12 発=(シャトルバス)=12:40 岳=(早池峰ダム、大迫、東和IC、釜石自動車道、東北自動車道、盛岡IC、R.46、繋、小岩井農場 経由)=15:00 網張温泉  (車中泊)
7月18日(日) 5:10 網張温泉―6:34 リフト終点―6:52 犬倉山〜7:00 発―7:41 姥倉山分岐―8:11 切通―10:22 不動平―11:00 岩手山〜11:18 発―11:50 不動平―12:41 お花畑分岐―13:57 切通―13:50 黒倉山分岐―14:00 黒倉山〜14:05 発―14:08 黒倉山分岐― 14:24 姥倉山分岐―14:35 姥倉山―14:48 姥倉山分岐〜14:52 発―15:40 リフト終点―16:27 網張温泉=(小岩井農場、繋、R.46、盛岡IC、東北自動車道、山形自動車道、月山IC、志津 経由)=22:30 ネイチャーセンター  (車中泊)
7月19日(月) 4:40 ネイチャーセンター―5:20 大門海分岐―6:28 装束場―7:13 金姥―7:37 牛首―8:20 月山―9:05 牛首―9:28 リフト分岐〜9:45 発―10:39 姥沢―11:13 遊歩道分岐―12:00 ネイチャーセンター=(R.112、湯殿山IC、山形自動車道、鶴岡IC、R.7 経由)=16:30 新潟
 早池峰山は、女人禁制の山岳宗教の山として古くから開かれ、登山口には宿坊が並び、柳田国男の遠野物語と結び付いて、どこか謎めいた遥かみちのくの山といったイメージが強い。しかし、最近では、日本百名山あるいは、ハヤチネウスユキソウに代表される花の名山としての人気が高まっている。

 岩手山は、石川啄木によって「ふるさとの山に向ひて 言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」と歌われているように、盛岡の心の山であり、昔からの信仰の山である。岩手山は、南部富士という名で知られるように独立峰であるが、南部の片富士とも呼ばれるように、山頂部は爆発によって複雑な地形になっており、裏岩手縦走路と呼ばれる稜線が八幡平へと続いている。

 月山は、羽黒山、湯殿山と合わせて、出羽三山と呼ばれ、古くからの信仰の山である。なだらかな山頂を持ち、日本海近くの豪雪地にあることから、夏遅くまで残雪を抱き、高山植物が豊富なことから人気の高い山になっている。

 海の日の休日は、毎年梅雨明けのギリギリのタイミングになる。今年も、西日本で局地的豪雨で大きな被害が出ているが、休日の天気は回復するという。夏山開始のテント泊山行も考えていたが、局地的豪雨による林道の不通も考えなければならない。結局、安直なきらいはあるが、東北の山巡りに出かけることにした。
 まずは、先週も予定していたが、天気が悪そうなため計画を変更してしまった早池峰山を登ることにした。花の状態がどのようなものなのか知っておきたかった。続いて、岩手山と月山を登ることにした。何度も登っているが、まだ歩いていないコースも多い。
 家を早めに出発し、一路東北道を北上した。土曜に入ったところで高速を下りて、一般道をひと走りして岳の駐車場に深夜に到着した。
 岳の駐車場には三台の車が停まっているだけであった。この先、一般車は午前5時から午後1時までの間、通行規制がかけられている。この時間は通行規制がないため、一般車は、河原坊の駐車場まで進んでいるようであった。ただ、道は狭いため、シャトルバスを利用した方が気楽である。
 5時30分の始発は、二台が出発した。先回に比べて乗客は少なく、全員が座ることができた。河原坊でバスを下りたが、ほとんどの乗客は、小田越まで乗っていくようであった。団体がトイレ休憩をしている間に、静かな登山道に進むことができた。
 歩き始めてすぐに、沢の徒渉があるが、水量は多かった。初心者や団体では手間取りそうであった。その後も、数回の徒渉があるので、足元には注意が必要である。
 しばらくは、沢に沿った登りが続く。河原の中を歩くようになると頭垢離に到着し、ここで沢から離れて、尾根に上がる。ここまではアプローチで歩きに専念したが、ここからは花を見ながらの登りになる。
 先回の2008年7月5日の時には、ハヤチネウスユキソウが咲き始めの美しい花を見せていた。今回は、咲き終わりの花が多く、やはり先週が良かったようであった。ミヤマシオガマやナンブイヌナズナは、完全に姿を消していた。花の時期を確かめるのも、今回の目的の一つであったので、目的は果たしていることにはなる。
 岩の間を縫うような急登が続くが、花の写真を取りながらの登りのため、山頂まで後どれくらいといういつもの気持は無くなっていた。
 麓では青空が広がっていたが、山頂が近付くとガスに覆われるようになった。人声が近付いてきて、山頂に到着したことを知った。奉納された鉾が何本も立てられている岩も白く霞んでいた。風が冷たく、風当たりの弱い所で腰を下して腹ごしらえをした。
 小田越への道を下り始めると、大勢の登山者にすれ違うようになった。山頂から少し下ったところでは、お田植え場と呼ばれる草原性のお花畑が広がっている。ハクサンボウフウが一面に咲き、その中でヨツバシオガマがピンクのアクセントをつけていた。
 河原坊から小田越へのコースは、先回と全く同じなので、今回はまだ訪れていない剣ヶ峰へよっていくことにした。分岐から先しばらくは、岩を伝い歩きするような、歩きにくい道であった。ただ、地形的な関係か、盛りのハヤチネユキワリソウやミヤマアズマギク、ムシトリスミレに出合うことができた。
 ハイマツの中を歩くようになると、本格的な下りが始まった。鞍部に出て先をうかがうと、二つのピークが並んでいるように見えた。先に進むと、手前のピークは尾根の張り出しで、その先の高まりが剣ヶ峰の山頂であった。宗教的な祠や山頂標識といったものはなく、尾根の通過点といった感じであった。その先は、大きな下りになったので引き返すことになった。剣ヶ峰周辺は、地図では岩場マークに囲まれているが、登山道の状態は、普通の尾根道であった。
 引き返す途中、ボランティアの腕章を巻いた男性に引き連れられたグループに出合ったのが、剣ヶ峰への登山道で出会ったすべてであった。
 分岐に戻り、小田越への登山道を下った。分岐からすぐに二連の梯子が現れ、渋滞も起きるところであるが、今回は、待つことなく通過できた。上は二本の梯子が並んでいるが、下は一本しかかかっていないので、通過に手間取ることになる。梯子は垂直に近い一枚岩にかかっているので、梯子が無ければ通過は難しいが、周囲の草地に迂回路は付けられそうである。宗教的に、わざと難所を通過させているようである。
 五合目の金蔵付近では、草臥れて休んでいる登山者が大勢いた。高度を下げると、暑さがこたえるようになった。早池峰山の下りは、岩が転がっており、足の負担も意外に大きい。
 樹林帯の中に入ると、暑さも和らいで、ひとまずほっとすることができた。
 小田越に到着してバスの時刻表を見ると、40分ほど先であった。タイミングが悪かったと思いながら汗を拭っていると、臨時のバスがやってきた。待ち時間も無く、座席にも座って岳の駐車場に戻ることができた。
 全般的に、団体も含めて登山者は、前回に比べて少なかった。早池峰山は、花のことを考えると、7月10日前後が最盛期といってよさそうである。
 東和インター出口脇の道の駅付属の温泉で汗を流した。高速道上のサービスエリアで見つけた岩手県の温泉巡りの割引券を使って100円分徳をすることができた。
 盛岡ICで高速を下り、食料の買い出しを行った後に岩手山の登山口の網張温泉に向かった。岩手山には、これまで馬返と焼走登山口から登っているが、これも一般的な網張温泉からは登っていない。
 網張温泉スキー場のリフトは、夏山シーズンにも運行されている。乗り場の運行表を見ると8時とあったが、ネットで事前に調べたところでは夏山シーズンには7時に開始するともいう。30分ほどはかかるはずのリフトに乗っている時間も考えると、早朝発で歩いた方が早いということになる。
 リフトを乗った登山客に追いつかれないよう、早立ちした。リフト乗り場の左手に、犬倉山へという登山標識が置かれていた。しばらくはスキーゲレンデの登りを頑張ることになった。スキーゲレンデの登りは、いつもながら大汗をかくことになる。背後を振り返ると秋田駒ヶ岳方面の眺めが広がっていた。
 一旦、兎平で傾斜は緩やかになったが、その先は、再びきつい登りが続いた。稜線が近付くと、右手に回り込んでいき、リフトの終点に到着した。ここまでは、順調な歩きであった。
 リフト乗り場上部のすぐ先には、展望台が設けられており、犬倉山が目の前に聳えていた。その左手には、姥倉山が見えていた。
 尾根道に進むと、すぐに三ツ石山への縦走路が分かれた。この方面では、大松倉山をすでに登っているので、縦走路の僅かな部分が繋がっていないことになる。
 犬倉山は、迂回路も設けられているが、登っていくことにした。ひと登りで犬倉山の山頂標識のある分岐に出た。犬倉山は急斜面を落とし込んでいるが、山頂部は台地状で、一周する遊歩道が設けられていた。分岐は、最高点の少し下のようであったので、周回路に進んだ。最高点を越して右に方向を変えながら進んでいくと、南の展望が開けた展望台に出た。谷間に、湯気が立ち上る網張元湯の源泉を見下すことができた。
 この網張元湯は1200年前に発見され、江戸時代には山の神信仰により網を張って入浴が禁止されていたという。これが網張温泉の名前の由来になっているという。現在では、仙女の湯があり、露天風呂に入れるという。遊歩道が通じているようなので、機会を見て訪れてみたい。
 犬倉山からは、急な下りになった。幸い、下山時には、迂回路を使うことができる。迂回路と合流すると、しばらくは、樹林帯の緩やかな登りが続いた。姥倉山の山裾を巻いていくと、木の階段が続く急な登りが始まった。一気に高度を上げると、砂礫状態の幅広尾根に出た。姥倉山の山頂は、下山時に登ることにして、先に進んだ。
 鞍部からひと登りすると、黒倉山の山頂下に出て、トラバース気味の道に変わった。山頂の南東部に回り込んで尾根上に戻ると、黒倉山からの道が合わさった。この方面からでは、黒倉山に向かって急斜面が続くようであった。
 その先の切通の分岐では、谷間沿いのコースと、尾根通しに剣ヶ峰を越していくコースが分かれた。行きは、剣ヶ峰を越えていくことにした。しばらく灌木に囲まれた尾根道を登ると、小岩峰を次々に越えていくようになった。岩峰をそのまま通過できず、右手の草地に一旦下ってから再び登り返すことが続き、体力を消耗していった。岩壁に行き当たってどのように巻くのかと思いながら近づいていくと、岩溝の中を登るように登山道は続いていた。大型ザックを背負っていると、溝にはまって通過が難しくなりそうであった。
 きびしい道であったが、花は多く、特にエゾツツジの花が美しかった。
 御神坂からの登山道が合わさると、ひと下りで不動平の避難小屋に到着した。剣ヶ峰越えではふた組の登山者に出合っただけであったが、ここからは大勢の登山者にまじっての登りになった。お鉢の縁までの砂礫で覆われた急坂は、足も疲れて辛い登りになった。コマクサとイワブクロの花が出迎えてくれて、元気をもらった。
 お鉢の上に出ると、強風が吹き抜けていたが、歩くには支障はなかった。ガスがかかって山頂は隠されていた。時計回りに歩いていき、平笠不動避難小屋からの登山道が合わさると、そこから山頂へは、僅かな歩きである。
 山頂付近は、大勢の登山者で賑わっていた。山頂標識も、記念写真のお立ち台となって、空く間もなかった。北側に回り込むと風あたりも弱くなったので、腰を下して昼食とした。
 イワブクロとコマクサの写真を取りながら下りを開始した。不動平まで下りると、ミネウスユキソウの花が一面に咲いていた。昨日登った早池峰山は、花の名山として名高いが、岩手山では違った花を楽しめる。
 帰りは、お花畑コースに向かった。剣ヶ峰の岩稜を見上げながらの、樹林帯の中の下りが続いた。登ってくる登山者にもすれ違ったが、一様に疲れた顔をしていた。リフトを使って楽をしたつもりでも、気温が上がってからの登りになって、体力を消耗してしまっているようであった。
 傾斜が緩むと、木道の敷かれた谷間の草原に出た。すぐに、御釜湖への道が分かれる三叉路に出た。草原には、ハクサンボウフウとヨツバシオガマが咲いていたが、標識にあるお花畑というほどではなかった。
 谷間を下っていくと、大地獄谷の源流部に出た。そこまでは水が無かったものが、脇水になって沢が流れ出ていた。火山地帯のため、少し不安があったが、水を汲んで飲むと、冷たく美味しかった。水を飲みながら涼んでいると、単独行が追い抜いていき、飲んでも大丈夫かと聞いてきた。個人の状況によるでしょうと答えたが、その後に問題は起きなかった。
 登山道は水平に続き、沢は下に離れていった。左手から落ち込む枝尾根に出ると、その下には、火山性のザレ場が広がっていた。尾根沿いに県民の森への登山道が続いているはずであったが、分岐には立ち入り禁止を示すのか、ロープが張られていた。
 この尾根を登っていくと、切通し分岐に戻ることができた。草臥れてきていたので、登り返しがそうれほどなかったのは助かった。
 すぐ先の黒倉山への分岐で、黒倉山へ向かうか迷ったが、急な登りが待ち構えているようなので、まずは姥倉山方面に向かってから、黒倉山を目指した。西の肩からガレ場を登っていくと、岩が重なった山頂に到着した。最高点に立って、大地獄谷に落ち込む崖をのぞくと、噴煙がたなびいていた。手近なところから噴煙が上がっていたので、手をかざしてみると、熱く、火傷をするところであった。
 黒倉山から下っていくと、団体が岩手山方面に登っていくのが見えた。現在は2時で、八合目避難小屋までのコースタイムは、2時間ほどである。5時頃までには到着する計算ではあるが、場所取りで他の登山者に迷惑をかけることは必至である。
 最後のアルバイトとして、姥倉山にも登っていくことにした。ザレ場をひと登りすると、樹林帯の平坦な道となって、姥倉山に到着した。登山道脇の一段高いところに三角点が置かれていた。登山道はその先で下りになって、三ツ石方面の眺めが広がっていた。
 目的のピークは踏んだので、後は下りに専念することになった。ゲレンデの下りは、登った時よりも急に感じられた。
 このコースの良い所は、登り口が温泉であることである。ここでも、高速で見つけたパンフレットにより、100円の割引になった。
 岩手県の山で二日遊んだが、帰りのことを考えると、三日目はもっと新潟に近い山を選ぶ必要がある。いつものパターンであるが、月山を登ることにした。
 月山は、姥沢や八合目弥陀ヶ原からなら容易に登れることから、簡単な山と思われてしまうが、念仏平コースを始め、古くからの信仰登山の道が残されており、奥深い山である。
 登山地図で、まだ歩いていないコースを見ていくと、ネイチャーセンターから装束場への石跳川沿いのコースが目にとまった。ネットで調べると、地図には載っていないが、姥沢からネイチャーセンターへ下る道もあるようなので、周回できるようであった。新しいコースを確かめるために月山を歩くことにした。
 岩手山の下山時間が思ったよりも遅くなっていたので、東北道から山形自動車道を通って志津に到着したのは、翌朝の早立ちを考えると遅い時間になっていた。
 月山の広場で夜を過ごしてからネイチャーセンターに移動した。早朝にもかかわらず、歩く準備をしている二人連れがいた。後で追い付いてきたこの二人連れの姿を見ると、登山姿ではあったが、腰に山菜入れのかごをつるしていた。
 まずネイチャーセンターの壁に掲げられている案内図を見たが、遊歩道がいろいろ整備されて、道の全体を把握することは難しかった。装束場へは川沿いに行けば良く、姥沢への道もあるということは確認できた。すぐ先には、石碑が並べられた広場がある。ここは玄海広場と呼ばれ、かつては、月山の修行者や参詣者のための小屋があったという。
 石跳川沿いの道に進むと、石畳状態の道が続くようになった。多少のアップダウンがあるものの歩きやすい道であった。登山地図のコースタイムを見ると、装束場まで2時間とあり、距離の割に短い時間が書かれているのも納得できた。
 姥沢への分岐がどこかと思いながら歩いていくと、あらかじめ予想していた位置よりも上流部で姥沢小屋への分岐の標識が現れた。下山後に判ったことだが、これは遊歩道の合流点で、その途中から姥沢小屋への道が分かれていた。
 石跳川を遡っていくと、湯殿山の山頂部の眺めも広がるようになった。今年の残雪期に登ったばかりなので、懐かしく見上げることになった。
 石跳川の上流部では、沢を埋める残雪も現れたが、登山道に残雪はなかった。枝沢も多く、汲んで飲むことができたのは、夏の暑い季節にはありがたかった。沢の幅も狭まってくると、飛び石伝いに徒渉を繰り返すところも出てきた。雨で水量が増している時には注意である。
 石跳川が姥ヶ岳の裾野を巻くように右に方向を変えていく所で、左に道が分かれた。草原の中を進むと、装束場に到着した。湯殿山もすぐ近い距離に見えるが、残念ながら登山道は無い。
 ここからの道は、湯殿山神社からの登山道で、すでに歩いたこともある。月山へのメインルートであるが、湯殿山道路の開通時間が遅いため、独り占めで静かに歩くことができた。
 登山道脇の草原は、雪融け直後で、ミズバショウが咲いていた。しばらくは、急な坂も現れて、頑張って登る必要があった。姥ヶ岳の中腹をトラバースするようになると、鞍部の金姥は近い。
 ガスが濃くなって、風当たりも強くなった。金姥からは、石畳状の遊歩道が整備されているが、残雪に覆われて道が判らなくなった。草原の中に残雪のトラバースを避ける踏み跡が続いていたので、これを辿ることにした。
 ガスの中から人影が現れると、スキー場からの登山道に合流した。この後は、牛首を経て八丁坂の登りになる。山頂はガスに覆われていて展望は期待できず、この先は何度も歩いている区間である。山頂は省略しようかと思ったが、やはり登山は、山頂を踏む必要があるので、先に進んだ。
 悪天候のため様子見をしているのか、登山者は少なく、夏の盛りには渋滞気味になる八丁坂もマイペースで登ることができた。鍛冶小屋跡から先は、強風状態になって、写真を撮る余裕も無くなった。月山神社の写真を登頂の証拠として撮影した後は、すぐに下山に移った。
 八丁坂を下っていくと、登山者にも多くすれ違うようになった。牛首からリフト乗り場への道を下ると、残雪歩きも現れた。特に最上部の残雪は傾斜もあり、登りでも苦労している登山者がいた。軽アイゼンは用心のために持ってきていたが、使わずに下ることができた。夏山スキーで賑わう雪渓の脇を過ぎると、リフト乗り場と姥沢との分岐になる。
 姥沢から歩いてくる登山者は少ないので、二本並んだ木道の片方に腰を下して昼食にした。姥沢へと歩くこのコースは、草原の中に敷かれた木道歩きがしばらく続き、花も多い。リフトを利用して歩かないのは、もったいないコースである。
 下るにつれてガスは晴れていったが、それに伴い暑さが堪えるようになった。姥沢小屋へは尾根を乗り越す必要があるが、その手前のガレ場には湧き水がある。回りにオタカラコウの花が咲いていることからか、お宝清水と書かれていた。冷たい水を飲んで元気を取り戻した。
 尾根を乗り越すと、姥沢小屋に出る。その先で車道に出れば、いつもなら山歩きは終わるのだが、今回はまだ歩く必要がある。
 ネイチャーセンターへの道は、最奥のペンションの山側から始まっているようであった。確かに山道があったが、入口には115林班と書かれているだけであった。半信半疑でこの道に進むと、すぐ先で、ネイチャーセンターへの案内標識が現れた。車道脇に案内標識が置かれていないのは、なにか理由があるのであろうか。
 人があまり歩いていないようで、草が少し延びてはいるが、階段状に良く整備された道が続いた。急坂を下りると小さな池が左手に現れ、その先で、T字路に飛び出した。右は装束場、左はネイチャーセンターとあるので、行きに歩いた分岐かと思ったが、GPSの現在地を確認するとそうではなかった。ともあれ、遊歩道に飛び出したことが判った。
 遊歩道を辿っていくと、右手に三角屋根の小屋が現れた。小屋に寄り道すると、ブナ林に囲まれて池の畔に立っていた。野鳥の観察小屋とのことであったが、泊りにも使えそうなしっかりした作りであった。この池は、周海沼のようであった。
 この先は、尾根沿いの道が続いた。石跳川に向かう道も数か所で現れたが、そのまま直進して進んだ。どこで行きに歩いた道に合わさるのかと思って歩き続けたが、結局、ネイチャーセンター手前の道路脇に飛び出した。ここの標識には遊歩道入口としか書かれていないので、姥沢から下りてくるのは問題ないにしても、先に姥沢に向かうのは難しい。  今回歩いた周回コースは、静かにたっぷりと山に浸ることができてお勧めである。

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