あおり山、当間山

あおり山
当間山


【日時】 2009年11月13日(金)〜11月15日(日)前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 7日:曇り後雨 8日:曇り

【山域】 権現堂山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 あおり山・あおりさん・785.1m・四等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/須原/須原
【コース】 松川川林道より
【ガイド】 なし
【温泉】 ゆーパーク薬師 湯之谷薬師温泉センター 600円

【山域】 魚沼丘陵
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 当間山・あてまやま・1016.5m・二等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/十日町/塩沢
【コース】 当間高原リゾートより
【ガイド】 新潟日帰りファミリー登山(新潟日報事業社)

【時間記録】
11月13日(金) 19:10 新潟=(北陸自動車道、三条燕IC、R.289、下田、R.290、渋川、R.252 経由)=21:30 松川 (車中泊)
11月14日(土) 6:50 取り付き―8:15 尾根上―8:40 あおり山〜8:50 発―9:16 尾根上―10:11 取り付き=(R.252、小出、R.17、堀之内、R.252、R.117、珠河原 経由)=15:00 当間山登山者用駐車場  (車中泊)
11月15日(日) 7:17 当間山登山者用駐車場―7:40 登山口―8:08 ブナの回廊分岐―8:42 展望台―8:58 当間山三角点―9:20 当間山〜9:30 発―9:58 展望台―10:27 ブナの回廊分岐―10:59 沢―11:28 見晴らしの池―11:41 当間山登山者用駐車場=(珠河原、R.117、越後川口IC、関越自動車道 経由)=14:50 新潟
 小出近くの権現堂山は登山道が整備されて、一般登山者にも親しまれているが、その東の黒又川ダムとの間の山域は、山菜採りやキノコ狩りが入山するだけの登山者から忘れられた空白の領域になっている。あおり山は、松川川左岸にある山で、まないた山と向かい合う山である。あおり山の山頂は岩場に囲まれて、容易に人を寄せ付けない。

 当間山は、信濃川と魚野川に挟まれて南北に連なる魚沼丘陵にある1000m級のピークである。山の知名度は高くはないが、上越国際スキー場の当間ゲレンデとして、名前が知られている。当間山には、魚沼スカイラインあるいは当間高原リゾートからの遊歩道が整備されている。
 
 黒又川ダムと松川川周辺の三角点に測量隊が入り、刈り払いが行われ、その情報をもとに、先週土崩山に登った。あおり山にも測量の手が入ったようで、現在は登山が可能なようであった。この機会を逃さずに登ることにした。
 あおり山の山行報告は見当たらないが、三角点測量のことなら、点の記を参考にすれば良い。あおり山三角点の点の記において、順路は、「松川部落の黒又第一発電所より松川林道を南東へ約4.5km進んだ所に植林用の小径入口がある。この小径を約1.6km登るとアオリ山に達する。本点は北側の山頂にある。」と書かれている。
 2001年9月に高鼻山に登った後で、まないた山の取り付きを捜した。地形図の破線が林道に落ち込む所を捜したが、ここからの道は見当たらなかった。その際、道路脇の杉林から松川川に下る山道があり、対岸にその山道が続いているのを見つけた。おそらくこの道が点の記にある山道であろうと推測したものの、中越地震の発生などによってそのままになっていた。その後、2007年3月に残雪を利用して繁松山に登り、さらにあおり山まで足を延ばそうと思ったが、あおり山が岩場に囲まれているのを見て、残雪期の登頂は無理と判断して諦めてしまった。
 あおり山は、長年の懸案であったので、今回は是非とも登りたかった。この週末の天気予報はあまり芳しくはなかったが、僅かな可能性にかけてあおり山を目指すことにした。天気予報は、曇り後雨。太平洋岸を低気圧が通過し、日本海側に低気圧が発生するというものであった。午前中は、曇りか小雨のようで、半日は山歩きが可能なように思われた。早立ちを行うため、前夜のうちに登山口に入っておくことにした。
 登山口を見落とすおそれがあるため、松川川沿いの林道に入ったところで夜を明かし、明るくなってから林道の先に進んだ。先週の土崩山登山の際にも、この登山口は確かめておいた。入口の杉木立の下には、軍手が捨ててあり、杖代わりの枝が数本置かれていた。ピンクとブルーのテープも下げられていた。
 いざ出発と意気込んで沢に下ったが、思ったよりも水量が多く、飛び石伝いに渡るルートは見当たらなかった。長靴でも水没する深さであった。登山靴を脱いで徒渉することにした。裸足では足元が不安定なため、車に戻ってサンダルをとってきた。
 サンダルに履き替え、ズボンをまくりあげて沢を渡った。数歩の幅であるが、水は冷たく、足が痺れた。対岸に渡って、再び登山靴に履き替えた。このため、思わぬ時間がかかった。
 この徒渉で、懸念材料が一つ増えた。本格的な雨になると、沢が増水する可能性がある。本降りの雨が始まったら、登りの途中でも下山することにした。
 対岸をひと登りすると、道が左右に分かれた。あおり山へは左の道だろうと見当をつけて進んだが、右方向の刈り払い道は繁松山に続く道であったのだろうか。
 直線状の急な登りが始まった。落ち葉の積もった泥斜面で滑りやすかった。ひと登りしたところで左にトラバースして尾根にのった。灌木が広がった中に、山道が続いていた。刈り払いの手も入っていたが、はっきりした山道がそれ以前からつけられていたようである。
 時折小雨がぱらついたが、登山の支障になるほどではなかった。厚い雲が空を覆っていたが、山の稜線ははっきりと見えていた。
 枝尾根から鼻毛沢の左岸尾根にのったことが、GPSによる位置確認から判った。予め予想していた尾根の第二候補ということになる。
 520m標高から左方向に向かうトラバース道が始まった。泥斜面で足が滑るため、歩きにくいトラバースになった。繁松山との中間ピーク(670m)に登りつくのかと思っていたが、あおり山に近い稜線を目指すようであった。
 鼻毛沢の源頭部を横断して尾根の張り出し部を越すと、沢が入り込んできて、この沢の上流の北西方向に方向を変えた。100mほどで沢を横断すると、杉の植林地の中に入った。ここまでは雑木林の中を歩いてきて、点の記の記述に疑問を持っていたのだが、これで納得がいった。稜線近くで気象条件も厳しいのか、杉の発育は悪そうであった。
 杉林の中を登って稜線直下まで進むと、背丈の高い草が広がるようになった。枯れ草の中に刈り払い道が続き、テープも付けられていたので辿ることができたが、来年になって夏草が茂ると、その後はルートが判りにくくなりそうであった。
 結局、651点の100mほど南で稜線上に出た。あおり山方面には刈り払い道が続いていたが、繁松山方面には刈り払いは行われていなかった。繁松山へのルートは、別個に付けられているようであった。
 しばらく稜線を進んでいくと、岩壁をまとったあおり山が近付いてきた。どのように登るのだろうと思いながら近づいていくと、岩壁に左右を挟まれた急な細尾根を登ることが判った。岩や木の根を足場にし、木の枝を掴みながらの登りが始まった。垂直に近い壁で、落ちたならば致命的な事態になる。少し登ったところで、ここまでかと思ったら、ロープが下がっているのが目に入った。プラスチック製ロープで、登山用のロープほどの強度は無さそうであったが、精神的に楽になった。
 ロープが終わると、傾斜も緩み、足だけで立つことができるようになった。尾根を少し辿った先で三角点が頭を出した広場に到着した。最高点は、80mほど先であったが、その先の刈り払いは無かった。時間があれば最高点まで進みたかったが、この三角点を山頂とすることにした。
 松川川の対岸には土崩山を主峰とする稜線が広がっていた。毛猛山塊も間近に見えていたが、山頂部は雲に覆われていた。天気がいよいよ悪くなってきたようであった。上権現堂山が、毛の又沢川の対岸に大きな山頂を見せていた。
 天気の崩れを心配し、急いで下山に移ることにした。足場に乗った落ち葉や泥が雨で濡れており、緊張の下りになった。ロープの掛かる区間は意外に楽に下れたが、その下部のフリーの下りは怖かった。
 岩場を通過して下りの足を速めると、雨も本降りになって、今度は、沢の増水が気にかかるようになってきた。道はますます滑りやすくなり、尻もちも度々起こすようになった。
 沢に下り立つと、瀬に立つ白波が目立つようになって、水量も少し増していた。幸い、徒渉には問題の無い状態であった。雨具は上着を着たけであったので、ズボンは泥まみれで濡れてしまっていたため、そのまま沢を渡ることにした。沢を渡れば、すぐ上に車が停めてある。
 岩場の登りの時に本降りの雨になっていれば、山頂を目前にしても撤退になったであろうから、ぎりぎりのタイミングで行うことができた山行であった。
 長年の懸案であったあおり山であるが、測量班の残置ロープに助けられてようやく登ることができた。今後は、稜線までは山道を辿って登れるとして、最後の岩場が登れるかが問題になる。ロープも劣化して、頼るのは危険になりそうである。やはり今年限りの山ということになるのだろうか。
 車の脇で着替えをしていると、激しい雨になった。翌日の山は、雨の中でも歩けそうな山を選ぶ必要が出てきた。ブナ林を目当てに、当間山を登ることにした。
 小出で温泉に入り、十日町のブックオフで暇つぶしをしてから、登山口に向かった。
 まずは、当間高原ベルナティオを目指す。上越スキー場当間ゲレンデではないので、注意が必要である。国道から分かれて坂をひと登りすると、信濃川の河岸段丘と思われる広大な台地にでる。ホテルの敷地の右端を山に向かって進むと、登山者用駐車場に到着する。この先にも舗装道路が続いているが、道幅が狭いため、進入をご遠慮くださいと書かれている。先に進む登山者の車もいるようであるが、下山時の周回ルートを考えると、この駐車場が適当である。
 到着した時間は早かったが、車の中に時間つぶしの用意はしてある。夜中に外を見ると、満天の星空が広がっていた。日曜日の天気は、天気予報にもかかわらず、意外に良くなりそうであった。
 曇り空の朝になった。昨日のように、時間に追われる必要もなく、のんびり朝の準備をしてから歩き出した。しばらくは車道歩きになる。途中、左手に小さな建物の当間展望台が現れるが、冬自宅のため、屋根のドームはビニールカバーで覆われていた。
 その先で、登山口に到着する。入口には、前回は無かった案内板が置かれていた。下山時に、登りとは違うブナ回廊を歩くなら、途中に分岐もあるため、この案内板を良く見ておく必要がある。
 ブナ林の中の幅広の登山道が続く。傾斜は緩いが、その登りが長く続くので、それなりに草臥れてきた。登山道脇には、コース案内や植物名を書いた看板が置かれているが、雪に備えて、ビニール袋で覆われて倒されていた。分岐では、看板を引き起こして、内容を確かめる必要があった。
 尾根沿いの登りから左手の浅い谷間に方向を変えると、「ブナの清水」があり、パイプから水が流れ出ていた。暑い時期なら、喉を潤すのに良い水場であるが、気温も低く、水を飲む必要もなかった。
 そのすぐ先でブナ回廊との分岐を通り過ぎると、再び尾根沿いの登りになる。尾根が痩せると、灌木帯が広がるようになって、展望が開けるが、当間山の山頂部には雲がかかっていた。その先のブナ林に覆われたピークに登ると、杉が一本生えている。「一本杉」と呼ばれるようであるが、杉自体はそれほど太いものではない。再び細尾根を辿り、階段状に整備された急坂を登ると、木組の展望台が現れる。
 緩やかに登っていくと、右手からはっきりした山道が合流する。その上が当間山の三角点ピークであるが、山道は左を巻いていく。肩部から細道に入ると100mほどで三角点広場に到着する。
 疑問な点は、「新潟日帰りファミリー登山」には、「三角点標識は地中に没したか、崩れたか、跡形もない」と書かれていることである。2000年10月21日に初めて登った時も、この三角点を見て、山頂に立ったことを確かめている。2007年10月発行のガイドブックの著者は、どこを見て書いているのだろうか。当間山のコースについても、ブナ回廊については全く触れておらず、山の写真も雪山のものしか載せておらず、執筆時に実際に歩いたのかはなはだ疑問である。さらに、展望台の位置も違っており、実際の登山道は、地形図の破線とは異なっている個所があるにもかかわらず、ガイドブックの登山道は、ただ破線をなぞっただけである。
 地形図において当間山と山名が記載されているのは、この三角点ピークであるが、登山口の案内図では、その先の1020mピークを山頂としている。これまでの山行でも、このピークは踏んでいるので、登ったことには変わりはないのだが、いささか複雑な気分である。魚沼スカイラインから登った初回時は、1020mピークで三角点探しを行って時間をロスし、地図を確認してようやく誤りに気がついた。
 三角点ピークから直接1020mピークを目指す猫石コースもあるが、ガスがかかって見通しも悪いことから一旦戻って、メインルートを歩くことにした。
 一旦下ってから沢の源頭部を通過して、登り返しになる。この付近のブナ林は背も高く見事である。白い霧の中に、静かにブナが並んでいた。
 1020mピークに登りつくと、当間の森遊歩道の看板が置かれて、「当間山山頂 標高1028.5m」と書かれたプレートが付けられていた。この標高だが、地図では、ここまで細かく読み取れないので、測量をした結果なのであろうか。
 下りは、ブナ霧に包まれたブナ林の写真を撮りながら歩いた。帰りは、ブナ清水の手前からブナ回廊へと進んだ。このコースでは、下生えの少ないブナ林が広がっていた。すでに葉も落ちてしまっていたので、紅葉の盛りに改めて訪れる必要がある。大木は少ないので、炭焼きなどで切られた後にできた二次林のようであった。ブナの木に付けられた熊の爪痕を示す看板が、数か所に置かれていた。
 落ち葉が積もって道が判りにくくなっており、看板も倒されていたため、当間集落への道に引き込まれそうになった。しっかりと整備された遊歩道であるが、歩く者も少ないため、落ち葉の季節は慎重に歩く必要がある。
 沢に下り立つと、林道跡のような幅広の道に変わる。一旦車道に出て、左に進めば登山口に戻るが、そのまま直進する。少し車道を歩くと、炭焼きの径が始まる。右手には、炭焼き窯も現れる。見晴らしの池に出て遊歩道歩きは終わる。
 車道に出て下っていき、ゴルフ場施設に出たところで左折する。とんぼの池を過ぎると、すぐ先が駐車場である。先回は、途中で迷子になったかと心配になったが、二度目とあって、安心して歩くことができた。遊歩道というのは、地図を見ても出ていないため、辿るのが意外に難しい。
 二日間、雨の合間をぬっての登山を行えたことに満足して家路についた。高速に乗って小千谷付近を通過する頃には、強風が吹き始めて、天気が急激に悪くなってきた。

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