迦葉山、尼ヶ禿山、大峰山、吾妻耶山、笠ヶ岳

迦葉山、尼ヶ禿山
大峰山、吾妻耶山
笠ヶ岳


【日時】 2009年10月10日(土)〜12日(月) 前夜発3泊3日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 10日:曇り 11日:雨後曇り 12日:晴

【山域】 武尊山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 迦葉山・かしょうざん・1322.4m・三等三角点・群馬県
 尼ヶ禿山・あまがはげやま・1466.0m・三等三角点・群馬県
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/追貝/藤原湖
【コース】 玉原湖センターハウスより
【ガイド】 山と高原地図「谷川岳、苗場山、武尊山」
【温泉】 諏訪温泉センター 300円(石鹸無し)

【山域】 谷川連峰周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 大峰山・おおみねやま・1254.5m・二等三角点・群馬県
 吾妻耶山・あずまやさん・1341m・なし・群馬県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/四万/猿ヶ京
【コース】 ノルン水上スキー場より
【ガイド】 山と高原地図「谷川岳、苗場山、武尊山」
【温泉】 諏訪温泉センター 300円(石鹸無し)

【山域】 日光周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 笠ヶ岳・かさがたけ・2057.5m・三等三角点・群馬県
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/藤原/藤原、至仏山
【コース】 湯の小屋より
【ガイド】 山と高原地図「谷川岳、苗場山、武尊山」

【時間記録】
10月9日(金) 20:50 新潟=(関越自動車道、水上IC、石神峠、上発知 経由)
10月10日(土) =0:50 玉原湖センターハウス  (車中泊)
7:28 玉原湖センターハウス―8:20 登山口―8:49 尾根上分岐―10:16 迦葉山―11:48 尾根上分岐―12:20 尼ヶ禿山〜12:45 発―13:50 玉原湖センターハウス=(上発知、石神峠、水上、R.291、大穴、湯の小屋 経由)=17:10 林道ゲート
10月11日(日) 7:00 林道ゲート=(湯の小屋、大穴、R.291、水上、ノルン水上スキー場)=9:15 矢倉林道ゲート―9:56 大峰沼分岐―10:21 赤谷越峠―10:54 大峰山―11:25 赤谷越峠〜11:30 発―12:10 吾妻耶山〜12:32 発―12:47 赤谷越峠―13:25 矢倉林道ゲート=(水上、R.291、大穴、湯の小屋 経由)=16:50 林道ゲート (車中泊)
10月12日(月) 5:32 林道ゲート―6:03 矢倉林道入口―6:54 登山道分岐―7:12 林道終点―8:18 咲倉沢頭避難小屋―9:45 至仏山分岐―10:10 笠ヶ岳〜10:40 発―10:50 至仏山分岐―12:14 咲倉沢頭避難小屋―13:09 林道終点〜13:17 発―13:29 登山道分岐―14:13 矢倉林道入口―14:42 林道ゲート=(湯の小屋、大穴、R.291、水上IC、関越自動車道 経由)=17:50 新潟
 上州武尊山の西山麓にある玉原高原は、ダムの開発に伴ってブナの原生林や玉原湿原の自然観察路が整備されて、鹿俣山や尼ヶ禿山にもハイキングコースが設けられている。迦葉山は、一般的には、玉原高原入口にある天狗の面で有名な弥勒寺から登られることが多いが、尼ヶ禿山から長尾根が続き、登山道も開かれている。

 大峰山と吾妻耶山は、谷川連峰の南の利根川の右岸に連なる山である。大峰山はなだらかな、吾妻耶山はピラミッド形の山頂を持ってをいる。中腹には、大峰沼や古沼があり、キャンプ場も整備されてハイカー親しまれているが、現在ではノルン水上スキー場が吾妻耶山の肩まで広がっている。

 笠ヶ岳は至仏山の西に位置する山である。鳩待峠から至仏山へ至る途中から湯ノ小屋ルートに入れば、比較的容易に登ることができる。笠ヶ岳周辺にもお花畑が広がり、山頂からの展望は、利根川源流部の眺めが一望でき、至仏山と比べて格段に静かな山を楽しむことができる。

 体育の日がらみの三連休は、新潟方面の山では紅葉の盛りになるのだが、今年は山選びが難しいことになった。直前の木曜日は台風が日本列島を縦断し、新潟や関東は大荒れとなってJRも一日動かない騒ぎになった。台風一過の晴天を期待したいところだが、台風は北海道の東で低気圧に変わり、西高東低の冬型気候になって寒気を呼び込むことになった。新潟は時雨模様の天気予報が出たことから、太平洋側の天候が期待できる群馬県の山を考えることにした。三連休のため、道路や山の混雑にあわない所を考える必要がある。結局、メインの山としては、笠ヶ岳を湯の小屋から登ることにした。笠ヶ岳は、以前、鳩待峠から至仏山と合わせて登っているが、これでは、至仏山のおまけの山という感じがする。
 もう一つの問題は、先先週の苗場山で痛めた足が、まだ治りきっていないことであった。先週の長森山は、左足に力を入れられず、下りに苦労した。金曜日の段階でも、靭帯損傷なのか、押すと痛い状態であった。土曜日に、どれくら歩けるか様子を見ることにして、玉原高原から迦葉山を目指すことにした。距離は長めであるが、急な登り下りは無さそうである。二日目に本番の笠ヶ岳とし、三日目はで気のむくままということにした。
 日付が変わったところで高速を下りて水上から玉原高原へ向かった。スキー場へが設けられているため、夜中の走行も問題の無いみちである。センターハウスの一段下には広大な広場が設けられているため、静かに夜を過ごすことができる。
 センターハウス前を出発する時は、他の車も二台で、静かな雰囲気が漂っていた。センター脇にゲートがあり、通行止めになっている車道を進む。「ぶなのわきみず」と名付けられた湧水があり、蛙の置物が上に置かれていた。坂を下っていくと玉原湿原に入口に出るので、のぞいていくことにした。
 玉原湿原は、谷間の小さな湿原で、木道も整備されている。湿原の草は黄色く変わり、周囲の木立ち色づいていた。玉原高原の紅葉の盛りは、少し先のようであったが、先日の台風による強風で、紅葉の始まった葉が散ってしまったためかもしれない。
 玉原湿原の入口に戻り、車道を先に進んだ。玉原湖の眺めが広がり、特に北側の小さな湖が美しい姿を見せていた。
 玉原越と尼ヶ禿山への道を見送って、玉原湖の西岸を進んでいくと、迦葉山への登山口に到着した。登り始めは林道跡のようであったが、じきに普通の登山道に変わった。標高差100mほどで、尾根の傾斜は緩やかになり、尼ヶ禿山から迦葉山に続く稜線分岐に出た。分岐の標識には、迦葉山(約3.5km 1時間40分)、尼ヶ禿山(約1.0km 50分)と書かれていた。迦葉山へは往復することになるので、結構な距離になる。
 迦葉山への道は、全般的に下り気味ながら、小さなピークを越えていくことになった。登山道は良く整備されていたが、台風の強風で落ちた小枝が足にまとわりついて歩きにくかった。
 1304mピークの次の小ピークを過ぎると、登山道は、東に大きく円を描くように反れていった。台地に下ると、見事なブナ林が広がっていた。歩き始めには、キノコ狩にも出会っていたが、ここまで入ってくるものはいないようであった。ブナ林を進んでいくと、白樺湿原と呼ばれる湿地が現れたが、藪の奥で登山道からは僅かに垣間見ることができるだけであった。登山地図にも、登山道は稜線を直線上に進むように書かれており、このブナ林の台地の歩きを読み取ることはできない。
 再び鞍部に戻ると、迦葉山への登りが始まった。緩やかな登りを続けていくと、迦葉山の山頂に到着したが、登山道脇の切り開きで、標識が無ければそのまま通り過ぎてしまうような地点であった。弥勒寺からならば、急登をようやく終えて辿りついた山頂で、登頂の感銘も大きくなるのだろうが、尼ヶ禿山方面からだと、ただの折り返し地点という感じである。
 山頂からは、南の眺めが広がっており、戸神山や子持山の眺めが広がっていた。連休にもかかわらず、登山者は他にいない山頂であった。
 戻り道は、登り気味となって行きよりも体力を使った。分岐に戻り、尼ヶ禿山に向かった。小ピークを越えると鞍部には送電線が通っており、その先は、急な登りになった。玉原越方面の登山道が合わさると傾斜も緩やかになって、崖の縁を辿って山頂に到着した。 尼ヶ禿山の山頂は狭く、先着の登山グループ数名が座ると、満杯の状態であった。山頂からは、登ってきたばかりの迦葉山や戸神山、子持山、武尊山の眺めが広がっていた。眼下に玉原湖を見下ろすことができた。紅葉に少し早いのが残念であった。標高1000m程の高原であるが、新潟よりは紅葉の訪れは遅いようである。
 土曜日の天気予報では、冬型が強まって、日本海側は時雨模様になるというものであった。休んでいると、雲が流れて、朝よりも天気が悪くなってきた。日本海側の悪天候が、県境稜線を越えてきているようであった。下山の途中、短い時間であるが、雨もぱらついてきた。
 下山は、玉原越方面の道に進んだ。ブナ林の中を下っていくと、途中で、登山道が何本かわかれたが、結局、東京大学玉原国際セミナーハウスの脇をかすめて、玉原越に続く車道に飛び出した。
 センターハウスの駐車場に戻ると、観光客で、駐車場は満杯になっていた。
 翌日の笠ヶ岳のため、水上に移動し、共同浴場に近い安い温泉に入った。この温泉は、これまで場所が判らなかったが、今回、たまたま看板を見つけて場所が判った。この温泉の場所が判ったことは、この日の収穫であった。
 続けて、コンビニで買い物をということで、インター出口近くのセブンイレブンに入ると、弁当、おにぎり、パンは、すべて無くなっていた。夕方の入荷を待つため、すぐ近くの道の駅で時間をつぶした。道の駅の駐車場も、観光客で大賑わいになっていた。
 ようやく食料を買いこみ、湯の小屋に向かった。
 坤六峠を越えて戸倉に抜ける県道は、奥利根湯けむり街道と呼ばれるようで、多くの観光客が入っていた。この路線沿いには、何軒もの温泉が点在しているが、登山後の入浴には高すぎる温泉が多い。
 湯の小屋の葉留日野山荘入口に笠ヶ岳登山口の標識が置かれているが、ここからでは、日帰りには長すぎる。登山道は、少し先で分かれる奈良俣ダムへの道に切られている。今回は、この奈良俣ダムへの道を通り越し、400mほど進んだところからはじまる林道を使うことにした。林道入口にはゲートが閉められていたが、その前の県道脇には空き地があったので、車を止めることができた。
 日が暮れる頃には小雨が降り始めた。この雨は、朝になっても、断続的に続いていた。笠ヶ岳は、天候不良ということで諦めて、他の山を考えることにし、まずは水上の道の駅まで戻ることにした。
 ゆっくりとコーヒーを飲んだりして時間つぶしをしていると、天気も少し回復してきた。結局、一番近い吾妻耶山を登ることにした。吾妻耶山は、1996年5月に、一般的な大峰沼登山口から登っているが、この時は、ガイドブックにも載っていなかったスキー場に下山途中迷い込んで、コースが判らなくなって焦ることになった。その後、ノルン水上スキー場という名前であることを知った。今回は、このノルン水上スキー場経由で登ってみることにした。
 ノルン水上スキー場へは、関越自動車道の水上インター脇から入る。山裾の台地に出ると、吾妻耶山と大峰山の眺めが飛び込んできた。スキー場は、吾妻耶山の肩まで広がっており、ゲレンデ登りの覚悟が必要そうであった。
 今回の山行では、計画変更がありそうなため、パソコンとプリンターを持ってきて、地図を印刷できる体制を整えていた。ところが、GPSに接続するためのコードを忘れて、ルートデーターの転送はできず、印刷した地図を見ながらの歩きになった。このため、後で少々混乱をまねくことになった。
 第一駐車場の手前からアプローチに使う栗生沢林道が始まっていた。砂利も敷いてあり、車の走行には問題がなさそうなので先に進んだ。左手に、スキー場関係者の宿泊施設が現れると、その先の林道は荒れた状態になった。脇道の路肩に車を止めて歩きだすと、すぐ先にゲートがあり、その手前に駐車スペースもあった。
 この先しばらくは林道歩きが続いた。ゲレンデを横切りながら登っていき、一番左手のリフト終点まで登ると、大峰沼との分岐になった。ここで林道と別れて、右手の道に進むと、ゲレンデの中の登りになった。正規の登山道は、一旦右に外れてから上部でゲレンデに戻るようであったが、傾斜もゆるいため、そのままゲレンデを登った。
 前方に急斜面が近付いてきたところで、ゲレンデから別れて左手の雑木林に進む。標識の置かれていたが、奥まったところで見えにくくなっていた。
 ようやく登山道の歩きに変わったが、山の斜面には岩が露出し、岩を踏み越えるようなところもあって、歩きにくかった。急坂もそう長くはなく、吾妻耶山と大峰山の両方向に分かれる稜線上のT字路に飛び出した。この分岐から大峰山方面に少し進んだ所で、赤谷方面の道が下っていた。この赤谷越峠からは、吾妻耶山中腹コースが始まっていたのだが、この道を見落としてしまったのが、後で混乱のもとになった。
 まずは大峰山に向かった。木立に囲まれて見晴らしの無い道であった。さほど起伏の無い道を進み、登りが続くようになったと思うと、大峰山に到着した。中継基地を過ぎた先が大峰山の山頂になった。木立に囲まれて、標識が無ければ山頂とは思えないような場所で、この山だけを目標とするならば、あまり面白くない。すぐに引き返した。
 稜線上の分岐に戻り、吾妻耶山に向かった。ひと登りすると、リフトが上がってきているゲレンデ最上部に出た。その先は、急登が続くようになった。このコースを後でGPSのデーターで見返すと、地形図のコースとは大幅に違っていた。スキー場を横断するように記されている登山道は、スキー場の整備によって、大きく移動されたようである。
 台地の上に出て、右に吾妻耶山山頂への道が分かれた。気持ちの良い台地が広がっていたので、仏岩方面に少し進んでみた。台地の縁まで進むと、切り落ちた大岩の眺めが広がった。仏岩に通じる登山道の山頂付近も、地形図とは異なって台地の上を通過するように変わっていた。
 分岐に戻って吾妻耶山に向かった。すぐ先が山頂で、石の祠が三基並んだ広場になっていた。10名近くのグループが休んでいた。ビニール合羽も混じるグループで、ガイドに案内されての登山のようであった。ペンションあたりに泊って、谷川岳登山あたりを予定していたものが、悪天候によって計画変更になったものかもしれない。
 山頂からは、谷川岳方面の眺めが開けていたが、稜線部は厚い雲に覆われていた。
 下山は、地図にある山頂からスキー場に向かう道が無かったことから来た道を戻ることになった。登ったのが吾妻耶山中腹コースと思っていたので、東寄りにもう一本の登山道を捜せば良いと思いこんだのが間違いであった。
 赤谷越峠からスキー場に戻り、後はゲレンデのショートカットをしながら下った。関東地方のゲレンデとあってスノーマシンが設置してあり、少ない雪でも滑降可能にするため、草も刈り払いが行われて、歩きやすくなっている。
 二日目の登山を終え、再び諏訪温泉センターで入浴し、コンビニに食料が並ぶのを、道の駅の駐車場で待つのも、前日と同じであった。谷川登山ツアーの大型バスが駐車場に入ってきていたが、このような天気でも登ったのだろうか。初心者しかこのようなツアーには参加しないだろうが、初心者には辛い天候であったと思う。
 再び湯の小屋のゲート前に戻り、翌日の山のために待機した。夜には星空が広がり、明日の山行は実行できる様子になった。
 夜明けも遅くなっており、ヘッドランプ無しに歩けるようになったのは、5時半になっていた。日没も早まっており、ロングコースを歩く際の行動時間にも余裕がなくなってきている。
 ゲートを抜けた先の林道は、二車線幅の舗装道路が続いていた。咲倉沢を巻くとスノーシェードが現れて、緩やかに登っていく道が続いた。登山口からは、大きくカーブを描いているので、ショートカットの登山道があれば、時間も短縮できるところである。
 尾根を回り込んだところで、右に砂利道の先倉林道が分かれるので、これに進む。咲倉沢の谷間に沿っての長い林道歩きが続く。正規の登山道は並行する尾根の上を通っているようである。尾根の小さなアップダウンを考えれば、この林道を歩いた方が楽であろう。
 左から合わさる谷に入ると、林道はヘアピンカーブを描いて西にコースを変える。沢沿にも林道が分かれるので、迷いこまないように注意が必要である。登りの傾斜も増して尾根の上に出ると、左から湯の小屋からの登山道が合わさった。この先は、登山道を使ってきたとしても、林道を歩くことになる。150mほど先で尾根通しの登山道が分かれるが、林道は尾根のすぐ下を平行に続くので、林道を歩くことになる。
 結局、1335m小ピーク下の等高線が緩やかな部分まで林道が続いていた。林道終点広場の奥には、階段状になった登山道の登り口があった。この先は、地形図にも破線が記されており、コース的には不安はない。笠ヶ岳への湯の小屋コースは、葉留日野山荘入口から1018m点近くの車道までは記されているが、しばらく車道を歩いて尾根に取り付いた所から先は破線は無くなっている。地形図から見る限り、先倉林道を利用して、その終点から登山道に入るのが、一般的なように見える。
 登山道に進むと、木の根を足掛かりにする急登が始まった。小さなピークの乗り越しもあって、きつい登りであった。尾根に沿っては、クロベだろうか針葉樹が並び、紅葉を楽しむことはできなかった。
 右手から枝尾根が合わさる頃には登りの傾斜も少し緩くなって、ブナも目立つようになってきた。黄色く色付いた葉も見られるようになってきたが、東に進んでいるため、太陽が目に飛び込んできて目くらましになり、歩きながら風景を楽しむことはできなかった。
 林道終点からは、1時間程の登りで、中間の目標地点である咲倉沢頭避難小屋に到着した。地形図には小屋のマークは記されていないが、1678m点であった。登山地図での位置は間違っている。コンクリート製の、内部は6畳ほどの小さな小屋であった。扉は外れて入口に立て掛けられていた。群馬県は、有名な登山家を生みだして、山岳会も力を持っているはずなのに、避難小屋の整備はおそまつである。新潟県内の避難小屋が、立派すぎるのかもしれない。避難小屋の裏に回ると、谷向こうに武尊山の眺めが広がっていた。
 小屋の先の小ピークを越えると、谷向こうに、岩が点在する三角ピークが姿を現した。目的の笠ヶ岳であったが、谷を巻いた先で、距離も高度差もまだまだ残されていた。
 この先は、尾根の一段下を歩く、緩めの道が続いた。登山道周囲には、身の丈を越える笹藪が広がっていたが、しっかりと刈り払いが行われていた。途中、三か所程の水場があったが、水を汲む気になるのは、最上部の一か所だけであった。雨の後の山行であることを考えると、秋には水が確保できるかは、不確かなように思われた。
 みなかみ町と片品村との町界尾根に出ると、台地状の地形に出て、湿原も現れてきた。尾瀬らしい地形に変わったのはうれしいとしても、ぬかるみの中を歩くようになった。まず、左手に蛍池が現れて、湖面に青空を映す風景に目が引き付けられた。その先で、片藤沼に到着した。湖面の向こうには、至仏山と燧ヶ岳が並んで見えていた。晴天の日を待って登ってきて良かったと思う瞬間であった。燧ヶ岳の山頂部は白い筋が引かれて、雪が積もっていた。沼の前の広場からは、笠ヶ岳の山頂も近付いて見えていた。
 片藤沼から笠ヶ岳へは、もうひと登りする必要がある。この日、初めての登山者と出合った。鳩待峠から入ってきて、笠ヶ岳と合わせて片藤沼にも足を延ばしているようであった。
 笠ヶ岳の山頂手前で、鳩待峠からの登山道が合わさる。笠ヶ岳へは、岩の点在する中を、コースを見極めながら急登することになった。
 登りついた笠ヶ岳の山頂からは、文字通りに360度の展望が広がっていた。まず目を奪われるのは、至仏山の眺めである。悪沢岳と小至仏山を経て至仏山に至る登山コースを目で追うことができる。その右手には、燧ヶ岳の山頂も並んでいた。至仏山へと先に進みたい誘惑に駆られるが、湯の小屋からの日帰りでは、時間が足りない。先回の鳩待峠からの山行では、笠ヶ岳の後、至仏山まで足を延ばしたので、良しとしよう。
 目の前には、上越国境線の長大な稜線が横たわっている。左から、谷川岳、朝日岳、柄沢山、巻機山、下津川山、丹後山、中ノ岳、平ヶ岳と、考えながら山を見分けていった。一部が抜けているといっても、この稜線のほとんどを歩いており、苦しかった山行も楽しく思い出すことができた。平ヶ岳の山頂は、他のどの山よりも白くなっており、冬の訪れを告げていた。
 反対側に目をやると、片藤沼を見下ろすことができ、その向こうに武尊山が大きな姿を見せていた。日光の山々も見えていたが、東や南方面の山は逆光になって、細部が見分けられなかった。
 展望を堪能してから下山に移ったが、休んでいる間には、7名ほどが入れ違い状態で登ってきていた。笠ヶ岳は、意外に人気があるようである。もっとも、至仏山の方はどれほどの登山者が登っているかは、想像もできない。皆、鳩待峠からの登山者のようで、湯の小屋コースは、下山途中に一人すれ違っただけであった。
 下山は、避難小屋から林道終点までの急坂で足元に注意が必要であったが、そこさえ終えれば、後は林道歩きなので気は楽である。足の状態も、疲れからくる疲労はたまっているものの、かなり順調な歩きに戻ってきていた。
 晴天に誘われての行楽客による水上付近の渋滞を懸念して、温泉にも寄らずに急いだが、順調に高速に乗ることができ、遅くならない時間に家に戻ることができた。

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