一切経山、東吾妻山、高山、安達太良山、船明神山

一切経山、東吾妻山、高山
安達太良山、船明神山


【日時】 2009年8月29日(土)〜30日(日) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 29日:曇り 30日:曇り

【山域】 吾妻連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 一切経山・いっさいきょうざん・1948.8m・一等三角点本点・福島県
 東吾妻山・ひがしあづまやま・1974.7・三等三角点・福島県
 高山・たかやま・1804.8m・三等三角点・福島県
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/福島、吾妻山/土湯温泉、吾妻山
【コース】 浄土平より周回
【ガイド】 アルペンガイド「東北の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「磐梯・吾妻・安達太良」(昭文社)
【温泉】 横向温泉ホテルマウント磐梯 600円

【山域】 安達太良山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 鉄山・てっさん・1709.3m・三等三角点・福島県
 安達太良山・あだたらやま・1699.6m・二等三角点・福島県
 船明神山・ふなみょうじんやま・1667m・なし・福島県
【コース】 沼尻登山口より
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山、二本松/中ノ沢、安達太良山、
【ガイド】 山と高原地図「磐梯・吾妻・安達太良」(昭文社)

【時間記録】
8月28日(金) 18:30 新潟=(R.49、安田IC、磐越自動車道、猪苗代IC、R.115、土湯峠、磐梯吾妻スカイライン 経由)=22:00 兎平駐車場  (車中泊)
8月29日(土) 7:40 兎平駐車場―8:00 浄土平〜8:07 発―8:40 酸ヶ平分岐―9:14 一切経山〜9:24 発―9:50 酸ヶ平分岐―10:18 姥ヶ原分岐―10:54 東吾妻山―11:06 展望台〜11:20 発―12:02 景場平―12:28 鳥子平―13:01 高山―13:38 鳥子平―14:13 兎平駐車場=(土湯峠、R.115、中ノ沢 経由)=16:15 沼尻登山口駐車場  (車中泊) 8月30日(日) 6:23 沼尻登山口―6:56 湯の花採石所分岐―7:09 湯の花採石所―7:34 沼ノ平分岐―8:17 胎内くぐり―8:50 鉄山小屋―8:59 鉄山―9:24 船明神山分岐―9:34 安達太良山―9:53 船明神山分岐―10:12 船明神山―10:35 鞍部〜11:50 発―11:03 障子ヶ岩三角点―11:36 湯の花採石所分岐―12:03 沼尻登山口=(中ノ沢、R.115、猪苗代IC、磐越自動車道 経由)=14:30 新潟
 福島・山形県境に広がる吾妻連峰は、東北では飯豊・朝日に次ぐ大きな山塊である。主稜線は、一切経山から烏帽子山、東大巓、西吾妻山へと、2000m級の峰々を連ねて続いている。東大巓を境に、その東を東吾妻、西を西吾妻と呼ぶ場合がある。東吾妻を代表するピークは、一切経山であり、磐梯吾妻スカイラインの開通によって浄土平から容易に登れることから、多くのハイカーで賑わっている。その南の東吾妻山は、鎌沼や姥ヶ原の散策と合わせて、登る者も多い。高山は、東吾妻山の南東に位置し、山頂にマイクロウェーブのアンテナを乗せていることから、周囲から良く目立つ山になっている。

 安達太良連峰は、吾妻連峰と接する土湯峠から、南に向かって鬼面山、箕輪山、鉄山、矢筈森、安達太良山(乳首山)、和尚山といった峰々を連ねている。鉄山や矢筈森の西には、火口原である沼ノ原荒涼たる姿を見せており、その南の縁には、船明神山や障子ヶ岩が、岩壁を屹立させて、風景に一層の凄みを加えている。

 8月最後の週末になってしまった。7月中旬頃にテント泊の装備を大型ザックに詰め込んで準備をしたが、天候不順のために、日帰り山行に変更しているうちに夏は終わってしまった。この週末も、中部方面はぐずついた天気のようで、結局、曇り空の予報が出ている福島県方面に出かけることになった。
 土日の二日分の山の計画を考えるのは、結構大変である。まだ歩いていない安達太良山から船明神山のコースがまず思い浮かび、もう一日分は、一切経山から東吾妻山を経て高山に登ることにした。昨年の同時期に歩いていたが、雨のために高山は登っていなかった。
 磐梯吾妻スカイラインの料金節約のため、前夜入りし、兎平駐車場で夜を明かした。前夜は霧が立ち込めていたが、思ったよりも良い天気の朝になった。
 まずは、車道歩きで浄土平をめざすが、すぐに遊歩道がはじまる。浄土平の湿原の草は黄色く色付き、エゾオヤマリンドウやヤマハハコが咲いて秋の訪れを告げていた。
 浄土平から一切経山へは、肩へ直登するコースが早いが、今回はこの登山道の脇にある噴気孔から有毒ガスが検出されたということで、閉鎖になっていた。酸ヶ平経由で登ることになった。
 登りの途中、噴気孔から煙が上がっているのが見えた。緩やかな登りで前方の鞍部に到着すると、その先が酸ヶ平であった。酸ヶ平の三叉路から、避難小屋の脇を抜けると、ザレ場の登りになる。一切経山へは、ここが一番の頑張り所になる。閉鎖になっている浄土平からの登山道が合わさると、砂礫地の幅広尾根の歩きになる。前方に、一切経山の山頂も見えてくる。
 一切経山の山頂では、まず空気感謝塔の柱が現れ、その先に山頂標識と、一等三角点が置かれている。その先の下り斜面に進むと、コバルトブルーの五色沼を見下ろすことができる。はじめはガスがかかっていたが、風が強いためか、晴れ間が開けて、輝く湖面を眺めることができた。一切経山に登ってきた登山者は、みな五色沼を見下ろすことのできる下り際に集まってきていた。
 酸ヶ平に戻り鎌沼に向かった。木道の周りには、エゾオヤマリンドウが沢山咲いていた。鎌沼の西岸沿いの道は、木道の整備中ということで閉鎖になっていた。
 姥ヶ原から東吾妻山へは、樹林帯の中の見通しのない道で、一切経山よりもきつく感じる登りが続く。東吾妻山の山頂は、砂礫の広場になって、一切経山や西吾妻山の眺めが広がっていた。風が強かったので、鳥子平登山口への登山道に進み、急坂をひと下りした所の展望台で大休止した。東吾妻山だけを目標とした団体が木道の上で休憩していた。この先は、雨水で削られて歩きにくい登山道の下りになった。階段状に整備されているところも、崩れ始めていた。
 景場平は、池もあり、静かに湿原を楽しむことができる。ここまで下ると車道は近い。
 先回は、雨のために車道歩きで戻ってしまったが、今回は高山に向かうことになった。車道を横断して登山道に入ると、小さな湿原が現れた。名前の由来は知らなかったが、これが鳥子平のようである。
 高山への登りが始まるが、足も疲れてきて、辛い登りになった。登りついた高山の山頂は、マイクロウェーブの反射板が置かれた広場になっている。山頂標識もなく、登る者も少ないようであった。三角点の置かれた最高点は、藪になっており、のぞいてみたが、藪も濃いので進むことは諦めた。
 鳥子平まで戻り、車道と並行して走る登山道を歩いたが、小さなアップダウンがあり、車道歩きの方が早かったようである。キャンプ場に出てひと登りすると兎平駐車場に戻ることができた。
 ここのところお気に入りになっている横向温泉で汗を流し、食料の買出しを行ってから、沼尻登山口に向かった。沼尻温泉から沼尻スキー場の管理道を上がっていくのだが、未舗装で、登り始めが急であった。運が悪いことに対向車が来て、すれ違いに苦労することになった。
 沼尻登山口には広い駐車場が設けられていた。遅い時間にもかかわらず、下山してくるグループがいた。マットのようなものを背負っており、登山装備とも違って見えた。どうも、温泉が湧き出ている場所で野湯を楽しんできたようである。
 周回コースであるが、最初に鉄山に登る予定であった。最初の目的地の湯の花採取所へは、沢沿いの林道を使うルートもあるのだが、入口には通行止めの看板も立てられて、登山地図にも危険個所が多数あると書いてある。昨夕に、この道から下山してくる登山者を見かけていたが、無理をせずに尾根コースを使うことにした。
 尾根沿いの登山道に進むと、すぐに白糸の滝展望台に出た。谷奥に白く糸を引いたような滝が見えていた。湯の花採取所は、その奥なので、そこまではかなりの距離があるようであった。
 尾根沿いには、良く整備された道が続いた。急な所にはジグザグの道が設けられていた。前方にピークが迫ってきた所で、湯の花採取所への道が左に分かれた。直進方向は、船明神山からの下りに使う予定の道である。
 草付きの急斜面の下りになった。眼下には、樋をめぐらせた湯の花採取所の眺めが広がった。谷間の沢には作業のために木道状の橋がかかって、渡るのに問題はなかった。樋で運ばれている水に手を入れてみたが、冷たかった。熱い源泉は上流にあるようだが、有毒ガスの発生が検知されたという掲示もあったので、すみやかに通過することにした。
 上流に向かって右岸沿いの歩きがしばらく続いた。谷間は赤茶けた山肌がむき出しになって、荒涼とした眺めが広がるようになった。沢の水も白く濁って、火山性の活動が活発であることがうかがわれた。左岸に移ると、前方に石垣状の土手が現れた。砂防を目的に作ったものかもしれないが、谷の半分しか閉じていない。その上が沼ノ平への登山道の分岐になるが、この道は1997年9月15日の有毒ガス噴出による4名の死亡事故以来閉鎖になっている。
 ここから左の尾根上に向かっての急登が始まった。最初に岩を巻きながら来た方向に戻るように高度を上げた後に、谷奥に方向を変え、斜上しながらの歩きが続く。谷向こうの障子ヶ岩が次第に目の高さに変わってきた。
 再び来た方向に向きを変えて急登を行うと、大岩の下に出た。岩の下に人が這ってようやく通過できる隙間があいていた。ザックを外して先に穴の向こうに押し出してから通過した。ここが地図に名前の書かれている胎内岩のようであった。この穴を抜けると尾根上であった。この区間の登りは、地図の破線と違って蛇行しており、穴の場所も地図よりも西によっている。
 この先は、幅広尾根の灌木帯の歩きになった。沼ノ平や船明神山の眺めも広がってきた。この日のコースは、沼ノ平を一周して、その眺めの変化を楽しむことである。踏み跡が判りにくいところもあり、南の崖際によると、深い岩の亀裂もあるので、忠実に道を辿る必要があった。
 前方に石組のケルンが現れ、これには兎の耳のように二本の金属の板が頭に取り付けられていた。石楠花の塔とのことだが、この形は兎を模したものなのだろうか。
 その先で鉄山避難小屋に到着した。ここから安達太良山まではお馴染みの道である。
 砂礫の尾根を辿って鉄山に到着すると、ガスが流れてきて、前方の安達太良山や沼ノ平の眺めが閉ざされてしまった。このガスは流れて、すぐに展望が開けた。この日は、この見え隠れが何度も繰り返されることになった。
 馬ノ背を歩いて安達太良高原方面の登山道が合わさると、大勢の登山者で賑わうようになったが、山岳マラソンの大会が行われており、ランナーが走っていた。廊下と同じに登山道は走るものではないと言いたかった。ちょと急な斜度になると、こちらの歩く速さと同じになって、傾斜がゆるむと追い越していった。
 ランナーのチェックポイントは乳首の下であったが、山頂は、登ってくるランナーもいて賑わっていた。岩場には羽虫がまとわりついていて落ち着いて休めないので、すぐに引き返した。
 馬ノ背の手前で船明神山への登山道が分かれる。砂礫に覆われた細尾根からは、沼ノ平へ落ち込む岩肌の眺めを楽しむことができた。いつもとは違った角度での名前を楽しむことができた。
 尾根を登り切った先が船明神山の山頂であるが、山頂標識はない。沼尻への下山は、東に向かう細尾根を辿る。砂礫の痩せ尾根の一段下をトラバースした後、崖の縁を辿り、その先の鞍部へは南に派生する尾根を少し下ってから、崖際に戻る。鞍部には小さな池が緑の水をたたえていた。
 池の上に出たところで沼ノ平の眺めが広がったので、昼食をとることにした。ここらで休みをとらないと下山してしまう。  この先は障子ヶ岩の上を辿ることになるのだが、南側の灌木帯をトラバースするため、崖の眺めは得られなかった。三角点付近で崖の縁に出て、沼ノ平の最後の眺めになった。この先は、灌木帯の中の一気の下りになり、湯の花採取所との分岐に戻ることができた。 今回歩いた沼尻からのコースは、安達太良山への登山コースの中でも、火山性の眺めを堪能できることでは随一のものであった。

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