唐松岳、燕岳

唐松岳
燕岳


【日時】 2009年7月11日(土)〜12日(日) 前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 11日:曇り 12日:曇り後雨

【山域】 北アルプス北部
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 唐松岳・からまつだけ・2696.4m・二等三角点・長野県、富山県
【コース】 八方尾根往復
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳、黒部/白馬町、欅平
【ガイド】 アルペンガイド「立山・剣・白馬」(山と渓谷社)、山と高原地図「鹿島槍・黒部湖」(昭文社)
【温泉】 第一郷の湯 500円

【山域】 常念山脈
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 燕岳・つばくろだけ・2762.9m・二等三角点・長野県
【コース】 中房温泉より
【地形図 20万/5万/2.5万】 高山/信濃池田、槍ヶ岳/有明、槍ヶ岳
【ガイド】 アルペンガイド「上高地・槍・穂高」、山と高原地図「上高地・槍・穂高」(昭文社)
【温泉】 有明荘 600円

【時間記録】
7月10(金) 17:20 新潟=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、白馬 経由)=21:30 黒菱平  (車中泊)
7月11(土) 4:54 黒菱平―5:42 八方池山荘―6:32 八方池〜6:45 発―7:56 丸山ケルン―8:54 唐松岳山頂山荘―9:15 唐松山〜9:33 発―9:55 唐松岳山頂山荘―10:46 丸山ケルン―12:08 第三ケルン〜12:18 発―13:26 八方池山荘―14:25 黒菱平=(白馬、R.148、細野 経由)=17:15 中房温泉駐車場  (車中泊)
7月12(日) 4:25 中房温泉駐車場―4:42 中房温泉―5:06 第一ベンチ―5:27 第二ベンチ―5:54 第三ベンチ―6:23 富士見ベンチ―6:50 合戦小屋―7:07 合戦沢の頭―7:48 燕山荘―8:25 燕岳〜8:45 発―9:21 燕山荘―9:50 合戦沢の頭―9:58 合戦小屋―10:13 富士見ベンチ―10:29 第三ベンチ―10:45 第二ベンチ―11:00 第一ベンチ―11:22 中房温泉―11:32 中房温泉駐車場=(R.147、豊科IC、長野自動車道、上信越自動車道、北陸自動車道 経由)=15:50 新潟
 唐松岳は、後立山連峰にあり、八方尾根の上部に位置する山である。白馬岳や五竜岳の眺めも素晴らしく、高山植物も豊富で、八方尾根にかかるロープウェイとリフトを乗り継げば、1850m地点からの歩き出しになり、コース上で難しいところもないため、北アルプスの入門コースになっている。

 燕岳は、ツバメが羽を広げた姿に似ていることから名前が付けられているという。風化した花崗岩が立ち並ぶ山頂、コマクサをはじめとするお花畑、槍ヶ岳を中心とする大展望、整備の整った山小屋、槍ヶ岳への表銀座の入口の山、こららの点から、北アルプスの入門コースとして人気が高い山になっている。

 先週は、茂倉岳でホソバヒナウスユキソウを見たが、図鑑をめくっているうちにハッポウウスユキソウが気になってきた。八方尾根から唐松岳は、ここのところ毎年のように訪れているが、8月に入ってからで、梅雨のさなかの今頃に訪れたことはなかった。
 前夜入りとして白馬から黒菱林道に進むと、濃霧につつまれた。車の直前と道の両幅しか見えない状態での緊張の運転が続いた。黒菱平の駐車場に到着したが、駐車場の広がりも見分けがつかない状態であった。何度も訪れている場所で、地形は判っているので助かった。駐車場奥の片隅に車を停めて寝た。
 雨であったら八方池付近まで歩いて花を見るだけでも良いなと思っていたのだが、翌朝起きると、真っ赤な朝焼けが広がっていた。黒くシルエットになって浮かんでいるのは妙高連峰と戸隠連山である。いざ唐松岳の山頂へと歩きだした。
 まずは、黒菱第三リフト、グラートクワッドの二本のリフトを登ることになる。ハクサンダイゲキやニッコウキスゲの花が咲いているが、花の写真は下山時にして先を急いだ。
 1時間弱の登りでリフト終点の八方池山荘に到着した。静かな八方尾根を楽しむには、リフト運行開始前に登ってくる必要がある。夏山シーズン前ということで、小屋泊の写真愛好家もいないようであった。
 登りは尾根沿い、下山はトラバースの遊歩道を歩くことにした。八方尾根を登り始めると、さっそくハッポウウスユキソウが現れた。ハッポウウスユキソウは、八方尾根の特産種であるが、ミネウスユキソウの変種ということで地味な花である。そこかしこに束になって咲いているので、あたりまえの花になって、かえって目立たなくなっている。
 八方池までは急いで登った。池の手前にも、もう一つの池が出現していた。池の周りには誰もおらず、独り占めの池になった。白馬連峰の稜線部は雲に隠され、池にはさざなみが立って、鏡のような水面に山が映るという眺めは得られなかった。残雪に覆われた沢や岩壁の風景は迫力を増し、これはこれで見ごたえのある眺めであった。
 尾根上に戻ると、五龍岳方面の眺めが開けるが、こちらも山頂部は雲に隠されていた。唐松岳も登っていくうちに雲の中に入ってしまいそうであった。
 露岩帯の尾根を過ぎると、下ノ樺の林に入る。ひと登りしてトラバース道に変わると、シラネアオイとオオサクラソウの群落が現れた。オオサクラソウは、数本が咲いているのはこれまでも見てきたが、ここなら時期を合わせれば確実に見られるようである。
 夏にも残る雪渓の縁に出ると、短い距離ではあったが、夏道が覆われて雪渓を歩くところも現れた。登りはともかく下りは注意が必要かなと思ったが、下山の時には、山小屋のスタッフがスコップをかついで出動しており、ステップが切られていた。  丸山ケルン下にも雪渓が広がっていたが、傾斜はゆるくスプーンカットに足を合わせて登れば充分であった。
 丸山ケルン脇の稜線に上がると、ガスが濃くなった。この先はトラバース道になるが、急斜面の雪渓のトラバースがあり、尾根通しに歩くようになっていた。ハイ松が体に触るものの、しっかりした道が付けられいた。小屋が近付いたところで、再びトラバース道に戻ったが、この先の雪渓の横断部には、溝状に雪が掘り込まれており、安全に通過できるようになっていた。
 小屋の手前の登山道脇の草原には、ミヤマクワガタやクロユリが現れて、写真撮影のために足が止まった。
 唐松岳山頂山荘は、昨年に引き続き増築工事中であった。完成時にはそうとうな収容人員になりそうである。八方尾根から唐松岳へのコースの人気のほどがうかがえる。
 小屋の脇の砂礫地にはコマクサが生えているが、花はようやく蕾が膨らんだところであった。
 最後の急坂を頑張ると、唐松岳の山頂に到着した。ガスに覆われて、展望は全くなかった。いつもは賑わう山頂に、他に登山者は誰もいなかった。
 下りは、花を撮りながらの歩きになった。小屋泊りのなのか、登ってくる登山者も多かった。八方池まで戻ると、周囲は軽装のハイカーで賑わっていたが、真夏の混みようと比べれば、静かといっても良かった。
 下りは、木道の敷かれたトラバース道に進んだが、ユキワリソウやハッポウタカネセンブリを楽しむことができた。黒菱平の湿原はニコウキスゲが満開で、雲が晴れて姿を現してきた白馬三山と共に美しい風景を作っていた。
 駐車場に戻り、時間を確認すると、今年から運行開始になったバスが、もう少しすると白馬駅から出発するようであった。林道の途中で出会うと、すれ違いに苦労するため、急いで車を走らせた。
 いつもの第一郷の湯で温泉に入って登山の締めくくりにした。
 今回の八方尾根は、夏山シーズンとは違った花を見せてくれた。花の山は、半月ほどの間隔で訪れてみる必要があるようである。
 翌日の山は、コマクサが咲き始めたという情報が入った燕岳を登ることにした。人気の山であるが、この時期なら空いているはずである。
 中房温泉への道は、舗装道路ながら細く曲がりくねっており、対向車に気を使いながらの運転が続く。有明荘を過ぎた先の沢の両岸に駐車場が設けられているが、夕方にもかかわらず七割ほどが埋まっていた。静かに夜を過ごせそうな場所を選んで車を停めた。
 翌朝は、日帰りのため、夜明けと同時に歩きだした。坂道をひと汗かくと中房温泉に到着する。夏山シーズンは、夜明け前から混み合う登山口であるが、誰もおらず、静けさがただよっていた。
 気合いをいれて登りに取り掛かった。北アルプスの三大急登と呼ばれるが、細かいジグザグが切られており、体力的に楽になっている。急登を突破して尾根上に出ると、少し下った先が第一ベンチである。水場が設けられているが、歩き始めということもあり、寄ったことはない。
 この先も急登が続く。前日の歩きの疲れもあり、草臥れてきた。幸い、GPSでどれほど登ったのか判るのが、歩きの助けになった。第二ベンチ、第三ベンチ、富士見ベンチを過ぎると、ようやく合戦小屋に到着した。ここまで登れば、燕山荘まではもうひと息である。朝の早い時間とあっては、名物のスイカも食べる気にはなれない。
 合戦小屋からひと登りで合戦沢の頭に到着する。槍ヶ岳の展望が開け、虹がかかっていた。珍しい風景であるが、朝の虹は天気が崩れる印といわれており、喜んでばかりもいられない。燕山荘も見えているが、まだ高いところにある。燕岳を右手に眺めながらの登りを続けた。
 山荘手前は、夏道が残雪のために通行止めになっており、尾根通しに登るように指示されていた。
 山荘に到着して尾根に進むと、槍・穂高連峰の眺めが広がった。燕岳も大岩を並べた特徴のある山頂を見せていた。
 山頂へは、大岩とコマクサを眺めながらの歩きになった。コマクサは咲き始めで、開いた花を捜して写真を撮る必要があった。
 岩を巻いて登っていくと、誰もいない燕岳の山頂に到着した。急いで登ってきたかいがあり、曇り空ながら、周囲の展望が広がっていた。大天井岳から槍ヶ岳に至る表銀座コース。烏帽子岳から野口五郎岳、水晶岳(黒岳)に至る裏銀座コースなど目で追うことができた。烏帽子岳の奥には立山・剱岳が見えているはずであったが、これらの山はガスで隠されていた。
 風が強く、岩陰で休んでいると、黒雲が湧いてきた。天気は急激に悪くなってきた。岩峰が連なる北燕岳まで足を延ばしたかったが、下山に移ることにした。
 足を速めて下っていくうちに、雨が降り出した。途中でザックカバーと雨具の上着は着たものの、雨の影響はそれほど受けずに下山することができた。登山口近くまで下りたところで、登り始めた団体とすれ違った。時間的には、山荘まで登り着くことはできるかもしれないが、雨の中の登りは苦労しそうである。
 車に戻り、有明荘の温泉に入って、登山の締めくくりを行った。

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