白馬岳、霧ヶ峰

白馬岳
霧ヶ峰


【日時】 2009年6月27日(土)〜28日(日) 前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 27日:晴れ 28日:曇り

【山域】 後立山連峰北部
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 白馬岳・しろうまだけ・2932.2m・一等三角点本点・長野県、富山県
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳/白馬町、白馬岳
【コース】 大雪渓より
【ガイド】 アルペンガイド「立山・剣・白馬岳」(山と渓谷社)、山と高原地図「白馬岳」(昭文社)
【温泉】 第一郷の湯 500円

【山域】 霧ヶ峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 車山・くるまやま・1925.0m・二等三角点・長野県
 蝶々深山・ちょうちょうみやま・1836m・なし・長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 長野/諏訪/霧ヶ峰
【コース】 八島ヶ原湿原入口より
【ガイド】 アルペンガイド「美ヶ原・霧ヶ峰」(山と渓谷社)、山と高原地図「八ヶ岳・蓼科・美ヶ原・霧ヶ峰」(昭文社)

【時間記録】 
6月27日(金) 17:30 新潟=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、白馬 経由)=21:30 猿倉登山口  (車中泊)
6月27日(土) 4:45 猿倉登山口―5:40 白馬尻―7:11 葱平下―8:55 村営小屋―9:55 白馬岳〜10:50 発―11:50 村営小屋―13:07 葱平下―13:57 白馬尻―15:00 猿倉登山口=(R.148、信濃大町、R.147、松本、牛立、アザレアライン、扉峠、ビーナルライン 経由)=20:00 八島ヶ原湿原入口  (車中泊)
6月27日(日) 6:00 八島ヶ原湿原入口―6:58 沢渡―7:35 車山湿原蝶々深山分岐―8:06 車山肩―8:40 車山―9:00 車山湿原蝶々深山分岐―9:25 蝶々深山〜9:38 発―9:57 物見岩―10:53 八島ヶ原湿原入口=(ビーナスライン、扉峠、R.142、R.152、上田、上田菅平IC、上信越自動車道、北陸自動車道 経由)=15:50 新潟
 白馬岳は、夏にも残る大雪渓や、様々な高山植物が咲き乱れるお花畑で、北アルプスの中でも登山者に人気の高い山である。シロウマの名前を冠した花も多いが、ツクモグサとウルップソウは、北海道と本州では八ヶ岳と白馬岳でしか見られない。

 霧ヶ峰は、長野県中央部に位置する緩やかに起伏する高原で、美ヶ原の南に連なっている。霧ヶ峰の東山麓は別荘地やスキー場の開発が進み、最高点の車山の山頂までリフトが延びているが、八島ヶ原湿原や車山湿原など、花に富んだ自然が残されている。

 今が盛りの花として、ツクモグサを見たかったが、この花は本州では八ヶ岳と白馬岳でしか咲かない。八ヶ岳の登山を計画していたものの、天気予報の関係で東北北部に足が向いたりしているうちに、この山での花の時期は過ぎてしまったようである。次の目標として、白馬岳が浮かんできた。この週末の長野県の天気は良さそうなため、白馬岳を目指すことにした。当初は、栂池高原からの1泊2日のテント山行の準備をしていたが、直前になって、二日目の天気予報が曇り後雨というものになった。悪天候の中の稜線歩きは、困難なものになる。土曜の晴天にかけて、大雪渓からの日帰りを行うことにした。
 登山口で寝る時間を作るため、土曜日に日付が変わる前に高速を下り、久しぶりに1000円以上の高速料金を払うことになった。登山口の猿倉は、昨年の8月にも入っているため、様子は把握できており、林道もスムーズに走ることができた。
 猿倉の駐車場は、隅の方に十数台が停められているだけで、夏山シーズンとは大違いの静けさが漂っていた。夜中には、満天の星空が広がり、翌日の登山の期待が高まった。
 4時過ぎの早朝の起床になったが、すでにあたりは明るくなっていた。夏山シーズン盛の8月よりも、6月は朝が早く、山行にも余裕ができる。
 白馬の稜線が朝日に輝いており、心がときめいた。梅雨の間の僅かなチャンスを掴んだようである。猿倉荘で登山届を書いたが、周囲に人気はなかった。
 歩き始めの1時間程は林道歩きになる。谷奥に白馬岳の眺めが広がり、時折足を止めて写真を撮ることになった。梅雨明け後の夏山シーズンと違って、雪をたっぷりとまとっていた。昨年はテント泊装備であったため、この林道歩きにも体力を消耗したが、今回は日帰り装備であったため、足は軽かった。
 林道終点からの登山道は、大雪渓見物のための観光客も入ることから、木道も敷かれて良く整備されている。登山道脇の灌木の下に、沢山のキヌガサソウが咲いており足が止まった。大雪渓末端の白馬尻が近付くようになると、雪渓が消えた後の草付きには、サンカヨウが一面に広がっていた。
 「おつかれさん ようこそ大雪渓」の大岩が現れて、白馬尻に到着する。白馬尻小屋は、毎年夏に組み立て直されるようであるが、建物は出来ていたが、内部の整備はまだのようであった。
 夏山シーズは、小屋前の広場は、見物客や登山者で大賑わいであるが、人気は無く、雪渓の上を歩く数人が見えるだけであった。小屋前の広場から下りた所から雪渓歩きが始められる状態であった。
 今回は、10本爪アイゼンを履いた。先週の岩木山での六本爪軽アイゼンよりも安定している。ピッケルも持ってきていたが、これは使わずに終わった。
 広場前の雪渓には穴が開いていたが、その上を注意して横断した。尾根の張り出し部を回り込むと、青空に浮かぶ真っ白なピークに向かって雪渓が続くのが見えるようになった。夏山シーズンでは、登山者が列を作っているが、広大な雪渓の上にごま粒のように数人の登山者がいるだけであった。
 なだらかに続くように見える雪渓であるが、ところどころで傾斜が増し、滑落の危険性はないものの、息が切れた。スキー場のゲレンデ登りも、距離感が掴めずに体力的にきつくなるが、雪渓登りも体力が必要になる。
 雪渓の上には、大小の岩が転がり、落石の注意が必要になる。雪渓上部になって、杓子岳の下にさしかかると、落石の音がたびたび聞こえるようになった。カラカラと音を立てるのは、小さな小石。ザーと音を立てるのは大きな石で、斜面の小石を巻きこんで落ちてくる。ポピュラーなコースであるが、大雪渓での落石事故は度々起きており、危険地帯をできるだけ早く通過すべく、登りの足に力を込めることになった。
 谷の左右は岩壁が連なり、展望は素晴らしい。特に、杓子岳から落ち込む尾根にある天狗菱の岩峰は、登るにつれて姿を変え、カメラを取り出して撮影せずにはいられない。
 昨年の8月は、雪渓の末端から右手の尾根に取り付いてから左手にトラバースしていき岩室跡に出た。今回は直登して岩室跡に出たところでアイゼンを一旦外した。GPSの軌跡を比較すると、標高にして90mを一気にショートカットしたことになる。  両脇を雪渓に挟まれた岩屑の転がる尾根を、夏道に従ってジグザグに登ることになった。夏山の盛りには、周囲の草付きのお花畑が見事なところだが、ハクサンイチゲやシナノキンバイがようやく咲き始めたところで、花に関しては少しさびしかった。
 尾根を登っていくと、再び雪原に突き当たった。アイゼンを履き直した。かなりの急斜面の直登になった。幸い、ステップが切られており、慎重に登れば良い状態であったが、ここが一番の難所になった。この上が小雪渓のトラバースであった。夏山ガイドでも、小雪渓のトラバースは要注意と書かれているが、1m幅の棚が切られており、安心して通過することができた。
 トラバースを終えた所で夏道の現れた尾根に突き当たったが、アイゼンを外すのがいやなので、脇の雪渓を登った。谷が右手に方向を変えて傾斜が緩むと、残雪は夏のお花畑になる草付きに広がるだけになったので、アイゼンを外して夏道を歩くことになった。谷の上方には、村営小屋が見えてきたが、体力を消耗して、ここからの標高差200m程が辛い登りになった。
 ようやく村営小屋に到着。葱平付近からは、雪渓の雪融け水が脇を流れる状態になっていたが、村営小屋下の水場をのぞくと、使える状態になっていた。テント場には、一張りのテントが置かれているだけであった。
 階段状にステップが切られた雪原をひと登りすると、稜線上に出た。杓子岳や鑓ヶ岳、立山・剱岳、毛勝三山、旭岳の展望が広がった。白馬岳の山頂は、まだ高い所にあるが、さっそく今回の目的の花を見ながら歩くことになった。ウルップソウは、咲き始めで、房の下部に青い花を開いているものが多かった。花自体は、そこかしこに咲いていた。一面に咲いているのは、オヤマノエンドウとミヤマキンバイであった。目的のツクモグサは、白馬岳に向かって少し登ると、斜面のあちらこちらに咲くのが目に入ってきた。花の写真を撮りながらの登りになった。
 晴天に恵まれて、白馬山荘では、屋根での布団干しに精を出していた。山荘から山頂までの最後の登りは、足が止まりそうになってきたが、草原一面に広がるツクモグサの眺めに元気をもらった。
 ようやく白馬岳山頂に到着。誰もいない山頂であった。青空のもとの誰もいない山頂は、夢の中のように現実感が失われていた。お気に入りのポイントに陣取って、山頂からの展望を楽しんだ。大雪渓を見下ろすと、登っている登山者も見えていた。休んでいる間に、他の登山者も到着するようになった。
 写真を撮りながら、山頂を下った。大雪渓コースの下りは、時間的には短くてすむ。小雪渓のトラバース後の急斜面の下りに注意し、大雪渓に再び下り立てば、後は足を滑らしながらの一気の下りになった。
 猿倉から大雪渓を経由しての白馬岳は、標高差は1700mあるが、雪渓登りのために時間が短縮でき、日帰りが可能となる。
 白馬岳の日帰りはさすがに疲れて、翌日の山として、簡単な山を考える必要がある。そこで思いついたのが、霧ヶ峰であった。以前、ピークハントとして車山だけは登っているが、八島ヶ原湿原や車山湿原など、花を楽しめそうな所もありそうである。
 松本を通過すると、アザレアライン、ビーナスラインと山岳道路のドライブになった。 八島ヶ原湿原には、広い駐車場が設けられており、トイレも設けられていたので、ここで夜を明かすことにした。夜中にも数台の車が停められていた。
 霧ヶ峰の最高点は車山であるが、これだけを登るならば、車山肩から歩き出せば短時間ですむ。しかし、その他のピークや湿原を結んで歩くとなると、登山道が沢山開かれているだけに難しくなる。白馬からの途中でツタヤを見つけて登山地図を買ってきたので、コースを検討した。
 早朝、登山者の物音で目を覚ました。ゆっくり寝ていても良いと思っていたが、そうもいかない。湯を沸かしてコーヒーを飲んでいると、大型三脚を持ったカメラマンが出入りしていた。朝霧に包まれた湿原の風景が目的であろうか。実際には、曇り空で、ぼんやりとした光線具合であった。
 ビジターセンターの脇のトンネルで道路下を通過すると、湿原上の広場に出た。見下ろす八島ヶ原湿原は、思ったよりも広かった。湿原の周りに木道が敷かれていた。湿原の周りを緩やかに起伏する峰が取り巻いており、レーダードームが置かれていてそれと判る車山は、かなり遠い距離に見えていた。
 まずは、湿原を反時計回りに歩いて沢渡を目指した。湿原の縁を行く木道沿いには、アヤメ、グンナイフウロの花が多く見られ、湿原にはレンゲツツジやコバイケイソウが満開になっていた。途中で林の中に入ると、盛りを過ぎ気味であったが、スズランの花も見ることができた。スズランは園芸種ではお馴染であるが、天然物は初めてであった。
 谷が狭まると、御射山に出たが、ここからは未舗装の林道歩きになった。時折、ビーナスラインを走る車の騒音が、山のしじまを破った。
 沢渡で一旦ビーナスラインに飛び出すが、登山道に進む。周辺には山小屋があり、玄関前に間違って入り込んでしまったが、正しい道は沢の左岸沿いに続いていた。笹原の中を緩やかに登っていくと、車山湿原に出た。車山や蝶々深山に囲まれたかなりの規模の湿原であった。草原化が進んだ湿原であるが、レンゲツツジが一面に広がっていた。八島ヶ原湿原入口よりもレンゲツツジのお花畑は見事であったが、ハイカーや観光客は、僅かであった。レンゲツツジの花の写真を撮りながらの歩きになった。
 蝶々深山との分岐を過ぎ、そのまま車山乗り越しに向かえば車山の山頂は近いが、山腹のレンゲツツジが見事なので、車山肩に続く遊歩道に進んだ。車山肩には広い駐車場が設けられているが、停められている車は少なかった。
 車山の山頂へは、山頂まで続く砂利道の歩きになった。ショートカット道は閉鎖になっていた。山頂が近付いて東側の展望が広がると、蓼科山や八ヶ岳の眺めが広がった。
 台地状になった山頂をレーダードームに向かうと、急に人声で賑やかになった。車山の山頂直下までリフトが延びてきており、観光客も登ってきていた。世界遺産は、認定後に景観の保護が義務付けられており、損なわれたと判断された場合には、認定を外されるという。そういった制度であったなら、霧ヶ峰も、日本百名山から外されるところである。八島ヶ原湿原からここまでの静かな歩きからすると、残念な山頂であった。もっとも、霧ヶ峰を代表するのに、車山の代わりに蝶々深山を持ってくれば良いわけではある。
 山頂直下のリフト駅脇から、リフト沿いに続く歩道に進む。リフトから分かれて、つづら折りの道を下ると、車山乗り越しに出る。東に進めば、白樺湖方面であるが、山荘や別荘地などが広がって、自然は損なわれている。
 折り返して再び車山湿原に戻ってきた。車山山頂の賑わいに反して、あいかわらず人気はまばらであった。見事なレンゲツツジのお花畑が広がっているのに、少し足を延ばそうとする者がいないのは不思議である。
 蝶々深山に向かっての登りに取り掛かった。時折振り返っては、湿原に広がるレンゲツツジの花の眺めを楽しんだ。蝶々深山の山頂は、ガレ場状の台地になっていた。男女倉山に向かう緩やかな稜線の眺めも広がり、開放的な山頂であった。また別な機会には、男女倉方面も歩いてみたくなった。
 蝶々深山から物見岩に向かっては、緩やかに起伏する草原の歩きになった。物見岩を過ぎると、八島ヶ原湿原を見下ろしながらのつづら折りの下りになった。登山道の周囲には、グンナイフウロの花も多く、楽しめる道であった。小さな沢を渡ると、その先で奥霧小屋に出て、八島ヶ原湿原の周回木道に出た。
 八島ヶ原湿原の木道は、ハイカーや観光客で大賑わいになっていた。鎌ヶ池や八島ヶ池の眺めを楽しみながら歩いていくと、駐車場下に戻ってきた。
 駐車場は、満車状態になっており、八島ヶ原湿原の人気の度合いが知られた。それに比べて、車山湿原の静けさが不思議であった。駐車場から見える鷲ヶ峰にも心が惹かれたが、これも次回の楽しみにすることにした。体力を使った山行の翌日の山として霧ヶ峰は手ごろなので、また来る機会もあると思われる。

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