馬ノ神岳、猫魔ヶ岳、雄国山

馬ノ神岳
猫魔ヶ岳、雄国山


【日時】 2009年2月28日(土)〜3月1日 前夜発1泊2日各日帰り
【メンバー】 2月28日:二名(T)、3月1日:4名(T、I夫妻)
【天候】 2月28日:晴れ 3月1日:晴れ

【山域】 南蔵王 【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 馬ノ神岳・うまのかみだけ・1551m・なし・宮城県
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/白石、上山/白石、遠刈田、蔵王山、不忘山
【コース】 みやぎ蔵王白石スキー場
【ガイド】 なし
【温泉】 喜多方蔵の湯 500円

【山域】 磐梯山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 猫魔ヶ岳・ねこまがたけ・1404.0m・一等三角点補点
 雄国山・おぐにぬま・1090m・なし・福島県
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山/磐梯山
【コース】 猫魔スキー場より雄子沢川登山口
【ガイド】 なし
【温泉】 ラピスパ裏磐梯 500円

【時間記録】
2月27日(金) 19:30 新潟=(磐越自動車道、東北自動車道 経由)=22:00 国見SA  (車中泊)
2月28日(土) 5:30 国見SA=(東北自動車道、白石IC 経由)=6:30 みやぎ蔵王白石スキー場〜7:55 発―8:26 馬ノ神岳林道入口―8:30 東尾根取り付き―9:52 東尾根上―10:57 馬ノ神岳〜11:30 発―13:57 馬ノ神岳林道入口―13:29 みやぎ蔵王白石スキー場
3月1日(日) 9:00 雄国第1ロマンスリフトリフト―9:28 1820点―9:59 猫魔ヶ岳〜10:13 発―10:38 1820点上の下降点―11:28 雄国沼休憩小屋―11:50 尾根上〜12:24 発―12:42 雄国山―13:36 1164mピーク―14:04 雄子沢登山口=(R.459、喜多方、会津坂下IC、磐越自動車道 経由)=15:00 新潟
 馬ノ神岳は、南蔵王の主稜線の屏風岳の南から水引入道を経て東に延びる尾根上のピークである。白石方面の山麓からは、不忘山、水引入道、馬ノ神岳の三山が連なるように見える。

 猫魔ヶ岳は、磐梯山の西に八方台を挟んで向かい合い、雄国山、厩岳山、古城ヶ峰などとともに古い火山の外輪山を形成している。その中心のカルデラ湖である雄国沼は、福島県では尾瀬の大江湿原と並んでニッコウキスゲの大群落地として有名で、シーズンともなれば、観光客やハイカーで大賑わいとなる。

 蔵王連峰は、多くの登山道が開かれて、登山者に親しまれている山域である。その中にあって、馬ノ神岳は、山頂までの登山道が開かれていない山である。実際には、山頂近くまで絶滅寸前のザオウヒノキの観賞路が通じているが、その最高点から山頂までは藪こぎになるようである。
 以前、Tさんと後烏帽子岳にスノーシュー歩きで登り、ヒマラヤヒダを思わせる屏風岳の白く染まった岩壁を眺め、再びあの展望をと思っていた。地図を見ると、馬ノ神岳は、屏風岳と向かい合い、展望は良さそうであった。登りに使えそうな尾根も東方面に二本落としており、スノーシュー歩きにも向いていそうであった。藪こぎと残雪期の二度にわたって登っているTさんに声をかけて、一緒に登ることにした。
 歩き始めを、みやぎ蔵王白石スキー場にするか、南蔵王青少年野営場にするか迷うところだが、Tさんが問い合わしてくれたところ、除雪は入口までということで、みやぎ蔵王白石スキー場から歩き出すことになった。
 高速道で夜を過ごして、白石からみやぎ蔵王白石スキー場に向かう途中、バラ色に染まった横に広がるスカイラインを見せる馬ノ神岳の眺めが目に入ってきた。スキー場の入口からも、馬ノ神岳の山頂が良く見えていた。
 みやぎ蔵王白石スキー場には、500台といわれる広大な駐車場が設けられており、その一番奥が、神嶺林道口になる。ここは、以前には、不忘山から水引入道山への周回のために訪れたことがある。
 約束の時間に到着したTさんと歩きだした。林道の雪は少なく、スキー場の整備車が表面を均したような感じで、スキーの跡が残されていた。歩くスキーのコースとして利用されているようであった。
 雪は締まっていたが、スノーシューを履いて歩きだした。水引入道の山麓を辿る林道歩きが続いた。水引入道の登山道を過ぎ、垂清水沢を渡った先の尾根が下りに使う予定の南東尾根。尾根を北に回り込んだ所から林道が始まっている。林道入口には、馬ノ神岳登山口という標識が置かれているが、ザオウヒノキの観察路である。次の田代沢を渡ったところから、東尾根から南東に分かれる枝尾根に取り付いた。
 尾根上は、カラマツ林で、あまり手入れされていないため、枝が延びて歩き難くなっていた。スノーシュー歩きなら我慢のうちであるが、山スキーだとわずらわしく感じられそうであった。歩く者もいるようで、赤布も所々に残されていた。幅広尾根のため、GPSで方向を見定めながら歩く必要があった。
 高度を増すと、ブナ林が広がるようになって、快適なスノーシュー歩きになった。傾斜が所々で増すところもあったが、スノーシューでの登りに向いた傾斜であった。標高差450mほどの登りで、東尾根上に出ることができた。木立の間から後烏帽子岳の姿を見ることもでき、展望の期待が高まった。
 ブナに囲まれた尾根をひと登りすると、灌木帯に変わり、雪綾の登りが始まった。谷向こうには、後烏帽子岳の遮るもののない展望が広がっていた。1409m標高の小ピークは、木立が密生していた。藪を通過して下り口に立つと、目の前にピラミッド型をした馬ノ神岳がそそり立っていた。下からは、横長のピークに見えていたので、この眺めは意外であった。山頂手前は、傾斜が増すようなので、登るルートを眼で追った。
 馬ノ神岳の左には、水引入道と不忘山のピークが並んで見えていた。屏風岳の岩壁も目の前に迫っていたが、一部が馬ノ神岳に隠されていたので、山頂からの眺めを期待することになった。
 馬ノ神岳の登りは、1409m標高の小ピークから鞍部越しに見たほど険しくはなかったが、山頂手前で尾根通しは傾斜があったので、左手の木立ち方向に斜上することになった。硬い雪の上に柔らかい雪が乗っており、スノーシューの爪が食い込まずに滑りやすくなった。短い距離であったが、足元に注意が必要であった。アイゼン・ピッケルは持ってきていなかったが、そろそろ必要な時期になってきたようである。
 傾斜が緩むと、灌木が頭を出した馬ノ神岳の山頂に到着した。目の前の屏風岳の眺めに思わず引き込まれた。岩壁は白い雪をまとい、襞状の陰影を見せていた。水引入道への尾根の続きも目で追うことができた。写真を撮るために崖の縁に立っていると、冷たい風に体が冷えてきた。
 南面の雪原に腰を下ろして、大休止にした。白石の平野部や青麻岳の眺めが広がっていた。
 下りは、南西に続く稜線を辿った後に、南東尾根に方向を変えた。振り返ると、馬ノ神岳は横長の山頂を見せていた。こちらも幅広尾根で下りやすかった。ただ、この尾根ではブナ林は見られなかった。標高1300mから1250mの間で傾斜が少し増したが、スノーシューの歩きで、特に問題はない。
 下るに連れて尾根が広がったため、方向を見定めるのにGPSが必要になった。往復コースと違って、周回となると難易度が上がってしまう。
 尾根末端が近付くと、スノーシューやスキーのトレースが見られるようになった。南蔵王青少年野営場では、スノーシューの貸し出しも行っているというので、山麓巡りのスノーシュー歩きを行っているようである。
 林道に飛び出した後は、適当にショートカットをしながら林道入口まで下った。
 この後のスキー場までの林道歩きは、行には気がつかなかったが、僅かな登りが続き、足もつらくなった。
 雪も締まっており、順調な歩きで馬ノ神岳の登山を終えることができた。
 時間も早かったので、七ヶ宿街道、米沢、喜多方経由で、翌日の猫魔ヶ岳のために、裏磐梯道の駅に向かった。その夜の冷え込みは厳しく、標高の低い喜多方道の駅で夜を過ごした方が良かったかもしれない。
 猫魔ヶ岳は、前日に続いてのTさんに加えてIさん夫妻の総勢4名での歩きになった。朝になってからIさんと合流し、雄子沢登山口へ移動した。雄子沢登山口は、夏の間は雄国沼へのハイカーで賑わうが、冬の期間も除雪されており、山スキーやスノートレッキングのために利用することができる。
 今回は、猫魔スキー場から猫魔ヶ岳に登った後は、雄国沼へ下降し、雄国山に登り返した後は、尾根通しに歩いて雄子沢登山口に戻るというコースを考えた。2007年2月17日に猫魔ヶ岳に登った際に、白く凍結した雄国沼を見下ろして、次回は是非とも雄国沼への周回コースを歩いてみたいと思った。といっても、このコースは車二台が必要なため、なかなか実行できないでいたが、Tさんを誘って、実現の運びとなった。
 Tさんが到着したところで、他の車を置いて、猫魔スキー場に向かった。スキー場までは、そう遠いわけではないが、歩ける距離ではない。
 スキー場の駐車料金は1000円。リフトは1回券が350円。スキーヤーやボーダーに交じって、スノーシューを背負った登山姿の者もいた。このスキー場では、登山届は受けていないので、そのままリフトに向かう。
 下部のリフトは動き始めており、賑わうゲレンデでしばらく待つと、9時より少し前に雄国第1ロマンスリフトリフトに乗ることができた。先回は、並行して走る短い方のリフトに乗って、ゲレンデ上部を歩いて登るはめになったが、今回は無事にゲレンデ上部の1349mピークに上がることできた。
 この1349mピークから猫魔ヶ岳へは、アップダウンはあるものの、標高差は50mしかない。スキーゲレンデを覗き込むと、桧原湖が広がり、その向こうには吾妻連峰が広がっている。右手のゲレンデ越しには、磐梯山が大きく頭を持ち上げていた。前日の快晴ほどではないにせよ、天気も上々で、展望の期待が高まった。
 幅広尾根の木立ちは、霧氷とまではいかないが、氷が付いて白い姿を見せていた。猫魔ヶ岳の山頂を眺めながら下っていくと、白く染まった雄国沼、さらに右後方から飯豊連峰が姿を現した。登りに転ずるにつれて、飯豊連峰が全景を現してくるため、足をしばしば止めて眺めることになった。薄曇りの中、飯豊だけは明るく輝いていた。雄国沼を見下ろし、その背後に飯豊連峰が広がるという、見ごたえのある構図におさまっていった。
 スキー場最上部のリフトが直下まで伸びている北ピークへの登りが一番の頑張りどころになる。ピークの上に出ると、猫魔ヶ岳の山頂は目の前にあるが、展望を楽しむためにしばらく足が止まってしまった。
 緩やかな稜線を辿ると猫魔ヶ岳の山頂に到着した。その先をのぞくと、足跡が続いていた。先回は、雪も柔らかかったので、山頂からの急斜面をスノーシューで下れたが、今回は雪も締まっており、ピッケル・アイゼンをワンポイトだけでも使った方が良さそうである。
 山頂からは、猪苗代湖や小野岳、那須連峰、浅草岳といった南会津方面の眺めが広がっていた。振り返ると、歩き始めの1349mピークの向こうには朝日連峰や月山の眺めが広がっていた。色々の山が見えすぎて、同定は難しかった。
 今回の目的は、この先であった。一旦、1320m点手前まで戻り、雄国沼への下降を開始した。緩やかな斜面には、明るい感じのブナ林が広がっていた。尾根に乗る必要があり、GPSを参考にしながら方向を見定める必要があった。快適に下っていったところで、沢を横断しながら北に向かっていく必要がある。地図では読みけれない沢が走っており、その横断に気を使うことになった。下っていくと、左右を沢に挟まれて、スノーブリッジで横断することも必要になった。沢型の開始部から10mほども下ると、沢が渡れないほど深くなるのでやっかいであった。
 雄国沼の畔に出て、ひと安心になった。沼は完全に凍結しており、対岸の休憩小屋に向かってトレースがついていた。ワカサギ釣りのためか、湖上にはテントが二張り置かれていた。氷の状態も問題なさそうなので、横断することにした。氷の上を歩くのは、少し怖くもあるが、経験できない体験である。2007年の3月はじめは、桧原湖も氷が溶けて水面が広がっていたのに対し、今年は桧原湖でも氷上でのワカサギ釣りが盛りの状態なので、暖冬といわれる今年の状態は不思議である。
 対岸に渡って休憩小屋をのぞくと、中では何人もが休んでいるようであった。稜線上まで上がったところで大休止することにした。1236mピークの東の鞍部へと直登した。足も草臥れてきており、力を振り絞っての登りになった。背後を振り返ると、眼下に再び雄国沼の眺めが広がるようになった。風が出てきたので、稜線の北側に少し下りて腰を下ろした。飯豊には雲がかかり始めていたが、飯森山の眺めを楽しむことができた。休んでいる間には、山スキーヤーやスノーシューの登山者が通り過ぎていった。
 再び歩き出し、稜線をひと登りすると、雄国山の山頂に到着した。展望台が設けられているが、それに登らなくとも、遮るもののない展望が広がっていた。
 雄国山からは、ブナ林の広がる幅広尾根の下りになった。長くはあるが、歩いていても楽しい下りであった。1150m標高から鞍部へは少し急な下りになった。
 鞍部からは、谷に向かってスキーのトレースが続いていた。ここを下って夏道に出ても良かったのだが、計画通りに1164mピークを越えていくことにした。ピークの上まではスノーシューのトレースがあったのだが、不思議なことに、その先の尾根に歩いた跡はなかった。雑木林の中を下っていくと、道路も下に見えてきてゴールは近いことが判った。
 登山口のある道路屈曲点の北側の尾根末端に下る予定であったが、一本手前の枝尾根に入り込んだのでそのまま下った。最後に尾根の右斜面の植林地を下ると、林道に飛び出し、これを辿ると、駐車場より少し北側の道路脇に出た。歩いていた時は夏道に出たと思っていたのだが、北側に走る林道であった。夏道に出るには、もう少し沢に向かって下る必要があったのだが、結果的には、最適なコースとりになった。
 I夫妻とは別れて、Tさんの車を回収するために猫魔スキー場に戻り、解散となった。
 猫魔ヶ岳から雄国沼、雄国山を経て周回するコースは、展望や変化に富んでおり、山スキーのコースとしては知られているが、スノーシュー向きのコースでもあった。

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