常念岳、横通岳、唐松岳

常念岳、横通岳
唐松岳


【日時】 2008年8月9日(土)〜11日(月) 前夜発1泊2日、日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 9日:晴後曇り 10日:晴 11日:晴

【山域】 常念山脈
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 常念岳・じょうねんだけ・2857m・なし・長野県
 横通岳・よこどおしだけ・2767.0m・三等三角点・長野県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高山/信濃池田、松本、槍ヶ岳、上高地/有明、信濃小舎、槍ヶ岳、穂高岳
【コース】 一ノ沢林道登山口より
【ガイド】 アルペンガイド「高地・槍・穂高」(山と渓谷社)、山と高原地図「上高地・槍・穂高」(昭文社)
【温泉】 穂高ビューホテル 500円

【山域】 後立山連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 唐松岳・からまつだけ・2696.4m・二等三角点・長野県、富山県
【コース】 八方尾根往復
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳、黒部/白馬町、欅平
【ガイド】 アルペンガイド「立山・剣・白馬」(山と渓谷社)、山と高原地図「鹿島槍・黒部湖」(昭文社)
【温泉】 倉下の湯 500円

【時間記録】
8月8日(金) 19:00 新潟=(北陸自動車道、上信越自動車道、長野自動車道、豊科IC 経由)
8月9日(土) =0:40 一ノ沢駐車場  (車中泊)
5:20 一ノ沢駐車場―5:44 一ノ沢登山口―8:32 最後の水場―9:30 常念小屋〜9:58 発―11:15 常念岳〜11:40 発―12:50 常念小屋  (テント泊)
8月10日(日) 6:00 常念小屋―6:53 横道岳〜7:50 発―8:33 常念小屋〜9:06 発―9:40 最後の水場―12:00 一ノ沢登山口―12:17 一ノ沢駐車場=(R.147、白馬 経由)=17:00 黒菱平  (車中泊)
8月11日(月) 4:42 黒菱平―5:26 八方池山荘―6:12 八方池―7:46 唐松山荘―8:08 唐松岳〜8:42 発―8:55 唐松山荘―10:58 八方ケルン―11:36 黒菱平=(白馬、R.147、糸魚川IC、北陸自動車道 経由)=16:30 新潟
 常念岳は、松本平の西に連なる稜線の中で、ひときわ目につくピラミッド型の山である。常念岳の山頂からは、槍・穂高岳の大展望が広がっているが、この山に隠されて、松本平の麓からは槍・穂高岳の展望は得られない。

 唐松岳は、北アルプス北部の後立山連峰にあり、八方尾根の上部に位置する山である。八方尾根にかかるロープウェイとリフトを乗り継げば、1850m地点からの歩き出しになり、コース上で難しいところもないため、北アルプスの入門コースになっているが、白馬岳や五竜岳の眺めも素晴らしく、高山植物も豊富な山である。

 暑いさなかは、やっぱり高い山ということで、北アルプス方面の山を考えた。おおよそのピークは踏んでいるといっても、歩いていないコースは沢山ある。地図を眺めていて目に入ったのは、常念岳であった。百名山のピークハントとして、1992年9月12日に登っているが、この時は三ノ沢登山口からの歩き出しで、蝶ヶ岳の小屋泊まりで周回している。一ノ沢コースから入山して常念小屋泊まりが一般的なようなので、このコースを経験しておきたかった。
 安曇野へは、長野自動車道経由で豊科ICに出るか、糸魚川経由とするかで迷う。幸い、豊科ICから一ノ沢登山口へは、それほどの距離でない。深夜割引を使って、0時過ぎに高速を下りても、1時前には登山口に入れるはずである。最近は遠出をしなかったので、久しぶりの長野自動車道になった。
 サービスエリアでの時間調整の間は、北京オリンピックの開会式の模様を見た。選手の入場行進が延々と続いていた。
 コンビニで食料の買出しをしてから登山口に向かった。常念岳登山口の標識に従って車を走らせ、ゴルフ場の脇をかすめた先で公園の駐車場があったので、ここで夜を明かすことにした。登山口の駐車場に入ってしまうと、夜中に到着する車に起こされてしまう可能性が高い。日本百名山の常念岳とあって、遠方からの登山者も多いはずである。
 翌朝は、通過する車の物音で目が覚めた。見ると、登山者を乗せたタクシーが通過していった。その先は、林道といっても、舗装された、車の運転には支障のない道が続いた。 登山口の少し手前で、登山者用駐車場が現れた。残り数台のところで、車を停めることができた。案内には、この先には駐車場がないと書かれていたが、実際には、路肩の空き地が何箇所かあり、下山後には、車でうまっていた。この登山者用駐車場は、1261m点のカーブの少し手前である。登山口は、導水路が始まる堰堤マークの150m先である。1000m程余計な歩きが加わった。
 先週に続いてのテント泊装備は、重いものの、1泊装備だと食料の関係でかなり軽い感じがする。もっとも、稜線上のテン場で水は買う必要があるため、最後の水場で、水を背負うことになる。
 一ノ沢の登山口には、きれいなトイレが設けられ、登山届け受理のスタッフが待ち構えていた。
 登山道は、一ノ沢沿いに、緩やかな登りが続いた。水平距離にして3kmほどの地点で笠原という標識が現れた。この間も、枝沢が何本も入って水場には不自由しない状態であった。
 一ノ沢の左岸に渡ったところで、つづら折りが続く胸突八丁の登りになった。登山道周辺は、アカバナシモツケソウやセンジュガンピ、ソバナ、カラマツソウなど、比較的花の少なかった今回のコースの中では、一番のお花畑になっていた。ただし、団体を追い抜いてきたところでもあり、登りに専念する必要もあって、写真は下山の際にということした。
 ひと登りしてトラバースしていくと、再び一ノ沢に出た。横断してひと登りしたところが最後の水場になっていた。水を飲んで、これからの登りに備え、水もザックに積めた。
 この先は、一番の頑張りところになった。樹林帯の中のつづら折りの道が続いた。途中で、草臥れて休んでいる登山者を追い抜くことも多くなった。標高差250m程の登りであるが、ここまでの歩きは緩やかに距離をかせぐものであったのが、急登で高度をかせぐように変わるので、体が対応できないのかもしれない。
 常念岳の北面の眺めが視界に入ってくると、ようやく常念乗越に到着した。稜線から西に一段下がったところに常念小屋があった。稜線脇にテン場が設けられていたが、最初の入場者となり、良い場所を選ぶのに、目移りがして返って時間がかかった。
 常念乗越からは、槍ヶ岳から大キレットを越して北穂高岳までの岩稜の眺めが広がっていた。常念岳の山頂からの眺めの期待も高まった。
 テントを設営した後、昼食は山頂にてということで、常念岳に向かった。軽装になったので体は軽くなったが、ガレ場の急斜面が続き、辛い登りになった。標高差400mの登りなので、新たに一山登りを開始したのと同じことになる。
 傾斜が少し緩んで尾根沿いに進むと、左より前常念岳からの登山道が合わさる。最後は、岩が積み重なった上を登ると、祠が置かれた山頂になる。足場も悪いので、その先に僅かに下りた広場で腰を下ろした。
 雲がわいてきたが、山の眺めはまだ広がっていた。槍ヶ岳から奥穂高岳に至る稜線を目で追うことができた。先回も展望は開けていたと思うのだが、記憶も薄れており、新鮮な気持ちで眺めることができた。蝶ヶ岳に至る稜線は、長々と続いており、先回は、常念岳登頂の後、蝶ヶ岳まで良く歩いたなと思った。
 お待ちかねのビールを飲みながら展望を楽しんでいると、雷の音が響いた。槍ヶ岳方面に黒雲がかかり始めていた。これはいかんということで、ビールを飲み干し、下山にうつることしにした。
 常念岳からの下りも、ガレ場で足元が悪いせいもあってか、結構時間はかかった。幸い、雷雨に合うこともなく、常念乗越に戻ることができた。
 ひと休みの後に、生ビールめあてに常念小屋に入った。食事は、牛丼、麻婆豆腐、ハンバーグ入りカレーとあった。夕飯は、小屋飯をあてにして、簡単なものしか用意していなかったので、カレーを食べることにした。ご飯を食べながらの生ビールは最高である。
 食堂スペースで食べている間も、小屋の中は、登山者で満員状態になって、騒然としていた。1畳に2人のスペースと掲示されており、この山の人気のほどがうかがわれる。テン場に戻ると、横通岳側のスペースも含めてほぼ満員になっていた。
 雷が時折ごろごろ鳴る中、常念岳の山頂に向かう登山者も多かった。テントの中で休んでいると、本降りの雨になった。団体も登っていったが、リーダーはどのような判断をしていたのだろうか。
 夕暮れ時には雨は上がったが、雲がかかって、夕焼けに染まった槍ヶ岳の眺めは得られなかった。小屋の夕食も終わった登山者と一緒に夕暮れの眺めを楽しんでいると、ようやく到着した登山者が何組か現れた。山小屋で自分のスペースを確保して、そろそろ寝ようかというところに新たな同宿者が現れては、迷惑な話である。テント泊ができる体力があるうちには、夏山の盛りの山小屋には泊まりたくないものである。
 翌日の予定は、横通岳に登ったあと下山するだけなので、未明から歩き出す登山者とは違って、のんびりと起きることになった。
 太陽も充分昇ったところで、横通岳を目指した。常念乗越からの標高差は、300mほどで、常念岳よりは楽である。
 空身であっても息の切れる登りになったが、朝日に輝く槍・穂高岳の眺めに元気付けられた。これだけの風景を眺めながらの歩きとあっては、少々急登が続こうとも文句はいえない。
 登山道脇のハイ松帯に動くものがあり、見ると雷鳥であった。少し遠い所に三羽ほどが動き回っていたが、すぐ足元から親鳥らしい大き目の鳥も現れた。雷鳥を追っての撮影タイムがしばらく続いた。
 横通岳は、名前の通りに、地図上では登山道は山頂を通らずにトラバースしていってしまう。2767mの標高を持ち、常念岳から見ても堂々とした姿をしていることから、その山頂には是非とも立ちたいピークである。地図に夏道が記載されていなくとも、トラバース開始部からは、標高差70mほどなので、なんとかなるであろうと予想していた。
 登りの傾斜がゆるんでトラバース開始部に到着すると、稜線伝いにはっきりいた道が分かれていた。ガレ場の中に細かいジグザグを切る登りになった。踏み跡の周囲には、コマクサが沢山咲いていた。時期はすぎていたが、盛りの時期ならば、コマクサ目当てに登るのにも良い山である。
 横通岳の山頂には、三角点が置かれ、ケルンが積まれていたが、山頂標識のようなものはなかった。ゆっくりと展望を楽しむことにした。
 槍・穂高連峰の展望が広がっていたが、良く見ると、各所にある山小屋も良く見分けることができた。槍ヶ岳の左肩には、槍岳山荘。その手前に横たわる尾根上には西岳山荘。北穂高岳の山頂には、北穂高小屋。奥穂高に右手鞍部には穂高岳山荘。奥穂高岳の下の涸沢カールには、涸沢ヒュッテと涸沢小屋。色とりどりのテントが並ぶのも見分けることができた。常念岳の山頂からは、屏風の耳が邪魔をして、涸沢カールの奥は見通すことはできないので、この横通岳は、絶好の展望台ということになる。
 常念岳の大きな姿も良く眺めることができ、その右手の谷間は、上高地となる。振り返ると、大天井岳とその奥の燕岳を良く眺めることができた。山頂の北西の下降部まで進んで、大天井岳方面の展望を楽しんだ。
 大天井方面への縦走者で、横通岳の山頂を通過していくものも何組かいたが、常念小屋泊まりで、展望を楽しむために登ってきているものはいなかった。皆、常念岳の山頂を目指していったようである。静かに展望を楽しむには、横通岳はお勧めのピークである。といっても、ここまできて常念岳に登らないわけにもいかないであろうから、一日目に、常念岳の山頂を踏んでおくだけの、時間と体力の余裕を持っている必要はある。
 展望を楽しんだ後、常念乗越に戻り、テントを撤収した。
 下りは、笠原あたりまでは快調に歩いたが、その後は暑さもこたえてきて、辛い歩きになった。そう難しいコースでもないが、テント泊となると、やはり頑張りは必要になる。 二度目の常念岳であったが、新たな気持ちで、槍・穂高岳の展望を楽しんだ。1泊2日で余裕のある計画になるので、今後、北アアルプスの展望を楽しむための定番コースになりそうである。
 月曜日も休みを取ってあったので、そのまま家に戻るのももったいなく、唐松岳の日帰りを行うことにした。これは、花と展望を楽しむための定番コースといっても良い。一週間前も黒菱平の駐車場で夜を明かしたが、雨のためにそのまま山を下ってしまっている。 白馬に移動し、ファミレスでステーキの食事をした。山でも充分食べているはずであるが、体力の消耗も大きいようで、下界に戻ると、しっかり食べたくなる。
 食料を買い込み、黒菱平の駐車場に上がった。今年は、黒菱平のリフトが営業を中止しているため、リフト一本分は歩く必要がある。登山のためには、リフトの始発を待たずに夜明けと同時に歩き出すため関係ないが、観光のためには大きな問題である。観光客はいないかと思ったら、この区間を歩いている観光客もけっこういた。リフトの休止を知らなかったのか、料金の節約をしているのかどちらなのであろう。
 夕暮れ時には雲がかかっていたが、夜中には満天の星空になっていた。ここのところの天気は、10時頃までは快晴で、その後は雲が出て展望は閉ざされるというものである。八方池や唐松岳山頂での展望を楽しむには、早立ちが必要である。
 目覚ましで起きて、ようやくヘッドランプのいらなくなった薄暗い中を歩き出した。リフト一本分を登り終え、次のリフトの下を登っていく途中で、太陽が姿を現した。この付近では、戸隠山の上に太陽が昇る。
 黒菱平では、リフトの休止によるためか、ロッジも閉鎖されて、トイレが使えなくなっている。そんため、八方池山荘前のトイレで、朝の用をすませた。
 八方池山荘付近は、泊まり客が展望を楽しんでいたが、八方池をめざして歩いている者はいなかった。朝のすがすがしい空気の中、白馬三山や五龍岳、鹿島槍ヶ岳の展望が広がっていた。ここのところ、三年連続で歩いているコースなので、登山道の状況も良く判っており、体力の配分もできて先を急ぐことができた。
 八方池の周りは、三脚を立てたカメラ愛好家によって占領されているかと危惧していたのだが、驚いたことに誰もいなかった。到着したところで、不帰嶮をバックに数枚。池を回りこんで定番の撮影スポットのテラスに陣取って、白馬三山をバックに数枚。フィルターを偏光フィルターに換えていると、集団が近づいてくる声がした。フィルター交換をして定番写真を撮り終えると、大学生あたりの集団が到着して、祠側に腰を下ろしてしまった。休む場所はいくらでもあるのに、写真撮影の邪魔になる集団であった。写真も撮り終えたところであったのでそのまま立ち去ったが、そうでなかったら声をかけてどいてもらうところであった。ワンゲルか山岳部かはしらないが、定番の撮影スポットくらいは知っておいて欲しい。
 その先は、唐松岳の山頂を目指して先を急いだ。花も沢山咲いていたが、これはマクロレンズに交換して下山時に撮影することにした。
 下ノ樺から上の樺を経て丸山ケルンまでが一番辛い登りになる。丸山ケルンまで登ると、唐松岳頂上山荘脇の小岩峰もすぐ近くに見えるようになる。小屋泊まりの登山者ともすれ違うようになった。
 トラバース気味の登りを続けると、唐松岳頂上山荘に到着した。小屋は、昨年から増築工事が続いており、まだ半分ほどが工事中であった。完成すると、かなりの収容人員の小屋になるようであった。
 青空をバックに唐松岳の山頂が頭を突き上げていたが、剱岳ははやくもガスがかかりはじめていた。最後の急坂を頑張ると唐松岳の山頂に到着した。
 不帰嶮を越して鑓ヶ岳に至る稜線、立山・剱岳、五龍岳の展望を楽しんだ。五龍岳の右肩には、遠く槍ヶ岳を見分けることもできた。
 常念岳登山で疲れていたので、その先に進む気はなかったが、時間的にはまだ余裕はあった。天狗山荘まで進むのも可能であるし、五龍岳に廻ってから下山するのも今後の課題である。時間は早いが、ビールを飲みながら風景を楽しんだ。
 下山は、花の写真を撮りながらの歩きになった。昨年見たオオサクラソウは終わっていたのは残念であった。カライトソウ、ミヤマリンドウ、ウサギギク、チングルマ、アカバナシモツケソウ、タカネマツムシソウ、ワレモコウ、ハクサンシャジン、シナノオトギリ、ウメバチソウといった花を楽しむことができた。
 八方ケルン付近で、ハッポウセンブリを探した。目立たない小さな花であるが、一本見つけると、次から次に目に入ってくる。
 八方池や八方ケルンから下は、思わず身を引いてしまうような大混雑になっていた。すでにガスがあがってきて展望はとざされているのだが、大型三脚にカメラを取り付けたカメラマンも見かけることができた。しばらくは我慢の歩きになった。
 リフト乗り場から先は、再び静かな歩きになって、車に戻ることができた。
 八方尾根から唐松岳へは、観光客も多いことから初心者用コースとして軽視されがちであるが、花と展望は素晴らしい。早立ちして時間をずらせば、登りだけでも静かな山を楽しめるのでお勧めである。

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