早池峰山、秋田駒ヶ岳、月山

早池峰山
秋田駒ヶ岳
月山


【日時】 2008年7月5日(土)〜7日(月) 前夜発3泊3日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 5日:曇り 6日:晴 7日:雨時々止む

【山域】 早池峰山 【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 早池峰山・はやちねさん・1913.6m・一等三角点本点・岩手県
【地形図 20万/5万/2.5万】 盛岡/早池峰山・川井/早池峰山、高檜山
【コース】 河原坊より小田越
【ガイド】 アルペンガイド「八甲田・白神・早池峰」(山と渓谷社)、新分県登山ガイド「岩手県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「栗駒・早池峰」(昭文社)
【温泉】 ぶどうの湯 500円

【山域】 秋田駒ヶ岳
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
秋田駒ヶ岳・あきたこまがたけ
 男岳・おだけ・1623m・なし・秋田県
 男女岳・おなめだけ・1637.4m・一等三角点補点・秋田県
 横岳・よこだけ・1582.7m・三等三角点・秋田県、岩手県
【コース】 国見温泉より
【地形図 20万/5万/2.5万】 秋田/雫石/国見温泉、秋田駒ヶ岳
【ガイド】 アルペンガイド「八甲田・白神・早池峰」(山と渓谷社)、新・分県登山ガイド「岩手県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「岩手山・八幡平・秋田駒」(昭文社)
【温泉】 国見温泉石塚旅館 500円

【山域】 出羽山地 【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 月山・がっさん・1984m・なし(1979.5m・一等三角点補点)・山形県
【コース】 月山八合目コース
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/月山/月山
【ガイド】 アルペンガイド「鳥海・飯豊・朝日」(山と渓谷社)、分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「朝日、出羽三山」(昭文社)

【時間記録】
7月4日(金) 18:30 新潟=(R.7、R.113、赤湯、R.13、山形、山形蔵王IC、山形自動車道、東北自動車道 経由) 7月5日(土) =1:00 前沢SA  (車中泊)
5:00 前沢SA=(東北自動車道、花巻IC、大迫、早池峰ダム 経由)=5:50 岳〜6:30 =(シャトルバス)=6:55 河原坊―10:41 早池峰山〜11:15 発―13:34 小田越=(シャトルバス、岳、早池峰ダム、大迫、紫波IC、東北自動車道、盛岡IC、R.46 経由)=18:30 国見温泉  (車中泊)
7月6日(日) 6:35 国見温泉―7:21 横長根分岐―8:06 大焼砂分岐―9:41 男岳肩分岐―10:00 男岳―10:22 男岳肩分岐―10:47 男女岳〜11:16 発―12:00 横岳―12:40 大焼砂分岐―13:14 横長根分岐―13:49 国見温泉=(R.46、角館、R.105、大曲、R.13、新庄、R.47、清川、休暇村羽黒、月山公園線 経由)=20:00 月山八合目  (車中泊)
7月7日(月) 6:05 月山八合目―7:31 仏生池―8:45 月山〜9:28 発―10:58 仏生池―12:04 月山八合目(月山公園線、休暇村羽黒、鶴岡、R.7 経由)=17:30 新潟

 早池峰山は、女人禁制の山岳宗教の山として古くから開かれ、登山口には宿坊が並び、柳田国男の遠野物語と結び付いて、どこか謎めいた遥かみちのくの山といったイメージが強い。しかし、最近では、日本百名山あるいは、ハヤチネウスユキソウに代表される花の名山としての人気が高まってきている。

 秋田駒ヶ岳は、男女岳(女目岳)、男岳、女岳の総称で、十和田八幡平国立公園の南端に位置する。山麓にはひなびた温泉郷を有し、花の名山として有名である。最近では、スキー場を始めとするリゾート開発が進んでおり、車で八合目まで登ることができるが、国見温泉から登れば、花を眺めながらの変化に富んだ歩きになる。この山の名前も、全国の駒ヶ岳と同様に、雪形に由来している。

 月山は、羽黒山、湯殿山と合わせて、出羽三山と呼ばれ、古くからの信仰の山である。なだらかな山頂を持ち、日本海近くの豪雪地にあることから、夏遅くまで残雪を抱き、高山植物が豊富なことから人気の高い山になっている。
 月曜日に休みをとることができて三連休を確保したので、東北の花の名山巡りに出かけることにした。早池峰山でハヤチネウスユキソウ、秋田駒ヶ岳でコマクサ、月山でミネウスユキソウとクロユリを見るのが目的であった。
 新潟を早めに出発できたので、小国経由で山形から東北自動車道に入った後に、かなり北上でき、翌日の行程が楽になった。
 翌日、車をひと走りし、早池峰山の登山口の岳の駐車場には6時少し前に到着することができた。花の盛りの季節であるが、思ったよりも駐車場は空いていた。先日の宮城・岩手内陸部の大地震の影響であろうか。特に観光バスが少ないのは、焼石山や栗駒山が登山不能になっているため、それらの山と組み合わせた早池峰山ツアーが中止になったためなのかもしれない。
 いそぐ必要もないので、朝食をとってから、次のシャトルバスに乗り込んだ。バスが出発する時には、満員になっていた。河原坊までの道はカーブが多く、細い。普通乗用車同士ならすれ違いも問題ないが、バスと出会うようものなら、こちらがバックするはめになる。あまり運転したくない道である。鶏頭山から早池峰山に通じる稜線を見上げながら進んでいくと、河原坊に到着する。
 河原坊でバスを降りたが、大部分の者は、小田越へと乗り続けていった。河原坊の登山口周辺にいる登山者も僅かで、静かな雰囲気が漂っていた。前回の騒然とした雰囲気とは大違いであった。
 登山口からしばらくは沢沿いの歩きが続く。ベニバナイチヤクソウや他のの花も見つかったが、木立の中を先へと急ぐ区間である。次第に沢の水も少なくなって、ガレ場の登りが続くようになる。沢の中を飛び石伝いに登っていくと、その先に進まないように張られたロープが現れ、これに従って右手の尾根に上がる。ここから、いよいよお花畑が続くようになる。山頂を見上げると、ガスがかかっており、山頂からの展望は望めないようであった。
 ミヤマオダマキが現れたと思うと、早くもハヤチネウスユキソウも現れた。マクロレンズに交換し、花の写真を撮りながらの歩きになった。ハヤチネウスユキソウは、露の雫を花に付けて、朝日に輝いていた。少し歩いてはしゃがみこんむことの繰り返しになった。他の登山者が時折追いついては、追い抜いていった。自分の周りに人がいない時間がほとんどであった。大混雑では、花の写真を撮るのに立ち止まれないようなこともあるので、恵まれた時間であった。
 ナンブトラノオ、キバノノコマノツメ、ミヤマアズマギク、ミヤマシオガマ、ナンブイヌナズナといった花がお花畑を作っていた。
 打石や千丈ヶ岩といった巨岩も現れる岩場の登りになるが、稜線部はガスがかかって、後どれくらいの登りになるかは判りにくくなっていた。もっとも花の写真を撮るのに熱中しており、お花畑が続いているうちは山頂に到着することはどうでもよくなっていた。
 人声が聞こえてきて、山頂間近であることが判った。山頂広場が目に入ったとたん、思わず身を引いてしまった。団体も含めて、大勢の登山者で避難小屋脇の広場は埋め尽くされていた。ここまでの静かな歩きからは予想できない大混雑であった。神社の裏手の静かないっかくに移って腰をおろした。
 下りは、小田越コースに向かった。歩き出そうとすると、団体が下り始めたところであった。人数が多く、追い抜けそうもないので、花の写真を撮りながらついていった。少し下ったところで、梯子の下りが現れる。ストックを仕舞えとかの指示があって団体がもたついていたが、幸い、梯子の上の周辺にはハヤチネウスユキソウの花が広がっていたので、写真を撮りながら待つことができた。岩壁に垂直に近い梯子が掛けられていたが、周囲は草地のお花畑で、この岩を迂回すれば楽な道が付けられそうなものだが、宗教登山の名残で、わざわざ難しいところに参拝道を付けた名残のように思えた。
 小田越コースもガレ場の下りが長く続き、歩きやすい道ではなかった。こちらもお花畑が延々と広がり、楽しむことができた。ただ、風が出てきて花の写真を撮るのが難しくなった。
 岩を伝うような道から潅木帯の中の道になると、傾斜も緩やかになった。目的の花にも堪能できたことで、下りに専念することになった。
 小田越に到着すると、じきにシャトルバスが出発した。満員状態で立つ必要はあったが、順調に岳まで戻ることができた。
 前回と同じ温泉に入ってさっぱりして、翌日の秋田駒ヶ岳に向かった。
 秋田駒ヶ岳は、秋田側の八合目駐車場から歩き出す登山者が多いが、このコースでは、単なるピークハントになってしまい、花の見所を味わうことができない。岩手側の国見温泉からのコースは、アプローチの道路の状態も良く、花の見所もたっぷりで、下山後には温泉が待っている。昨年の同じコースを歩いているが、少し時期をずらしての再訪である。
 国見温泉の駐車場は、脇の湿地で温泉が湧いており、夜を過すには適当でない。温泉のガスで、事故も起きている。少し手前の路肩スペースで夜を過し、朝になってから車を登山口の駐車場に移動させた。朝食を取っている間にも、続々と車が到着した。それなりの広さはある駐車場ではあるが、すぐに満杯になりそうであった。もっとも、車道は、余裕のある二車線幅なので、路上駐車になっても問題はない。
 青空が広がり、良い天気の一日になりそうであった。奥にある森山荘脇から登山道が始まっている。つづら折の坂道をひと登りすると、木道の敷かれた台地に出る。やがて前方に横たわる尾根に向かっての登りが始まり、汗が吹き出てくる。道は良く整備されているが、段々登りも足にはかえって辛いものになる。
 急坂を登りきったところが横長根で、ここまでが一番の踏ん張りどころである。この後しばらくは、なだらかな登りが続くようになる。登山道周辺も潅木帯に変わり、木立の切れ間から駒ヶ岳方面の眺めが広がるようになる。ギンリョウソウやゴゼンタチバナ、ベニバナサラサドウダンの花を見ることができたが、ベニバナイチヤクソウが白花と一緒に咲いているのに出会えたのは幸運であった。
 登山道周辺が草原状に変わると、前方に火山性の砂礫地帯が広がるのが見えてくる。ここは大焼砂と呼ばれ、今回の目的の一つであるコマクサの群落地である。そのまま直進して横岳に至るコースと左にトラバースして小岳との谷間に向かうコースが分かれる。
 まずは、左のトラバースコースに進んだ。登山道の周囲にはコマクサの大群落が広がっており、写真撮影にしばし足を止めることになった。登山道から花までは離れているため、望遠レンズが必要になる。幸い、アップで撮影できるほど近くにも幾つか咲いていた。 砂礫地帯を抜けると、小岳と横岳に続く尾根に挟まれた谷間に出る。ここはムーミン谷とも呼ばれるように、チングルマの群生地が広がって、お伽の世界のような感じがする。今回は、チングルマの花は終わって綿毛に変わっていたが、それでも小群落で花は残っていた。木道が敷かれて、のんびり歩くことができる。周囲には、ヒナザクラやアオノツガザクラ、ミヤマキンポウゲ、ムシトリスミレの花も咲いていた。昨年の6月23日にも同じコースを歩いており、盛りのチングルマを眺めてはいるものの、ガスのために展望は閉ざされていた。そのため、風景も新鮮なものに目にうつった。
 谷の奥に達すると、男岳の肩に向かっての急登が始まる。傾斜はきついが、シラネアオイやオオバキスミレ、ミヤマキンポウゲ、ミヤマダイコンソウの花が現れて、疲れはさほど感じなかった。
 男岳の肩に到着すると、反対の阿弥陀池側から大勢の登山者が登ってきていた。まずは、左に曲がって男岳の山頂に向かった。この稜線も、ミヤマダイコンソウ、エゾツツジ、コミヤマハンショウズル、オノエラン、アカモノ、ハクサンチドリといった花に彩られていた。
 男岳の山頂には、祠が置かれている。山頂からは、通ってきた谷間を見下ろすことができた。高度感のある眺めであった。
 鞍部に戻ると、阿弥陀池もすぐ下に広がっており、主峰の男女岳がドーム型の山頂を見せ、その麓に延びる木道の上を八合目駐車場からの登山者が行きかっていた。
 坂を下ると、阿弥陀池の畔に出る。池越しの男女岳の眺めを楽しみながら避難小屋広場へと向かった。水の中にベンチが立っていたが、増水によって水に囲まれてしまったようである。
 避難小屋脇からは、段々に整備された道が男女岳の山頂に延びている。整備しすぎといった感じもあるが、最初に訪れた1994年9月4日の時は、登山道周辺の荒れ方が目立っていたので、このような整備も必要なのであろう。
 そう長い距離ではないが、息を切らして男女岳の山頂に到着した。阿弥陀池や男岳の展望が広がっていた。ここで、昼の大休止とした。腰を下ろして休んでいると、幾つものグループが登ってきたが、ザックは下に置いてきているものがほとんどで、記念写真を撮るなりそのまま下っていった。
 男女岳から下りて避難小屋広場に戻ると、昼食のために腰を下ろした登山者で大混雑になっていた。
 すぐ脇の斜面には残雪が残り、その雪融け部にはチングルマとヒナザクラの花が広がっていた。
 混雑を後に、横岳へと向かった。潅木帯の中の登りがしばらく続いた。振り返ると、男女岳の眺めが広がっていた。三回目であるが、展望が広がったのは、今回が始めてであった。
 横岳からは、大焼砂に向かって下る。砂礫地に出ると、コマクサの花が広がるようになる。花の写真撮影をしながらの下りになった。コマクサの群生地としては、いろいろな所が挙げられるが、ここは、東北を代表する群生地といってよさそうである。
 分岐に戻った後は、下りの足を早めた。
 国見温泉に戻ると、路肩駐車の列が延々と続いていた。ザックを車に放り込むなり、さっそく温泉に向かった。ここの温泉は、特徴的なエメラルドグリーンの色をしている。薄曇の日であったが、紫外線は強かったようで、顔や腕が日に焼けて、お湯がしみた。この温泉が楽しみで秋田駒ヶ岳に足が向いたところもある。
 下山した時間を考えると、高速を使わない一般道経由で、夜には月山八合目に入ることができる。翌日の山は、月山に決定した。月山まで戻っておけば、下山後に新潟まで戻るのも楽である。
 角館、横手、湯沢を通過するが、御馴染みのルートになっているので、運転も気が楽である。雄勝と秋田。山形県境付近で建設中の高速道の無料開放区間があって、時間の短縮をはかることができる。
 予定通りに、暗くなったところで羽黒山入口に到着し、月山八合目に向かって車を走らせた。この月山公園線は、カーブが連続する道なので、対向車をライトで確認することのできる夜間の方が走りやすい。昔は月山の参拝のために歩いた道であるが、車を走らせてもいささか長い。
 八合目駐車場には、車が二台ほど停めてあるだけであった。薄雲が出てきていたが、眼下に鶴岡方面の街明かりが広がっていた。
 夜中に雨が降り出していたが、朝起きると、断続的に止む小雨状態であった。ひどい雨なら、阿弥陀ヶ原の花を見ながらの散策だけでも良いかと思っていたが、予定通りに月山登山を行うことにした。
 歩き始めは、湿原の中に敷かれた木道の歩きである。ニッコウキスゲとヨツバシオガマが咲き始めていた。山裾に近づくと、雪跡にチングルマの群落が広がっていた。ここからは、潅木帯の登りになる。雪渓のトラバースも現れたが、ルートを示すロープも張られており、滑落のような危険はなかった。
 先回の2007年6月24日に歩いた際に、ヒナウスユキソウとミヤマシオガマが盛りであったお花畑は、峠を越していた。その先で仏生池に到着する。この付近には、ハクサンチドリの葉に斑点が入ったウズラバハクサンチドリの花が多い。
 下山してくる登山グループにも出会ったが、山頂小屋泊まりで下山してきたものであろう。
 再び登りに汗を流し、行者返しと呼ばれる急坂を越すと、幅広の稜線に出て、ここには木道が敷かれてヒナウスユキソウの群落地になっている。その先は、残雪の登りになって、月山の山頂に到着する。
 雨のためか、山頂一帯に登山者はいなかった。ゆっくりと花の写真を撮ることができた。前回は、ハクサンイチゲの大群落が広がっていたが、今回はすでに終わっていた。その代わりに、クロユリとヒナウスユキソウが山頂台地の草原地帯に咲いていた。  月山神社の参拝は省略したが、一等三角点に詣でておかないと、おちつかない気分になる。少し戻った尾根上に三角点が埋設してある。丁度ガスが上がって、残雪による斑模様の山の姿が現れた。僅かな時間しか続かなかったが、素晴らしい眺めであった。
 再び雨も強くなったんで、下りの足を早めた。下山の途中になって登ってくる登山者にもすれ違うようになった。
 最後に阿弥陀ヶ原のニッコウキスゲの花を眺めて登山を終えた。

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