鞘ノ木山、焼山、二ツ森、大滝山、天狗角力取山

鞘ノ木山、焼山
二ツ森、大滝山、天狗角力取山


【日時】 2008年3月8日(土)〜3月9日(日) 1泊2日 各日帰り
【メンバー】 8日:単独行 9日:11名
【天候】 3月8日:曇り 3月9日:晴

【山域】 磐梯山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 鞘ノ木山・さやのきやま・1004m・なし・福島県
 焼山・やけやま・998.4m・三等三角点・福島県
【コース】 市沢より周回
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山/中ノ沢
【ガイド】 なし
【温泉】 横向温泉ホテルマウント磐梯 600円

【山域】 磐梯山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 二ツ森・ふたつもり・1337m・なし・福島県
 大滝山・おおたきやま・1370.3m・二等三角点・福島県
 天狗角力取山・てんぐすもうとりやま・1360m・なし・福島県
【コース】 達沢より
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山/中ノ沢、関都
【ガイド】 なし
【温泉】 中ノ沢温泉勤労者保養センターぼなり 500円

【時間記録】
3月8日(土) 6:00 新潟=(R.49、安田IC、磐越自動車道、猪苗代磐梯高原IC、R.115、木地小屋 経由)=8:55 市沢〜9:10 発―9:36 稜線分岐―10:30 鞘ノ木山〜10:35 発―11:01 稜線分岐―11:11 旧道峠―11:49 尾根上分岐―12:07 焼山〜12:18 発―12:35 尾根上分岐―12:58 市沢=(R.115、中ノ沢 経由)=16:00 達沢  (車中泊)
3月9日(日) 8:17 達沢不動入口尊駐車場―9:09 林道分岐―11:15 二ツ森―11:56 大滝山―12:33 天狗角力取山〜13:10 発―14:18 二ツ森〜14:30 発―15:22 林道分岐―16:00 達沢不動入口尊駐車場=(往路を戻る)=19:30 新潟
 鞘ノ木山と焼山は、裏磐梯の秋元湖の南岸に位置する山である。国道115号線沿いの木地小屋から秋元湖湖畔の市沢の集落へ通じる生活道路のふるさと林道市沢線が、鞘ノ木山と焼山を結ぶ稜線の下をトンネルで通過している。

 川桁山は、会津と中通りを分ける位置にあり、登山道もあることから登山者も多い。その東には天狗角力取山が並んでいるが、この山は、会津百名山に選ばれているものの登山道は無い。その東には、三河小田川林道が通過しており、その先には大滝山、二ツ森と稜線が続いている。

 いつもの宇都宮グループより天狗角力取山の計画が入り、参加させてもらうことにした。天狗角力取山は、会津百名山に選ばれているものの、登山道が無いことから登れないでいた。以前、川桁山に登った時に、天狗角力取山との鞍部になる小田峠からヤブコギで登れないかどうかのぞいてみたが、期待していた踏み跡はなく、薮も濃い状態であった。三河小田川林道を使って登るにしても、普通乗用車では峠部まで上がるのは難しそうであった。そのため、残雪期を狙うしかないなと思っていたところに、好都合な計画が入ったわけである。
 前日の土曜日の登山のために、猪苗代方面の山を考えることになった。会津磐梯山から吾妻連峰の間の山としては、高森山と白布山を登っていたが、その中間部には、鞘ノ木山と焼山という二つのピークがある。この2月はじめに箕輪山に登った後の偵察で、木地小屋から登るとして、林道市沢線がどこまで除雪されているかを確かめた。林道というには立派な道路で、新しいトンネルを抜けて市沢まで通行可能なことが判った。市沢側からなら、それほどの苦労も無しに鞘ノ木山を登る事ができそうであった。市沢から鞘ノ木山と焼山を登って周回する計画をたてた。
 鞘ノ木山と焼山を周回しても時間はそれほどかからないはずなので、土曜日の朝に家を出た。新潟中央ICから猪苗代磐梯高原ICまででは、100kmを越してしまうが、安田ICからなら100km以内に収まって高速代は5割引になる。
 高速を下りると、凍結とまではいかないまでも、道路にうっすらと雪が積もっていた。ただ、空は明るく、久しぶりに天候の心配の無い雪山を楽しめそうであった。
 木地小屋から林道市沢線を使って市沢に出た。この道は、集落の生活道路になっているようで、路肩に車を停めて朝食をとっている間にも、車が行き来していた。
 トンネル出口の先は、十字路になっており、西側の道を山に向かって進んだ。数軒の家が並んだ先で除雪は終っていた。家の玄関で除雪をしていた老人と顔があったので挨拶をすると、不審顔をするので、説明することになった。「鞘ノ木山まで登ってきます」というと、「雪に潜るよ」といって、雪山歩きは常識外のことのようであった。ここで聞き出せたのは、この除雪終点部からトンネル側に旧道が続いていることであった。ただ、雪の壁が高く、旧道の走り具合は確かめることはできなかった。  旧道を辿るか迷ったが、当初の計画通りに、911mピークの東の鞍部を狙って、谷沿いに登ることにした。道路の右手の壁を乗り越えて雪原に出た。雪は締まっており、スノーシューを履けば、ほとんど潜らなかった。
 谷間に進むと、すぐに細いながら深い沢形が出てきて、その右手に沿って登るようになった。再び谷が広がると、沢は二股に分かれた。右に進むと911mピークに直接突き上げてしまうようなので、左の窪地に進むことにした。杉林が近づくと、道形も現れて、歩きやすくなり、難なく稜線上に出ることができた。
 稜線上は、潅木帯であったが、スノーシュー歩きには支障は無い状態あった。木には、連続的に赤ペンキのマークが付けてあったが、山道があるようには見えなかった。
 911mピークに向かっての登りが、鞘ノ木山までのコースでの一番の頑張り所であった。ピークからは、一旦下りになり、木立の間からではあったが、谷を巻いた先に鞘ノ木山の山頂が見えてきた。
 鞘ノ木山の山頂から弧状に北に向かう尾根に上がると、焼山の眺めが広がった。鞍部からの急斜面が気になっていたのだが、杉林に挟まれた自然林の木立が続いているのが見えた。植林作業のために歩かれていそうなので、なんとか登れるだろうとひと安心した。
 到着した鞘ノ木山の山頂は、木立に囲まれて展望は閉ざされていた。山頂標識のようなものも無かった。
 焼山に向かうため、すぐに鞘ノ木山の山頂を後にした。雪の硬さもほど良く、スノーシューで快適に下ることができた。稜線上の分岐に戻り、反対の焼山方面に進んだ。小ピークを越すと、切り通し状になった旧道の峠部に出た。
 旧道を横断し、右手に現れた尾根に乗ると、急な登りが始まった。雪もスノーシューでステップが切れる状態なので助かった。もう少し硬くなっていると、ピッケル片手に、登山靴のキックステップで登る必要が出てくるところであった。途中で足を止めて、息を整えながら登った。
 傾斜が緩むと、999m小ピークのすぐ北側に登りついた。この後は、雑木林の広がる幅広尾根の歩きになった。
 焼山の山頂は、南北に延びているので、うっかりすると手前の高まりを山頂と誤解しかねない。
 焼山の山頂も、木立に囲まれて展望は無かった。暖かい日差しに包まれて、雪の上に腰を下ろして休んでいると、春を感じることができた。
 下山は、尾根上に登り着いた分岐を越して、そのまま、北に向かって尾根を下った。歩きやすい尾根であったが、690m点の先で左の枝尾根に入ると、薮が少し煩くなった。下方に市沢の人家が近づいたところで、尾根を右に外して谷間を下った。杉林の中を下ると、人家の裏手に出たので、左に回りこんで車道に出た。
 計画通りに鞘ノ木山から焼山への周回を行ったが、時間は少し早かった。温泉を楽しむことにして、少し遠いが、お気に入りの横向温泉に向かった。
 翌日の天狗角力取山は、達沢の集落から歩き出すことになる。地図を見ると、達沢はメインルートから外れた山間にある。集落まで辿り着くのが大変かと思ったら、バスも走っている二車線幅の良い道が通じていた。前夜は、集落手前の路肩スペースで夜を過ごした。
 翌朝は快晴になり、登山の期待も高まった。夜の間の冷え込みもあり、雪の状態も良さそうである。達沢の集落で、宇都宮からの一行の到着を待った。
 天狗角力取山は人気があるのか、いつになく車二台で到着した一行と合流し、集落先の林道に進んだ。林道上を圧雪が覆っており、運転には注意が必要であった。民家を過ぎると、その先で除雪の終点になった。広場になっており、二台の車がすでに停められていた。この広場は、達沢不動尊の参詣者用の駐車場のようであった。大型三脚を持ち、スノーシューを履いて先に進んでいく者がいたが、これは不動滝の写真撮影のためのようであった。天狗角力取山への積雪期の一般的コースは、川桁方面からのはずで、ここからの登山者に出会うことはまず無いはずである。
 雪は締まっており、まずはつぼ足で歩き出した。すぐ先で、達沢不動尊への道が左に分かれた。雪の上の踏み跡も左の道に続いていた。ここは、右手の林道に進むのだが、雪原の中で、道が判りにくくなっているので、迷わないように注意が必要である。
 日向は雪が締まっていたが、杉林の中の日陰の道になると足が潜るようになり、スノーシューを履いた。この先は、達沢川沿いの林道歩きをしばらく頑張ることになった。
 尾根の取り付きは、地図にも記載されている達沢川の右岸の伐採地に通ずる林道の分岐である。ここまでは50分の歩きであったので、距離の割には順調であった。
 ひと休みの後に尾根に取り付いた。歩きやすい尾根で、急な所も出てきたが、息が切れるだけで、滑落の危険が伴うような所はなかった。
 1117m点の手前の尾根合流点に出ると、木立の上に安達太良山塊の眺めが広がり始め、期待が高まった。
 美しいブナ林の登りが続いた。木立の上を見ると、枝が折られて鳥の巣のように枯葉が集まった熊棚がそこかしこに見られた。熊のテリトリーにお邪魔していることになる。
 1240m点の北の肩で尾根に上がると、安達太良山塊の遮るもののない展望が広がった。和尚山がボリューム感のある姿を見せ、その左には安達太良山がぽっこり盛り上がった姿を見せていた。その左には、鉄山、箕輪山と稜線が続いていた。北には吾妻連峰が広がっていたが、ピークを見分けるのに、少し考える必要があったが、山頂にアンテナが立つことから高山を見分けることができ、その左にあるのは東吾妻山のようであった。
 この先は、幅広尾根の歩きになった。1240mの小ピークを越えると、磐梯山が大きな姿を見せた。櫛ヶ峰と本峰が並び立ち、その間の沼ノ平の台地も手に取るように見えていた。その右手に飯豊連峰が真っ白な姿を見せていた。素晴らしい展望に思わず足が止まってしまった。この後は、姿を少しずつ変えながらも、安達太良山、吾妻連峰、会津磐梯山、飯豊連峰が見え続けた。天狗角力取山は薮山と思っていただけに、展望コースであったのは予想外の驚きであった。
 雪庇の張り出した稜線を歩いていくと、二ツ森に到着した。二ツ森といってもピークが三つある。おそらく、どこかの里からは二つのピークが並んでみえるのであろう。
 ここまで順調な歩きであったが、それでも時間は11時過ぎになっていた。一旦下った先に大滝山が山頂を持ち上げており、天狗角力取山はまだその先である。休憩もそこそこに先に進んだ。
 大滝山からの下りは、雪もほどほどに柔らかく、楽しく下ることができた。その先は、再び登りに汗を流すことになった。足も次第に草臥れてきていた。
 大滝山の山頂に立つと、猪苗代湖が始めて視界に入ってきた。目指す天狗角力取山も目の前に迫ってきた。山裾を林道がうねうねと長く続いていた。
 ここまで来た上は、力を振り絞って天狗角力取山を目指すしかない。標高差100mを一気に下ると、林道に出た。峠部には、林道開通の記念碑が置かれていた。この林道は、現在では普通乗用車では難しく、四駆でないと走行は難しいようである。  天狗角力取山へは、緩やかな登りをしばらく続けると、雪稜の歩きになった。雪庇が張り出していたが、一段下は平地になっており、危険は少なかった。
 雪稜歩きで天狗角力取山に到着した。地図の記載では、西の1327mピークと東の1360mピークのどちらをさしているか曖昧なところがあるが、最高点の1360mピークを天狗角力取山の山頂とした。西には川桁山が大きく、その左手には猪苗代湖が大きな湖面を広げていた。
 大滝山から天狗角力取山までは40分で、意外に時間がかからず、山頂で大休止する時間的余裕も出てきた。腹ごしらえを済ますと、周囲の展望を心ゆくまで楽しんだ。たやすく来ることができる山頂ではない。時間が許す限り、山頂からの風景を楽しみたかった。
 下山で問題になるのは、大滝山への登り返しであった。さらにその先には、二ツ森への登り返しが待っている。計画の最初から、この大滝山への登り返しは大変であろうと思っていた。
 鞍部からは林道を辿り、大滝山を通過して東の台地に出ることを考えた。これならば、緩やかな登りで、標高差も半分の50mで済む。計画通りに林道を歩き、沢が落ち込んだ先のブナ林を登って、来たルートに戻ることができた。
 この先は、二ツ森や小ピークの乗り越しはあったものの、まずは順調な歩きが続いた。1240mの台地の先からは、尾根を一気に下ると林道に下り立つことができた。その先はいささか長く感じられる林道歩きが待ち構えていた。
 駐車場には、4時着であったので、雪の状態が良かったことにも助けられて、今回のロングコースを歩くことができたということになる。会津百名山のピークハントという目的が無いのなら、大滝山までで充分なような気もする。展望は、大滝山まででも変わらないし、標高もより高い。二ツ森から大滝山を経て天狗角力取山にかけての稜線の大展望が知られていないのはもったいない気がする。
   
山行目次に戻る
表紙に戻る