猫魔ヶ岳、箕輪山、安達太良山

猫魔ヶ岳
箕輪山、安達太良山


【日時】 2007年9月1日(土)〜2日(日) 1泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 1日:曇り 2日:曇り時々霧雨

【山域】 磐梯山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
猫魔ヶ岳・ねこまがたけ・1404.0m・一等三角点補点
雄国沼・おぐにぬま・1090m・なし・福島県
【コース】 雄子沢川登山口より雄国沼一周
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山/磐梯山
【ガイド】 山と高原地図「磐梯・吾妻」(昭文社)
【温泉】 川上温泉ホテル寿 500円

【山域】 安達太良山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
箕輪山・みのわやま・1728m・なし(1716.4m・二等三角点)・福島県
鉄山・てっさん・1709.3m・三等三角点・福島県
安達太良山・あだたらやま・1699.6m・二等三角点・福島県
鬼面山・きめんざん・1481.6m・三等三角点・福島県
【コース】 箕輪スキー場より入山、横向温泉下山
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/二本松/安達太良山、
【ガイド】 山と高原地図「磐梯・吾妻・安達太良」(昭文社)
【温泉】 横向温泉ホテルマウント磐梯 600円

【時間記録】
9月1日(土) 7:00 新潟=(磐越自動車道、会津坂下IC、R.49、会津坂下、喜多方、R.459 経由)=9:30 雄子沢川登山口〜9:53 発―10:55 雄国山分岐―11:05 雄国沼休憩所―12:20 猫石―12:40 猫魔ヶ岳〜12:58 発―13:19 猫石―14:40 雄国沼林道入口―15:27 雄国沼休憩所―15:37 雄国山分岐―16:24 雄子沢川登山口=(R.459、R.115 経由)=18:30 土湯峠茶屋跡  (車中泊)
9月2日(日) 6:44 箕輪スキー場登山口―7:26 クワッドCリフト終点―8:25 箕輪山―9:05 鉄山避難小屋―9:15 鉄山―9:55 安達太良山〜10:02 発―10:37 鉄山―10:44 鉄山避難小屋―11:25 箕輪山〜11:35 発―12:28 鬼面山〜12:42 発―13:13 土湯峠―13:32 土湯峠登山口―13:48 箕輪スキー場登山口=(R.115、猪苗代、R.49、会津若松IC、磐越自動車道 経由)=17:20 新潟
 猫魔ヶ岳は、磐梯山の西に八方台を挟んで向かい合い、雄国山、厩岳山、古城ヶ峰などとともに古い火山の外輪山を形成している。その中心のカルデラ湖である雄国沼は、福島県では尾瀬の大江湿原と並んでニッコウキスゲの大群落地として有名で、シーズンともなれば、観光客やハイカーで大賑わいとなる。猫魔ヶ岳は、南北からスキー場に浸食されているが、雄国沼にかけての一帯は、自然が良く残されている。

 安達太良山は、福島県二本松の西に連なる連峰である。「あれが阿多多羅山 あの白く光るのが阿武隈川」という高村光太郎の詩によって、あまりにも有名になっている。吾妻連峰と接する土湯峠から、南に向かって鬼面山、箕輪山、鉄山、矢筈森、安達太良山(乳首山)、和尚山といった峰々が連なって安達太良連峰を形作っている。鉄山や矢筈森の西には、火口原である沼ノ原荒涼たる姿を見せている。別名乳首山とも呼ばれる稜線上の小岩峰が、狭義の安達太良山とされているが、最高峰は箕輪山である。

 9月に入って最初の週末。事前に雨の予報が出て、どの山に行こうかと、迷うことになった。天候からして、低めの山を考える必要があるが、なかなか思いつかない。宇都宮グループが、箕輪山に登るというので、裏磐梯方面の山で、計画することにした。裏磐梯の冬のスノーシュー歩きを考えると、夏道はできるだけ歩いておきたい。土曜日には、まだ歩いていない雄子沢川登山口から猫魔ヶ岳、日曜日に箕輪山から安達太良山に登ることにした。
 金曜日の帰宅途中に、発売日のキャノンのデジタル一眼レフ40Dを買った。マニュアルを読みながら操作をひと通り確認するのにひと晩かかった。週末の天気は、快晴の青空は期待できないが、曇り空の不利な条件で、どれほど使えるか確かめるのも良い。
 家を出発するのが少し遅れて、喜多方から桧原湖湖畔に出て、雄子沢川登山口に到着したのは、少し遅めになっていた。広い駐車場が設けられているが、夏山が終わったということなのか、ハイカーの車は数台のようであった。  登山道は、沢の一段上に続いた。緩やかな登りであるが、距離は長い。曇り空で、太陽の光は差し込んでいなかったが、汗がしたたり落ちた。
 今度の冬のスノーシュー歩きでは、猫魔スキー場から猫魔ヶ岳に登り、雄国沼へ下降したいと思っている。雄国山に登り返してから、尾根沿いに下るのが良いと思うが、夏道の様子も知っておく必要がある。家に帰ってからGPSのトラックデーターを地図上に載せると、地図の破線と一致していた。
 少し急な斜面を登ると、雄国沼周辺の台地の一郭に到着した。雄国山への道を右に分け、緩やかに下っていくと、雄国沼休憩所に到着した。大きな建物であるが、中は前面フロアになっている。腰を下ろして、お弁当を広げられるように一段高くなった板の間が作ってあると良いのだが。
 猫魔ヶ岳への登山道に進むと、水の落ち口の堰堤に出て、雄国沼の展望が広がった。雲が低く垂れ込めて、沼を取り巻く峰々の山頂は隠されていた。湖畔には、意外に花が多く、エゾミソハギ、ツリガネニンジン、トリカブト、ミズギク、ゲンノショウコ、キオン、シラタマノキ等を楽しむことができた。
 沼から離れても、トラバース気味の登りが長く続いた。途中で数箇所、沢を跨ぎこすことになった。水が豊富なためか、蚊が多く、防虫スプレーを体に吹き付ける必要があった。登るにつれて、雲も厚くなって、暗くなってきた。猫石は、雄国沼を一望できる展望ピークであるが、視界は閉ざされていたので、そのまま先に進んだ。
 そのすぐ先で、雄国沼の南岸に続く登山道が分かれる。僅かに下った後に、猫魔ヶ岳への標高差90mの登りになる。山頂が近づいたところで、20名程の団体が下りてくるのとすれ違った。出発が遅れたことが幸いしたようである。
 猫魔ヶ岳の山頂は、まず一等三角点の置かれた広場に出て、そのすぐ先が、岩が頭を出した最高点の山頂となる。山頂には3名のグループがいるだけであった。先回登ってきた時は、八方台方面から大勢が登ってきていたが、今回は静かな山頂であった。ガスの切れ間から猫魔スキー場の駐車場や桧原湖が見え隠れしていた。腰を下ろして昼食としたが、その間、磐梯山が姿を見せることはなかった。今年の冬に登った時の地形を思い出しなら、周囲を眺めた。
 猫石まで戻ったが、あいかわらず展望は閉ざされていた。南岸に通じる登山道は、急斜面の下りも僅かで、その後はだらだらの下りが続くようになる。厩岳山との分岐までは、手入れされた登山道が続いたが、その先は、急に夏草が煩い状態になった。本来は、林道跡のようであるが、放置されて、人が歩くのがやっとという状態になっている。
 西の縁に達して車道に飛び出すと、後は雄国沼入口の金沢峠までの車道歩きになる。途中で、雄国沼と湿原を眺めることのできる所もあって、眺めを楽しみながらの歩きになった。
 金沢峠の駐車場も、時間が遅くなったためか、車も数台になっていた。ニッコウキスゲのシーズンには相当混みあうというが、今はシーズンオフとなっている。
 木材チップを敷き詰めた遊歩道を下っていくと、沼の畔に広がる湿原に出る。木道が一周するように設けられている。ハイカーや観光客で賑わうところであるが、今回は、自分一人しかいなかった。ようやく雲も切れて、猫魔ヶ岳の山頂が姿を見せていた。花は、オヤマリンドウやウメバチソウくらいで、少し寂しくなっていた。
 湿原から離れて、湖畔に続く道に進むと、休憩小屋に出て沼の周回も終わった。林道跡がヤブっぽいので、初心者のハイカーでは、雄国沼一周は、少し難しい状態といえようか。
 時間も遅くなってきたことから、下山の足をはやめた。
 以前にも利用したことのある川上温泉に入り、コンビニで食料を買い、翌日の箕輪山のために、横向温泉に向かった。その晩は、土湯峠の駐車スペースで夜を過ごした。
 朝目を覚ますと、風にのって霧雨が吹き寄せる状態であった。これでは稜線歩きは無理かと思いながらも、湯を沸かして朝食をとり、しばらく様子見をした。標高の低い五色沼あたりなら、霧雨の影響はないはずということで、峠から下った。少し下っただけで、霧雨は止み、箕輪スキー場のゲレンデ脇に出てみると、箕輪山の山頂は雲が切れて、下からも見えていた。
 登山は可能ということで、箕輪スキー場脇の登山口から登り始めた。登山道は、ゲレンデ脇に沿っているが、ブナ林の中に続いている。スキー場からの登りというと、刈り払われたゲレンデ内の歩きということも多いが、この登山道は、自然が保たれており、好ましい。
 歩き始めは、傾斜も急であったが、そのうちに傾斜も緩やかになった。冬にリフトで上がった時には、下部の急斜面を上り終えて終点かと思ったが、さらに初心者用の緩斜面が続いていた。
 ゲレンデの管理道を数回横断しての登りが続いた。ようやくクワッドCリフト終点に到着してひと息いれた。冬には、スノーシューでここから歩き出した。リフト終点から上は、アオモリトドマツなのか針葉樹林帯に変わった。植生の分布に合わせてリフトの範囲を決めたかのようである。針葉樹林帯の縁に沿っていくと、もう一本のリフトの終点に出たが、このリフトは、冬に登った時も動いてはいなかった。
 ここからは、高みをめざしての一直線の登りが続いた。傾斜は緩やかであるが、山頂までの距離が掴みにくい。登山道が雨水で削られて、歩きにくくなっているところもあった。針葉樹林も姿を消して、低灌木帯に変わったことで、高度が上がったことを知ることができた。
 大岩が現れるようになると、山頂も近い。鬼面山からの登山道を合わせると、その先の大岩が転がるあたりが、箕輪山の山頂になる。雲の切れて、雲海の上に、吾妻連峰や磐梯山の山頂が浮かんでいるのが見えた。安達太良山方面を眺めると、安達太良山の山頂は隠されていたが、船明神山付近の赤茶けた山肌が雲の間から見えていた。歩くのには問題のない天気なので、安達太良山に向かって進むことにした。
 箕輪山からは、標高差130mの下りになる。僧悟台からの登山道が合わさる鞍部付近は、オヤマリンドウが目立つお花畑になっていた。その後は、標高差50mほどの登りで、鉄山避難小屋のある台地の一郭に到着するので、登りの労力自体は、大したことはない。しかし、木の枝が登山道に被さっており、水の滴が容赦なく降り注いできた。雨具を着るにも、タイミングを逸してずぶ濡れになっており、そのまま登り続けるしかなかった。登山道に草が被さっているのは、この付近だけであったが、安達太良山から縦走してきたとすると、この先の登山道の状態が不安になるかもしれない。
 台地の上にでると、ザレ地のほぼ平坦な歩きになる。鉄山避難小屋を過ぎると、鉄山への緩やかな登りになる。木の生えていないザレ場が広がっており、視界が利かない時には、登山道を辿るのも、岩のペンキマークが頼りである。
 鉄山の山頂が近づいたところで、30人近い団体が、鉄山山頂下のトラバース道を近づいてくるのに気が付いた。山頂手前ですれ違うと、NHKの日本百名山ですっかり有名人になったI氏が先頭になって率いていた。「一人来ました。右に避けてください」と、丁寧な言葉。ザレ場のため、避けてくれなくとも、歩くのには支障はないけど。列は長く、鉄山からの下り口に到着しても、まだ後続は登ってくる途中であった。道をあけようとするので、「鉄山の山頂にいくので、いいですよ」と声をかけると、「山頂って?」という声が帰ってきた。「その先が山頂ね」って教えてあげたけど、鉄山のことも知らず、地図読みもしていないようであった。この山行は、Webでも案内を見ることができたが、M会主催のツアーであった。1泊2日で野地温泉まで縦走し、往復バス代・2食付宿泊費を含んで30000円なら、リーズナブルな料金といえる。しかも、有名人のI氏と一緒に歩くことができる。でも、M会は、単なる登山ツアーではなく、登山教室をうたっていたはず。目の前の山頂をパスして通過していくのは、「そこは見るものはないですよ」といって、そのまま素通りする手抜き海外ツアーコンダクターを思い浮かべる。鉄山山頂に立つと、霧が晴れて、沼ノ平の展望が広がった。安達太良山山頂からの途中で、沼ノ平の眺めをあきるほど見たともおもえず、しかもここが見納めのポイント。おしゃべりもせず、カメラを取り出して余所見をするでもなしに黙々と歩いていく列を見送りながら、山を楽しんでいるのかと不思議に思った。
 カメラを取り出し、今回の目的の一つの沼ノ平の写真を撮りながらの歩きになった。火口原には白い火山灰地が広がり、周囲には赤茶けた山肌がそそり立っている。荒涼とした風景で、以前有毒ガスで登山者が死亡したのもうなずける風景である。  鉄山からの下りで、早くも霧が出て視界は閉ざされた。湿気をたっぷりと含んでおり、眼鏡がすぐに曇ってしまう。安達太良山の山頂めざしての黙々とした歩きが続いた。
 肩から岩場をひと登りすると、安達太良山の山頂になる。時間の関係か、数名の登山者がいるだけで、静かな山頂であった。腰を下ろしてひと休みしていると、霧の間から船明神や磐梯山の山頂がようやく見えたものの、それが限界であった。天気の回復は期待できないようなので、戻ることにした。
 宇都宮グループは、箕輪山の山頂に11時半到着予定とあったので、それまでに戻る必要がある。鉄山まで戻ると、ぼんやりとではあるが、沼ノ平の眺めが広がった。風向きの関係なのか、ここからは視界が広がりやすいようである。
 箕輪山に到着してみると、宇都宮グループは、下山を開始するところであったが、なんとか会うことができた。ひと休みしてから追いかけることにして、鬼面山に向かって下山していく一行を見送った。手早く、昼食をとってから後を追った。
 箕輪山からの下りは、泥斜面が滑りやすく、足下に要注意であった。滑った跡も随所に見られた。歩きにくい道である。
 人声がするので追いついたと思ったら、別なグループであった。水たまりのできた登山道脇に腰をおろして、昼食をとっていた。朝方鉄山ですれ違った、I氏のグループであった。まだこんなところにいることと、休憩場所として適当ではない場所で休んでいることが不思議に思えた。通常なら、箕輪山の山頂で、風景を楽しみながらお弁当を広げると思うのだが、歩けるだけ進んで、12時になったので、昼食にしたのだろうか。
 その先の鞍部付近で宇都宮グループに追いついたので、一緒に歩くことにした。鬼面山へは登り返しになるが、標高差80mほどで、大したことはない。鬼面山の山頂で休憩となり、果物のご馳走になった。
 鬼面山から下っていくと、ハクサンフウロやトモエシオガマ、ホツツジなどの花が多くなってくる。ただ、霧雨も強くなってきて、写真撮影もままならない状態になっていた。
 土湯峠の十字路は、左に曲がって横向温泉をめざす。先回は、野地温泉から登ったので、この道は初めてである。送電線の巡視路として整備されているようで、しっかりした道が続いていた。どんどん下って、最後はカーブ地点で車道に飛び出した。横向温泉、さらに箕輪スキー場の登山口までは、歩いてもそう大した距離ではない。
 車を回収し、さっそく横向温泉をめざした。ホテル自体は最近は寂れた感じもするが、ここの浴槽は大きく、湯量も豊富で、 お勧めの温泉である。
 安達太良山の登山コースとして、じっくりと山に向き合おうとする人には、今回のコースはお勧めである。

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