飯豊本山

飯豊本山


【日時】 2007年8月25日(土)〜26日(日) 前夜発1泊2日
【メンバー】 単独行
【天候】 25日:晴 26日:曇り

【山域】 飯豊連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
地蔵岳・じぞうだけ・1538.9m・三等三角点・山形県
飯豊本山・いいでほんざん・2105.1m・一等三角点本点・福島県
【コース】 大日杉より地蔵岳コース
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/玉庭、熱塩、大日岳、飯豊山/岩倉、川入、大日岳、飯豊山
【ガイド】 山と高原地図「飯豊山」(昭文社)
【温泉】 ホテルフォレストいいで 400円

【時間記録】 8月24日(金) 19:50 新潟=(R.7、R.113、手ノ子、白川ダム 経由)=22:50 大日杉  (車中泊)
8月25日(土) 4:40 大日杉―5:07 ざんげ坂上―5:34 長之助清水―6:50 滝切合―7:21 地蔵岳〜7:26 発―8:20 目洗清水―8:58 御坪〜9:06 発―10:14 切合〜10:45 発―11:13 草履塚―11:37 御秘所―12:26 本山小屋―12:50 飯豊本山〜13:13 発―13:45 本山小屋―14:34 御秘所―15:04 草履塚―15:45 切合  (テント泊)
8月26日(日) 6:00 切合―6:49 御坪―7:19 目洗清水―8:08 地蔵岳〜8:13 発―9:08 長之助清水―9:15 発―9:30 ざんげ坂上―9:53 大日杉=(往路を戻る)=13:30 新潟
 飯豊連峰は、新潟、山形、福島の県境に、2000m級のピークを南北20キロに渡って連ねる、東北地方を代表する山塊である。中腹を覆うブナ林、稜線を彩るお花畑、夏にも残る残雪などで、多くの登山者を魅了してやまない。代表的ピークとしては、飯豊神社と一等三角点の置かれた飯豊本山がまず挙げられる。

 昨年は、飯豊本山に登っていないので、今年は登らないといけないなと思っていたものの、登らないまま夏が過ぎようとしている。先週飯豊本山に登ろうとしていたが、天気が悪そうなため中止したが、そのパッキングもそのままになっていた。この週末の天気は良さそうなため、いよいよ出かけることにした。
 飯豊本山までの1泊2日コースとしては、いろいろ考えられるが、大日杉から地蔵岳を経て切合に登り、そこにテントを張っておいて、飯豊本山へは空身でピストンというのが一番楽である。二日目は、五段山経由で下山というのが、変化に富んで面白いが、今年は、大日杉脇の吊橋が落ちたままになっているので、徒渉も可能なようだが、無理をしないで来た道を戻ることにした。
 大日杉へのアプローチは、最後の林道入口までは、白川ダムの脇を抜ける快調なドライブを楽しめるコースが続く。最後の林道も、途中から砂利道に変わるものの、夜間でも車の走行には問題はない。  到着してみると、登山口の橋の前付近は満車のようであったので、手前の広場の端に車を停めた。車の中で寝る準備をしていると、外から声をかけられた。「大日杉小屋に泊まるの」と聞かれたが、こんな夜中にと思いながら「いいえ」と答えた。すると「明日は何時に出発するの」と聞かれたので、不審に思って、「どちらですか」と聞いた。「小屋の管理人」というので、「5時」と答えると、「そうですか」といって、去っていった。結局、何が問題だったのか判らずに、後までこの会話を思い出して頭をひねることになった。
 8月最後の週末とあって、日の出もすっかり遅くなってきた。4時に起きてもまだ暗かった。金曜日あたりは涼しくなっていたが、今日は、南風が入り込んで、残暑がぶり返すという。早立ちで、暑くなる前に高度をかせいでおきたかった。昨晩のビールのつまみの夜食が腹に残って、食欲はないので、朝食もそこそこに出発した。
 ヘッドランプなしで歩けるぎりぎりでの出発であった。山の中腹にヘッドランプの灯りが見えていた。登山口のポストで登山届けを書いていると、団体を乗せたマイクロバスも到着した。飯豊も団体が多く入っているが、この大日杉からのコースは、比較的登り易いが、川入登山口と比べて少ないような感じである。ガイドブックなどで、最初に紹介されるコースが川入からのものであるためであろうか。そういえば、飯豊本山に初めて登ったのは、1993年に川入からで、それ以来このコースは歩いていない。そろそろ、川入コースもまた歩いてみる必要がある。
 右手の沢沿いに進むと、すぐにジグザグの登りが始まる。1泊2日の装備なので、食料も多くはなく、ザックも少しは軽い。といっても、そのぶん、350mlのビールを3缶持っている。ひと汗かくと、鎖場になったざんげ坂に到着する。岩場であるが、泥で滑りやすくなっている。登りは問題はないが、下りは注意が必要である。
 鎖場を越すと、尾根の上に出る。ここからは、体力勝負の尾根沿いの登りが続く。じきに長之助清水に到着する。まだ歩き初めといっても良く、水の補給の必要はないが、この先を考えて、喉をうるおしに行った。水場は近いが、斜面のトラバースの足場が悪いため、ロープを掴んで下りる必要がある。パイプから勢い良く水が出ていた。冷たく美味しい水であった。
 水の補給で元気をもらい、再び登りに汗を流した。すぐ先で、杉の大木の立つ御田を通過。この先は、ひたすら登りが続く。天気予報通りに、気温も上がってきた。
 右手に鍋越山に至る尾根を落とす小ピークが次第に近づいてきた。1409m小ピークに出てようやくひと息つくことができた。地蔵岳の山頂は、すぐ目の前にあるが、これに取り掛かると、意外に登りでがある。地蔵岳の山頂手前で、種蒔山から草履塚、飯豊本山に至る稜線が目に飛び込んできて、思わず足が停まった。切合の小屋もはっきりと見えていた。快晴になって、会津磐梯山をはじめ、遠くの山もはっきり見えていた。
 地蔵岳から切合までは、200m強の標高差であるが、小ピークの乗り越しがあって、意外に時間がかかる。地蔵岳から大きく下り、大き目のピークと小さなピークを越えると、目洗清水に到着する。水場は、左手の草付きの急斜面を下る必要があるため、水の流れを上から確認するだけにした。水場に達するのに体力も使うし、早い時期には、残雪に覆われていることもあるので、この水場はあてにしないほうが良い。
 この水場を過ぎてすぐの、登山道右手に草地の広場があり、ここからは飯豊本山の眺めが広がっており、写真の撮影スポットである。飯豊本山は、その名前に反して飯豊連峰の中では目立たないピークであるが、この大日杉コースから見る飯豊本山は、高くピラミッド型をしており美しい。
 ダケカンバの立ち並ぶ御坪に到着して、ようやく切合まであと僅かになる。この付近は、ヒメサユリの美しいことでも知られているが、今回は、タカネマツムシソウとウメバチソウのお花畑が広がっていた。
 1680m小ピークを越えると、一旦下りになって、種蒔山下のトラバース道になる。雪渓から流れ出る沢が、水音を立てて流れていた。コップを出して、ひと休みになった。切合まではあと僅かであるが、ここの水を飲むのを楽しみに、ここまで登ってきた。モミジカラマツやイワショウブの花が見られるものの、お花畑の盛りは過ぎていた。
 笹の刈り払い道を、最後の力を振り絞りながら登った。最後の沢は、小屋の水場にもなっているが、7月中は雪渓が残っており、横断は危険である。草付きを高巻くことになるが、傾斜が緩んだ雪渓を登っていくと、種蒔山の登山道にそのまま出ることができる。今回は、残雪も完全になくなっており、ここの難しさも知らずに通過することになった。
 稜線に出ると、大日岳の眺めが飛び込んできた。眺めは後でゆっくりということで、まずは、小屋脇のキャンプ場に入った。張りっぱなしのテントがひと張りあるだけであった。
 テントを張り、昼食にビール、その他必要な装備をサブザックに詰め込み、軽装で飯豊本山へと出発した。昼近くなっていたが、青空が曇る気配もなかった。
 切合から先、草履塚と御前坂の登りが待ち構えている。空身なら、そう問題はないが、一ノ王子のキャンプ場まで入ろうとすると、大荷物でさんざんに汗を流させられる。1泊2日では、一ノ王子でテントを張っても大日岳まで足を延ばすのは難しい。結局、切合にテントを張って、飯豊本山は軽装で往復するというのが一番楽である。
 草履塚への登りは、残雪が僅かであるが残っており、その脇にはチングルマの群落も見られたが、登山道からは距離があった。
 草履塚の北側のピークからは、姥権現から御秘所、御前坂を経て一ノ王子に至る展望が開けている。このコースでも好きな眺めである。昼になっても続く青空は、秋の気配をただよわせていた。
 一旦大きく下ると、鞍部には、姥権現が佇んでいる。今回は、赤い頭巾をかぶっていた。周囲には、ハクサントリカブトが群生して、姥権現の顔つきとあいまって、なにやら怪しい雰囲気が漂っていた。
 御前坂の登りからは、大雪渓を残した御西岳と、鋭く天を突く大日岳の眺めが広がり、しばしばカメラを構えるため、良い足安めになった。
 急坂を登り切ると、一ノ王子となり、その先で飯豊神社のある本山小屋に到着する。一等三角点ピークまでは、緩やかな稜線歩きが残されるばかりである。展望を楽しみながらの歩きになった。飯豊本山の山頂は、風が強かったので、北に一段下って腰を下ろした。北股岳からえぶり差岳に至る稜線の眺めが広がっていた。台地状の御西岳に至る稜線の向こうには、大日岳がピラミッド型の姿を見せていた。ダイグラ尾根を見下ろすと、宝珠山が鋭い二つの山頂を見せ、その彼方には、長者原付近の谷間を見下ろすことができた。朝日連峰も、空の彼方に横たわっていた。
 ビールを飲みながら、昼食にした。後は、花の写真を撮りながら、のんびり下れば良い。
 低山を眺めていくと、えぶり差岳の右手に、日本海が広がり、朴坂山塊が見えているのに気が付いた。一等三角点の山として、確かに朴坂山は飯豊本山の隣の山であった。
 マクロレンズに交換し、花の写真を撮りながら、下山に移った。飯豊を代表する花としては、イイデリンドウが挙げられる。イイデリンドウは、飯豊本山から御西岳にかけて良く見られるが、本山周辺にも多い。時期が遅いかなと思っていたが、多くのイイデリンドウを見ることができた。花の写真を撮っている間にも、団体を含めて大勢の登山者が通過していったが、イイデリンドウを気にしている者がいないのは不思議であった。リンドウの花を見るのは、太陽が照っている昼間に、そこを通過する必要がある。飯豊本山に登った者でも、早朝や夕暮れに登って、イイデリンドウを見落としている者も多いのではないだろうか。  のんびり下ったものの、日の高いうちに切合に戻ってしまった。暑くてテントの中に入れず、しばらくは、外の日向で暑い思いをした。テントの数は少なかったものの、小屋は大盛況になっていた。飯豊で食事を出す小屋はここだけのせいもある。ツアーの団体も入っていた。小屋の中は狭いためか、外で食事をしている者が多かった。見ると、夕食はカレーライスで、朝食はご飯に味噌汁、簡単なおかずであった。北アルプスの山小屋とは比べようもない食事内容であった。レトルトカレーにアルファ米で、充分と思えるのだが、それすら持てない登山者が対象の需要ということであろうか。
 いつものように、キャベツと焼き鳥缶詰入りのラーメンにおにぎり、ミニトマトで夕食とした。ビールを二本飲んで酔いも回り、iPODで音楽を聴きながらうつらうつらとしているうちに夜になった。
 夜中に外に出ると、満月に近い月のため、星空は霞んでいた。月影を頼りに、脇のピークに立つと、飯豊の稜線は黒々と、星空を切り抜いていた。眼下には、米沢方面であろうか、明るい街明かりが広がっていた。御西小屋に入っていれば、新潟の街明かりが見えたのにと、少し残念であった。
 翌朝は、ゆっくりと寝ているつもりであったが、周りの物音で目が覚めた。飯豊本山を登ってから下山する登山者は、早出をする必要がある。前日と変わって、曇り空が広がっており、大日岳の山頂も隠れていた。羽虫も多く、外で落ち着いていられないので、下山に移ることにした。
 御坪までは、風景や花を眺めながらのんびり下ったが、その先は下りに専念することになった。下界が近づくに連れて、気温も上がって、汗が滴り落ちるようになった。
 長之助清水で、冷たい水を飲んで、元気を取り戻した。ここから登山口までは遠くないので、この水場は、下山時にありがたく思う水場である。
 水を飲んでひと休みしていると、途中で追い抜いた登山者が到着して、水場に向かっていった。その間に下山を開始していたのだが、後で聞いたところでは、水を飲んでいると、熊が10m程の距離に現れて、大声をたてると逃げていったとのことである。熊のこの水場を利用しているのかもしれないが、そうだとする少々危険である。
 下界は猛暑がぶり返しており、早い帰宅の後は、クーラーを利かせて昼寝になった。こういった気楽な飯豊もよい。
 
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