山毛欅ヶ平山

山毛欅ヶ平山


【日時】 2007年5月12日(土)日帰り
【メンバー】 佐渡汽船親睦登山 (41名)
【天候】 晴

【山域】 大佐渡
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 井坪山・いつぼやま・740m・なし・新潟県
 山毛欅ヶ平山・ぶながひらやま・947.1m・一等三角点本点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 相川/鷲崎/小田
【コース】 歌見登山口より
【ガイド】 新潟花の山旅(新潟日報事業社)
【温泉】 椎崎温泉ニュー桂(日帰り入浴不可) 

【時間記録】 7:00 新潟港=(ジェットフォイル)=8:00 両津港=(バス)=8:45 歌見川第一堰堤〜9:02 発―9:34 第二堰堤―11:40 歌見越―12:30 井坪山―13:12 山毛欅ヶ平山〜13:45 発―13:57 林道分岐〜14:35 発―14:38 林道登山口―14:48 遊歩道入口―14:54 大王杉〜15:02 発―15:06 遊歩道入口―15:18 林道登山口―15:54 歌見越―16:51 第二堰堤―17:13 歌見川第一堰堤=(バス)=19:30 両津港=(フェリー)=22:00 新潟

 山毛欅ヶ平山は、大佐渡山脈北部の一等三角点本点の置かれたピークである。その名前に反して、山頂一帯にはブナ林ではなく、天然杉の林が広がっている。佐渡には、以前はこのような天然杉の林が広がっていたものが、戦争中の伐採によってほとんどが姿を消してしまったという。残された山毛欅ヶ平山の天然杉の自然林は、新潟大学に管理が移されて、新潟大学演習林になっている。

 新潟県の一等三角点巡りとして、山毛欅ヶ平山は訪れなければならない山であった。しかし、佐渡の山ということで、登山口まで訪れること自体が難しく、コースも一般登山道というわけではないようで、登らないままになっていた。4月はじめに岨巒堂山を案内してもらった佐渡汽船親睦登山で、この山毛欅ヶ平山の山行が計画されたため、参加させてもらうことにした。今回の目的は、一等三角点に出会うことであるが、雪割草やカタクリから一歩先に進んだ季節の花に出会うことも楽しみであった。
 行きは、ジョットフォイルの使用である。前日の強風の影響で、海にはうねりが出ていた。船が揺れて船酔いも心配になったが、新潟港を出た直後が一番揺れたものの、外海に出ると揺れも収まってきた。
 1時間の船旅の後、マイクロバス二台に分乗して、登山口に向かった。歌見の集落から歌見川沿いに進む道は、地元の運転手なので進めるが、初めてなら躊躇するような細い道であった。
 第一堰堤手前の広場から歩き出すことになった。第二堰堤までは、荒れた林道の歩きになった。オドリコソウが群落状態で、コウライテンナンショウの花も見られたのだが、参加者は成長し過ぎたヤマウドに夢中になっていた。
 標高280m地点の第二堰堤から山道が始まる。林道終点広場から堰堤下に進み、左脇を登ると、山道が始まっている。堰堤下は草むらになっており、この取り付きは判りにくい。
 しっかりした山道が続いているといっても、歩く者が少なく、草が被り始めている。団体が歩いた後は、草がなぎ倒されている。最近では、環境保護ということで、登山道を歩いて踏みしめること自体が悪いことのようにされているが、山道は歩かれてこそ維持される。今回利用している山道は、外海府に抜ける峠越え道であるが、今や利用者も無くなり、消えようとしている。山道というものは、昔から伝承されてきた文化遺産であると思う。オーバーユースによっても道は破壊されるが、歩かなければ消えていく。一部の有名山だけを目指すのではなく、多くの山を登山の対象にすることが、この古い道を守るためには大切なのではないだろうか。
 堰堤のかかる沢の左手の尾根に向かって、急坂を登る。その後、しばらくは尾根沿いの登りが続くが、それを越して左の谷間に入っていく。谷は広がり、美しい新緑の林が広がるようになった。チゴユリ、オオイワカガミ、ツクバネソウ、ズダヤクシュ、ニリンソウ、ヒトリシズカの花が次々に現れて楽しませてくれた。670m標高で尾根を乗り越してマセン平に入ると、シラネアオイやサンカヨウが群落状態になって現れた。歌見越が近くなると、ミヤマカタバミ、スミレサイシン、ツバメオモト、ユキザサ、さらに盛りを過ぎたカタクリやキクザキイチゲも現れた。
 歌見越で一旦新潟大学演習林管理道に出るが、すぐに脇の尾根に取り付く。尾根沿いには、境界見出し標の杭が打ち込まれて、テープも付けられていたが、踏み跡はあるものの、薮が被っていた。笹薮を掻き分けていくと、草地の広場に出て、展望が開けた。杉の伐採のための作業小屋があったため、石名小屋山と呼ばれるようである。前方には、井坪山の山頂が迫り、外海府の海岸線を眺めることができた。
 倒木を乗り越すところもあって、この先は、団体ではなかなかはかどらない道になった。ヤブコギにも慣れていない人が多かった。登山道周辺には、天然杉が目立つようになった。井坪山は、見晴らしの利かない山頂で、下りになって、山頂を通過したことが判った。
 井坪山の先で、尾根通しから左にコースを変えて下るところがあり、ここは判りにくかった。山毛欅ヶ平山の山頂下では、右手にトラバース気味に進むと、草地に飛び出した。この上部からヤブコギ状態で尾根上に出ると、踏み跡が現れた。これを辿ると、笹原の中の小広場になった山毛欅ヶ平山の山頂に出た。お目当ての一等三角点にも出会うことができた。
 団体が到着して腰を下ろすと、広場は満杯になった。時間は遅くなっていたが、杉林の見物をしてから下山することになり、急いで昼食をとることになった。参加者で、一等三角点を気にして写真を撮っているような者はいないようであった。このツアーに参加したのも、一等三角点ピークであるからという理由ではないようであった。
 山頂から林道に出るため、尾根沿いに南に進んだ。倒木も多く、テープが付けてあるといっても、踏み跡を辿るのは難しかった。以前よりも荒廃が進んでいるようであった。テープの列を追っていくうちに、これでは林道には出られないことが判った。南の尾根に進み過ぎたようであった。テープの列と踏み跡は、境界見出し標のためのようであった。
 引き返していくと、西に向かって分かれる踏み跡が見つかった。これを辿ると、すぐに林道に下り立つことができ、その入口には、山毛欅ヶ平山登山道入口と書かれた標識が置かれていた。登山道というには、はっきりしない道であった。
 林道を南に向かって進むと、「大王杉こっち」と書かれた標識が現れた。ひと登りで、天然杉の大木が現れた。直径は3m近くあろうか。豪雪地のために高さはそれ程ではないが、ずんぐりした力強い印象であった。王様の小道として遊歩道はさらに続いているというが、1.5から2時間かかるというので、これで引き返すことになった。
 林道を歩いて、歌見越に引き返した。長く感じられる林道歩きであったが、オオタチツボスミレやシミレサイシンの花が林道脇を彩っていた。
 下山後、温泉に入ってからフェリーに乗るということで、下山の足を速めることになった。
 車や温泉の手配のおかげで、無事にフェリーに乗り込むことができた。酒宴に突入する人、疲れて寝る人。一等船室貸切のおかげで、2時間半の航海もあっというまで、新潟に戻ることができた。

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