金北山、金剛山、どんでん山

金北山
金剛山
どんでん山


【日時】 2007年4月20日(金)〜23日(月) 前夜発3泊3日
【メンバー】 単独行
【天候】 21日:曇り 22日:雨 23日:曇り

【山域】 大佐渡
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 金北山・きんぽくさん・1172.1m・三等三角点・新潟
【地形図 20万/5万/2.5万】 相川/相川/金北山
【コース】 横山登山口より往復
【ガイド】 大佐渡縦走トレッキングマップ

【山域】 大佐渡
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 金剛山・こんごうせん・962.2m・三等三角点・新潟
【地形図 20万/5万/2.5万】 相川/鷲崎、相川/小田、両津北部
【コース】 白瀬登山口より往復
【ガイド】 新潟花の山旅(新潟日報事業社)、大佐渡縦走トレッキングマップ

【山域】 大佐渡
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 どんでん山
  蜂ヶ峰・はちがみね・934.2m・三等三角点・新潟
  尻立山・しりたつやま・940m・なし・新潟
【地形図 20万/5万/2.5万】 相川/相川/金北山、両津北部
【コース】 アオネバ渓谷より往復
【ガイド】 花の百名山登山ガイド(山と渓谷社)、大佐渡縦走トレッキングマップ

【料金】 フェリー車両航送代 18380円(春割切符)

【時間記録】
4月20日(金) 19:30 新潟港=(佐渡汽船)=22:00 両津港=23:30 横山登山口  (車中泊)
4月21日(土) 6:34 横山登山口―7:32 安養寺分岐―8:00 初盛分岐―8:17 じゅんさい池―8:36 はらい川―8:41 鳥居―9:20 神子岩―9:40 天狗岩―10:35 金北山〜10:55 発―11:26 天狗岩―11:48 神子岩―12:10 鳥居〜12:32 発―12:37 はらい川―12:55 じゅんさい池―13:13 初盛分岐―13:38 安養寺分岐―14:37 横山登山口=16:30 白瀬登山口  (車中泊)
4月22日(日) 6:50 白瀬登山口―7:25 タン平水路―7:44 トビガ沢―8:44 組上―9:30 金剛山―10:08 組上―10:44 トビガ沢―10:56 タン平水路―11:26 白瀬登山口=16:00 アオネバ渓谷登山口
4月23日(月) 7:06 アオネバ渓谷登山口―7:39 落合―8:00 ユブ―8:31 アオネバ十字路―8:50 縦走路口―9:08 ドンデン山荘―9:15 蜂ヶ峰―9:30 尻立山〜9:50 発―10:00 蜂ヶ峰―10:06 どんでん山荘―10:30 縦走路口―10:48 アオネバ十字路―11:58 ユブ―12:27 落合―13:02 アオネバ渓谷登山口=16:00 両津港=(佐渡汽船)=18:30 新潟港

 金北山は、佐渡島の最高峰であるり、佐渡の玄関口である両津港に船が到着したとき、正面に見えるのが、この山である。古くからの信仰の山としてあがめられてきた山ではあるが、山頂には自衛隊のレーダードームが置かれて、日本海に臨む防御基点として働いている。麓からの登山道が開けているが、この登拝道を歩く者は少なく、大佐渡スカイラインの通っている白雲台から自衛隊の管理道を歩いて登る者がほとんどのようである。

 金剛山は、大佐渡山脈縦走路の北端に位置する山である。古くからの信仰の山で、山頂にお堂が置かれている。山頂に岩場を抱いており、男性的な姿から金剛力士を連想して名付けられたのだろうか。山を関東には稀な「せん」と読むのは、佐渡が海の道を通じて関西と関係が深いことと関係しているものと思われる。

 どんでん山は、大佐渡山脈縦走路の中央部の山である。どんでん山というピークはなく、牛の放牧場になったなだらかな山頂一帯をさしている。この一帯の最高点の尻立山が、立派な山頂標識も立てられており、どんでん山の山頂と考えられる。車道が山頂直下のドンデン山荘まで上ってきており、ピークハントとしては、ものたりない簡単な山になっているが、金北山縦走の入口の山、あるいは花が素晴らしいアオネバ渓谷経由で登ることで、この山の魅力が味わえる。

 佐渡を代表する山としては、金北山、どんでん山、金剛山の三つがまず挙げられるであろうか。佐渡の山はほとんど手付かずであったが、二週前に岨巒堂山と松倉山から平城畑を歩いた。雪割草の大群落を楽しんだが、これらの山は、やはりマイナーピークであり、代表的な山を登っておかないことには、気持ちが落ち着かない。
 佐渡の山に登るとなると、船代はともかく、現地に入ってからの足が問題になる。4月下旬から6月始めにかけては、どんでん山と白雲台に会員制バスが運行されているが、大佐渡山脈縦走のためには良いが、4月現在では稜線は残雪に覆われて佐渡の魅力である花に出会うには時期が早すぎる。登山口へはタクシー利用ということになるのだが、一人ではタクシー代がまかないきれない。幸い佐渡汽船が乗客を増やすために、3月下旬から4月末まで、「春割切符」を発行している。これを使えば、18380円で車ごと佐渡に渡ることができ、宿泊費もいつもの野宿ですむため、それ以上の費用はかからない。この「春割切符」は、雪割草の時期とも重なるので、「雪割草切符」として今後も利用価値が高いと思う。
 せっかく佐渡に渡るならということで、休暇を1日とって、3日間の山行計画をたてた。二日間の日程では、金北山、どんでん山、金剛山のどれを落とすかで迷うことになる。時間的余裕を持たせるため、金曜日の最終フェリーに乗り込むことにした。
 荷物は前日に車に積み込んでおいて、帰宅後直ちにフェリー乗り場に向かった。これまで、フェリーに車ごと乗り込んだのは、北海道への新日本海フェリーや、鹿児島から屋久島への折田汽船があった。単なる乗船とも違った緊張感がただよう。
 料金節約のために、二等席とした。仕事では、一等に乗ることも多かったが、山行きのために贅沢は許されない。週末の帰島のためか、乗船客もそこそこにいた。出発の合図のドラとともに、上部甲板に出て、港から見る新潟の夜景を楽しんだ。桟橋を離れて30分ほどすると、港から外海に出て、うねりも出てくるが、穏やかな海が広がっていた。夏ならばイカ釣りの漁火が、周囲に広がるところだが、闇が広がるばかりであった。
 2時間30分の航海であるが、出港に30分ほど、入港にも30分ほどかかって、中は1時間半になる。ひと眠りすれば、航海もおおむね終わりの時間である。
 フェリーが港に着いてゲートが上がれば、佐渡に車で上陸である。初日は、金北山に登ることにして、横山登山口をめざすことにした。食料の買出しのために、コンビにを探しながら相川方面に車を走らせた。両津市街地を出たところで、弁当屋のほかほか亭を発見。夕食の調達場所も確保できた。その先で、コンビにのセーブオン。弁当やパン類も豊富に揃っており、食料の調達も問題はなかった。なお、佐渡のコンビには、セーブオンの一島独裁状態である。他のコンビにがないのは、島といった特殊条件によるものである。
 登山口をめざすために車のナビをセットしようとして、はたと困った。横山登山口は、林道国仲北線沿いにあることは判るのだが、ナビの地図ではこの道はのっていない。まずいことに、登山口周辺の地図は印刷してきていたものの、横山バス停付近からのアプローチは範囲外になっていた。それではと県別マップルの道路地図を開くと、30万分の1縮尺で、全く役にたたなかった。佐渡には、迷うほどの道路がないとでも思っているのだろうか。
 とりあえず、横山バス停の手間で、山に向かう道に進んだ。田圃の中を走っていくと、未舗装の細い道になってしまった。林道国仲北線は、舗装された道であるので、そのアプローチ道としては、疑問が湧いてきた。朝になって明るくなってからとも思ったが、寝場所の問題もあって、登山口まで入っておきたかった。
 林道国仲北線の起点は、大佐渡スカイラインの入口近くのようなので、そちらから回り込むことにした。金井新保から大佐渡スカイラインに向かうと、林道国仲北線が始まっていた。その分岐脇にも、金北山登山口があったが、予定通りに横山登山口に向かった。林道は、舗装道路とはいっても、カーブの連続に、上がったり下ったりで、運転に疲れる道であった。ようやく横山登山口に到着した時は、草臥れはてていた。
 横山登山口は、林道国仲北線のカーブ地点の少し高い所に、地元の老人会が取り付けた絵看板があるのが目印である。登山道はと見ると、踏み跡よりはましという程度で、少々心細いものであった。
 暗い中で登山口を捜すことの難しさを味わった出だしであった。
 下山後に、横山バス停まで下ってみて判ったここまでの道順はこうなる。両津から相川方面に向かい、横山バス停の手前で、山に向かう道に曲がる。田圃の中を抜けていくと、未舗装の道に変わり、右手に浄水施設が現れる。ここから、山間の畑の中の狭い道を登っていくと、林道国仲北線に飛び出す。そのまま直進するように進み、左へのカーブ地点が横山登山口になる。
 最初のアプローチは間違ってはいなかったが、夜間に初めてでは、通れる道ではなかった。
 夜中に雨が降ったものの、朝には上がっていた。天気予報では曇り時々雨であったので、まずは良い幸先ということになる。
 林道脇の石積みを這い上がって、踏み跡に進んだ。ひと登りすると、尾根沿いにしっかりした山道が続いていた。結局、取り付きは倒木のために迂回路が付けられて、踏み跡状態になっていたようである。尾根に出たところには、木の祠があり、小さな石の地蔵が収められていた。この後は、登拝道として踏まれてきたと思われるしっかりした道を辿ることになった。地図にも破線は記載されているとはいっても、微妙にコースは変わっているところもあった。
 横山登山口からのコースは、距離は長いものの、それだけに比較的緩やかな尾根歩きが続き、歩きやすかった。この時期に佐渡の山を訪れたのは、花が目的である。歩き始めの頃に現れたカタクリは盛りを過ぎてしおれていたが、歩くうちに盛りの花になていった。
 小さな沢にはミズバショウの花が列を作って咲いていた。シラネアオイ、ザゼンソウ、白花のオオタチツボスミレも現れて、目を楽しませてくれた。
 安養寺分岐という標識があり、左から山道が合わさった。この道は、トレッキングマップにも記載されていないが、しっかりした山道のように見えた。佐渡の山には、地元の人しか知らないような山道が多いようである。
 この分岐の先で、細い流れに沿っての下りになった。尾根沿いの道からはずれたかと思って、一旦引き返して確認したが、間違ってはいなかった。台地を通り過ぎてひと登りすると、初盛ダムからのコースが合流した。初盛ダムからの方が時間も早いようであるが、ここまで花も多かったので、横山登山口からの歩きで良かったことになる。
 分岐からゆるやかに登っていくと、ジュンサイ池に到着した。ジュンサイ池という名前にもかかわらず、乾燥状態が進んで水は無い湿地で中央部にミズバショウ、周辺にザゼンソウの花が咲いていた。
 その先僅かで、沢が流れ始めている谷間に出ると、枡形の水槽が設けられたはらい川に出た。ここで信仰登山の信者は、うがいをして身を清めたのだろう。付近には、古い石仏と新しい不動像が置かれていた。
 左に曲がってひと登りすると、尾根の上には木の鳥居が立てられていた。ここからは、幅広の尾根にブナ林が広がるようになった。佐渡の山で、このようなブナ林に出会えるとは意外な感じがした。
 林の中から細尾根の上に出ると、ガレ場に出て、展望が急に開けた。神子岩という標識が立てられていた。目の前に立つ岩壁が神子岩なのだろうか。金北山の山頂はまだ見えないが、谷向こうの妙見山から続いてくる稜線の眺めが素晴らしかった。両津湾や真野湾の眺めも広がっていた。写真を撮ろうとすると、谷を吹き上げる風で体が揺れ、シャッターをなかなか切れなかった。
 幸い、その先ですぐに潅木の中に入って、風当たりも弱くなった。ブナの木に囲まれた尾根の登りが続き、雪割草の花も現れた。残念ながら、太陽が出ないので、花は閉じたままであった。
 天狗岩に出て、再び周囲の眺めが広がった。稜線もかなり近づいてきたようである。ガレ場を通過してひと登りすると、ようやくレーダードームの置かれた金北山の山頂が目の前に迫ってきた。
 ここまでは快調に登ってきたが、残雪が現れて登山道が隠されてしまった。夏道の断片を辿り歩く必要もあるため、細心の注意が必要になった。傾斜がきつい所も現れたが、雪が柔らかく、キックステップで問題なく登ることができた。
 始めは木の枝をくぐるような状態であったが、一面の雪原が広がるようになった。歩き始めは、花が広がる春の山であったが、冬に逆戻りした。
 稜線上に出て、左に曲がって雪稜を登れば山頂到着である。縦走登山者の足跡があるかと思ったが、誰も歩いていないようであった。左手は雪庇は落ちていたが、切り落ちており、滑落に注意しながら登る必要があった。
 レーダードームの脇に到着して、鉄条網の縁を辿って雪の斜面をトラバースすると、金北神社の置かれた山頂に到着した。お堂は閉められており、その前の一段低いところに山頂標識が置かれていた。レーダードーム施設に挟まれて、落ち着きの無い山頂であった。
 その先へ雪原を下ってみると、鳥居があり、自衛隊の管理道に出た。完全に除雪されており、自動車も上がってきていた。白雲台からは、この管理道を歩いてくることになるが、登頂の達成感は、下から登ってこないことには味わえないであろう。
 ガスが出てきて、周囲の展望が閉ざされてしまった。コース判断が難しい雪原歩きがあるため、これ以上天気が悪くならないように、下山にうつった。
 雪原を抜ければ、後はしっかりした登山道が続いている。花の写真を撮りながらの歩きになった。一般に行われる大佐渡縦走は5月に入ってからだが、4月は麓で花を、山頂部では残雪を同時に楽しむことができる。
 下山後、金井で温泉に入り、夕食と翌日の食料を買い込み、金剛山の登山口に向かった。
 海岸線を二ツ亀方面に向かった。先回の山行の大佐渡周回が良い偵察になっている。白瀬の集落で、白瀬川沿いの道に進んだ。民家の間を抜けると、田圃の中の細い道になった。農地が終わって、谷間が狭まると、登山口に到着した。普通乗用車なら4台くらい停められるであろうか。マイクロバス二台が停まっていたので、駐車場が空くのを待った。しばらくすると、見た顔のFさんが先頭のグループが下りてきた。最後尾にTさんも現れた。この二人には先回の佐渡登山ではお世話になったが、この日は奈良からのグループを案内しているとのことであった。この晩は、ログハウス泊なので行こうと誘われたが、この登山口に止まることにした。誘惑されそうになったのだが、翌日の天気に不安があり、登山口を離れてしまうと、登山の気持ちが萎えてしまう可能性があった。
 グループが去ってから、二人連れが下山してきて、しばらくするとタクシーが迎えに来た。静かになった登山口で、夜を過ごした。
 夜中から激しい雨になったが、朝には雨は止んだ。空模様に不安はあったが、登山を中止する理由も無いことから、金剛山に向かって出発した。
 白瀬川には木の橋がかかっていたが、濡れて滑りやすそうであった。滑り止めのために、鉄のレールが取り付けてあったので、慎重に渡った。対岸に渡ると、杉林の中に登山道が続いていた。以前は、耕作地であったような平地を抜けていった。
 雨が再び振り出し、雷も鳴り出した。山腹の林の中にいるため、落雷の心配はない。そのうち通り過ぎることを期待して、傘をさして歩き続けた。
 尾根に乗ってひと登りすると、用水堀が横断するダン平水路に出た。この先も緩やかな登りが続き、トビガ沢の横断点に出た。水量も少なく、問題なく渡ることができた。斜面をトラバースしながら登っていき、折り返すと、尾根の一段下のトラバース道が続いた。三佐衛門横道と呼ばれるようであるが、牛を移動させるために緩やかな道が付けられているようである。
 尾根沿いの急な登りが始まると、芝地の広がる組上に出た。弧状に続く尾根の先に見えるのが金剛山の山頂のようであった。山頂までは、もうひと頑張りが必要である。
 天然杉が生える尾根歩きになった。山頂が近づくと、残雪も現れて、登山道を辿るのに、注意が必要になった。尾根沿いではなく、一段下のトラバースが続くため、余計に注意が必要であった。
 山頂の南に出てところで、急な登りが始まった。ガレ場に出ると、岩壁が目の前にそそり立っていた。鳥居をくぐってひと登りすると、金剛山の山頂に到着した。山頂に置かれた薬師様が祀られているというお堂は扉がしまっていた。
 この日の予定では、雪畑山まで歩く予定であったが、山頂の先をうかがうと、僅かに下った先の稜線はガスで隠されていた。稜線上の残雪も豊富で、この悪天候では無理と諦め、下山に移ることにした。
 山頂から少し下ったあたりでは雪割草の花も見られたが、閉じたままであった。一旦止んだ雨も、雷鳴とともに激しく振り出した。雨具を着るきっかけを失って、すでに濡れきっていたので、そのまま傘で歩き続けることになった。
 花の写真を撮るどころではなくなったが、麓近くでは、ヒトリシズカの群落が見事であったので、それだけはなんとか写真を撮った。
 登山口の白瀬川に戻って驚いた。川は濁流に変わっていた。朝は増水しており落ちたら危ないかなという状態であったが、今は落ちたら最後という状態に変わっていた。慎重に橋を渡って、登山を終えた。
 時間も早かったので、翌日のどんでん山登山の偵察のために、野宿の場所探しと、どんでん高原の偵察を行うことにした。
 梅津川沿いに進むと、つづら折りの道が続いた。一気に高度を上げると、大佐渡ロッジに到着した。横殴りの雨のため、車から出るのも躊躇する状態で、そのまま山を下った。
 昨日と同じ行動で、入浴と食料の買出しを終えた。翌日のどんでん山へは、あおねば渓谷の往復で登る予定であったので、登山口手前の静かそうな広場を見つけて夜を過ごした。
 どんでん山への車道は、夜間通行止めで、そのゲートは、梅津川沿いの車道が大きくカーブする地点の200m程手前で、脇には登山者用臨時駐車場も設けられている。川向こうには、大規模な砕石場が稼動している。
 車道のカーブ地点が、アオネバ渓谷の登山口になっている。入口には、移動式トイレも置かれており、人気の山であることがうかがえる。NHK放送の「花の百名山」でも、このアオネバ渓谷からのドンデン山が取り上げれられている。ビデオ版は、オリジナルの田中澄江著の「花の百名山」や「新・花の百名山」と取り上げられている山がかなり違っているが、花の名山としては、妥当な山が選ばれている。
 入口の案内板を読むと、アオネバとは、尾根周辺に見られる青い粘土が由来とあった。
 幅広のしっかりした登山道が整備されていた。渓谷は、新緑に覆われて、青い水の流れと相まって、美しい景観を見せていた。ニリンソウ、シラネアオイ、キクザキイチゲ、ユキワリソウといった花が、標高を上げていくにつれて交代しながら、途切れることなく続いていた。登山道上で、視野の中から花が無くなることはなかった。ただ、朝で、花が広ききっていなかったため、花の写真は下山時にということで、登りに専念した。
 緩やかな登りを続けていくと、中間点の落合に到着した。ここまでは、もう半分かと、あっけないくらいのものであった。その先も緩やかな登りが続いたが、沢の二又のユブに出ると、登りの傾斜も増した。登るに連れて残雪も現れるようになって花も無くなった。標高差220mをひと汗かいて登り切ると、アオネバ十字路に出た。北側の道は無くなっており、実際には、大佐渡縦走路とのT字路になっている。
 幅広の林道跡の歩きになった。登山道周囲には、おおぶりの蕾のフキノトウが、誰にも取られずに頭を出していた。佐渡の人は、海の幸に目がいってか、山菜を食べる習慣は無く、フキノトウなどが、最近になって食べられるようになったという。
 車道に飛び出して、後は車道歩きで大佐渡ロッジに向かった。山荘の駐車場から、遊歩道が始まっているが、残雪に覆われて判りにくくなっていた。ひと登りした蜂ヶ峰の山頂は、テレビの中継基地が置かれて、三角点が置かれているものの、登頂の記念写真を取り合うようなピークではなかった。その先に進むと、牧場の芝地が広がるようになった。ガスがかかっていたが、緩やかに起伏する先に尻立山の小高いピークが見えた。芝地の中で登山道ははっきりしなくなったが、紐が横に這わしてあるのが、登山道の印のようであった。確かに、ガスに囲まれていると、どちらに向かって良いのか判りにくい。
 緩やかに登っていくと、尻立山の山頂に到着した。ここには、立派な山頂標識が置かれていた。風が冷たかったので、少し戻って、芝地の上で腰を下ろした。ひと休みしているうちにガスが上がって、どんでん高原一帯の眺めが広がった。緩やかに起伏する芝地の向こうには、海の眺めが広がっていた。マトネから金北山への大佐渡縦走路も一望することができた。お弁当を広げるに相応しい山頂である。
 キャンプ場を回って戻ることも考えられたが、残雪もあることから、来た道を引き返すことにした。
 アオネバ十字路から、マクロレンズに交換して、花の撮影をしながらの下りになった。下りの途中で現れる花は、季節の移り変わりに応じたものになっている。範囲は狭いが、変化に富んだ花を見ることができた。現れた花を高いところから順番に挙げていくと、ザゼンソウ、ヤマネコノメソウ、エンレイソウ、エゾエンゴグサ、キクザキイチゲ、ユキワリソウ、アマナ、カタクリ、シラネアオイ、ミヤマカタバミ、ニリンソウ、スミレサイシン、オオタチツボスミレ、ミヤマキケマン、ヒトリシズカが見られた。ユキワリソウの盛りは4月初めであるが、この渓谷では、遅い時期っでも見られるので、ユキワリソウを見たい人にはお勧めのコースである。また、シラネアオイも多く、ここの花は、鉢植えほどの大きさの株が多く、崩壊地のような斜面に、数多く咲いていた。シラネアオイは、初夏の花というイメージがあったので、この時期の出会いは意外であった。登り以上の時間を掛けての下山になった。
 目標の山を登り終え、後はフェリー乗り場に移動して、出港を待った。フェリーが港を離れると、白波の向こうに大佐渡山脈の眺めが広がった。金北山、どんでん山、金剛山、登ったピークを振り返った。海を挟んで遠いと思った佐渡の山も身近なものに感じられるようになった。

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