箕輪山、高森山

箕輪山
高森山


【日時】 2007年2月3日(土)〜4日(日) 前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 3日:単独行 4日:4名グループ
【天候】 3日:曇り 4日:吹雪

【山域】 安達太良連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
箕輪山・みのわやま・1728m・なし(1716.4m・二等三角点)・福島県
【コース】 箕輪スキー場より
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/二本松/安達太良山
【ガイド】 山と渓谷 2007年2月号
【温泉】 横向温泉ホテルマウント磐梯 600円

【山域】 吾妻連峰周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
高森山・たかもりやま・248.9m・二等三角点・福島県
【コース】 高森より
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/磐梯山/中ノ沢
【ガイド】 なし
【温泉】 中ノ沢温泉西村屋 500円

【時間記録】
2月2日(金) 21:00 新潟=(磐越自動車道 経由)=23:00 磐梯山SA  (車中泊)
2月3日(土) 7:30 磐梯山SA=(磐越自動車道、猪苗代磐梯高原IC、R.115 経由)=8:50 箕輪スキー場駐車場〜9:36 発=(クワッドCリフト)=9:42 クワッドCリフト山頂駅―10:55 箕輪山―11:50 クワッドCリフト山頂駅―12:25 箕輪スキー場駐車場=(R.115)=15:30 高森  (車中泊)
2月4日(日) 8:55 高森―9:30 堰堤下―11:22 高森山〜11:35 発―12:22 堰堤下―12:54 高森=(R.115、猪苗代磐梯高原IC、磐越自動車道 経由)=16:50 新潟

 箕輪山は、安達太良連峰の北部にあり、連峰の最高峰である。縦走路を始め、この山頂に直接登る登山道も整備されているが、冬季は、西山麓に広がる箕輪スキー場から短時間で登ることができる。

 高森山は、吾妻連峰と安達太良連峰を分けるR.115の土湯道路(現在は、土湯峠を通らずに土湯トンネルで箕輪山の北を通過してしまっている、)の北側に位置する山である。麓に高森集落があることから、その裏山として名前が付けられているようである。

 日曜日に高森山の誘いが入り、登っていない山なので、参加と返事した。土曜日は、リフト終点からのお手軽スノーシュー歩きとして気になっていた箕輪山に登ることにした。二つの山は、すぐそばにあるのも都合が良い。
 箕輪山のコースタイムやスキー場のリフトの開始時間を考えれば、新潟を朝出発すれば充分間に合う勘定だが、朝の道路の状態が心配であった。暖冬が続いていたが、金曜日には一番の寒気が入り込んだ。前夜のうちに磐梯山SAまで入っておいて、夜を過ごすことにした。
 最近は、高速道のサービスエリアは、トラックをはじめとして多くの車が停まっており、野宿にはあまり適しない。磐梯山SAは、夜間に車はほとんどおらずに、夜を過ごしやすいのだが、問題は、冬季には地吹雪になりやすいことである。
 予想通りに、夜中に雪が降り続いて、車の周りを除雪車が走り回る状態になった。朝になっても、地吹雪状態で、車を走らせる決心が付かなかった。箕輪山に登れるか判らなかったが、ともかくスキー場まで行ってみることにした。だめなら五色沼でも歩いてお茶を濁すことになるが、そちらに回る時間はある。高速を下りると、国道も圧雪状態で、スキー客の車が追突事故を起こしていた。
 慎重に運転して箕輪スキー場に到着すると、天気も回復してきており、吾妻連峰の上には青空が広がっていた。安達太良連峰の稜線は雲に隠されたままであったが、登山はなんとかなりそうであった。
 箕輪スキー場のクワッドCリフトの山頂駅から歩き出すことにした。A、Bと二本のリフトを乗り継いだ方が高いところまで到達できるが、リフト乗り場が奥になるのと、尾根に上がるのがトラバース気味の登りになってしまう。
 レストハウスで一回券を買い、登山届けを書いた。クワッドCリフトは、このスキー場のメインのリフトだけあって、長く続いていた。一気に1380m標高まで上がることができた。山頂までの標高差は、350mしかない。ゲレンデの下部は、木々に付いた霧氷が朝日に輝いて美しい風景を見せていたのだが、リフトを下りると、ガスに包まれてしまった。天気が回復することを祈ることにした。
 ゲレンデ外への足跡は無く、誰も歩いていないようであった。スノーシューを履いて足を踏み出すと、新雪に膝下まで潜ってしまった。一歩ずつ足を進めるラッセルが始まった。
 スノーシューとワカンを比較する者がいるが、一人で雪山を歩いてみないと、その有り難さは判らない。大人数なら、トップを交代できて、後方に下がった時に体力を回復することができるが、一人では、足を前に出し続けられることが第一の目標になる。遅くとも、前に進み続けられれば登頂も可能になるが、バテテしまっては終わりである。その点、スノーシューならば、体力の消耗も少なくてすむ。
 少し登ると、針葉樹林帯に変わった。横に張った枝に雪がついて、その間を抜けるのは難しくなっていた。雪原の開けたところを辿りながらの登りになった。箕輪山に通じる夏道の破線にそってルートをGPSに入力してきてきていたが、1404m点から山頂に向かう尾根沿いにそっての登りになった。
 針葉樹林帯も抜けると、モーグルコースのようなコブコブ斜面になった。コブの中には、低くなった針葉樹の梢が埋まっているのだろうか。新雪は飛ばされてしまったのか、カリカリ斜面となって、歩くのは楽になった。
 視界も悪くなってきたが、風も強くなってきた。耳当て付きの防寒帽をかぶっていたので、耐えることはできた。目出し帽とゴーグルも持ってきていたが、風は背後から吹いているため、使うまではなかった。
 山頂の一郭に到着すると、歩く方向は、これまでの南東から東に変わる。稜線上に出たことで、風は一層強くなった。ストックを突こうとすると、リングに風が当たって、横にずらされる程であった。
 視界も10m以下で、周囲の風景はただ灰色の一色であった。山頂を示すような目印もなく、GPSの表示で、山頂と判断した。
 長居は無用ということで、ただちに下山に移ったが、向かい風となり、眼鏡も凍り付いて、視界が一層悪くなった。強風に抗って立っているためか、水平感覚も無くなって、ちょとした段差にも足を滑らせるようになった。
 危機感も高まって、GPSを目の前にさしだして、べた読みで、下山を急ぐことにした。GPSが無かったならば、下れなかったであろう。その前に、登るのを断念していたはずではあるが。
 GPSを使わないとなれば、ルート旗を連打する必要があろうが、雪も堅く、風に飛ばされないように打っていくのは、かなり大変な作業になる。おそらく、これまでの雪山のやり方なら、ルート旗を打つのが正統なやり方であろうが、冬山での使用経験のために、GPSだけに頼って下りたい。GPSの液晶画面に付いた氷を払いながら読むような悪条件であったが、正常に作動してくれた。もっとも、寒さのために故障したらと、内心では恐怖心もわいてはきていた。下りを急ぐと、風も弱くなって歩きにも余裕が出てきた。
 なお、万が一、GPSが作動しなくなってコースが判らなくなった場合であるが、山頂からは、90度の範囲にあれば、箕輪スキー場から土湯峠の間に下れることになり、ある程度下れば視界も開けるので、コースを修正することはできる。とはいえ、過去の遭難例では、180度間違って下山というのも良く見かけるので、下山方向については細心の注意が必要である。
 風についての教訓であるが、風の強さと同時に方向も問題である。背後からの風は、ジャケットのフードをかぶれば影響は少なくなるが、正面に受けると、目が開けられなくなり、息もできなくなる。登りの途中ではまだ耐えられると思った風も、下山では正面から受けることになる。今回の反省としては、山頂が近づいて風が強まったところで、目出し帽とゴーグルを装着していれば、下山に移ったところで、行動にも余裕が生まれたはずである。
 下山の途中、単独行とすれ違った。物好きは他にもいるものである。
 下山は破線沿いに下ったが、針葉樹林帯に入り込んで、通過に苦労した。現在は使われていないらしいDリフトの山頂駅脇に出て、そこからは僅かな下りでCリフトの山頂駅の上に出た。
 リフトの北側の斜面に進むと、美しいブナ林が広がっていた。気持ちよく下れるコースであったが、リフトを眺めて、左に向きを変えていく必要があった。横向温泉近くへ通じる尾根も歩きやすそうであったが、今回は、リフト沿いに下ることにした。かなりリフトに接近するところもあり、スキーヤーからは、雪原を歩いている姿をおかしなものと見られたかもしれない。
 最後は、夏道に沿って下り、横向温泉へ通じる車道沿いにある横向登山口に下り立った。
 ゲレンデに戻って山を振り返ると、稜線部はあいかわらずガスに覆われていた。
 飲まず食わずで山を下ってきてしまったため、車の中で昼食にした。節分の日ということで、恵方巻を買ってきてあり、北北西の東吾妻山の方を見ながらほうばった。無言でという条件は、話かける相手もいないので、こらは問題なかった。
 時間は早かったが、スキーをやる元気もなく、近くの横向温泉へ向かった。土湯峠方面に向かう時に何度も前は通過していたものの、この温泉には入ったことがなかった。湯船も広く、ゆっくりと温泉を楽しむことができた。
 一旦猪苗代方面に戻り、コンビにで食料を買い込んだ。静かに夜を過ごせそうな脇道を見つけて車を停めた。夕暮れ時、安達太良連峰がバラ色に染まるのが見えた。
 この晴天も短く、夜中には本格的な雪になった。朝は、除雪車の音で目が覚めた。積雪は20センチ程で、驚くほどではなかったが、地吹雪状態になっていた。朝の準備を終えて、高森へ車を動かす間にも、地吹雪で前が見えなくなって、思わずブレーキをかける場面もあった。
 磐越自動車道も、磐梯熱海ICから会津若松ICの間が不通になったことをラジオで知った。これでは、宇都宮からの一行も到着できないかと思ったが、時間通りに到着した。
 集落内の除雪も終わっており、路肩に車を停めることができた。
 山を中止するともいえず、歩き出す準備をした。いずれせよ、この地吹雪状態では、車の運転は危険で、まだ山を歩いていた方が安全である。下山の頃になれば、道路の状態も少しはよくなっているはずである。
 レークラインは、高森の集落から先は雪に覆われていた。スノーシューを履いて歩き出した。吹き溜まりもあったが、少し前に除雪も行われたようで、比較的歩きやすかった。
 500m程で、レークラインは西に方向を変える。当初の計画では、ここから1200mピークに登ってから高森山を目指すつもりであったが、天気も悪いので、梵天川沿いの林道に進んでからダイレクトに山頂を目指すことにした。
 僅かに下って、梵天川沿いの林道に進むと、渓流釣堀やキャンプ場を設けたぼん天に到着した。この奥の堰堤脇から尾根に取り付いた。
 取り付きは急であったが、じきに歩きやすい尾根に変わった。新雪のラッセルを心配したが、風で飛んでしまったのか、思ったほどではなかった。登るにつれて、斜面が波打つようになり、段差を乗り越すのに苦労することになった。凍った雪の上に乗った新雪が滑るのが、やっかいであった。つぼ足のキックステップで登った方が楽そうということで、スノーシューははずした。
 1120m標高で小ピークの上に出ると、高森山の山頂も目の前に迫ってきた。1200mピークから延びる尾根との合流地点では雪庇が張り出していた。雪のブロックが頭上に覆いかぶさっていたので、右に巻いてその上に出た。雪庇を切り崩していると、その振動で、足元のブロックが落ちていった。
 その後は、細尾根の歩きで、高森山の山頂に到着した。小雪原となった山頂からは、晴れていたならば安達太良連峰の眺めが広がっているようであったが、かろうじて箕輪スキー場の麓部が見分けられるだけであった。風が強いため、少し下ったところでひと休みした後、下山に移った。
 下山は、少々雪が深くとも歩ける。そのまま一気に林道まで下ってしまい、林道歩きのためには、再びスノーシューを履いた。
 風はあいかわらず強かったが、地吹雪は収まっていた。中ノ沢温泉で入浴し、家路へついた。

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