安達太良山、後烏帽子岳

安達太良山
後烏帽子岳


【日時】 2007年1月20日(土)〜21日(日) 前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 二人連れ
【天候】 20日:晴 21日:晴

【山域】 安達太良山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 安達太良山・あだたらやま・1699.6m・二等三角点・福島県
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/二本松/安達太良山
【コース】 安達太良高原スキー場より
【ガイド】 ベストバックカントリー100第一巻(パウダーガイド編集部)
【料金】 駐車場1000円(ホームページより割引券印刷にて500円) ゴンドラ(往復1600円 片道900円)
【温泉】 富士急ホテル 800円(ゴンドラ券にて600円)

【山域】 蔵王連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 後烏帽子岳・うしろえぼしだけ・1581m・なし・宮城県
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/白石、上山/遠刈田、蔵王山
【コース】 宮城蔵王えぼしスキー場より
【ガイド】 スノーシューコースプランGUIDE(山と渓谷社)
【料金】 駐車場500円(7時前入場無料) ゴンドラとリフト(1350円)
【温泉】 遠刈田温泉 300円(石鹸なし)

【時間記録】
1月19日(金) 20:00 新潟=(磐越自動車道、東北自動車道 経由)=22:00 安達太良SA(車中泊)
1月20日(土) 7:00 安達太良SA=(二本松IC、R.459、岳温泉 経由)=8:00 安達太良高原スキー場=(ゴンドラ)=8:43 ゴンドラ五葉松平駅―9:30 表登山道分岐―10:05 安達太良山〜10:35 発―10:59 表登山道分岐―11:30 ゴンドラ五葉松平駅=(岳温泉、二本松IC、東北自動車道、白石IC,遠刈田 経由)=15:30 みやぎ蔵王えぼしスキー場
1月21日(日) 8:15 みやぎ蔵王えぼしスキー場駐車場=(ゴンドラ、かもしかリフト)=8:40 ゲレンデ上〜8:50 発―9:58 後烏帽子岳〜10:28 発―10:56 ゲレンデ上―11:30 石子ゲレンデ〜11:42 発―12:06 千年杉コース分岐―12:30 小滝登山口―12:45 みやぎ蔵王えぼしスキー場駐車場=(遠刈田、白石IC、東北自動車道、磐越自動車道 経由)=17:40 新潟

 安達太良山は、福島県二本松の西に連なる連峰である。「あれが阿多多羅山 あの白く光るのが阿武隈川」という高村光太郎の詩によって、あまりにも有名になっている。安達太良山の山頂は小岩峰となって稜線上に飛び出しており、別名乳首山とも呼ばれる。山頂から東に延びる尾根上のゴンドラ五葉松平までスキー場のゴンドラが延びてきており、冬季もこれを利用して短時間で登ることができる。

 後烏帽子岳は、南蔵王の屏風岳の北東に位置するピークである。主稜線から東に外れているため、蔵王連峰を一望することのできる展望台になっている。後烏帽子岳の東山麓には、みやぎ蔵王えぼしスキーが広がっており、このリフトを利用すれば、冬でも比較的容易に登頂できる。

 昨年とうって変わった小雪の冬になっている。雪山をスノーシューで歩こうとしても、ある程度の標高が必要になる。歩いて標高を稼ぐのは大変であるが、スキー場のリフトを利用すれば、それだけ高いピークを目指すことができ、雪もたっぷりとあるはずである。最近出版された「スノーシューコースプランGUIDE」という本を読んでいて、その中の後烏帽子岳のガイドが目にとまった。宮城蔵王えぼしスキー場のゴンドラとリフトを乗りつけば、容易に登頂できるようである。蔵王というと、新潟から近いこともあり山形県側に目がいってしまう。宮城県側なら、天候も安定しているはずなのも良い。
 宮城蔵王えぼしスキー場というと、知り合いのTさんの地元である。予備のスノーシューも持っていることから、スノーシュー歩きの体験も兼ねてと、声をかけた。週末の二日間、山に当てられるというので、一日目は、これもゲレンデ終点から歩き出せる安達太良山を目指すことにした。
 直前まで天気予報を確認し、週末の二日間は天候も安定しているようなので、決行となった。リフトを使って標高をかせぐということは、悪天候の時は、危険も増すということなので、麓から歩き出す登山と比べても、天候に注意する必要がある。
 最近のスキー場は、ホームページ上で、割引を行っている場合が結構ある。安達太良高原スキー場も、1日リフト券の割引を行っているが、ゴンドラしか使わないので、これは今回は関係ない。駐車場1000円が500円というのが、役に立った。以前利用した、西吾妻山のグランデコスキー場の夏山用ゴンドラも、1200円が1000円に割引になった。小さな節約ではあるが、余計にお金を払うことはない。
 二本松IC出口で落ち合い、安達太良高原スキー場を目指した。車のナビに従って車を進めたが、メインでない短距離コースを進んだようである。道路が圧雪状態になっており、坂道で車を停めると発進できなくなりそうで、緊張した運転になった。
 リフト運行開始前の到着となり、まだ駐車場の車も僅かであった。青空が広がるゲレンデを見て、期待が高まった。リフトが動き出してから少し遅れて、ゴンドラが運行開始になった。
 念のためにアイゼンとピッケルも持ったため、スノーシューと合わせて大荷物になったが、ゴンドラのために乗り込むのは楽であった。一気に1350mのゴンドラ五葉松平に到着となる。安達太良山の山頂まで残すところ、350mの標高差だけである。
 このコースを先回歩いたのは、1992年5月であるので、ひと昔前ということになる。しかも夏山と冬山の違いもあるので、初めてのコースと考えるべきである。
 ゴンドラを下りたが、ゲレンデ奥に向かってしっかりしたトレースがついていた。とりあえずつぼ足で進んだ。北にトラバースしていくと、薬師岳と書かれた展望台に出た。地図では、南東に延びる尾根の肩部の1322m点を薬師岳と示しているようだが、少し違った所に標識が付けられている。露岩の間に祠も置かれているので、薬師岳という名前に違和感はない。
 この展望台からは、安達太良山の眺めが広がっていた。山頂部はガスに覆われていたが、高みに向かって幅広の尾根が上がっていくのを眺めることができた。
 この展望台からは、スノーシューを履いての歩きになった。先行者が一人いたため、トレースを辿っての歩きになった。歩き始めは五葉平と呼ばれるハイ松帯である。通常の冬がどのような状態なのか知らないが、ハイ松の中を、歩ける場所を選んで右往左往しながら進む状態になった。視界も閉ざされているので、方向に注意する必要があった。小回りの利くスノーシューであるので、問題は無かったが、山スキーだと苦労しそうな感じであった。雪がもっと多く雪原になっていれば、通過は楽と思われる。
 雪には30センチ程は潜るものの、軽い雪で、ラッセル交代は必要なかった。新潟の重い雪とは感触が違っていた。
 しばらく登ると、樹氷が立ち並ぶ雪原歩きになって、展望も開けてきた。山の斜面には、樹氷が、ごつごつと瘤のように盛り上がっていた。背後を振り返ると、枯れ草色に染まった平野が広がっているのが対照的であった。
 前方に見える単独行を追いかけながらの登りになったが、傾斜が増した1519m付近で追い抜き、この日の先頭になった。やはり、雪山は、先頭に立って歩かなければ面白くない。尾根の頂稜部を辿って登ったが、下山時に登ってきた登山者のトレースを辿ると、北側に大きく迂回して登っていた。夏道は、そのように続いているのだが、幅広の尾根で視界が閉ざされていた場合には、真っ直ぐに登った方が安全だと思う。
 山頂が近づくと、雪が飛ばされて、小石混じりの地面が所々で露出するようになった。残念ながら、ガスで視界は閉ざされてしまった。GPSでそろそろ山頂だなと思うと、氷に包まれた標識が現れ、その背後から山頂の岩峰が姿を現した。
 スノーシューを脱いで、空身で山頂に登ってみることにした。キックステップで雪原を岩の下まで登った。岩だなを右に辿り、角を回り込むと、鎖の掛かった溝に行き当たった。鎖は半分ほどが雪に埋もれており、足場の雪を崩さないように慎重に登ると、山頂に上がることができた。山頂の祠や石碑は凍り付いていた。いつもは登山者で賑わう山頂にも誰もおらず、ガスが静かに流れていた。
 安達太良山の山頂からは、条件が良ければ、勢至平経由で下山しようと思い、ゴンドラの切符も片道しか買っていなかった。少し待ったが、ガスは晴れてくれず、下降すべき斜面の状態が判らなかった。下手に急斜面に踏み込んで滑落でもしようものなら大変なので、安全策をとって、来た道を引き返すことにした。
 下山の途中、登ってくる大勢の登山者とすれ違った。すでにトレースもしっかりとできており、ルートファインディングは必要なくなっていた。山スキーは数人で、スノーシューがほとんどであったが、これも小雪のせいであろう。
 下りは早く、あっという間にゴンドラ駅に戻ることができた。ゴンドラに乗り込んで、一気に下界へ。時間は早かったが、歩きは終わりにして、駐車場脇にあるホテルの温泉へと急いだ。ここの温泉は、ゴンドラの券を見せると、200円割引になる。
 一応山スキー一式も持ってきてはいたのだが、午後半日券を買ってゲレンデスキーを楽しむだけの体力的な余裕はなかった。今回のテーマは、リフトを使ったお気軽スノーシュー歩きなので、これで充分である。
 翌日の後烏帽子岳のために、白石から宮城蔵王えぼしスキー場へと移動した。スキー場に到着してみると、夕方も近づいているにもかかわらず、駐車場は満員であった。落ち着いて車の中で休んでいることもできそうもないため、ゲート前でUターンし、少し戻ったところの林道の入口に車を停めた。
 不思議なことに、夜になっても、続々と車が上がっていった。そのうち花火も打ち上げられた。それが終わっても、スキー場を目指す車が続いた。後で調べると、雪上花火大会が行われ、深夜までナイター営業が行われる日のようであった。えぼしスキー場は、仙台からも近く、大都市近郊のスキー場として賑わっているようである。
 朝になってから、スキー場の駐車場に移動した。7時少し前に到着すると、そのまま入って良いと言われた。後で駐車場の整理員に尋ねると、7時前に入場したので、無料とのことであった。そのすぐ後に到着したTさんは、7時を過ぎていたため、500円とられていた。
 8時過ぎにゴンドラも動き出したので、切符売り場へと進んだ。ゴンドラとリフトの券を買い、登山届けを書いた。まずは、ゴンドラで、石子と呼ばれる中央ゲレンデに上がった。ここからは、かもしかリフトでゲレンデ最上部へ。このリフト沿いのゲレンデの上部は、上級者用のこぶ斜面でかなりの急傾斜であった。スノーシューで下るのに苦労しそうだなと、リフトの上から眺めて思った。
 リフトを下りたところで、スノーシューを履いた。ゲレンデの奧は、見通しの利かないアオモリトドマツの針葉樹隣帯が広がっていた。どこからとりつくか判らず、トレースも無かったので、左手の歩きやすそうなところからスノーシュー歩きを開始した。木立の間を抜けながら、GPSを頼りに高見に向かった。
 少し歩くと、スノーシューのトレースに乗った。下山時に判ったことだが、夏道は、リフト終点から右に滑降コースを少し下がったところから始まっている。夏道は、雪のある時期でも比較的木立が開けているので、辿りやすい。リフト終点から、右寄りに方向をとって、この夏道に乗るのが正解のようである。
 雪は、30センチ程は沈み込むものの軽く、ラッセル交代無しで歩き続けられる状態であった。トレースをそのまま辿るのも面白くないと、自分で定めた方向に沿って歩いたが、小さな沢が現れたりして、コースを修正する必要もあった。もっとも、自分でコースを見定めるのも楽しみではある。傾斜がゆるく見通しも利かないため、トレースに頼らないとすると、コース判断は意外に難しかった。
 谷を左に見るようになると、傾斜も増したが、雪原も広がるようになって楽しい歩きになった。白く樹氷をまとって木々が並んでいた。氷の付き方がまだ少ないようで、木の形がそのまま現れていたが、それも美しかった。
 傾斜が緩むと、後烏帽子岳の山頂に到着した。山頂標識も氷に覆われていた。まずは、屏風岳の眺めに引き付けられた。屏風岳は、南蔵王を代表する山であるが、一等三角点が置かれているにもかかわらず、最高点は潅木に囲まれて、地味なピークである。屏風岳の東面は一気に落ち込む岩壁を作っており、後烏帽子岳からは、その屏風を立てたような姿を目の辺りに見ることができた。光線の具合も良く、岩壁に深い陰影ができているのも、美しさを際立たせていた。屏風岳からは水引入道へと尾根が続き、その鞍部の向こうには不忘山が山頂をのぞかせていた。
 山頂一帯は台地状であっため、北西の縁に進むと、北蔵王方面が一望できた。眼下には澄川沿いの台地が広がり、その向こうには刈田岳から熊野岳にかけての山稜が大きく広がっていた。樹氷も成長しているようで、真っ白なこぶが一面に広がっていた。
 雪の状態も良かったことから1時間ほどで登ってしまったが、コースタイム的には2時間を考える必要があるようである。家から近ければ、定番の山になるところだが、少し遠い。晴天のもとで登れて、この山の真価を味わうことができたことに満足した。
 展望を堪能した後は、ダウンヒルである。スノーシューで雪を蹴散らかせながら、走り下った。足がほどほどに沈むので下りやすい状態であった。途中、ボーダーも含む山スキーのグループとすれ違った。
 下山の際のトレースを見て気が付いた。登りの際には、少しでも楽をしようと、トレースをそのままなぞるので、一本のトレースがつく。下りは、新雪を歩いた方が楽なので、トレースは入り乱れる。ところが、前日のトレースは、下りも忠実になぞっている。おとなしい歩き方をしているところをみると、ガイドツアーの一行なのだろうか。
 夏道が通っていると思われる切り開きを追っていくと、最後は、リフト終点から少し下ったところでゲレンデに飛び出した。迂回コースを行くべきか迷ったが、そのまま上級者コースを下ることにした。かなりの急斜面で、圧雪された雪面はスノーシューが滑って、歩きにくかった。スキーと同じに、瘤を利用しながらターンの連続で下る必要があった。ここが一番の難所になった。
 傾斜が緩んだところで、ゲレンデの右手に移って、リフトの下を歩いた。リフトに乗ったスキーヤーからは、ものめずらしげに見られた。
 かもしかリフトの乗り場の脇から、小滝へのスノーシューコースに進んだ。ゲレンデ案内にも、スノーシューコースと書かれているのだが、標識も無く、入口は判りにくかった。幸い、トレースがついており、コースの心配は無かった。良く見ると、小さく切ったビニールテープが木に連続的に付けられていた。雑木林の幅広斜面の下りが続いた。左の谷向こうにゴンドラが走っていたが、ゲレンデの騒音も次第に遠ざかっていった。木立の間隔も開いており、歩きやすい尾根であった。
 863m点で、谷に向かってトレースが分かれた。千年杉に至るようで、このコースに進んだが、谷に下りる手前で先行者は引き返していた。沢には水の流れが残っており、対岸の雪の斜面も急であった。冬には、向いていないコースである。
 引き返して尾根沿いの下りを続けた。幅広の台地を南に方向を変えていき、右手の沢に向かって下降すると、すぐに沢沿いの道に下り立った。この下降点は、テープが付けられているが、注意が必要である。下り立ったこの道は、前烏帽子岳に至る登山道のようである。下り立った場所は、地図でいうと、車道から進んできた登山道が、北に山形に張り出した頂点近くである。
 沢沿いに下ると、すぐに車道に飛び出し、後は車道歩きでスキー場の駐車場に戻った。早めの下山であったが、家に戻るには都合が良い。
 荷物を整理し、遠刈田温泉へと急いだ。山を下ったところが温泉街なのもありがたい。名前の知れた温泉であるが、訪れたのは初めてであった。神の湯という新築された共同浴場に入った。玄関前には足湯も設けられ、観光客で賑わっていた。街並みの向こうには、屏風岳が真っ白な姿を見せていた。
 帰宅後に、インターネットで、ゲレンデ案内を見た。このゲレンデでは、スノーシューのガイドツアーも行っているようである。えぼし岳登頂コース(1日)は、5000円。小滝コース(半日)は、3500円。今回は、二つのコースをつないだので、8500円のコースになるのだろうか。自分では払うつもりはないが、初心者には、それだけの料金に見合うコースではあると思う。

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