鷲ヶ巣山

鷲ヶ巣山


【日時】 2006年11月4日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 朝日連峰周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
前ノ岳・まえのだけ・825.3m・三等三角点・新潟県
鷲ヶ巣山・わしがすやま・1093.3m・二等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 村上/塩野町/三面
【コース】 三面ダムより
【ガイド】 分県登山ガイド「新潟県の山」(山と渓谷社)、新・にいがたファミリー登山(新潟日報事業社)

【時間記録】 6:30 新潟=(R.7、蓮野インター、R.345、神林村、R.7、村上、古渡路、岩崩 経由)=7:45 縄文の里朝日〜8:02 発―8:11 鷲ヶ巣岳登山口―8:22 ハルゴ沢―8:48 見晴台―9:13 避難小屋―9:34 前ノ岳―10:34 中ノ岳―11:48 鷲ヶ巣山〜12:15 発―13:26 中ノ岳―14:27 前ノ岳―14:44 避難小屋―15:02 見晴台―15:17 ハルゴ沢―15:24 鷲ヶ巣岳登山口―15:32 縄文の里朝日=(岩崩、古渡路、R.7、日本海東北自動車道 経由)=18:00 新潟

 鷲ヶ巣山は、朝日連峰からの水を集めて日本海に流れ出る三面川の左岸に聳える山である。前ノ岳、中ノ岳、本峰の三峰からなり、見る角度によってその姿は変わり、村上付近からは、前ノ岳と中ノ岳が重なって双耳峰の様に見える。古くから、里人の信仰の山として登られてきた山である。

鷲ヶ巣山に登ったのは1994年9月15日なので、かなり経っている。新潟からそう遠くない山であるにもかかわらず、二度目が無かったのは、蛭がいることと、きつい山であることによる。鷲ヶ巣山は、三つのピークを連ねており、下山にも、登りに汗をさんざんかかされることになる。
 鷲ヶ巣山の登山口は、三面ダムの脇の朝日スーパー林道入口から始まる沼田林道である。到着してみると、この林道入口のゲートは閉まっていた。以前は、林道入口脇には、ダム関係の建物があったのだが、現在は、縄文の里朝日という公園が設けられていた。この公園の駐車場に車を停めた。
 青空が広がっていたが、強い風が吹いていた。寒く感じられ、今年初めて、毛糸の帽子を被ることになった。
 歩き始めてみると、林道は、車の走行には問題の無い良い道であった。公園に駐車場を整備したので、そこを利用せよということかもしれない。
 僅かな歩きで登山届けのポストが置かれている鷲ヶ巣山登山口に到着する。歩き始めは薄暗い杉林の中であるが、右手に伐採地が広がるようになると、そのはずれで右手から古い踏み跡が合わさる。沢の右岸沿いに歩いていくと、徒渉地点に出る。ここがハルゴ沢で、水場とされているが、前回はこの付近で蛭に取り付かれたとあっては、落ち着いて休む気にはなれない。もっとも、気温も下がってきており、蛭もいなくなっているはずである。
 この徒渉から尾根の取り付きまでのコースは、地図の破線とは全く違っている。徒渉点は、230mで地図の350m地点ではない。そのため、尾根にのる地点も実際は300mだが、地図では370地点である。市販のガイドブックでも、概念図は地図のままで、実際と違っている。これまでのガイドなら許されるかもしれないが、GPSが普及してきたこれからは、このような誤りは許されないであろう。
 沢に沿って少し登った後は、右手にトラバースしていくとじきに尾根に乗った。この後は、尾根の急な登りが続いた。長丁場の山であるため、体調を確かめる必要があったが、足は重くはない。
 見晴台の標識が現れると、木立が刈り払われており、村上方面の展望が開けていた。尾根の周りの紅葉も、登るにつれて色濃くなってきた。山の稜線部の紅葉は、その時期に天候が崩れて早めに散ってしまったが、山麓に紅葉が移ってきた最近は、天候も安定しており、葉も散らずに残っている。
 尾根が広がり始めると、660m地点で避難小屋が現れる。小屋の前にはベンチも置かれて、ひと休みには良いところである。ここから上部は、美しいブナ林が広がっている。小屋から少し上がった登山道の左手には水場があり、パイプから水が流れ出ていた。きつい山のため、水も多めに持ってきていたが、ここで水が補給できるとなると、少し気分も楽になった。
 ブナ林の中の急斜面を登っていくと、尾根上に出て、やがて前ノ岳に到着した。山頂広場は木立に囲まれて展望は無いが、少し戻ったところからは、中ノ岳と鋭い山頂の本峰を望むことができた。
 前ノ岳からは、一気に130mの下りになる。中ノ岳の山頂がみるみる高みに遠ざかっていく。鞍部付近は美しいブナ林が広がっており、ひと息入れた。これで再び登りと思ったら、774mピークの登りで、また気勢がそがれた。このピークの乗り越しは、90m登って30mの下り。これでようやく登りが続くようになり、220mの標高差を頑張ることになる。
 稜線に上がったところで、左に曲がった先のピークが中ノ岳である。石の祠が置かれて、遮るもののない展望が広がっている。この先の本峰との間には、これよりも高い1004mピークがあるが、ここが中ノ岳と名前が付けられているのは、里からはこのピークが目立つからだろうか。行く先を眺めると、本峰まではまだ距離がある。朝日連峰の全景も眺めることができるが、ここからは、三面ダムの眺めが特に優れている。
 女性が一人休んでおり、先に14名の仲間が歩いていると教えてくれた。駐車場にマイクロバスが停まっていたので、そのグループのようであった。体力が持たずに、ここで待つことになったようである。鷲ヶ巣山は、体力の配分が難しいので、団体で登るにはあまり適していないような気がする。
 1004mピークへは60m登り、その後は120mの下りになる。この下りは、稜線の一段下のトラバースになって、歩きづらいのもいやになる。ようやく登りに入ろうとする時、単独行が下ってきて、その後に団体にもすれ違った。下りのこともあるので、鷲ヶ巣山の山頂では、あまりゆっくりとは休まないようである。
 ようやく本峰への登りにとりかかる。標高差210mの登りが残されている。かなりの急坂を乗り越えて、ひと安心したのもつかの間、ここは尾根の張り出しで、もうひと登りが必要である。体力的にも精神的にもきつい山である。一度登って懲りていたはずなのに、また来てしまったのを後悔する気持ちもわいてきた。先回よりも体力が向上しているはずはなく、せいぜい、体力が落ちていないことを確かめることができるだけである。
 ようやく鷲ヶ巣山に到着。登りにかかった時間以上に疲れて到着した。真新しい鷲ヶ巣神社の祠が出迎えてくれた。背後の大岩の中ほどにも、石の祠が置かれていた。
 その向こうが三角点の置かれている広場である。夫婦連れが休んでいたが、入れ違いに下山していき、一人だけの山頂になった。
 鷲の巣という名前が相応しく、周囲の展望が広がっている。大朝日岳から以東岳に至る朝日連峰の稜線を目でおうことができた。両ピークの山頂部が赤みを帯びた黄色に染まっていた。祝瓶山や光兎山の鋭鋒は、ひと際目を引いた。それ以上に素晴らしいのは、幾重にも広がっている名も知らぬピークの連なりであった。
 展望を堪能した後に下山に移った。累計標高差280m分の登り返しがあっては、下山といってよいのやら。三連休、快晴、紅葉の盛り、正午、といった山頂が賑わう条件が揃っているにもかかわらず、誰もいない山頂を後にした。下山途中で、単独行二人とすれ違ったが、この二名は下山の時間を考えると、遅れ気味である。
 中ノ岳を越し、前ノ岳に戻って、ようやく精神的に楽になった。紅葉を楽しみながら、尾根を下った。
 駐車場に戻り、着替えをして村上市内に戻る頃には薄暗くなっていた。秋の日は短く、急いだつもりであったが、鷲ヶ巣山の行動時間は、そう余裕のあったものではなかった。振り返ると、鷲ヶ巣山が、夕空に孤高の山頂を突き上げていた。

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