甑山、東鳥海山、須金岳

甑山、東鳥海山
須金岳


【日時】 9月30日(土)〜10月1日(日) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 30日:曇り 1日:晴

【山域】 丁山地
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 甑山・こしきやま
  女甑・めこしき・939m・なし・秋田県、山形県
  男甑・おこしき・981.2m・二等三角点・秋田県
【コース】 甑林道終点より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/湯沢/松ノ木峠
【ガイド】 分県登山ガイド「秋田県の山」(山と渓谷社)、新・分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、秋田の山登り(無明舎出版)

【山域】 湯沢
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 東鳥海山・ひがしちょうかいさん・777.5m・二等三角点・秋田県
【コース】 中山登山口より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/湯沢、稲庭/湯沢、稲庭
【ガイド】 分県登山ガイド「秋田県の山」(山と渓谷社)、秋田のハイキング(無明舎出版)
【温泉】 宝寿温泉 380円

【山域】 虎毛山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 須金岳・すがねだけ・1253m・なし・宮城県、秋田県
【コース】 仙北沢登山口より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/秋ノ宮/軍沢
【ガイド】 新・分県登山ガイド「宮城県の山」(山と渓谷社)
【温泉】 鬼首温泉 520円

【時間記録】
9月29日(金) 18:00 新潟=(R.7、鶴岡、R.345、R.47、真室川、R.344、R.13、院内、R.108 経由)=23:30 松ノ木峠  (車中泊)
9月30日(土) 6:30 松ノ木峠=(皿川、甑林道 経由)=7:00 甑山登山口〜7:35 発―7:53 県境尾根・名勝池分岐―8:05 名勝池〜8:16 発―8:40 男女のコル―9:03 女甑〜9:08 発―9:27 男女のコル―10:05 男甑〜10:16 発―10:39 水平道分岐―10:55 県境尾根・名勝池分岐―11:14 甑山登山口=(甑林道、皿川、R.108、院内、R.13、雄勝、フルーツライン 経由)=12:50 二の鳥居〜12:57 発―13:54 祠―14:02 福田神社―14;19 奥の院―14:28 東鳥海山〜14:40 発―14:48 奥の院―14:57 福田神社―15:01 祠―15:47 二の鳥居=(フルーツライン、雄勝、R.108 経由)=18:40 大森平
10月1日(日) 6:30 仙北沢登山口〜6:55 発―7:05 一合目―8:25 七合目(水沢山)―9:03 山頂標識―9:34 1241mピーク―(9:52〜10:07 昼食)―10:19 山頂標識―10:38 七合目(水沢山)―11:22 一合目―13:29 仙北沢登山口=(R.108、鳴子、R.47、庄内、R.345、鶴岡、R.7 経由)=18:00 新潟

 甑山は、秋田・山形県境に、男甑と女甑の二つの鋭峰を並べる岩山である。東北百名山にも同じく選ばれている甑岳が山形県の村山近くにあるが、こちらはなだらかな山頂を持っている。

 東鳥海山は、雄勝町の東にピラミッド型の山頂を見せる里山である。鳥海山、神室山、東鳥海山は三姉妹で、一番低いこの山が長姉であるという伝説も残されている、地元の信仰の山である。

 須金岳は、鬼首環状盆地の北に位置する外輪山のひとつである。盆地からは急斜面で立ち上がっているが、山頂一帯は、なだらかな稜線が続いている。山腹には、ブナの原生林が広がっている。

 東北百名山の残り三山になっていたが、昨年からそのままになっていた。標高はそう高くないので、紅葉には少し早いが、それを待っていると他の山に気が向いてしまうおそれがある。
 甑山と須金山は、新潟から東北地方中央部に入る時の新庄と三角形の位置関係にあり、互いは、鬼首道路と呼ばれる良く整備された国道108号線で結ばれている。どちらを先に登るか決まらないまま、車を走らせた。
 途中で天気予報を聞くと、土曜日の宮城県の天気は、ぱっとしないようなので、甑山を先に登ることにした。
 雄勝から国道108号線に進み、松ノ木峠にさしかかると、トイレも設けられたパーキングがあった。この先は、国道から分かれて、すぐに林道に入ってしまうはずであった。林道の夜間の走行は危険なため、このパーキングで朝を迎えることにした。
 車の中で寝酒のビールを飲んでいると、パトカーが寄ってきて、不審尋問に引っかかった。車の中で漫画を読むために蛍光灯ランタンを吊るしているのが、不審に見えるのであろうか。8月の鳥海山の前夜でも、同じ山形県内で、パトカーの不審尋問に引っかかっている。登山届けと思うことにして、明日は甑山に登るので、なにかあったらよろしくと言っておいた。最近問題の酒酔い運転防止のためにパトロールを強化しているのであろうか。車中での飲酒者は見つかったが、逮捕はできなかったと報告するのであろうか。
 甑山の歩行時間はそう長くはないため、ゆっくりと起きて、出発した。甑川沿いの車道を進み、最終人家を過ぎると、甑林道が左に分かれた。ここまでは舗装道路であったが、未舗装の道に変わった。走るには問題のない道であったが、車のすれ違いが難しいところもあった。幸い、朝の早いうちとあって、対向車は無かった。
 広場に出ると、甑山登山口の標識が立てられていた。登山者のものか、車も一台停められていた。林道は、さらに先に延びているようだが、広い駐車スペースもあり、登山口を見落とすことはあるまい。林道の先に見える岩峰が目指す甑山のようであるが、雲がたれこめて、山頂部は隠されていた。
 登山道は、はじめ林道跡かと思える幅広の道で始まったが、トラバースしながら枝沢を渡るようになると、道は細く、足元に注意が必要になった。台地の上に出ると、道が二手に分かれた。右は、県境から男甑に続くようであった。名勝池を経て男女のコルへ行くには、左の道に進むことになる。簡単な絵看板があり、女甑から甑峠へ向かう道には×マークが付けられていた。
 この分岐のすぐ先で名勝池に出た。そのすぐ手前には、基部だけが残った巨大な枯れ木があった。屋久杉にちなんでウィルソン株とも呼ばれるカツラのようである。中は人も入れる三畳ほどの広さのうろができていた。
 名勝池は、湖面に岩を配した静かな池である。岩の上に生えた潅木も色づき始めていた。女甑が池の上にそそり立っていたが、湖面と合わせて写真を撮るのはできなかった。
 池の東端で甑峠への道を分けると、ここからは、壁にぶち当たったような登りが始まった。右手にトラバース気味の登りを続けると、沢状の窪地の登りが始まった。急斜面の一気の登りで、息も上がった。笹原の刈り払い道に変わると、二つのピークを結ぶ尾根上の男女のコルに飛び出した。男女のコルというので、最低鞍部と思ったのだが、少し男甑側寄ったところに上がっていた。いずれにせよ、ここまでの道は、登りはともかく、下りには使いたくない道であった。
 当初の予定では、男甑を往復してから、女甑を越して甑峠へ下る予定であった。しかし、分岐の標識での×マークからすると、女甑からの下りは通れないかもしれない。女甑は往復して、男甑からは登ったところで考えることにした。
 写真を見てきつい岩山というイメージがあったのだが、ブナ林に取り囲まれた細尾根の登りが始まった。泥斜面に刻まれたステップを足がかりにして登る急斜面であった。足元に注意が必要であるが、つかまる木の枝もあり、思っていたよりは問題のない登りであった。
 女甑の山頂は、狭い広場になっていた。雲がたれこめて、周囲の展望が閉ざされているのは残念であった。甑峠への道を見ると、藪がかぶさっていた。ロープにも頼るような急斜面の下りのようなので、コース整備がされていないとなると危険である。男女のコルへ引き返すことにした。
 下りの途中で、男甑の山頂が、雲の中から姿を現し始めた。鋭鋒ではあるが、登山道が続く尾根を眺めると、それ程の難所はなさそうであった。
 男女のコルに戻り、男甑への急坂に取りかかった。頭上に見えるピークに近づくと、四つんばいになって、木の根を掴む、急坂になった。虎ロープも下がっていたが、ささくれており、かなりの年数を経ているようであった。体重を掛けるには危ういロープであった。
 小ピークの上に出てみると、山頂は、まだ先のようであったが、まずは荷物を下ろして一休みにした。振り返ると、女甑が、紡錘状の鋭い山頂を見せていた。左下には、名勝池を眺めることができた。眼下には、ブナの原生林が、ブロッコリー状の盛り上がりを見せて広がっていた。高度感のある眺めであった。
 この先は、僅かに下った後に、なだらかな稜線歩きになった。山頂を目の前にしたところで、右手に延びる尾根に、整備された登山道が通じていた。県境尾根に登山道が開かれているようであった。あいにくと、持ってきた秋田県側からのガイドブックには、この登山道のことは書かれていなかった。新版になった山形県側からのガイドブックには、概念図に書かれているのが、下山後に確かめることができた。
 この分岐からは、ひと登りで男甑の山頂に到着した。狭い山頂の縁は岩場になって切り落ちていた。男根に似た烏帽子岩がそそり立つのを眺めることができた。
 下山は、山形県側の登山道に下って、山腹を巻いて戻るつもりであった。ロープが下がった斜面を下ると、沢沿いにロープが垂れているものの、尾根沿いに踏まれた道が続いていた。ロープも古く、沢沿いの道は、歩かれていないようであった。
 一旦戻って、県境尾根沿いの登山道を下ることにした。幅広で、良く整備された道が、ブナが立ち並ぶ尾根に続いていた。急ではあるが、危険はない道であった。右手には、女甑や名勝池の眺めも広がっていた。
 麓の森が近づいたところで、夫婦連れが登ってくるのに出合った。どうやら、この尾根が、一般的なコースになっているようである。山形県側から続いてきたと思われる水平道を合わせて下りを続けると、前方の小ピークとの鞍部の県境峠となり、ここは右に曲がる。
 その後は、ほぼ水平な道を辿ると、歩き始めの分岐に戻ることができた。
 甑山は、以前の登山道とは様子が違ってきているようである。秋田県側から登るなら、名勝池、男女のコル、女甑往復、男甑、県境尾根下降と周回するのが、お勧めと思われる。
 車に戻って、休みながら、この後どうするか考えた。温泉巡りに入ってしまっても良かったのだが、近くの東鳥海山に興味があった。鳥海山と並ぶ信仰の山のようで、雄勝の町から、低いながら、均整の取れたミニ鳥海山の姿を以前から眺めて、興味を持っていた。
 コンピューターを立ち上げて、地図を確認したが、いまいちコースが判らなかった。GPSにガイドブックを読んで推測した登山道を送り込んだ。地元の信仰の山ならば、しっかりした参道が通じているものと考えた。
 雄勝に戻り。国道13号線から分かれて、東鳥海山の山麓を通る、フルーツラインに進んだ。東鳥海山参道入口の標識があったので、この車道を進むと、東鳥海山神社の前に出た。現在地が判った。もう少し先の車道に乗り入れる必要があり、神社の写真を撮って、フルーツラインに戻った。フルーツラインを北に向かって進むと、再び、東鳥海山参道入口の標識が現れた。りんご畑の中を登っていくと、右手に鳥居が現れた。車道はさらに続いていたが、短い橋を渡った先は、道も細くなっていた。鳥居の脇に車を止めた。
 この鳥居が二の鳥居のようであったが、鳥居を抜けた先に道は無かった。脇を流れる沢には、大きな砂防ダムの堰堤ができていた。以前とはかなり様子が違っているようであった。
 車道を山に向かって歩いていくと、堰堤の脇を抜けて、杉の植林地の中に入っていった。ガイドブックによれば、林道終点から登山道が始まると書いてあった。林道の終点はわからないまま、草に覆われた山道に変わっていた。道を辿ることはできたものの、これが地元の信仰の山の参道なのかと、疑問がわいてきた。間違って植林道に迷い込んだかという疑問をぬぐいさることができなかった。GPSといえども、地図にも道が記載されていないため、ガイドブックの概念図から推測したコースを入力してあるにしかすぎない。下山路の確保には役に立っても、山頂への道を教えてくれるわけではない。
 つづら折りを交えながら、山道は、山奥へと続いていった。歩いているうちに、これなら山頂へと導いてくれそうだと思えるようになった。道に覆いかぶさる夏草がうるさく、ズボンには、草の種が数多くひっついてしまった。登山道が横断する斜面が崩れているところもあり、迂回路が付けられていた。
 尾根沿いの道になると、幅も広くなり、小さな祠の脇に出た。この先は、格段に道も良くなった。続いて、木のお堂の脇に出た。このお堂は、外枠だけで、中は無かった。ここが奥の院かと思い、裏手に林道を探すとあったので、林道を先に進んだ。実際には、これは福田神社であることが、この先の奥の院に出てから知った。
 林道は、草が茂って、車の走行は難しい状態になっていた。前方の小高いピークが山頂のようであった。傾斜が緩んだところで、右手に道が分かれたので、この奥をのぞくと、杉林に囲まれて立派なお堂が建っていた。お堂の壁には、東鳥海山と書かれた木の板が奉納されて掲げられていた。広場の下方には、山門も立てられていた。佐竹南藩の祈願所として厚く保護されてきたというが、現在は、山中に忘れられた感じになっている。
 奥社から林道を先に進むと、すぐに終点の広場に出た。潅木の藪に進むと、三角点が現れた。登頂の喜びを味わせてくれる山頂ではなかった。
 ひと休みの後、時間も遅くなってきたということで、下山を急いだ。
 雄勝のコンビで食料を買い込み、途中の秋ノ宮温泉で入浴と思い、鬼首に向かった。時間も遅くなっていたが、なんとか日帰り入浴施設を見つけることができた。
 大森平に到着し、旧道に進むと、すぐに仙北沢登山口に通じる林道の入口になった。通行止めの柵が置かれていたが、脇は開いており、車の通っている轍もはっきりとついていた。すでに暗くなっており、林道の走行は危険ということで、この入口に車を停めて、夜を過ごすことにした。
 新道の方は、夜中も通過する車が多かったが、この旧道に入ってくる車は無かった。
 朝になってから林道に乗り入れた。二ヶ所ほど、沢水が流れ込んで道が掘り込まれ、最徐行で乗り越すところがあったが、その他はまずまずの林道であった。林道は仙北沢に向かって下降していき、橋を渡って、坂道を少し登ったところで、右手に登山道の標識が現れた。車を停める場所を探すと、林道を少し進んだ所に空き地があった。車を置くには、ここと橋のたもとの二ヶ所が考えられる。林道は、さらに先に続いていた。
 登山口の位置こそ地図の分岐と一致していたが、その後の登山道の走り具合は、水沢森まで、地図とは全く違っていた。
 登山道に進むと、伐採地に出て、水平に山腹を巻いていく道が続いた。仙北沢の下流に進み、枝沢が入ったところに、一合目の標識が立っていた。合目標識は、この後、山頂まで続けて立てられていた。ここから登りが始まった。
 沢沿いに少し登ると、沢の流れによる崩壊部に出るが、踏み跡を辿ると、その先ではっきりした登山道に出る。急な登りが始まる。二合目の先から尾根上に出るまでが一番の急坂であった。三合目からは、しばらく傾斜も緩やかになって、ひと息つくことができる。ただ、木の間からうかがう須金岳の山頂は、まだ遠く高かった。
 登山道の周辺には、立派なブナ林が広がるようになった。須金岳は、ブナの原生林が大きな魅力であるといってよい。四、五合目は、緩急を繰り返す登りであったが、再び急な登りが長く続くようになった。この急坂を乗り切ると、水沢森に到着した。
 水沢森からは一旦僅かに下って、なだらかな尾根を辿った後に最後の登りになる。地図では右手に崖マークが続いているが、普通の幅広の登山道が通じていた。
 九合目を過ぎると、すぐに傾斜が緩んで、潅木に囲まれた草地の広場に出た。ここには、須金岳の山頂標識が立てられている。見晴らしはないが、周囲の木立の紅葉が美しかった。
 横になだらかな稜線を広げる須金岳であるので、どこを山頂といって良いか判断は難しいが、ここで引き返してしまっては、この先の見所を逃してしまう。
 見晴らしの利かない潅木の中を進むと、崖の縁に出て、展望が一気に広がる。なだらかな稜線の先に、1241mピークが頭をもたげている。鬼首環状盆地と荒雄山を眺めながらの歩きがしばらく続いた。崖の縁を辿る道であったが、幅広の切り開きがしてあったので、危険はなかった。
 1241mピークへの登りにかかると、潅木に囲まれるようになり、1241mピークでは、展望はとざされていた。山頂らしからぬところなので、崖の縁まで戻って休むことにした。
 下りは、道も良く整備されていることから、小走りの歩きが続いた。ブナ林を眺めながら、一気に高度を下げていった。私の他には、下山途中で出合った5名のグループが全ての静かな山であった。
 早めの下山であったが、家に戻るにも少し時間がかかるため、これで山は終わりにした。

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