爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳

爺ヶ岳、鹿島槍ヶ岳


【日時】 2006年8月19日(土)〜20日(日) 前夜発1泊2日
【メンバー】 単独行
【天候】 19日:晴後曇り 20日:晴後曇り

【山域】 後立山
【山名・よみ・標高三角点・県名】
 爺ヶ岳・じいがたけ・2669.8m・三等三角点・長野県、富山県
 鹿島槍ヶ岳・かしまやりがたけ・2889m・二等三角点・長野県、富山県
【コース】 柏原新道より
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山、高山/大町、立山、白馬岳/黒部湖、十字峡、神城
【ガイド】 アルペンガイド「立山・剣・白馬」(山と渓谷社)、山と高原地図「鹿島槍、黒部湖」(昭文社)
【温泉】 薬師の湯 600円

【時間記録】
8月18日(金) 19:00 新潟=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148、大町 経由)=23:20 柏原新道登山口  (車中泊)
8月19日(土) 5:25 柏原新道登山口―6:34 ケルン―8:40 種池〜8:55 発―9:38 爺ヶ岳南峰〜945 発―10:02 爺ヶ岳中峰―10:46 冷乗越―10:59 冷池山荘〜11:06 発―11:14 冷池キャンプ場〜11:45 発―12:47 布引山―13:41 鹿島槍ヶ岳〜14:07 発―14:51 布引山―15:47 冷池キャンプ場  (テント泊)
8月20日(日) 6:17 冷池キャンプ場―6:46 冷乗越―7:56 爺ヶ岳南峰下―8:31 種池〜8:44 発―9:52 ケルン―10:34 柏原新道登山口=(往路を戻る)=15:20 新潟

 爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳は、後立山連峰と呼ばれる白馬岳から針ノ木峠に至る稜線上の山である。爺ヶ岳は、緩やかな三つの山頂を持ち、その山名は、春先に現われる種まき爺さんの雪形に由来している。鹿島槍ヶ岳は、後立山連峰の盟主といった存在で、美しい双耳峰の山で、日本百名山にも選ばれている。
 
 先週の五竜岳へのテント山行は、雷雨のために、唐松岳への日帰り山行になってしまった。今週こそ、テント泊をしようと考えた。お盆も過ぎて、登山者も少なくなって、テン場も空いてきているはずである。週末の二日間で歩くとなると、やはり後立山連峰が好都合である。結局、鹿島槍ヶ岳をめざすことにした。
 鹿島槍ヶ岳には、1994年8月6日に、日本百名山のピークハントとして、五竜岳を経て唐松岳への縦走として登っている。この時は、キレット小屋に泊まっての、1泊2日であった。縦走となると、先に進むことで頭がいっぱいで、山を落ち着いて楽しむ余裕は無かった。今回は、冷池キャンプ場に泊まって、鹿島槍ヶ岳の山懐で一夜を過ごすことが目的になる。
 白馬までは先週も走った道であり、その先もそれほど遠くはなく大町に到着する。柏原新道登山口の駐車スペースは、登山道入口と橋を渡った先にある。橋を渡った先の駐車場に車を停めることができた。前夜にもかかわらず、八分程の混み具合であった。ここが一杯だと、扇沢の駐車場を利用することになるが、少し歩かなければならなくなる。
 日程には余裕があったため、明るくなってから歩き出した。
 登山口から扇沢の左岸沿いに進むと、すぐに尾根の登りが始まる。GPSのトラックデーターを確認すると、地図の破線よりは下でトラバースしてから尾根にのることが判った。テント泊のザックは、1泊であっても重い。体がようやく慣れようとする時、八ツ見ベンチに到着した。木立の間から、扇沢の駐車場を眼下に見下ろし、まだ高みにある針ノ木岳を見上げることができた。
 さらに尾根の登りに汗を流すことになった。柏原新道は、北アルプスの登山道の中でも、良く整備されており、歩きやすいと言われている。確かに、急なところでは細かくジグザグを切っていて歩きやすいが、標高を上げるには、やはり自分の体力が頼りである。
 標高差250mを登り切ると、崩壊地のトラバースとなり、その先の尾根の横断部にケルンが置かれている。扇沢の谷奥の突き上げには、種池山荘も見上げることができた。まだまだ高いといっても、目標地が視界に入ってくると、気が少し楽になる。カメラを持って、崩壊地に戻った。扇沢の駐車場はあいかわらず眼下に見えており、針ノ木岳と蓮華岳の眺めが広がった。
 この先は、標高を上げるというよりは、谷奥へと進む道になった。種池山荘の立つ稜線も高いというよりは、まだ遠いという感じである。一枚岩、石畳、水平道、ベンチといった標識が現れた。地形的には変化のない中の標識で、良い休憩ポイントになるが、登山地図にも記載されていないとあっては、歩きの参考にはしにくい。
 稜線に迫ったところで、谷を埋めた雪渓の横断になる。傾斜はかなり急であるが、幅広で水平な道が切られているので、歩くのに危険性はない。
 雪渓を横断すると、尾根を西に回りこんでから、最後の登りになる。お花畑を上り詰めると、種池山荘に到着する。
 名前の由来と思われる小さな池が小屋の左手に湖面を広げている。登りの途中に、青空を背景に見えていた針ノ木岳の山頂には、早くも雲がかかりはじめていた。
 朝は食欲が起きずにとっていなかった朝食を、ここで取ることになった。ここまでは、コースタイムよりは大幅に短縮したが、先回の五竜岳への縦走時と比べると、時間がかかっている。やはり、小屋泊まりと、テント泊とでは、歩きの速度は大幅に違ってしまう。冷水小屋への到着時間を考える必要があった。この調子なら、昼前の到着になる。テントを張ってから、空身で鹿島槍ヶ岳を往復することができる。問題は、雲が出てきて、午後の展望は期待できそうもないことであった。今日中に登っておけば、明日は、早い時間に家に戻ることができて、体を休めることができる。結論は出ないままに歩き出した。
 お花畑の先に、爺ヶ岳が、鋭いピラミッドの山頂を見せている。ハイ松の広がる尾根上に出ると、剣岳と立山の眺めが広がった。山頂部に雲がかかっているのが残念であった。鹿島槍ヶ岳も姿を見せていたが、稜線部に雲がかかり始めていた。
 爺ヶ岳の南峰は、前方に、ピラミッド型の山頂を見せていた。ガレ状の急な登りが続いた。爺ヶ岳南峰には、巻き道も設けられているが、当然、山頂をめざした。この南峰に登って爺ヶ岳登頂とする者も多いようであるが、次の中峰が最高峰で、三角点も置かれている。一旦下った鞍部には、トウヤクリンドウの大きな株が花を付けて、秋の訪れを知らせていた。
 中峰も、巻き道から分かれて、山頂を目指した。爺ヶ岳の山頂は、三つのピークを連ねているが、最後の北峰には道は無く、そのままの通過になる。
 北峰を通過すると、大きな下りになる。最低鞍部から僅かに下ったところが、赤岩尾根との分岐になり、さらにもうひと登りして、冷池山荘に到着する。テント泊の受付をすると、二番目であった。テン場へは、さらに先へ登る必要がある。テン場に到着すると、先行者のテントがひと張りあるだけで、場所はよりどりみどりであった。そうなると、かえって迷ってしまう。剣岳の眺めが良さそうなところを選んだ。結局、この晩は、13張りのテントが並んだ。
 テントを張り終えて、どうするか迷った。結局、花の写真を撮りながら鹿島槍ヶ岳をめざし、山頂で昼食をとることにした。幸い、ビールもひと缶持ってきていた。
 サブザックになって、足も軽くなった。歩き出してすぐに、二重山稜風の地形に広がるお花畑に出た。ウサギギクやチングルマの花を楽しむことができ、足は止まってしまった。この先は、布引山へのきつい登りが始まった。布引山は、尾根の張り出し部の小ピークであるが、下からでは、鹿島槍ヶ岳の立派な前衛峰のように見える。ザレ場の中のつづら折りの道に汗を流した。
 布引山に到着してみると、鹿島槍ヶ岳の山頂が、さらに高く聳えているのが目に入って、いささか気落ちする。ただ、この先の尾根沿いは、トリカブトをはじめ、花も多くて楽しませてくれる。鹿島槍ヶ岳への最後の登りはきついが、以外にあっさりと登りきることができた。
 鹿島槍ヶ岳の山頂は、ガスに覆われて、目の前の北峰も見えない状態であった。先に進むのはやめて、腰を下ろして昼食とした。後は、花の写真を撮りながら戻るだけなので、のんびりとビールを飲むことができた。
 テン場に戻ってから、小屋に買い物に行くと、生ビールは夕食の準備の時間になって終わりになっていた。北アルプスの良いところは、生ビールが飲めることなので、少し残念であった。缶ビールを買って、テントに戻った。
 翌朝は、晴になった。もう一度鹿島槍ヶ岳に登るのは、やはり面倒なため、ゆっくりと出発して、下山することにした。爺ヶ岳への登りにかかると、背後に鹿島槍ヶ岳の眺めが広がった。稜線を雲が越しており、この眺めも、長くはなさそうであった。昨日は、鹿島槍ヶ岳を眺められなかったので、早めに爺ヶ岳へ戻ってきて良かったことになる。
 爺ヶ岳の山頂は、種池小屋からの登山者で賑わっていた。ガスが出て、展望は閉ざされ始めていた。爺このままヶ岳を下ると、濃いガスに覆われたが、小屋の手前のお花畑で、雷鳥の親子に出会うことができた。ここの雷鳥は、人に慣れているようで、マスコットのようになっている。
 種池小屋でひと休みした後に、下山を開始した。他の登山者を追い抜きながら快調にとばしたが、下界が近づくと、暑さが堪えるようになった。登りの登山者も、バテ気味の者が多くなった。コースタイム的には可能であっても、日が高くなってからの登りは、苦しさも倍増するので、感心しない。
 早めの下山であったが、風景も充分楽しむことができた。後は、温泉に入って帰宅の途についた。

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