岩蕈山、唐松岳

岩蕈山
唐松岳


【日時】 2006年8月12日(土)〜13日(日) 前夜発1泊2日各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 12日:曇り後雷雨 13日:晴

【山域】 北アルプス北部周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 岩蕈山・いわたけさん・1289.6m・二等三角点・長野県
【コース】 天狗の庭コースよりホウの木平コース
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳/白馬町
【ガイド】 なし
【温泉】 岩岳の湯 500円

【山域】 北アルプス北部
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 唐松岳・からまつだけ・2696.4m・二等三角点・長野県、富山県
【コース】 八方尾根往復
【地形図 20万/5万/2.5万】 富山/白馬岳、黒部/白馬町、欅平
【ガイド】 アルペンガイド「立山・剣・白馬」(山と渓谷社)、山と高原地図「鹿島槍・黒部湖」(昭文社)
【温泉】 倉下の湯 500円

【時間記録】
8月11日(金) 19:30 新潟=(北陸自動車道、糸魚川IC、R.148 経由)=23:30 白馬町
8月12日(土) 8:20 岩岳スキー場―9:17 天狗の庭〜9:28 発―10:19 岩岳―11:38 林道終点―12:28 岩岳スキー場=(黒菱林道 経由)=15:00 黒菱平
8月13日(日) 4:53 黒菱平―5:40 八方池山荘―6:30 八方池〜7:18 発―8:13 丸山ケルン―8:50 唐松岳頂上山荘―9:19 唐松岳〜9:30 発―9:50 唐松岳頂上山荘―10:41 丸山ケルン―12:00 第三ケルン〜12:10 発―12:57 八方池山荘―13:34 黒菱平=(往路を戻る)=18:10 新潟

 岩蕈山は、白馬岳の登山口として賑わう白馬町の北西部に位置する山で、岩岳スキー場が設けられている。地形図には、岩蕈山という、読むのも難しい字が用いられているが、岩岳(いわたけ)が通り名になっているようである。信濃自然歩道としてハイキングコースが設けられている。

 唐松岳は、後立山連峰にあり、八方尾根の上部に位置する山である。白馬岳や五竜岳の眺めも素晴らしく、高山植物も豊富で、八方尾根にかかるロープウェイとリフトを乗り継げば、1850m地点からの歩き出しになり、コース上で難しいところもないため、北アルプスの入門コースになっている。

 夏山の盛りとあって、テント泊を行いたかったが、お盆がらみの混雑も考える必要があった。7月から8月の間、白馬Alps花三昧ということで、白馬の八方ゴンドラと五竜ゴンドラ乗り場の間を、観光用シャトルバスが短時間の間隔で運行していることを知り、五竜岳から唐沢岳への縦走を行うことにした。歩いていない遠見尾根にも興味がある。どちらから登るか迷ったが、始発の早い八方尾根から歩き出すことにした。
 テント泊の用意を整えて週末を待ったが、直前になって、土曜日が雷雨という天気予報が出た。月曜日にも休みをとっていたが、お盆休みで大混雑になりそうで、土曜日に雷雨なら、日曜日に唐松岳への日帰り山行を行うことにした。とりあえず、白馬町に入って朝の様子を見ることにした。
 夜中に到着したところで、八方ゴンドラの乗り場を確認した後に、静かな岩岳スキー場の駐車場で夜を過ごした。リフトの始発を待つ関係で、朝はゆっくりと寝ていることができた。起き出して、山を見ると、曇り空ながら、白馬岳の稜線ははっきりと見えていた。ラジオの天気予報を聞くと、新潟県の海岸ではすでに雨になっているようであった。雷による空電も生じており、ラジオにノイズが頻繁に入ってきた。稜線で雷雨に遭うのは避けたいので、縦走は諦めることにした。
 とりあえず、五竜ゴンドラ乗り場に様子を見にいくとにした。数組が出発の準備をしていた。このゴンドラも、夏山シーズンとあって、定刻よりも早い始発になるようであった。
岩岳のハイキングコースを歩くことにして、岩岳スキー場に戻った。西山のスキー場のゲレンデ下部は、入場料を取るユリ園になっていた。その前の広い駐車場に車を停めて歩き出した。
 山に向かって、左手に向かって車道を歩いていくと、岩岳へのトレッキングコースが始まった。どうやらスキー場の保守道も兼ねた林道のようであった。ジグザグを交えながら、高さを増していった。ヤブ蚊が多く、木陰に入ると、刺してくるのでまいった。北アルプスを歩くつもりで家を出たので、虫除けスプレーのことは忘れていた。
 テレビの中継基地が現れると、その先は、登山道になった。犬の寝床という標識があり、いきなり、342段の階段登りが連続する急坂になった。蒸し暑く、大汗をかきながらの登りになった。
 尾根沿いの登りになって、山歩きの気分が高まったところで、天狗の庭に出た。大岩が転がっている様が、天狗の伝説を生み出したようである。
 看板に書かれた説明によれば、次のように書かれている。
「天狗の庭
昔戸隠の天狗が、月夜に戸隠山に登ると、三段紅葉(頂部雪・中腹紅葉・麓緑)の白馬三山が満月に照らされているのが目に入り、あまりの美しさについこの地にひかれ、月見の宴を開いたという、以来村人は、ここを「天狗の庭」と呼ぶようになった。長野県・白馬村」
 天狗の庭は、ベンチも置かれた広場になっており、白馬連峰方面の展望が広がっていた。といっても、早くも、雲が厚くたれこめて、天気が崩れるのも間近のようであった。
 これで、山頂も近いのかと期待したが、ゲレンデに飛び出してしまった。ゲレンデ内を通っている保守道の歩きに変わった。天気が一気に悪くなって、流れるガスで周辺の様子が隠されてしまった。遠くから雷鳴も聞こえるようになった。
 岩岳の山頂は、リフトが登ってきており、立派なレストハウスや、ホテルが建てられていた。夏のシーズンオフとあって、静まりかえって、異様な雰囲気であった。
 山頂には三角点が置かれているので、最高点へと藪を進むと、道路の切り通し近くで見つけることができた。
 雷鳴も大きくなって、いよいよ危なくなってきた。幸い、建物やリフト乗り場が並んでいるので、雨宿りの場所にはことかかなかった。
 来た道を戻るのも芸が無いので、信濃自然歩道になっているホウの木平コースを下ることにした。最後に車道歩きが待っているが、時間は充分あった。
 ガスで見通しが利かないので、GPSで方向を確かめて、ホウの木平コースに乗った。始めは、ゲレンデ歩きであったが、すぐに尾根沿いの下りになった。周辺には、ブナを始めとする美しい林が広がっており、山歩きを楽しむことのできる道であった。
 雷雨が始まった。高度も下げており、深い森の中の安全圏に入っており、傘をさしながら歩き続けることができた。雷鳴と稲光が連続した。
 一旦僅かに登り返すと、広場になったホウの木平で、方向を東に変えて、その先は尾根沿いの下りが長く続いた。
 最後には林道の終点に出たが、楠川にかかるその手前の橋は、横木が腐り気味で、うっかり車を乗り上げると落ちそうであった。雷鳴は遠ざかったが、小雨は降り続いていた。最後の車道歩きを頑張ることにした。
 岩岳スキー場には、温泉施設もあり、車に戻った後ですぐ入浴することができた。温泉に入ってさっぱりし、車の中で昼食をとった。
 国道沿いのコンビニで夕食と翌日の食料を買い込んで外に出ると、雨は上がって、白馬連峰の展望が広がっていた。天気は回復し、翌日は期待できそうである。車を黒菱平に向かって走らせた。
 レストランやペンションの並んだ中を抜けると、林道が始まった。どうも山奥の山に向かういつもの様子とは違っている。家並みが途切れると、道幅の狭い林道となり、九十九折の道で高度を上げていくと、牛が放たれた牧場の中を通るようになった。
 黒菱平の駐車場はかなりの車が停められており、雨の日にもかかわらず、四割ほどが埋まっていた。車を動かしている間に青空も広がるようになっていた。白馬三山を見たくて、駐車場から始まる黒菱第三リフトに乗った。サンダル履きでカメラを持っただけであった。リフト終点からは、高山植物が咲いているのを見て、登山道に進んだ。結局、リフト一本ぶんを歩いて、八方池山荘まで登ってしまった。
 山荘の先の展望台からは、夕暮れ近くの白馬三山の眺めが広がっていた。ここまでの歩きでも、シモツケソウ、ワレモコウ、カライトソウ、タテヤマウツボグサ、ニッコウキスゲ、ハッポウタカネセンブリ、タカネマツムシソウなど、多くの花を楽しむことができた。
 歩き回ったおかげで喉も渇いてしまい、自動販売機でペットボトルのお茶を買って飲んだ。完全に山に迷い込んだ観光客そのものの姿であった。 黒菱第三リフトに乗って下る途中、午前中に登った岩岳が目の前に広がっていた。
 その夜は、黒菱平の駐車場で、静かに過ごすことができた。まだ暗いうちから歩き出す物音がして、私も起きだすことになった。時間配分を考えれば、もう少し寝ていても良いはずであった。ヘッドランプがいらなくなったところで、歩き出すことになった。
 昨日とは違ってリフトは乗らず、牧場の中に延びる道に進んだ。昨日とは違って、登山が目的である。もっとも、リフトの開始時間を待って楽をするよりは、早く歩き出して、静かな山を楽しんだ方が良い。
 登山道は、牧場を抜けてアルペンクワッドリフトの下の登りになると、傾斜が増した。この付近は、長野オリンピックで、女子回転のコースになったようである。
 黒菱第三リフトの終点に辿り着いたところで、太陽が戸隠連峰の上から姿を現した。もう一本のリフトを歩いて、リフト終点の八方池山荘に到着した。前日歩いておいたのも、登山道の様子が判っていてよかった。
 ここからは、登山道になるが、観光客が入りこむために、リフトの下よりも広い道が設けられている。登山者も周辺には見当たらず、静かな道を歩くことができた。右手には白馬三山の眺めが広がっていたが、稜線部は雲が隠していた。時間が経てば、雲も晴れそうな雰囲気であった。
 第二ケルンや八方ケルンを過ぎると、小高いピークへの登りになる。次の第三ケルンの手前で、右手の道に進み、緩やかに下っていくと、八方池に到着する。
 八方池は、八方尾根の代表的な展望地である。それほど大きな池ではないが、湖面に白馬三山の姿を映す眺めは、山の雑誌でもおなじみである。大型三脚を立てた5名のグループと数名がいるだけで静かな朝の雰囲気がただよっていた。手前のテラスは、不帰ノ嶮の眺めは良いが、白馬三山は隠れている。写真を数枚とってから池を半周して、先のテラスに進んだ。稜線の雲が消えるまで待つことにした。結局、白馬三山の山頂が姿を表すのに、50分近く待つ必要があった。光線の状態からすると、もう少し待つと、空の青が濃くなりそうであったが、唐松岳の山頂を目指すならば、ここらで歩き出す必要があった。五竜岳への縦走を行う当初の予定では、八方池でこのようにのんびりとはできなかったので、日帰り山行にして良かったことになる。
 静かな八方池を後にして尾根に上がると、今度は五竜岳と鹿島槍ヶ岳の眺めが広がった。登りは展望、下りは花の写真をメインにして歩くことにした。
 ダケカンバの木立が広がる下ノ樺を過ぎると、草付きの急坂になる。周囲に広がるお花畑が、登りの辛さを和らげてくれた。その上は、樹林帯の登りになり、前方には残雪の残る沢が迫ってきた。残雪上の歩きがあるのかと思ったが、脇を通り抜けて登りが続いた。
 登りがひと段落すると、ケルンの置かれた丸山に到着する。樹林限界を超えて、この先は展望が広がる。不帰ノ嶮が、目の前に迫力のある岩峰の連なりを見せていた。唐松岳への登りも、手前に小ピークが重なっているが、もうひと頑張りの距離になった。
 ガレ状の尾根の一段下をトラバースしながらの登りが始まった。崩壊地となった斜面は急であるが、しっかりした桟道も儲けられているので、安心して歩くことができた。尾根を回りこんでいくと、唐松岳山頂山荘が姿を現した。
 山荘前のテラスに出ると、唐松岳の山頂が目の前に聳えていた。もうひと頑張りと足を進めた。一旦少し下ってから岩稜の登りになった。
 唐松岳の山頂に立つと、遮るもののない眺めが広がった。まず目が行くのは、不帰ノ嶮を越して天狗ノ頭に続く稜線である。時間の関係か、山頂で休んでいる間にも、数組の登山者が、白馬岳方面から登ってきた。話を聞いていると、前日は雷雨に会って、かなりの恐怖体験になったようである。
 剱岳と立山が、黒部の谷向こうに広がっていた。南には、五竜岳が、豪放、男性的な姿を見せていた。山頂で山を眺めての休みの間にも、五竜岳の東側には雲がかかってきた。
 帰りは、花の写真を撮りながら歩いた。登ってくる登山者は、お盆とあって、途切れることがないほど多かった。幸い、花の写真を撮りながらの歩きであったので、歩きのスピードが落ちるのは気にならなかった。この晩の唐松岳山頂山荘の混み具合は、想像を超えているであろう。第三ケルンまで下りると、観光客混じりのハイカーでごったがえしているのには、いささか人あたりしそうになった。
 八方尾根は、これが二回目である。1994年8月7日に歩いたのは、鹿島槍ヶ岳から五竜岳へ1泊2日で縦走し、唐松岳から下山した時である。縦走の緊張から開放されて下っていくと、大勢のハイカーや観光客に出会ってしまい、八方尾根自体にあまり良い印象は持たなかった。しかし、今回の歩きで、八方尾根に花が豊富なのには驚かされた。ハッポウタカネセンブリをはじめ花も多く、また歩きたいコースのリスト入りになった。

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