鳥海山、月山

鳥海山
月山


【日時】 2006年8月5日(土)〜6日(日) 前夜発1泊2日各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 5日:霧後晴 6日:晴

【山域】 鳥海山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 新山・しんざん・2236m・なし・山形県
 七高山・しちこうざん・2229.2m・一等三角点補点・山形県
【コース】 鉾立より往復
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/鳥海山、大沢口/鳥海山、湯ノ台
【ガイド】 アルペンガイド「鳥海・飯豊・朝日」(山と渓谷社)、山と高原地図「鳥海山、月山」(昭文社)
【温泉】 酒田健康ランドゆうゆう 500円

【山域】 出羽山地
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 姥ヶ岳・うばがだけ・1669.7m・三等三角点・山形県
 月山・がっさん・1984m・なし(1979.5m・一等三角点補点)・山形県
【コース】 姥沢コース
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/月山/月山
【ガイド】 アルペンガイド「鳥海・飯豊・朝日」(山と渓谷社)、分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「鳥海山、月山」(昭文社)

【時間記録】
8月4日(金) 21:20 新潟=(R.7 経由)
8月5日(土) =0:30 鶴岡  (車中泊)
4:00 鶴岡=(R.7、吹浦、鳥海ブルーライン 経由)=5:20 鉾立〜6:02 発―6:50 賽の河原―7:25 御浜小屋―8:17 御田ヶ原分岐―8:23 七五三掛分岐―9:35 御室―9:56 新山―10:17 御室―10:50 七高山〜11:23 発―12:01 河原宿分岐―13:01 七五三掛分岐―14:14 御浜小屋―14:36 賽の河原―15:25 鉾立=(R.7、鶴岡、R.112)=20:30 姥沢  (車中泊)
8月6日(日) 7:15 リフト上駅―8:04 牛首―9:00 月山〜9:28 発―10:05 牛首―10:32 湯殿山分岐―10:50 姥ヶ岳―11:22 リフト上駅=(R.112、鶴岡、R.7 経由)=16:20 新潟

 鳥海山は、日本海にその裾野を洗う成層火山であり、秀麗な山容から出羽富士あるいは秋田富士と呼ばれている。北関東・東北では燧ヶ岳に次ぐ標高を持ち、山頂部は複式火山特有の変化に富んだ地形になり、花の山としても名高い。

 月山は、羽黒山、湯殿山と合わせて、出羽三山と呼ばれ、古くからの信仰の山である。なだらかな山頂を持ち、日本海近くの豪雪地にあることから、夏遅くまで残雪を抱き、高山植物が豊富なことから人気の高い山になっている。
 
 雲ノ平山行の疲れも消えないうちに週末がやってきた。金曜日の晩に飲み会があり、酒は飲まないで済ますにしても、出発の時間は遅くなり、遠くの山や早朝発が必要な山は無理ということになった。頭を捻って、鳥海山に出かけることにした。疲れも残っているので、もっとも一般的な鉾立からのコースを、気軽に歩くことにした。
 新潟を出発する時間が遅くなって、鶴岡を通過するのは日付が変わってしまい、国道脇の郊外型ショッピングセンターの駐車場に車を停めて寝た。熟睡していると、窓を叩く音で起こされた。警官の不審尋問であった。免許証を渡して、本部への問い合わせの後に開放された。山を始めてから、三度目の不審尋問であった。街中での野宿は、このような不審尋問につかまる可能性が高い。
 もう一度寝ようとしたが、起きだしても良い時間になっていた。思わぬモーニングコールを受けて、再び車を走らせた。
 鳥海ブルーラインに入って高度を上げていくと、濃い霧に巻かれた。車のナビで現在地を知ってようやく鉾立の駐車場に到着したが、周囲の様子は全く判らなかった。鉾立には大きな駐車場が設けられているが、早朝にもかかわらず、八分ほどの入りであった。中には、登山者を乗せた大型観光バスも数台到着していた。車の中で、霧が晴れるのを待った。このような濃い霧の中でも、出発していく登山者は大勢いた。
 6時にようやく霧が薄くなって歩き出すことができた。鉾立からの登山道は、遊歩道なみに整備された道が続く。登山者も多かったが、道も広いので、自分のペースで歩くことができた。大型三脚を背負った写真愛好家が目立った。薄暗い登山道脇の花を撮影している者もいたが、この光の条件では、良い写真はとれないであろうに。
 最初の目標地は、賽の河原である。岩が転がる窪地で、残雪も残っており、チングルマの花が咲いていた。水の流れもあり、ひと休みするには良い所である。
 稜線の一段下をトラバース気味に登っていくと、御浜小屋に到着した。小屋の周りは、ハクサンシャジンやトウゲブキのお花畑になっており、さっそく花の写真撮影になった。ハクサンシャジンは、夏に良く見かける花ではあるが、上下に花が並んでおり、全体にきれいな花が揃っていることはめずらしい。今回は、痛んだ花はほとんどなく、花の盛りに出会ったようである。
 鳥海湖もガスに覆われてみえず、なだらかな稜線を進んで扇子森を越えると、八丁坂と書かれた下りになる。鞍部付近は、ニッコウキスゲが黄色い群落となって広がっていた。チョウカイアザミやシロバナトウウチソウの花も現れて、花を目当ての山であっただけに、この先の期待も膨らんだ。
 再び登りに取りかかり、尾根が痩せて急になったところが七五三掛である。ここからは、千蛇谷コースに入った。急斜面を下っていくと雪渓に埋もれた谷に下り立つ。1992年8月に歩いて以来の久しぶりのコースである。先回は、雪渓の上をかなり歩いたような記憶があるのだが、雪渓を横断してロープがガイドに張られており、すぐ対岸に移るようになっていた。雪渓の上に立つと、丁度ガスが上がって、新山の山頂が姿を現し始めた。カメラを構えたまま、しばらく待機になった。出発時の状態に反して、良い天気になろうとしていた。
 右岸に移ると、雪渓脇の草付きにしっかりした道が付けられていた。しばらく登ると、傾斜がきつくなり、ジグザグに登るようになってきた。御室の小屋も近づいているはずであったが、地形の関係で最後まで姿を現さなかった。結構疲れる登りで、足が止まっているグループも見かけられた。
 御室の周辺には、これだけ多くの登山者が先行していたのかと驚く程の人間が集まっていた。今回の山行の目的の一つには、チョウカイフスマに会うことがある。新山への取り付き部で、この花を見つけることができた。ただ、登山者の大部分は、気にもせずに脇を通過していた。花は、少し盛りを過ぎていたが、きれいな花が揃っているところも見つけることができた。
 新山への登りは、大岩を伝い歩くことになる。渋滞状態になっており、人の後について登ることになった。切り通しを抜けると、新山の最高点への登りになる。山頂は、登山者でいっぱいで、その中でグループが集団写真を撮ろうとして、なかなか動かない。山頂に立ったものの、すぐに下ることにした。空いているはずの東側に下りるコースに進んだつもりであったが、胎内くぐりを通って、切り通しの脇に戻ってしまった。このコースは歩いていないので、これはこれで良いのだが。
 登ってくる登山者とのすれ違いは、下り優先になった。山頂にいる人間が下りないことには、混み合って、登るにも登れない。御室付近も、山頂往復のためにデポしたザックで埋まっていた。雑然として休むのにも気分がのらないので、水場へと移動した。外輪山との間に残る雪渓から水が流れ出て、良い水場になっている。冷たい水を飲んでひと息入れた。
 水場から、ザレ状態で足場の悪い急坂を登ると、外輪山の稜線上に出る。この分岐を左にたどると、じきに七高山の山頂に到着する。ここも、大勢の登山者が休んでいた。青空が広がって周囲の展望が広がっていた。鳥海山は裾野を大きく拡げた山なので、近くに目立つ山が見あたらないが、新山の山頂が目の前にそそり立つのが、なによりもの見所である。新山の山頂は、あいかわらず登山者で埋め尽くされていた。御室の建物が、新山の麓に張り付いているのを見下ろすことができた。
 ビール片手の、山頂での憩いになった。他の登山者の話を聞いていると、これから新山に向かうか、この七高山を山頂と考えてここまでにするかが、議論のまとになっているようである。
 ひと休みの後に、花の写真を撮りながらの下山になった。外輪山の尾根も花は豊富で、イワブクロウ、チョウカイフスマ、イワギキョウ、ミヤマリンドウ、ハクサンフウロなど、次から次に現れた。
 御浜小屋に戻ると、団体も含めて大賑わいになっていた。どうやら、ここまでのハイキングツアーがあるようである。鳥海山登山ツアーとうたって、御浜小屋まででは、いんちきくささを感じるのだが、参加者が満足するならばそれでも良いのかしれない。ここまででも、他の山ではお目にかかれないほどのお花畑に会うことはできる。
 登山者で賑わう登山道を下って、鉾立に戻った。
 鳥海山の花を堪能したが、このまま家に戻るのももったいない。といっても、あまり頑張って歩く気にはなれない。月山に姥沢から登ることにした。リフトを利用して、簡単に登れるわりには、花は豊富である。
 夏山シーズン到来にもかかわらず、夜になって到着した、姥沢のリフト乗り場への入口付近の駐車スペースは空いていた。このコースは、半日でも歩けるので、前夜から登山口に入る者はいないのか。いや、前回の2004年7月25日では、六割ほどは埋まっていて、空いている下の大駐車場で寝た覚えがある。
 翌日は、リフトの始発を待つ関係で、ゆっくりと寝ていることができた。といっても、登山者が、脇を通過していくと、寝ているわけにはいかない。リフト乗り場への通路入口にある環境整備費の徴収所で、リフトの始発時間を聞くと、7時とのことであった。正規の運行時間よりも、夏山では早くから運行開始になるので、そのつもりで山行の計画を立てた方が良い。
 また、残雪が残っており、アイゼンが必要でリフト乗り場で貸し出しをしていると書かれていた。幸い、鳥海山で雪渓歩きが必要かと思って、六爪アイゼンを持ってきていた。確かに、乗り場脇の売店では、四爪軽アイゼンの貸し出しを行っていた。
 リフトに乗って、一気に1510m標高まで登ってしまう。山頂までは標高差470mにしか過ぎないので、お気軽登山にしか過ぎないが、その分、ゆっくりと花を楽しむことができる。
 リフト乗り場を下りてまず目に入ったのは、姥ヶ岳にかかる残雪であった。結構急斜面であった。姥ヶ岳にまず登るか、トラバース道で牛首をめざすか迷った。前を行くグループが姥ヶ岳への道に進んだので、トラバース道に進んだ。
 たおやかな山頂を持つ月山に向かっての木道歩きが続いた。登山道周囲には、雪解け後の草付きが広がり、ニッコウキスゲやヒナザクラの花を見ることができた。雪解け水の流れもあり、リフト終点から遠くもないのに、別天地の様相を見せていた。
 花を見ながら緩やかに登っていくと、夏スキー場になっている沢の縁に出る。今年は雪も豊富であった。時間も早いためスキーヤーはいなかったが、昼の下山時には賑わっていた。
 雪渓が現れた。コースの目印にロープが付けられていたが、支点のためではない。スプーンカットを利用すれば問題なく登れたが、前を行く登山者は、アイゼンを付けていた。登りはともかく、下りは滑りやすそうであった。
 雪渓を二つほど越えて稜線に上がると、牛首に到着である。ここで、姥ヶ岳からの道が合わさる。この先は、急斜面の登りが始まる。登山道は良く整備されているが、岩場になっており、山に慣れていない者は苦労する所である。
 法螺貝の音が鳴り響くと、白装束の団体が下ってきた。団体登山は好きではないが、この月山では、この登拝集団の方が主役である。道を譲って、朝の挨拶をした。
 傾斜が緩むと、鍛冶小屋の跡である。現在では小屋は撤去されている。周囲には花も豊富で、もうひと登りすると、山頂台地のいっかくに登頂する。前方には、こんもり頭を持ち上げて月山神社が置かれている山頂が見える。山頂の小屋で泊まったのか、八合目から早朝発で歩いてきたのか、大勢の登山者がすでに到着していた。
 山頂の神社は混雑していたので中には入らず、一等三角点まで進んで、登頂とした。休んでいる間にも大勢の登山者が登ってきた。
 混雑してきた山頂を後にして、山を下った。牛首の分岐からは、姥ヶ岳へ向かった。湯殿山への道を分けると、姥ヶ岳への登りが始まる。姥ヶ岳の山頂は、木道が敷かれた台地になっている。草原性のお花畑が広がっている。キンコウカは、時期が過ぎていたが、ミヤマリンドウの大きな株を見ることができた。
 姥ヶ岳を下っていくと、雪渓の下りになった。結構急で、ストックを支えに、横歩きで下りるような所もあった。残雪歩きに慣れていないと、この下りには、アイゼンが必要になりそうである。運動靴の観光客が大勢登ってきており、事故が起きないかと心配になった。
 リフトの山頂駅に戻り、後は一気に下界へとなった。
 月山は、短時間で登れる山としては、花も多く、楽しめる山である。まだ歩いていない登山道にも興味があるが、このお気軽コースも、また捨てがたく、再度訪れることになりそうである。

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