坂戸山、尾瀬ヶ原

坂戸山
尾瀬ヶ原


【日時】 2006年7月15日(土)〜16日(日) 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 15日:曇り 16日:雨

【山域】 巻機山周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 坂戸山・さかどやま・633.9m・二等三角点・新潟県
【コース】 薬師尾根から城坂遊歩道へ
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/十日町/六日町
【ガイド】 新潟の里山(新潟日報社)、新潟県ふるさとの散歩道(新潟県観光協会)
【温泉】 薬師の湯 600円

【山域】 尾瀬
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 尾瀬ヶ原・おぜがはら・1400m・無し・群馬県、福島県、新潟県
【コース】 沼山峠から尾瀬ヶ原、燧裏林道周回
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/燧ヶ岳、藤原/燧ヶ岳、尾瀬ヶ原
【ガイド】 山と高原地図「尾瀬」(昭文社)
【料金】 御池駐車場 1000円、御池から沼山峠バス 530円
【温泉】 駒の湯 500円

【時間記録】
7月15日(土) 12:20 十日町=(R.253、津久野 経由)=13:00 坂戸山駐車場〜13:10 発―13:49 寺ヶ鼻遊歩道分岐―14:03 坂戸山〜14:15 発―14:17 桃之木平分岐―14:49 一本杉―15:08 坂戸山駐車場=(R.17、小出、R.252、只見、R.289、南郷、R.401、内川、R.352 経由)=20:30 御池 (車中泊)
7月16日(日) 5:30 御池=(シャトルバス)=5:55 沼山峠登山口―7:00 長蔵小屋分岐―7:55 沼尻〜8:05 発―9:20 下田代十字路〜9:35 発―10:20 竜宮〜10:44 発―11:13 ヨッピ橋―11:32 東電小屋―11:52 下田代十字路分岐―12:10 温泉小屋―12:51 燧裏林道分岐―13:00 三条の滝〜13:05 発―13:12 燧裏林道―13:35 渋沢温泉分岐―13:39 燧裏林道―14:23 渋沢温泉分岐ー15:00 上田代ー15:28 御池=(R.352、内川、R.401、山口、R.289、会津田島、R.121、小野、R.118、上三寄、新鶴PA 経由)=20:30 新潟

 坂戸山は、巻機山から金城山を経て西に延びてきた尾根が、魚野川に落ち込む末端にある山である。上杉長尾の山城が置かれた史跡の山として知られている。地元では、健康登山の山として親しまれ、最近では、カタクリの山として人気も高くなっている。何本もの登山道が開かれているが、新潟県の登山ガイドに取り上げられることが少ないのは不思議である。

 尾瀬ヶ原は、群馬県、福島県、新潟県の三県にまたがり、約1400m の標高に、東西約6km、南北約1kmにわたって広がる本州最大の湿原である。尾瀬ヶ原は、季節を変えて、ミズバショウやニッコウキスゲを代表とする高山植物や紅葉に彩られ、訪れる登山者が耐えない。至仏山、皿伏山、燧ヶ岳、景鶴山に四方を囲まれた尾瀬ヶ原に集まった水は只見川となり、平滑ノ滝と三条ノ滝の二つの名瀑布を作っている。

 海の日の三連休は、いつも梅雨明けが問題になる。今年は、特に早めの17日で、梅雨末期の大雨のさなかとなった。土曜日の午前中は仕事が入り、昼から自由になった。十日町から近いということで、先日に引き続いて六日町の坂戸山に出かけることにした。十日町では、仕事が終わって車に乗り込もうとすると、激しい雨が降ってきた。それでも、峠を越すと、雨は止み、八海山の山頂部も望めるようになった。
 今回は、スキー場跡からの城坂遊歩道を歩くことが目的であった。先回裏坂戸遊歩道を歩いた際に、実際のコースと地図の破線とは違っていることは判っていた。コースが良く判らないので、山頂から下ることにした。
 六日町市街地から坂戸橋を渡り、尾根末端を北側に回りこんだ坂戸山の駐車場には、数台の車が停められていた。出発準備の短い時間の間にも、登山者が到着して、歩き出していった。どうやら、仕事を終えてから、ひと汗流そうということで登られる山のようである。
 雨は降っていないものの、上空には厚い雲が垂れ込めていた。いつものようにGPSを立ち上げたが、衛星からの電波が、全く入らなかった。駐車場は、それほど上空の見通しが悪くなかったが、まずは尾根の上に出ることにした。お堂の脇から、ひと登りで尾根の上に出ることができる。GPSは、それでも、故障かとも思われるように、全く信号が入らなかった。コースをGPSのログの赤線で塗りつぶすことが目的なのに、これは困ったことになったが、しかたなく歩き出した。薬師尾根は、幅広の登山道が整備されて、石仏がいくつも置かれ、目を楽しませてくれる。
 尾根は次第に急になって、階段登りが続くようになる。山頂は、すぐそこに見えているが、体力の必要な登りである。息を整えながら後ろを振り返ると、六日町の市街地が眼下に広がっている。枡形山が、正面に頭を持ち上げている。太陽は照っていないにもかかわらず、気温が高く、あっというまに大汗が吹き出ていた。
 空が少し明るくなったと思ったら、GPSの信号も入り始めた。衛星放送の受信でも、雷雲や雹の時に、受信が乱れて砂嵐状態になるので、今回も上空で雷雲が発生していたのであろう。GPSの性能の限界というよりは、このような時には、登山を避けるべきなのであろう。とにかく、山頂へと急ぐことにした。
 坂戸山の登山者は、運動靴に、ペットボトルを一本片手に持った姿が普通である。いつものようなツエルトからコンロまで持った登山装備一式を背負った私は、他の登山者にあっさりと追い抜かれてしまった。普通の山なら、そう簡単には追い抜かせないのだが、このような坂戸山や角田山といった体力作りの毎日登山の山では、分が悪い。
 南西に伸びる寺ヶ鼻遊歩道が合わさると八合目で、もうひと頑張りになる。鎖のかかるちょっとした岩場が現れ、ここを乗り越すと、坂戸山の山頂に到着する。先客も数名おり、ひと休みしている間にも、到着する者がいた。六日町市街地を見下ろすと、雲がかかって見通しは悪くなっていた。631標高点の大城まで行きたかったのだが、天気が問題で、次回の課題にすることにした。
 先日歩いた裏坂戸遊歩道への道に進む。郭跡の広場を抜けて下っていくと、桃之木平への遊歩道が左に分かれる。しっかりた道であった。少し下ると、広場に出て、桃之木平の標識が置かれていた。広場は、わらびの葉に覆われていた。下方に、スキー場跡と思われる草地の斜面が見えて、進む方向は判った。ここからは、ジグザグの下りが始まった。このコースを登るのもなかなか大変そうであった。堰堤の脇に下り立つと、その先で、T字路に出た。正面には杉の大木が立っていたので、ここが一本杉のようであった。左に進むと、薬師尾根の中ほどに戻ってしまうようなので、右手に進むことにした。桜の木も並ぶ林道を下っていくと、スキー場に出て、左の木立に入ると、御館跡となり、その先で駐車場に戻ることができた。
 車に戻ってしばらくすると、激しい雨が降り始めた。この後の山行計画を考える必要があった。前日から、新潟の下越方面は、梅雨末期の集中豪雨に見舞われていた。東京は、日差しがあって、35度の猛暑になっていたようである。これから梅雨前線は南下するというが、日本海側よりは、太平洋岸の方がまだ良さそうである。雨でも歩けるコースということで、尾瀬ヶ原を考えた。鳩待峠と沼山峠のどちらかにするか。御池の駐車場からのスタートなら、出だしはバスに乗るにしても、そのまま燧裏林道を歩けば、駐車場に戻ってくることができる。雨の中でずぶ濡れになっても、バスを待つ必要はない。もしも、天気が良ければ、燧ヶ岳を登ってから尾瀬ヶ原に下れば良い。
 小出から御池に出るには、銀山湖の湖畔を抜けるR.352が距離的には近いが、道路が開通しているかは調べていなかった。小出で温泉に入って買出しをし、シルバーラインに向かった。その手前に、道路情報の案内板があるので確かめると、福島には抜けられないとあった。後で御池側からの情報を見ると、船着場までは通行可能とのことであった。となると、現在は、平ヶ岳の登山口の鷹の巣へは御池側からは入れるが、裏ルートには入れないということになる。団体に会わずに、静かな山を楽しむことのできるチャンスなのだが、まずは梅雨が明ける必要がある。
 R.352は、通行可能でもあまり通りたくないルートなので、六十里越のR.252を通ることに問題はない。最近まで、道路工事のため一方通行の信号が連続していて、いらいらする道であったが、数箇所に減っていて、ドライブもしやすくなっていた。
 峠越えは問題なかったのだが、只見の町を過ぎたところで、激しい雨となり、路肩に車を停めて、様子見をする必要があった。明日の天気もあまり期待できそうもなかった。桧枝岐の車道脇に設けられたキャンプ場では、雨の中、炊事棟の屋根の下で食事をするキャンパーで賑わっていた。山中ならともかく、この雨の中で、テント泊はしたくはない。
 御池の駐車場は、四分程度の入り込みであった。さすがに三連休とあって山小屋に泊まっている登山者も多いようである。夜中に空を見ると、星が出ていてひと安心したものの、夜明けから雨が降り出した。燧ヶ岳は諦めになり、最悪の場合、尾瀬沼からの引き返しでも仕方ないかと思うようになった。
 5時に目を覚まして、始発のバスに乗り込む準備をした。切符を買っている間にも、バスが出発していったが、何台ものバスが待機していた。20分程で、沼山峠の駐車場に到着する。バスを降りると、本降りの雨になっていた。半観光地なのか、最近の山では見かけられないビニール合羽に運動靴のハイカーが目立った。自分自身の装備は、ゴアの雨具の上下に折りたたみ傘は当然として、スパイク長靴を履いていた。かなりの長時間歩行なので、長靴では足が痛くなる可能性があるのだが、雨続きで、登山道はどろどろになっているはずで、しかも濡れた木道は滑りやすいはずであった。大勢の登山者がいたが、長靴を履いた者は誰もいなかった。昔、といっても40年ほど前になるが、長靴がキャラバンシューズと並んで尾瀬での定番の履物であったのだが。沼山峠を越して大江湿原へ続く道は、完全に木道が整備されていた。といっても、段差のある所では、間のステップに水溜りもできており、運動物には厳しい状態であった。
 大江湿原に到着してみると、ニッコウキスゲにヒオウギアヤメの花が出迎えてくれた。タテヤマリンドウも咲いているようであったが、花は閉じていた。この天気では、リンドウ系は、閉じたままであろう。カメラをのぞくと、ニッコウキスゲには、雨粒がついて輝いていた。ニッコウキスゲの花は楽しめたものの、大江湿原は黄色の絨毯とまではいっておらず、盛りには少し早いようであった。
 長蔵小屋の手前で、沼尻へ続く湖岸の道に進んだ。登山者も少なくなった。木立の間から垣間見る湖畔には、ヒオウギアヤメの群落が広がっていた。
 沼尻の休憩所で、朝食のための休みにした。昔あった沼尻と三平下を結ぶ渡し舟の桟橋も朽ちかけて、自然の風景に溶け込んでいた。この渡し舟や貸しボートに乗ったことのある者も少なくなって、忘れられようとしている。店員が、「天然水で入れたコーヒーはいかがですか」と売り込んでいた。そこらで汲んだ水なら、当然天然水であろう。
 雨はいつしか止んでおり、沼尻周辺の湿原では、タテヤマリンドウのようやく開いた花を見ることができた。
 沼尻から下田代十字路へは、木立に囲まれた、見晴らしの無い道が続く。途中の白砂湿原は、この中に開けて、ほっと一息付ける場所である。
 交差する登山者も多くなった。すれ違いのために木道から下りて道を譲る必要も出てくるが、木道から外れると、泥んこ状態になっていた。連休とあって、家族連れも多かった。白砂峠をはじめ、小さなアップダウンもあり、一様に疲れた表情を見せていた。
 下田代十字路に到着して、小屋に挟まれた広場を抜けると、視界が一気に広がる。尾瀬ヶ原は彼方まで続き、その先に至仏山が姿を見せていた。休日なら、食事を取りながら休む登山者で、賑わっているのだが、閑散としていた。雨に濡れた風景に相応しい、静かな湿原であった。
 山の高みは雲で覆われていたので、下を向いて花を探しながら歩き出した。尾瀬ヶ原でもニッコウキスゲが咲き乱れていた。木道の周囲の草地を眺めると、ピンクのトキソウが群落状態で花を開いていた。その中に、サワランが鮮やかな赤紫のアクセントを付けていた。
 竜宮まで歩き、そこの十字路の広場に腰を下ろして、大休止にした。再び雨が降り続くようになっていた。オゼコウホネなのかヒツジグサなのだろうか、水草の葉を浮かべた池塘の水面に、雨の波紋が刻まれていた。
 もっと尾瀬ヶ原を歩いていたかったが、ここから御池までは、長い距離が残されている。ヨッピ橋方面に進んで、帰りを始めた。拠水林に沿って木道は続く。この付近も、小さな池塘があり、楽しめるところである。
 ヨッピ橋からは、東電小屋に向かう。この付近の湿原では、少し前になるが、ハイカーがクマに襲われたことがあり、クマ避けの鐘が吊されていた。
 東電小屋からは、温泉小屋へ。途中の吊り橋は、老巧化しているとのことで、増水時には渡れないようだが、無事に通過することができた。
 温泉小屋の休憩所は、三条ノ滝の入口であり、この先は、足場の悪い急斜面が続くので、休む者も多い。この先、木道は無くなり、泥道を歩くことになった。長靴の威力で、泥道は気にはならなかったが、泥のはねで、雨具のズボンは泥だらけになっていた。
 晴れていると、渋滞する区間であるが、登山者も少なく、自分のペースで、進むことができた。鎖もかかる岩場を下りると、平滑ノ滝の見晴らし台になる。岩の上に立つと、緩やかな岩の上を流れ落ちる滝が見える。
 三条ノ滝へは、さらに高度を下げていくことになる。燧裏林道への登り口を過ぎると、枝尾根の下りになって、展望台に到着する。足場が傾いて滑りそうな階段を鎖で確保しながら下ると、急斜面のテラスに出る。いつもは賑わって、写真撮影もままならぬのだが、数人しかおらず、ゆっくりと滝と向かい合うことができた。雨続きであったため、水量も多く、川幅一杯に、一条になって落ちていた。迫力のある眺めであった。
 三条ノ滝から少し戻った所の分岐から燧裏林道に向かう。急登が続き、息が上がってしまう。渋沢温泉への道が分かれると、その先で、燧裏林道に乗ることができる。この付近の登山道は、地図の破線とかなり違っていた。
 燧裏林道は、ブナ林が美しいのだが、雨も本降りになっており、ひたすら足を速めることになった。途中、渋沢橋という新しい吊り橋がかかっていた。以前は、雨の時に渋沢の徒渉が危険であったので、整備されたようである。
 横田代に到着すると、御池方面からのハイカーにも出会うようになった。燧ヶ岳の山麓に広がる静かな湿原である。この後は、大きな上田代の他に小さな湿原も連続するようになる。
 御池湿原に出ると、遠くにバスの音も聞こえるようになって、ゴールも近い。
 車に戻って、着替えを急いだ。本降りの雨の中、軽装のハイカーがずぶぬれになって、バスから下りてきていた。
 いつものように檜枝岐の駒の湯に入って、山のしめくくりとした。天気予報を聞くと、翌日も激しい雨に見舞われそうであった。この日充分歩いたということで、家に戻ることにした。

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