焼石岳、早池峰山、栗駒山

焼石岳、南本内岳
早池峰山、鶏頭山
栗駒山、秣岳


【日時】 2006年6月23日(金)〜25日 前夜発3泊3日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 23日:晴一時雨 24日:曇り 25日:晴

【山域】 焼石連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 焼石岳・やけいしだけ・1547.9m・一等三角点本点・岩手県
 南本内岳・みなみほんないだけ・1492m・なし・岩手県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新庄/川尻、焼石岳/焼石岳、石淵ダム
【コース】 中沼コース
【ガイド】 アルペンガイド「八甲田・白神・早池峰」(山と渓谷社)、新分県登山ガイド「岩手県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「栗駒・早池峰」(昭文社)
【温泉】美妙の湯やけいし館 400円

【山域】 早池峰山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 早池峰山・はやちねさん・1913.6m・一等三角点本点・岩手県
 中岳・なかだけ・1679m・なし・岩手県
 鶏頭山・けいとうさん・1445.1m・三等三角点・岩手県
【地形図 20万/5万/2.5万】 盛岡/早池峰山・川井/早池峰山、高檜山
【コース】 河原坊より岳へ
【ガイド】 アルペンガイド「八甲田・白神・早池峰」(山と渓谷社)、新分県登山ガイド「岩手県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「栗駒・早池峰」(昭文社)
【温泉】 ぶどうの湯 500円

【山域】 栗駒山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 栗駒山・くりこまやま・1627.4m・一等三角点本点・岩手県、宮城県
 秣岳・まぐさだけ・1424.0m・三等三角点・秋田県
【コース】 須川温泉より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新荘/秋の宮/栗駒山、桂沢
【ガイド】 秋田の山登り50(無明舎出版)
【温泉】 須川温泉・栗駒山荘 600円

【時間記録】
6月22日(木) 20:30 新潟=(R.7、R.113、赤湯、R.13、山形、山形蔵王IC、山形自動車道、東北自動車道 経由)
6月23日(金) =13:00 長者原SA  (車中泊)
4:30 長者原SA=(水沢IC、R.397 経由)=6:50 中沼コース登山口〜7:12 発―7:40 中沼―8:06 上沼―8:30 つぶ沼分岐―8:48 銀明水―9:55 姥石平―10:32 焼石岳―11:07 分岐―11:25 南本内岳―11:44 分岐―12:08 東焼石岳分岐―12:22 東焼石岳―12:36 東焼石岳分岐―12:49 姥石平〜13:10 発―14:00 銀明水―14:14 つぶ沼分岐―14:35 上沼―14:55 中沼―15:21 中沼コース登山口=(R.397、水沢IC、東北自動車道、釜石自動車道、東和IC、大迫、早池峰ダム 経由)=19:00 岳  (車中泊)
6月24日(土) 5:15 岳駐車場=(バス)=5:32 河原坊―6:20 頭垢離―7:14 打石―7:49 早池峰山〜7:57 発―9:25 中岳―10:43 水場入口―12:10 鶏頭山―12:35 ニセ鶏頭山―12:45 七折ノ滝分岐―13:04 避難小屋〜13:25 発―14:21 鶏頭山登山口―14:32 岳駐車場=(早池峰ダム、大迫、東和IC、釜石自動車道、東北自動車道、平泉前沢IC、厳美渓、R.342 経由)=19:30 須川温泉  (車中泊)
6月25日 5:16 須川温泉登山口―5:35 名残ヶ原―5:58 苔花台―6:23 昭和湖―6:43 賽走り―7:02 分岐―7:23 栗駒山〜7:32 発―7:43 分岐―9:33 秣岳〜9:45 発―10:30 秣岳登山口―11:09 須川温泉登山口=(R.398、R.459、R.47、R.345、R.7 経由)=18:30 新潟

 焼石岳は、栗駒国定公園の北部に位置する山である。積雪量が多いために雪田湿原が発達して、豊富な高山植物のお花畑が広がることで有名である。山名は、薬師岳が転じたという説と、山頂付近に焼けたような石が散乱することに由来するという説がある。

 早池峰山は、女人禁制の山岳宗教の山として古くから開かれ、登山口には宿坊が並び、柳田国男の遠野物語と結び付いて、どこか謎めいた遥かみちのくの山といったイメージが強い。しかし、最近では、日本百名山の山として、ハヤチネウスユキソウに代表されるお花畑の山としての人気が高まってきている。

 栗駒山は、秋田、岩手、宮城の三県にまたがる独立峰である。高山植物に彩られ、山麓には多くの温泉が点在していることから人気の高い山になっている。秣岳は、栗駒山の西の秋田県内にあるピークで、栗駒山から秣岳を結ぶ天馬尾根には小湿原が連なっている。

 梅雨時は、東北の山は残雪と花が美しい季節である。梅雨の影響も6月中は少なく、意外に晴天に恵まれる。この週末は、良い天気になりそうな予報がでた。先週の講習会の代休をとって三連休となったので、東北の花の山巡りに出かけることにした。第一目標は、早池峰山。日本百名山巡りの一環として、1993年7月3日に登っているが、この時は、雨の中の強行登山で、花を眺める余裕は無かった。再訪の時には、鶏頭山への縦走路を歩きたかった。このコースは、コースタイムの合計が9時間程になるため、岳発のシャトルバスは、始発に乗りたい。新潟前夜発では、早朝に早池峰山に到着することは難しいため、二日目に歩くことにした。初日は、これも花で人気の高い焼石岳を登り、三日目は、帰りの時間も考えて、新潟よりの栗駒山を登ることにした。
 偶然であるが、これらの三山は、いずれも一等三角点本点ピークである。一等三角点の置かれている山には、例外はあるものの、地元で名山として親しまれている山が選ばれていることが多い。
 高速料金の節約のために、小国から山形に出て、そこで高速に乗った。東北自動車道に出て、少し進んだ所のパーキングで夜を過ごしたのも、いつもの通りであった。
 早朝目を覚まし、車のエンジンを掛けると、サッカーの放送が流れてきた。日本対ブラジル。一次予選突破のために、一縷の望みをかけての試合である。何対何かを確かめるまもなく、ブラジル、ゴール。ここまで日本は、1点のリードをしていたという。僅かな時間の夢を見るのを逃したようである。目が覚めて、高速を北に向かって進んだ。水沢で高速を下りて、国道397号線に進んだ。この国道脇には、石淵ダムがあるが、現在尿前ダムが建設中である。
 ダムの建設現場の手前で、付け替え道が新しく設けられている。トンネルを二つ越して、下り坂に入った所で、焼石岳への林道の付け替え道が始まる。ここには、迷う心配の無い大きな標識が立てられている。尿前渓谷に一旦下降して、橋を渡った後に、再び急坂の上りで高度を取り返す。その先は、未舗装であるが、そう問題の無い林道が続く。途中で、登山者を乗せていったと思われる、戻りのタクシーとすれ違った。
 平日とあって、駐車場には、三台の車があるだけで、5名のグループが出発の準備をしていた。
 焼石岳への登山道は、樹林帯の中の道で始まる。緩やかな尾根に乗って登っていくと、早くも残雪が現れて、その先で中沼の畔に出た。豊富な残雪に彩られた山の稜線が湖面に影を落としていた。沼の畔を回り込むと、リュウキンカとミズバショウの群落が広がっていた。
 中沼から別れてひと登りすると、上沼に到着した。湖畔に草地が広がっている静かな沼であった。ここからは、沢沿いの登りとなったが、残雪に埋もれているところも多く、足元に注意が必要であった。
 登山道と残雪を交互に伝う歩きになった。目印の乏しい斜面をトラバースも交えながら登っていくため、登山道の続きを、残置テープを探して、目で追わなければならなくなった。焼石岳は、人気の山で、残雪の上に足跡がはっきりついていると思ったが、登山者の少ない平日の間に消えてしまったようである。コースを示すテープもはっきりしないところもあった。平日に歩こうとする場合は、赤布も用意して、慎重に歩く必要がある。
 GPSは、地図の登山道が正確であることがまず必要であるが、歩いた軌跡を比べてみると、違っているところは僅かであった。残雪期には、GPSが役立つコースとしえる。
 つぶ沼との分岐付近は、一面の雪原となって、コースが判りにくくなっていた。木の上にコース名を書いた旗が吊されていた。
 つぶ沼との分岐から登りを続けていくと、銀明水に到着した。岩の間から清水が湧き出ていた。ひしゃくも置かれており、汲んで飲んでみた。冷たく美味しい水であった。このコースは水には不自由しないコースである。
 銀明水の上が、このコース一番の急な雪の斜面になっていた。右手にトラバースするような登りになった。スプーンカットもできており、滑落の危険性は少なかった。もっとも、下山の時には、中高年の夫婦が、足元もおぼつかないような感じで歩いていたので、ストックと軽アイゼンは持つべきであろう。
 沢の流れをからみながら登っていくと台地に出た。左手に稜線を連ねるのは横岳で、焼石岳は台地の前方に丸い山頂を見せていた。花も多くなり、ハクサンイチゲが目立つようになった。
 姥石平で、経ヶ岳への縦走路が分かれる。焼石岳の山頂も目の前で、ハクサンイチゲのお花畑を前景にした姿は美しかった。ミヤマシオガマやヒナザクラの花も見られ、写真を撮りながらの歩きになった。
 焼石岳への登りに取りかかるところには、泉水沼が残雪に半ば埋もれて、湖面を広げていた。
 ここからは、急斜面を一気に登れば、山頂到着となるが、キバナコマノツメなどの花の写真を撮りながらののんびりした歩きになった。山頂を目の前にしてぐずぐずしていたのが悪かったのか、黒雲が広がってきて、雷鳴も遠くで聞こえるようになった。山頂に到着した時は、展望は無くなっていた。
 一気に下って戻るべきかと思ったが、歩いているうちに天気が回復することを期待して、南本内岳への道に進んだ。山頂から下っていくと、雨が降り出した。すぐ止むかと思って傘をさしたが、すぐに下半身がずぶぬれになって、雨具を着るタイミングを失った。
 北斜面には岩が積み重なり、岩の上を歩くようになった。これが、焼石岳の名前の由来かもしれない。下りきった鞍部は、焼石岳、大森山方面と南本内岳、姥石平方面への道が合わさる十字路になっている。残雪の斜面を登っていくと、池の畔に出た。ヒナザクラの群落が広がっていたが、雨にうなだれていた。緩やかな登りを続けていくと、ならだかな山頂に到着した。最高点を越して少し下ったが、山頂標識のようなものはないので引き返した。後でガイドブックを読むと、さらに下っていった尾根上の小ピークにあるようであった。少々わりきれない感じもするが、南本内岳の山頂は踏んだことにしておこう。
 分岐まで戻り、焼石岳の山頂下の台地を姥石方面に戻った。姥石平に戻る前に、東焼石岳への道に進んだ。東焼石岳へは緩やかな登りであったが、登山道脇に広がるハクサンチゲやミヤマシオガマ、ムシトリスミレの群落が素晴らしかった。焼石岳の登頂が目的でも、姥石平から東焼石岳までは足を延ばすべきである。
 花を眺めながら姥石岳に戻ると、雨も上がって、青空が再び広がるようになった。腰を下ろして、山や花の眺めを楽しみながらビールを飲んだ。他に登山者はおらず、楽園を独り占めすることができた。
 焼石岳の周回で意外に時間がかかっており、下りを急いだ。雨のためか、登山道は沢状態になっていたが、長靴を履いているため、、水の中を歩くのは気にならなかった。
 焼石岳の後は、早池峰山に向かった。距離的にも近く、花の名山として名高いこの二つをセットで登るのは都合が良い。早池峰山に登ったのは、1993年と年月が経っているが、隣の薬師岳には2003年に登っているので、道順は判っている。
 岳に到着すると、登山者用の大きな駐車場が設けられていたが、車は一台も停められていなかった。夜間は、河原坊の駐車場まで入れるので、前夜到着で岳の駐車場に車を停める者はいない。登山者なのか、先に進んでいく車が通過していった。静かに夜を過ごすことができた。
 始発のシャトルバスは5時半である。4時半頃から、通行規制やシャトルバスの切符売りのスタッフが集まってきて、起き出すことになった。5時を過ぎると、登山グループも到着するようになった。団体が乗った観光バスも到着して、騒然とした雰囲気になってきた。シャトルバスを待っていると、5時15分頃に路線バスが到着し、思わぬ早い時間での出発になった。
 河原坊には、団体が出発準備をしていたが、先に歩き出すことができた。すぐに沢の徒渉となり、飛び石伝いに渡ることになった。この先も徒渉が数回あり、初心者を含んだグループでは手間取りそうであった。
 沢沿いの登山道の脇には、山野草に属するのであろうが、花も見られたが、光も充分でなく、先を急ぐことにした。先行のグループも追い抜いて、この日の登山者の先頭に立つことができた。
 ガレた沢の中の登りになった。振り返ると、後から登ってくる登山者を見下ろすことができた。小田越を挟んで向かい合う薬師岳が、丸みを帯びた山頂を見せていた。
 頭垢離で沢から離れて、右手の尾根に取り付いた。尾根の左右は草付きになっていたが、早くもという感じで、ハヤチネウスユキソウが現れた。咲き始めのようで、産毛に梅雨を乗せ、朝日に輝いていた。ミネウスユキソウやホソバヒナウスユキソウに比べると大型で、気品に満ちた花である。先回は、雨の中の登山で、写真も撮れなかったことから、ようやく懸案がかなえられた。
 尾根沿いには、ミヤマオダマキやミヤマシオガマ、ミヤマアズマギク等の花も多く、カメラを構えながらのゆっくりした登りになってしまった。団体は引き離していたが、単独行数名には、追い抜かれることになった。
 見上げると、大岩が屹立しており、その上の稜線部はガスに覆われていた。高度が上がっていくと、ハヤチネウスユキソウも蕾状態になっていった。ハヤチネウスユキソウの盛りは7月に入ってからのようで、今回は少し早いであろうと思っていたが、混雑を避けるのと、梅雨の合間の晴天の機会を捉えての山行なので、これで充分ともいえる。
 岩の間をぬう登りになった。ルートが判りにくくなり、コースの左右に張られたロープを目印に、その間を歩くようになった。打石や千丈ヶ岩といった巨岩を見ながら登っていくと、稜線も近づいてきた。岩の間には、黄色のナンブナズナの群落が広がり、しばしば、足を止めさせられた。一枚岩に鎖が掛けられて、岩に彫り込まれた浅い足場を頼りに登る岩場が現れたが、よく見ると、脇に迂回路が付けられていた。おそらく、宗教登山の際の、肝を冷やさせる修行の場になっていたのであろう。
 早池峰山の山頂はガスに覆われて、展望はなかった。山頂の神社の回りには、奉納された剣が並んでいた。時間も早く、小田越から登ってきたらしい、数名の登山者がいるだけであった。
 ひと休みの後に、鶏頭山への縦走路に進んだ。岩の上を渡り歩く道が続いた。ロープが張ってあるので、ガスの中、コースを見定めるのに役立った。緩やかな下りが続いた。鞍部付近まで下りると、ハヤチネウスユキソウと思われる群落も見られたが、時期が早かった。ハヤチネウスユキソウの盛りには、一般的なコースは登山者が多くて、写真撮影もままならないかもしれないので、この付近まで足を延ばすのも良いかもしれない。
 鞍部から中岳にかけては、樹林帯の中に入って見通しは利かなくなる。最高点に出て、その岩場の上に立つと展望は広がったが、振り返る早池峰山の山頂はガスに覆われていた。中岳の山頂標識は、この最高点ではなく、さらに進んで少し下ったところの岩場の中に置かれている。中岳一帯は、大岩が積み重なった中を、乗り越していく道である。岩の上で、どのように下りるのか、考えるようなところもあった。樹林帯に登山道を切り開くよりは、岩の上を飛び越えていった方が簡単ということで、このようなルートになったような感じである。中岳の先で、通常なら鎖が掛かっているはずの、足場の悪い岩場の下りがあり、要注意である。
 中岳から先は、オオシラビソの中の薄暗い道が続いた。登山道は、ぬかるんで泥沼状態であった。登山靴が泥だらけになるのはかまわないのだが、靴底のパターンを泥が塞いでしまい、濡れて滑りやすくなってしまった。時折現れる露岩の上に立つ必要があるのだが、靴底が滑りやすく、怖い状態になってしまった。
 樹林帯の中の登山道沿いには、意外に花も多かった。サンカヨウ、ミヤマエンレイソウ、ツバメオモトに加えて、オサバグサも現れた。オサバグサは、薬師岳に多いようだが、この縦走路でも見ることができた。
 鶏頭山が近づいたところで、草原が広がるようになった。眼下には、岳の集落を見下ろすこともできるようになった。この付近の岩場にもハヤチネウスユキソウが咲いており、目を楽しませてくれた。
 鶏頭山の山頂に到着して、一息ついた。縦走も順調に歩いてきて、下山にも問題は無さそうであった。昼になっており、大休止としたかったが、風が冷たかった。もう少し下ってから休むことにした。
 緩やかな尾根を辿ると、ニセ鶏頭山に到着した。鉄梯子を登ると、岩峰の上に山頂標識が置かれており、お地蔵様が安置されていた。梯子での下りを続けていくと、草付きのお花畑が広がり、七折ノ滝への道が分かれた。傾斜が緩やかになると、ブナ林が広がるようになり、鶏頭山避難小屋に到着した。
 中をのぞくと、きれいな避難小屋であった。小屋の脇に腰をおろして、昼食とした。この先は、ブナ林の中を大きく折り返しながら下る道となり、楽な歩きになった。登山道脇には、マイヅルソウやギンリョウソウの花を見ることができた。
 車道に飛び出した後は、僅かな歩きで駐車場に戻ることができた。
 縦走路を歩いていたのは、逆方向で夫婦連れ、途中で追い抜いた単独行が一人。鶏頭山までと思われる二人連れがいただけであった。岳から始発のシャトルバスに乗れば、丁度良い1日コースなので、もっと歩かれても良いコースと思われる。
 大迫で温泉に入り、栗駒山を目指した。昨年の7月17日にも登ったばかりであるが、花の山巡りとしては、家への道順としても都合が良く、少し時期が違えば、花も違っているはずである。
 須川温泉の登山口には大駐車場が設けらられているが、須川湖の駐車場で夜を過ごした。ここにはトイレも設けられており、野宿には都合が良い。
 快晴の朝となり、湖面に影を落とす秣岳を眺めることができた。須川温泉の登山口に車を移動させて歩き出した。しばらくはコンクリートで固められた遊歩道が続く。名残ヶ原では、湿原の中に木道が続いており、栗駒山の山頂や、剣岳の岩壁の眺めが広がっている。湿原にはワタスゲが白い毛玉をゆらしていた。タテヤマリンドウもあるようであったが、まだ花を閉じていた。リンドウは、太陽の光に敏感に反応して閉じたり開いたりするのがやっかいである。
 湿原を抜けて緩やかな登りを続けていくと、地獄谷に到着する。左手の谷からは、噴気も上がっており、ロープで登山道以外に立ち入らないようにしてある。硫黄臭さが薄気味悪く、足早に通り過ぎた。その上で、昭和湖に到着する。コバルトブルー色をした湖面に、残雪を抱いた山の影がうつっていた。
 ここからは、傾斜も少し増し、三日目となって疲れた足に力を込める必要がでてきた。登山道の周辺には、ツマトリソウやイワカガミの花が目立っていた。稜線も近づいたところで、ヒナザクラのお花畑が広がっていた。先回もここで、ヒナザクラを見ることができたが、今回の方が盛りのようであった。
 稜線上の天狗平に出ると、ここは登山道が合わさる十字路になっている。まずは、栗駒山の山頂をめざした。低灌木の中に続く登山道が続いた。展望が広がり、雲海の上に頭を出した焼石岳や早池峰山を眺めることができた。振り返ると、秣岳になだらかな稜線が続き、その向こうには高松岳から虎毛岳に至る稜線が横たわり、その奥には鳥海山が美しい富士山型の姿を見せていた。
 到着した栗駒山の山頂には、誰もいなかった。これで三回目の山頂であるが、ここからの展望が開けていたのは、今回が初めてであった。
 天狗平に戻り、秣岳への道に進んだ。1673mピークへは緩やかな登りであるが、最高点を越した先は、標高差250m程の長い下りが続く。鞍部から登り返し始めると、草原が広がるようになる。花を期待しながら歩いていくと、タテヤマリンドウが一面に咲いているのに出会うことができた。焼石岳にしても早池峰山にしても、あれだけ多くの種類の花を見てきたにもかかわらず、タテヤマリンドウを見るのは、栗駒山がはじめてであった。小湿原が続き、その中に敷かれた木道を歩いていく気分は、爽快であった。
 最後に急斜面を登り切ると、秣岳に到着した。ひと休みの後に下山に移ると、団体とすれ違うようになった。小ピークとの鞍部からトラバースに入るところでは、残雪の横断が二カ所現れて、時期によっては、短い距離ではあるが、アイゼンが必要になったかもしれない。この日は、足場もしっかり刻まれており、問題は無かった。
 ブナ林の中のつづら折りの道を下って行くと、秣岳の登山口に到着した。後は、40分程の車道歩きを頑張ることになる。車道脇には多くの車が停められており、ヒメタテノコ採りに大勢が入っていた。
 駐車場に戻り、このコースの魅力の一つである栗駒荘の温泉に向かった。
 温泉に入って気分も新たにし、後は新潟までのドライブを頑張ることになった。

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