大段山、大戸沢岳

大段山
大戸沢岳


【日時】 2006年4月15日(土)〜16日(日) 各日帰り
【メンバー】 15日:単独行 16日:6名グループ
【天候】 8日:晴 9日:曇り

【山域】 飯豊山塊
【山名・よみ・標高三角点・県名】
 大段山・おおだんやま・895.1m・三等三角点・新潟県
【コース】 林道長走線より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/大日岳/日出谷
【ガイド】 新潟の低山藪山(白山書房)
【温泉】 西会津ロータスイン 400円

【山域】 会津駒ヶ岳
【山名・よみ・標高三角点・県名】
 大戸沢岳・おおとざわだけ・2089m・なし・福島県
【コース】 下大戸沢出合より滝沢橋へ周回
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/檜枝岐/檜枝岐、駒ヶ岳
【ガイド】 なし
【温泉】 駒の湯 500円

【時間記録】
4月15日(土) 6:10 新潟=(磐越自動車道、津川IC、R.459、水沢、林道長走線)=7:00 棒掛山林道分岐〜7:10 発―7:34 除雪終点―8:05 上ノ峠―9:58 大段山〜10:20 発―11:46 上ノ峠―12:06 除雪終点―12:42 棒掛山林道分岐=(R.459、宝川、R.49、会津坂下、上三寄、R.118、小野、R.121、会津田島、R.289、山口、R.401、内川、R.352 経由)=10:00 高畑スキー場  (車中泊)
4月16日(日) 7:10 高畑スキー場=(R.352 経由)=7:40 下大戸沢スノーシェッド―9:18 1366m標高点―10:00 1553m標高点〜10:08 発―12:00 大戸沢岳〜12:34 発―13:03 1738m ―13:48 1524.1m ―14:35 テニス場脇駐車場=(R.352、内川、R.401、山口、R.289、会津田島、R.121、小野、R.118、上三寄、新鶴PA 経由)=19:10 新潟

 大段山は、飯豊の最高峰大日岳の西隣にある烏帽子山から南西に延びる尾根上のピークである。この裏川と長走川に挟まれた稜線上のピークとしては、棒掛山が、登山道の無い山としては登山者もそこそこいるのに対し、東隣の筆塚山は、注目されることは少ない。

 大戸沢岳は、会津駒ヶ岳の東隣のピークである。福島県では、燧ヶ岳の四つのピークに続いて、会津駒ヶ岳、飯豊山、大戸沢岳という順番になっている。2000mを越す標高を有しているが、登山道が無いことから、一般登山者の知名度は低い。しかし、山頂一帯に広がる大雪原によって、山スキーヤーには知られた山になっているようである。

 日曜日に、会津駒ヶ岳の東隣の大戸沢岳に登る計画が入った。土曜日に、会津の山を考えたが、晴の天気予報が出て、飯豊の眺めに心が動かされ、大段山を登ることにした。
 1999年3月28日に棒掛山に登って、飯豊の眺めを楽しんだ際に、隣の大段山が気になった。大段山は、向小荒から登った報告が見られるが、より標高差の少ない上ノ峠から登った記録は見あたらない。林道長走線の除雪状態が問題になるが、4月に入れば、棒掛山への林道分岐までは除雪が済んでいるはずであった。林道への雪崩も怖いが、ここのところの雨や暖かい陽気で、落ちる雪は落ちているはずであった。時期も良さそうということで、大段山へ出かけることにした。
 津川で高速を下り、阿賀野川沿いのR.459を走り、水沢の集落から林道長走線に入った。路肩に雪が残っていたものの、除雪が行われており、車の走行に問題は無かった。部分的に舗装もされている林道であったが、道幅は狭いため、車の運転には神経を使った。つづら折りを登り終えると、左に棒掛山の南に通じる林道が分かれた。この分岐には、駐車スペースがあるため、ここから歩き出すことにした。この先も除雪が行われていたが、路面の状態も知らないし、急に除雪終点となって、車のユーターンもままならないということもある。林道歩きは覚悟していたので、ここまで車で入れれば、充分であった。
 ビールノカッチから落ち込む山の斜面は、雪解けが進んで、黒い地肌が目立っていた。谷向こうの竹ノ倉山一帯の雪は完全に無くなっていた。谷を巻いていく道が続いた。林道脇にはフキノトウが、群落状態で頭を出していた。取るのは帰りにして、先へ急いだ。
 大きな砂防ダムが作られており、道路の上を水が流れ落ちていた。水の深さは浅いものの、足を蕗入れると、勢いよく靴の上まで水しぶきが上がった。
 谷を巻き終わってつづら折りが始まると、普通車では通過が難しい道路の崩壊部が現れる、その先で突如という感じで除雪が終わっていた。少し手前の路肩に二台の車が停められていた。ここまでは25分の歩きであったので、車の方向転回や駐車場所を探す手間を考えれば、それほど時間がかかったわけではない。
 残雪歩きが始まった。雪は所々潜ったが、つぼ足で充分歩ける状態であった。林道は、多くのカーブを繰り返しながら延びているので、ショートカットしながら登り続けた。後で、GPSのログを見返すと、なかなか良いコースで登っていた。
 30分の歩きで、上ノ峠に到着した。直進すれば、峠から下って長走川に下り立つことができ、吊り橋を渡って蒜場山へ登ることができる。先行者の足跡があったので、あるいは蒜場山かと思ったが、左手の尾根に取り付いて、ビールノカッチ経由で棒掛山を目指したようである。
 大段山へは、右にコースを帰る。この峠から大段山の山頂までは、標高差300m程のものである。水平距離は3km程で少し長いが、峠まで上がれれば、第一関門は突破したことになる。
 緩やかな登りの雪稜歩きが始まった。峠周辺には杉林が広がっていたが、すぐにナラやブナの雑木林が広がるようになった。尾根沿いは雪が消えて藪が出ていた。途中で尾根が痩せて藪に入ると、赤い境界見出し表が埋め込まれて、刈り払いが行われていた。もっとも、ヤブコギは僅かで、ほとんどは雪の上を歩くことができた。
 右手には、笠倉山の鋭峰を従えた御神楽岳や、川内山塊の眺めが広がっていた。振り返ると、ビールノカッチから続く棒掛山の眺めを楽しむことができた。尾根から一段下がった所を歩いていたため、飯豊の眺めがなかなか得られなかったが、小ピークに登ると、真っ白な雪をまとった蒜場山の眺めが広がった。目的の大日岳は、山の陰になって、なかなか全容を見せなかった。
 小ピークを乗り越していくと、大段山の眺めが広がった。黒木に囲まれて、なだらかな山頂を持つ山である。峠を挟んで向かい合う蒜場山と比べると、平凡な山容であるが、未踏のピークとあっては、どのような山頂が待ちかまえているか楽しみである。最後は、200m標高の登りで、大段山の山頂に到着した。
 登り着いた小ピークの先に、小さなピークがあり、そこが山頂であった。すぐ手前に、飯豊方面の遮る者のない眺めが広がっていたが、まずは山頂をめざした。山頂は木立に囲まれて、飯豊方面の眺めは一部が隠されていた。実川越しに高陽山や立石山を望むことができた。黒みが増して、雪解けが進んでいるようであった。風が冷たく、手前の展望地へとすぐに引き返すことになった。
 腰を下ろして、飯豊の眺めを楽しんだ。ここのところ続いた、立石山や二王子岳からの眺めとも違っている。手前に筆塚山が横たわっているため、谷からそのまま立ち上がるという高度感が無いのは残念であった。また、牛首山から大日岳、西大日へと、横に広がって台形にみえるのも、ボリューム感はあるが、鋭さが失われている。とはいえ、この眺めは、この山頂ならではのものである。様々な眺めを楽しめるのも、飯豊の偉大さである。大日岳の左には、盟主に従う親衛隊のように、烏帽子山が鋭い山頂を見せていた。青空が広がっていたが、春も本番のためか、どこか靄っていた。ビール片手に、独り占めの山頂の楽しさを味わった。
 帰りは、棒掛山の眺めを楽しみながらの歩きが続いた。上ノ峠から林道に戻り、後は、フキノトウを取りながらの歩きになった。このフキノトウを考えれば、車を手前に停めただけの価値はあった。
 車に戻り、林道を下るまでは、山の緊張も続く。国道に出てからは、まずは、温泉のために西会津をめざした。温泉に入った後は、会津田島で食料を買い込み、檜枝岐を目指した。翌朝の待ち合わせは、高畑スキー場であったため、スキー場の駐車場で車を停めて寝た。夜になると雨が降り出した。朝起きてみると、車の窓ガラスにみぞれ状の雪がうっすらと積もっていた。晴天の翌日の雨は、山へのモチヴェーションをはなはだ低下させてくれる。雨だったら、大戸沢岳は中止して帰ろうかと思ったが、待ち合わせの時間が近づくと、雨は止んで、山の稜線も見えてきた。こうなると、登らないわけにはいかない。
 今回は、大戸沢岳の東尾根を登り、南尾根を下る予定であった。両登山口は、歩くには遠いため、車を二台使って事前にセットする必要がある。まずは、下山口の駒ヶ岳登山口のテニスコート脇の駐車場に車を置いて、下大戸沢スノーシェッドの檜枝岐側出口に戻った。
 道路脇から雪原に上がり、下大戸沢の右岸沿いに進んだ。すぐ先で左から枝沢が入ったので、この窪地をひと登りした後、折り返して右手の尾根に乗った。スキーの跡も残されており、この尾根の利用者もそこそこにいるようであった。
 大木も混じるブナの尾根が続いた。昨日の雨のためか、雪の表面が柔らかくなっていたが、つぼ足で歩ける状態であった。体力は少し必要であったが、滑落の心配もなく、急斜面もキックステップで直登することができるので、雪の条件としては悪くはない。
 1366m標高点に登ると傾斜は緩み、ブナ林の向こうには、大戸沢岳も視界に入ってきた。雲は薄くなってきており、三岩岳方面には青空も広がってきた。
 小ピークの1553m標高点に到着すると、山頂に至る尾根が目の前に迫ってきた。ここまでは順調な歩きできたので、楽勝かなと思ったが、そうは甘くはなかった。ブナに変わって、ダケカンバが点在する雪原の登りが続いた。それも尽きて、一面の雪原が広がるようになった。そこまで登れば稜線上かと思っても、その先には同じような雪原が続いていた。標高差500mの一気に登りは、きつかった。GPSでは、50m標高ごとにマークを付けていた。時折眺めては、後どれくらいと確かめた。初心者が、「山頂まで後どれくらいですか」と聞くのと同じである。GPSは、こういった場面で、もうひと頑張りする時の助けになる。
 空に向かって登り続けていくうちに、ようやく稜線上に登ることができた。山頂へは、左に曲がって、もう少し歩く必要がある。広大な雪原が広がり、シラビソの木が、まばらに生えていた。小高い上に出て、山頂到着と思ったが、三角点は、さらに先であった。GPSを見ながら進み、到着してみると、シラビソに囲まれた、あまりピークらしからぬ所であった。通り過ぎてきた小ピークよりも低いようである。判りにくい場所であり、駒ヶ岳方面からやってきて、南尾根に下ろうとする場合、ガスに巻かれていると迷う可能性もある。
 大戸沢岳は、今回が初めての山頂であるが、以前に、会津駒ヶ岳から三岩岳への縦走の途中に通り過ぎている。残雪が思ったよりも少なく、ヤブコギになってしまったため、山頂下部をトラバースしてしまった。心残りのピークになっていたので、ようやく懸案を果たせたことになる。
 登りの途中には、青空が広がっていたのだが、稜線部はガスが流れていた。それでも、会津駒ヶ岳の山頂が、なだらかな稜線の先に、それほど遠くはない距離に見えていた。会津駒ヶ岳までは、1時間程はかかるであろうか。駒ヶ岳を経由して下山することも可能であったが、大戸沢岳からの南尾根の様子を歩くことが、今回の目的である。南尾根の状態が良ければ、会津駒ヶ岳への周回は、登山口が同じなので、次の機会に一人でも歩くことができる。
 燧ヶ岳や、長須ヶ玉山、大中小山、田代・帝釈山といった山も眺めることができた。南会津の山の展望台であった。
 山頂を吹き抜ける風は冷たかったため、少し戻った所で腰を下ろして大休止にした。
 南尾根の下りを開始すると、すぐ下で、大きな熊の足跡が横切っているのに出会った。雪に刻まれた足跡の角も立っていることから、つい最近歩いたもののようであった。春になって、クマも冬眠から醒めたようである。一旦左に進んでから、Uターンして、右手の谷へと消えていた。
 南尾根は、シラビソとダケカンバの林がしばらく続いた。歩きやすい尾根で、一気に高度を下げると、ブナ林が再び広がるようになった。この尾根にも、スキーのトレースが付けられていた。
 尾根の末端近くで、雪堤もとぎれとぎれになり、藪を歩くようになった。鉈目もあり、比較的歩きやすい藪であった。標高  m地点で尾根を離れて、雪の残っている左手の谷間を下った。雪の上には、杉の落ち葉や小枝が散乱していた。尾根を下りきると、滝沢橋上のトイレ脇に出た。雪に埋もれた田圃を左手に進んで道路に下り立った。
 まずは、駒の湯で温泉に入った後に、下大戸沢スノーシェッドに置いた車に戻った。
 今年最初の2000mピークの登頂となった。大戸沢岳は、豊富な残雪を楽しめる、4月お勧めの春山である。また登る機会もありそうに思う。
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