金鉢山(折居山)

荒川山、金鉢山(折居山)


【日時】 2006年4月1日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 曇り

【山域】 五頭山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 コマタ・こまた・630m・なし・新潟県
 金鉢山・かなばちやま・888.4m・三等三角点・新潟県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/新発田/天王、上赤谷
【コース】 花ノ木平コース登山口よりコマタ経由
【ガイド】 なし
【温泉】 月岡温泉美人の湯 500円

【時間記録】 6:30 新潟=(R.7、豊栄、月岡、荒川、剣竜峡 経由)=7:15 林道途中〜7:32 発―7:42 花ノ木平登山口―8:15 花ノ木平―8:55 穴マクリ展望台―9:28 コマタ―10:50 金鉢山〜11:00 発―11:52 コマタ―12:27 穴マクリ展望台〜12:54 発―13:24 花ノ木平―13:43 花ノ木平登山口―13:54 林道途中=(往路を戻る)=15:40 新潟

 五頭連峰は、阿賀野川と加治川の間25kmに、新潟平野の縁に沿って1000mに満たない峰々を連ねる飯豊連峰の前衛峰である。金鉢山は、一等三角点の置かれている松平山の北に位置する山で、登山道は、かつてはあったようであるが、現在では無い。山頂は、地形図に名前が記載されている三角点の置かれている888mの北峰と、890mの鋭い山頂を持つ南峰の二つのピークを持つ。藤島玄氏の「越後の山旅」によれば、北峰は折居山で、南峰が金鉢山とされている。また、地元の登山案内図では、金鉢山880mと書かれており、折居山という名前は一般的ではないのかもしれない。とりあえず、金鉢山は、山体全体の名前とし、北峰と南峰を持つ双耳峰という「コンサイス日本山名辞典」の説明をとることにする。
 最近の登山ブームもあって、松平山から五頭山、菱ヶ岳、宝珠山に至る縦走路がつながっているが、松平山以北は、手つかずであった。2005年の秋に、荒川集落の奥の荒川川源頭部に登山道が開かれた。荒川山登山道と呼ばれているが、最高点は地図には名前の記載されていないコマタ(630m)である。このコマタから金鉢山までは、1300m程の直線距離であり、残雪期にも登り易くなった。
 昨年の秋、新潟周辺の登山愛好家は、荒川山を皆登ったようなブームになった。私もこのコースを歩いたが、二王子岳や飯豊の眺めを楽しめるコースであった。もう一つの関心は、金鉢山までの状況であった。最高点のコマタに到着してみると、その背後のピークへ、刈り払い道が付けられていた。登ってみると、ピークの上で終わっていたが、そこのガレ場からは、目の前に金鉢山が見えていた。ヤブコギも大変そうで、残雪期に歩こうということにして、春を待つことになった。
 4月に入り、剣竜峡から先の林道の雪解けも進んでいるはずと、金鉢山へ出かけることにした。荒川山へは、剣竜峡登山口からと花ノ木平登山口の二つがあるが、少しでも楽をしようと200mほど標高の高い花ノ木平登山口から歩き出すことにした。剣竜峡を過ぎると、登山道をうっすらと雪が覆うようになった。前日までの冷え込みで、山では雪が降ったようである。先行車の轍があるのが心強かった。雪の吹き溜まりを一ヶ所突破して、高度を上げてへアピンカーブを越えた。再び吹き溜まりが現れて、突破できず、車はここまでとなった。不思議なことに、この終点部に車は無かった。引き返したようであるが、なんのために、登ってきたのであろう。
 歩き出してみると、10分の歩きでゲートに到着した。すぐ先が花ノ木平登山口である。登山道は新雪で覆われており、登山道が切り開いてあるといっても、ルート判断が必要な歩きになった。登山道についたわかんの跡や窪みが雪で隠されており、うっかりすると足が滑るので、歩き辛かった。
 真木山との分岐になる花ノ木平を越し、さらに552ピークを乗り越えていく道は、意外に体力を使った。その次の小ピークの穴マクリ展望台付近は、一面の雪原となり、気持ちの良い登りになった。ピークの上からは、遮る物のない二王子岳や飯豊連峰の眺めが広がっているのだが、山頂部は雲に覆われていた。帰りに晴れ間が広がっていることを期待して先に進んだ。
 西に方向を変えると、一旦下りになる。鞍部付近は崩壊地の縁になっている。幸い雪も少なく、てすり状に掛けられた鎖が出ていて、難なく通過することができた。鞍部からは、痩せ尾根の登りになる。ロープも取り付けられているが、雪に埋もれており、山頂手前は、急斜面で足場に注意が必要であった。
 荒川山登山道の最高点のコマタに到着して、ここからが、金鉢山登山の開始である。杉林の中を、刈り払いを辿りながら登る。最高点手前から、トラバース気味に下降を開始する。尾根通しは藪が濃いため、脇の斜面を歩くことになる。木立が切れると、目の前にそそり立つ金鉢山の眺めが広がった。登りに使う尾根も一望できた。
 下降の途中で、尾根の藪が刈り払われており、反対側の雪堤に出ることができた。この先、昨シーズン終わり頃の刈り払いと思われる跡が多く見られた。昨年登った時、ピーク付近は藪になっていたが、隠し道が付けられているように思われた。
 下りきった先は、幅広尾根になった。まばらな木立の雪原の向こうに見える金鉢山の眺めが素晴らしかった。以前からの雪は締まっているのだが、新雪が吹きだまり状になっており、時には膝まで潜ることになった。わかんを付けるほどではないが、歩きのペースは遅くなる。
 痩せ尾根の登りになると、雪庇の縁の通過に注意が必要になった。灌木が倒された棚の上に雪が乗っており、穴が開いているのだが、新雪が隠している。山頂が近づくと、尾根は不明瞭になり、ブナの木が点在する雪原の登りに変わった。頂上直下は、灌木もまれな一面の雪原となり、傾斜も増した。慎重なキックステップで登り続けた。新雪が表面を厚く覆っているところもあって、足の運びにも注意が必要であった。
 なんとか、登り切った山頂は、台地状で、少し先の小高いところが、三角点の置かれている北峰であった。五頭山塊南部へ続く稜線の眺めが飛び込んできた。こちらが本当の金鉢山とも言われる南峰が鋭いピラミッド型の姿を見せていた。ナイフエッジ状の稜線に加えて、雪の割れ目が何本も走っていた。あっさりと先に進むことは諦めて、ここまでとした。振り返れば、二王子岳や飯豊連峰の眺めが広がっていたが、山頂部は雲に隠されていた。暖かい陽気なら、このなだらかな山頂で、ゆっくりしたいところだが、風が冷たかった。下りも気になるので、休むのは、穴マクリ展望台まで戻ってからにした。大休止を先に延ばすとは、他の人間と一緒であったらこうはいかないが、単独での気楽さである。
 山頂からの下りは、安全のためにアイゼンを履き、上半身の安定のためにダブルストックのままにした。締まった雪の部分はアイゼンで安定したが、新雪部では、爪が食い込まない感じであった。新雪ごと足下が滑るのが恐く、横向きになって慎重に下った。結局、アイゼンは、コマタ直下の急坂を下ったところではずした。
 穴マクリ展望台まで戻ったところで、大休止とした。雲は少し薄くなったようであるが、二王子岳の山頂は隠されたままであった。先週の二王子岳での快晴は、幸運以外のなにものでもない。穴マクリ展望台は、雪の上に腰を下ろして展望を楽しむのも良い。残雪期に、ここまで歩くのも良いであろう。
 疲れた足で下っていく途中、単独行に追い抜かれた。どうやら、剣竜峡から歩いてきたようである。途中の痩せ尾根も、通過に問題はないようである。この日の、荒川山周遊コースは一人、金鉢山に登ったのは私一人で、静かな山であった。
 下山後、林道を下ると、何台もの車とすれ違った。時間も遅いので登山者ではないはずで、山菜採りが目当てであろうか。
 月岡温泉の共同浴場で入浴しても、家には早い時間に戻ることができた。身近で楽しむことができる、緊張感も必要な、本気の雪山であった。
 金鉢山は、これまでは、折居か中々山から登るのが一般的であったが、登山道がないため冬期に登るのが一般的であった。花ノ木平登山口からアプローチする今回のコースは、麓付近の雪解けが進んだ時期でも登ることができるので、金鉢山も身近な山になるであろう。

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