高森山、高陽山

高森山、高陽山


【日時】 2006年3月18日(土) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 飯豊連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 高森山・たかもりやま・1151.3m・三等三角点・新潟県、福島県
 高陽山・こうようざん・1126.5m・二等三角点・新潟県、福島県
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/大日岳/飯里
【コース】 弥生より
【ガイド】 遙けき飯豊嶺に
【温泉】 津川高原保養センター 500円

【時間記録】 4:40 新潟=(磐越自動車道、R.49、徳沢、R.459、奥川 経由)=6:45 弥生〜7:02 発―7:25 第一テレビアンテナ―7:47 第二テレビアンテナ―8:40 859m点―9:30 稜線分岐―9:52 高森山〜10:03 発―10:19 稜線分岐―11:00 高陽山〜11:18 発―12:00 稜線分岐―12:33 859m点―13:03 第二テレビアンテナ―13:15 第一テレビアンテナ―13;33 弥生=(奥川、R.459、徳沢、R.49 経由)=15:30 新潟

 飯豊連峰の三国岳から南西に延びる新潟・福島県境の引かれた稜線は、疣岩山、鏡山、立石山、高森山、高陽山と続き、阿賀野川で終わっている。この稜線上の鏡山は、登山道も良く整備され、最近では飯豊の展望台として、人気の高い山になっている。また、高陽山は、会津百名山にも取り上げられ、訪れる登山者も増えている。これに対し、高森山は、登山道が無く、一般に知られていないが、実川を挟んで大日岳と向かい合い、飯豊連峰の展望を満喫できる山である。弥生の集落から直接登ることができるため、残雪期の飯豊連峰の展望台としての価値が高い。

 土曜日は晴天だが、日曜日は雨という天気予報が出て、遠出は諦めた。雪割草を見に行かなくてはと思ったが、雪山にも心が動かされる。金曜日の雨は昼で止み、夜は冷え込んでいた。堅雪が期待できそうということで、雪山に出かけることにした。
 あれこれ考えたすえ高森山に決めたのは、山頂から飯豊の展望が楽しめることと、登山口の弥生へ雪の多い時期に行くのが大変ということで春を待っていたということがある。地図を検討すると、高森山と高陽山の両方を登れそうであった。
 昼には曇りになるというので、早起きをして出かけた。弥生へは、飯豊や鏡山登山のために何度か訪れている弥平四郎への道を辿り、弥平四郎のすぐ手前で奥川を渡り、久良谷沢沿いの道に進む。崖下に続く道で、落石も起きていると思ったら、道路を整備しているショベルカーとすれ違った。
 弥生の集落は、久良谷沢沿いから西に分かれる車道に沿って高台に続いている。集落内を抜けて、車道の突き当たりの車二台ほどの除雪広場に車を停めた。
 スノーシューにピッケルアイゼンの完全装備で歩き出した。谷間に広がる雪原の向こうに、青空を背景に高森山の山頂を望むことができた。雪の上は締まっており、つぼ足での歩きになった。地図で485点に続く実線と洞房沢の谷間に続く破線の分岐で、左の段丘上に上がる。地図では、崖マークになっているが、斜上する道が有るようであった。段丘上にも田圃が広がり、作業小屋が二軒おかれていた。向かいに、登りに使う尾根が横たわっていた。杉の植林地をひと登りすると、尾根上に出ることができた。
 緩やかな尾根の登りが続いた。日が当たる所は、早くも雪がゆるみ、時折足が潜る状態になった。つぼ足でも歩き続けることもできたが、歩きのリズムを崩さないために、早めにスノーシューを履くことにした。カリカリ雪のスノーシュー歩きは楽しい。
 560m地点で、最初のテレビアンテナ、続く645m地点に第二のテレビアンテナが現れた。ここまでは道があるとのことで、途中の木にも赤ペンキのマークが付けられていた。もっとも、このアンテナは使われなくなって有線に変わっているというので、この道も今後どうなるかは判らない。
 緩やかな登りが続いたため、右手に沿う洞房沢の谷間もすぐ下に見えていた。純白な飯豊連峰の姿が現れ、山頂での展望の期待が高まるのと同時に、山頂到着が遅くならないようにと気に掛かるようになった。昼からは曇りという天気予報が出ているので、せっかく山頂に到着したら青空はどこにやら、となったのではがっかりである。
 859m点が近づくと傾斜が増して、スノーシューを脱いでつぼ足になり、キックステップでの登りになった。稜線上の雪がブロック状に割れている場所が現れた。左に巻こうとしたが、急斜面で雪も堅かった。右手の落ちかけているようなブロックに一歩足を乗せて、木の枝を頼りによじ登った。雪の緩んだ下山時には、同じ所は通れないであろう。続く難関は、859m点直下であった。尾根通しに登っていくと、雪の割れ目が現れた。杉の木を足場にすれば上がれるのだが、木の上を氷が覆っていた。氷をストックで突っついて落とし、なんとか足場を確保した。このどちらも登ったコースが無理であった場合には、ピッケルとアイゼンを用いて脇の雪原を登ることになったので、やはりこの季節の雪山は、装備は充分にした方が良い。
 傾斜が緩むと、ブナ林の広尾根になった。1080mピークは、右に巻いて通過した。洞房沢の源頭部は、緩やかな谷間の広場になっていた。雪庇の低い所を乗り越え、県境稜線に乗った。ひと登りすると、広大な台地の上に出た。山頂までは距離がまだ有るとはいえ、登りは無くなった。台地の向こうに頭をのぞかせる飯豊の眺めに、自然に足早になった。台地の末端の小高い雪の高まりが、高森山の山頂であった。
 山頂の先、緩やかに稜線は下っていき、その向こうには、飯豊の眺めが広がっていた。正面に一際大きな姿を見せているのは大日岳であった。手前の牛首山と櫛ヶ峰が鋭い稜線を見せていた。その右手には、御西岳と飯豊本山が並び、草履塚、種蒔山、三国岳を経て鏡山へと稜線が続くのも一望できた。稜線左手の木立を避けて少し移動すると、大日岳から西に延びる稜線の眺めが広がった。烏帽子山が鋭い山頂を見せ、長々と続く稜線の彼方には、蒜場山が白い山頂を見せていた。大日岳まで歩いていきたくなるが、間には実川が入り込んでいる。
 高森山は、広大な飯豊の眺めを堪能できる山頂であった。飯豊連峰の展望台としては、いろいろな山頂が上げられる。蒜場山、二王子岳、倉手山、鏡山、これらの山は、登山道が整備されて登山者の人気も高い。道が無くて積雪期に限られる山としては、牟礼山、棒掛山、高井峠で、飯豊の眺めを楽しむことができた。それぞれの山からの眺めにおける主役は、北股岳や大日岳、飯豊本山とそれぞれ変わっている。高森山からの展望で素晴らしいのは、三国岳、飯豊本山、御西岳、大日岳と飯豊の最も人気の高い登山ルートを目で追えることである。これからは、飯豊の展望台としては、この高森山をその第一に挙げることにしよう。
 青空が広がっていたが、風は冷たかった。遠望を楽しんだ後、時間も充分にあることから高陽山へ向かうことにした。山頂台地の下り口からは、幅広の稜線が続く高陽山が目の前に見えていた。鞍部の分岐から高陽山へは、1500m程の直線距離、50m下って100mの登り返しである。ここまで来て見過ごすには、おしいピークである。
 写真を撮りながら下っていくと、稜線分岐近くで、三人グループが登ってくるのに出会った。このような知られていない山で人に出会うとはと驚いたが、顔を見たらKさんであった。Kさんは、以前、峡彩ランタン会で高陽山から立石山への縦走を行った時のサブリーダーを勤めており、その記録も、事前に読んで参考にさせてもらっている。このような寂峰に、会の関係者が二人。ランタン会の蓄積した山の情報のおかげである。立ち話の後、それぞれの山頂に向かって別れた。
 高陽山へ続く雪綾は、縁が崩れて数メートルの高さの壁になっていたが、幅もあって気楽に歩くことができた。振り返ると、高森山が高みに遠ざかっていた。ひと登りして山頂到着かと思ったが、ここも山頂台地が広がり、奥へ進む必要があった。ブナの大木が点在する雪原を一人歩く気分は気持ちが良かった。最高点と思われるピークの先が、三角点の置かれている山頂であった。
 高陽山は、1998年6月20日に続く二度目の登頂になった。先回は、雨上がりに登っており、周囲の展望ははなから期待できなかったが、ブナ林に囲まれて展望は得られない山頂であった。振り返ると、雪原に一条のトレースが続き、小ピークの向こうに飯豊の白い峰が頭をのぞかせていた。高陽山と高森山は、山頂一帯が台地状で、雪原の広がる雪の時期に登ってこそ、その魅力を堪能できる。
 「会津百名山ガイダンス」の本によれば、山麓の奥川では、高陽山は前高森山、高森山は後高森山と呼ばれるという。高陽山の山頂には、石の祠が置かれて、古くからの里との結びつきがうかがわれる。高森山は、標高も少し高い奥山ということで、この二つの山は、ひと組とも考えられる。また、高陽山は、黒森山という別名もある。周囲の山からは、ブナの原生林で覆われていることから黒く見える。直接高森山の山頂を眺めることのできる弥生の集落では、洞房沢の詰めということで、山頂一帯を洞房と呼んでいるという。山の名前は、地図に記載されている以外にも、地元の呼称があり、複雑である。
 風当たりの弱い斜面に腰を下ろした。昼食にも良い時間になっていた。お待ちかねのビールにようやくありつくことができる。ブナ林に囲まれた山頂で、一人ビールを味わった。
 飯豊を正面に眺めながら、来た道を戻った。青空はまだ広がっていたが、雲が出はじめていた。稜線分岐に戻ると、Kさん一行は、下山を開始したようで、踏み跡が続いていた。気持ちよく雪原を下った。900m標高で尾根が痩せて急斜面になったのでつぼ足になった。雪も柔らかくなり、時折膝まで落ち込んだが、滑落の心配はなくなった。途中の雪が割れた難所も、雪原に足場を切って、無事に通過することができた。800m地点で再びスノーシューを履き、後は、雪道の歩きを楽しみながらの下りになった。
 車に戻って高森山を振り返ると、早くも雲がかかり始めていた。僅かなチャンスをものにして、大展望の山を楽しむことができた。

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