不納山、十二社ノ峰

不納山、水晶山
十二社ノ峰


【日時】 2005年11月19日(土)〜20日(日) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 19日:単独行 20日:4名グループ
【天候】 19日:雪 20日:雪

【山域】 谷川連峰周辺
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 不納山・ぶのうさん・1291.1m・三等三角点・群馬県
 水晶山・すいしょうやま・940m・なし・群馬県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/四万/四万
【コース】 稲包神社より
【ガイド】 分県登山ガイド「群馬県の山」(山と渓谷社)
【温泉】 四万温泉 清流の湯 500円

【山域】 谷川連峰
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 十二社ノ峰・じゅうにしゃのみね・1389.6m・三等三角点・群馬県
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/四万/水上
【コース】 小出俣林道入口より
【ガイド】 なし
【温泉】 こぶしの里ふれあいセンター 500円

【時間記録】
11月18日(金) 20:30 新潟=(関越自動車道 経由)=23:00 谷川岳PA  (車中泊)
11月19日(土) 6:00 谷川岳PA=(関越自動車道、月夜野IC、R.17、赤根峠、本宿、R.145、中之条、R.353 経由)=6:50 駐車場所(四万温泉)〜7:30 発―8:30 遊歩道分岐―9:10 堀沢山―9:24 不納山〜9:46 発―10:05 堀沢山―10:29 遊歩道分岐―10:33 水晶山―10:56 林道終点広場―11:12 駐車場所(四万温泉)=(R.353、中之条、大道峠、湯宿、R.17、赤谷 経由)=17:00 仏岩トンネル  (車中泊)
11月20日(日) 6:15 小出俣林道入口―7:12 岩峰―10:52 十二社ノ峰〜11:13 発―12:36 林道分岐―13:24 小出俣林道入口=(仏岩トンネル、水上IC、関越自動車道 経由)=17:30 新潟

 不納山は、群馬県でも良く知られている四万温泉の東に位置する山である。遊歩道が通じている水晶山から登ることができるが、登山道が一部不明な所があるということで、最近の山のガイドからは外されている。
 十二社ノ峰は、谷川連峰の群馬側、小出俣沢を取り巻く馬蹄形の稜線上の一峰であり、登山道は無い山である。この稜線上にある阿能岳や小出俣山と比べると、十二社ノ峰は標高も低いことから、登る者は少ない。


 日曜日に十二社ノ峰を予定したことから、二週続けての群馬県訪問になった。土曜日の山をどうするか迷ったが、不納山を登ることにした。この山は一般登山道のある山なのだが、季節によってはヒルが出るようで、登山道にも一部不明な所があるとのことで、登るなら今の季節が良さそうであった。今回は、車のタイヤも交換し、雪への備えも行った。
 四万温泉なら、新潟を早朝に出発しても間に合うのだが、高速の深夜割引を利かせるため、前夜発とした。雨の新潟から国境のトンネルを抜けて群馬県に出ると、やはり雨であった。星空が待ちかまえているという期待は外れた。谷川パーキングで寝て目を覚ますと、雨はいつの間にか雪に変わっており、車の窓ガラスも一層の雪に覆われていた。車を動かして月夜野まで下ると、雪は止んだ。しかし、県境近くの四万温泉が近くなると、再び小雪が舞うようになった。冬枯れの日だまりハイクの期待は外れた。
 四万温泉のバイパスの途中から温泉街に入ると、下山予定の水晶山からのコース入口に出た。北に向かって車を走らせると、ゆずりは公園に出て、稲包神社の入り口があった。この登山口の周辺には駐車場が無かったため、一旦戻り、二車線が一車線に変わるところの路肩スペースに車を停めた。周遊コースで歩くつもりなので、両登山口の間なら、どこに車を停めても同じ事になる。
 小雪が舞って、日も陰っていたため、車の中で少し様子見をしてからの出発になった。登山口から上がった所に稲包神社のお堂があった。その前には、ヒル避けの塩水を置いた台が設けられていたが、ヒルの時期は終わっているため、空であった。お堂の右手から登山道が始まっていた。急斜面をジグザグに登っていく登りが始まった。いきなりの急登で、たちまち息が切れた。
 急登が終わって尾根歩きに変わると、左下に四万川ダムが木立の間から望めるようになった。地表を雪が覆うようになり、雑木林の中には、散り残りのモミジが一際鮮やかな色を見せていた。遊歩道は、地図にも記載されているので、1040m地点まではそのまま歩いて行けば良いと思っていた。986小ピークを右の台地に外れたが、そのうちに稜線通しに戻るだろうと思ったものの、方向を南に変えてしまったため、これはおかしいということになった。
 帰宅後にGPSのデーターを地図と比べてみると、遊歩道のコースは、地図とはかなり違っていることが判った。そのため、不納山への取り付きが判りにくくなっている。幸い、木立の間に藪はなく、ただ落ち葉で覆われているだけなので、どこでも歩ける状態であった。986m小ピークの東で稜線通しに戻るべきであるが、1040m点めざして斜面を直登した。
 その後は稜線通しのコースになった。藪は全く無く、雪のために登山道の状態は判らなくなったが、問題は無い歩きにであった。ただ、露岩の脇を抜けて北西からの尾根と合流する所では、下山時にこの尾根に引き込まれそうであった。1221m点に出ると、谷向こうに不納山の山頂を望むことができた。そこまでは、幾つかの小ピークを越していく必要があった。北に向かったコースが東に曲がるところの1230mピークには、堀沢山という標識が木に掛かっていた。
 それ程のアルバイトもなく、不納山の山頂に到着した。山頂は、ほぼ平坦な稜線通しの一点といった感じであった。三角点が置かれているため、山頂となっている。腰を下ろしてひと休みとしたが、風が冷たく、体を動かしていないと寒くなってしまい、再び歩き出すことになった。
 1040m地点まで下ったところで、同じコースで斜面を下り、歩道に戻った。山口への分岐が現れると、その先で金属製の階段があり、小岩峰に上がるとそこが水晶山であった。地図の位置とはかなり違っていたし、下山路の通じている谷も違っていた。谷をジグザグに下っていくと、林道の終点に飛び出し、後は車道歩きで車に戻ることになった。
 時間も早かったので、「私が登った群馬300山」に遊歩道があると書かれている高野山を登ろうとしたが、遊歩道が見つからず、諦めることになった。藪も薄いので、はなからヤブコギの覚悟なら、登れたのかもしれないが、杉の植林道や導水管n保守道などを確かめているうちに時間がたってしまった。
 日帰り温泉を見つけて入り、山も終わりになった。翌日の山のために、仏岩トンネル入口の広場を目指すことになった。
 待ち合わせ場所の仏岩トンネル入口の広場は、これまでにも阿能岳や小出俣山の登山の際に夜を過ごしたお馴染みの場所である。夜になると、雪も本降りになった。夜半近くに宇都宮からの一行が到着したのに合わせて軽く一杯やったが、翌日の山行もあるので適当なところで切り上げた。
 翌朝起きてみると、車道上にはほとんど積もっていないが、車の窓ガラスには1センチ程の積雪があった。幸い雪は止んでいたが、山では、本格的な雪になったようである。当初の予定では、十二社ノ峰を越して、小出俣山へ続く稜線を行けるところまでというものであったが、これでは、十二社ノ峰まででも悪戦苦闘しそうであった。
 川古温泉手前にある小出俣林道入口の広場に車を置いた。林道に進んで、尾根の末端を回り込んだ所に、尾根に上がる踏み跡があることは、以前の小出俣山山行の際に見つけてあった。尾根に上がった所には、石の祠が置かれていることからも、十二社ノ峰へは踏み跡があるのではないだろうかと、期待が高まった。下生えの少ない雑木尾根に続く踏み跡を辿った。
 岩場が迫ってきて、白く塗られた看板か小さな建物かが見え始めたところで、踏み跡は、尾根の左にトラバースするように続いていった。少し辿ってみたが、尾根上との距離は開いていったので、この踏み跡を辿るのはあきらめた。尾根の横腹を木の根を掴んで登り、岩場の上に出た。岩尾根を辿ると、3m程切り落ちた下降不可能な岩の上に出てしまった。少し戻った所で、木の枝を利用すれば右に下りられる場所が見つかった。その先の岩場の下をトラバースしながら進んでいくと、一枚岩の壁が高くなっていき、この先で尾根上には復帰できそうもなくなった。一旦戻って、足場を見つけて岩尾根の上に出た。この先で、痩せた岩尾根に立っているのに突き当たった。北アルプスあたりの岩稜歩きならば、これくらいの岩場は現れるが、岩に苔が付いているうえに雪も積もっている。誰も歩いていないので、岩が安定しているか判らない。尾根の両脇は、崖状になっており、落ちたら無事には済まない。整備された登山道とは違った難しさである。
 地図には尾根の両端に崖マークが書かれているが、その間には幅があり、岩場が連続するとは予想していなかった。この尾根を辿るのは諦めてはと弱音も出てきたが、この先の様子を見てくると、室井さんが、岩場の左脇の斜面を登って、先の偵察に進んだ。この先は問題ないという返事が戻ってきた。
 木の枝を掴みながら、急斜面を登った。足元の土が軟らかいため、神経を使った。その先は、問題のない尾根で、750mピークに出た。周囲の展望が広がり、ピラミッド型をした十二社ノ峰が目の前に広がった。気になる尾根の様子を眺めると、木立に覆われており、登るのに問題はなさそうであった。ここまでの岩場の通過には、水平距離250mに1時間もかかってしまった。十二社ノ峰というのは、ここまでの岩場のことではないのだろうか。幾つもある岩が信仰の対象になったように思える。
 小岩峰の下りは、3m程の高さに切り立っていた。足場も十分にあったのだが、雪が乗っていた。滑ると危険なため、スワミベルトを装着して、ロープで確保することになった。長靴を履いていたため、雪で滑る危険性が少ない私が最初に下りた。足場も十分で、乾いておれば問題はなさそうであった。とはいえ、乗るとぐらつく岩もあって、油断はならなかった。全員の通過には、少し時間がかかった。
 この先は、痩せ尾根といっても木に囲まれて問題はなかった。鞍部近くで、左の谷間からロープの列が上がってきているのが目に入った。事前にインターネットで検索した時、地元の自然観察施設のグループが尾根上までロープを設置してコース整備したという記事が見つかった。これがそのコース整備のようであった。尾根上から赤谷を見下ろす写真が掲載されていたので、通過してきた小岩峰に登ったようである。このルート整備が、単に小岩峰に登るためだけのものか、十二社ノ峰への登山道を開くつもりなのか興味のあるところである。残雪期には、このロープは雪に埋もれて使えないかもしれないが、岩場を避けてこの鞍部に取り付くのが良いであろう。歩きはじめの踏み跡は、岩場の基部を通過して、この鞍部の下に通じていたのかもしれない。
 鞍部に到着して、ほっとひと息ついた。付近には、美しい紅葉が広がっていた。赤やオレンジの葉の上に雪が乗っていた。
 尾根に藪は無く、落ち葉を踏みしめながらの登りが続いた。登山道を開くにしても、手を加えるのは最小限で済みそうであった。地図を見ると、緩やかな尾根のように見えたのだが、体力勝負の登りが続いた。雪も次第に多くなっていき、20センチ程になったが、ラッセルというほどのことはなかった。
 1200m地点の右から尾根が合わさるところで、露岩が行く手を遮った。左右のどちらかと迷ったが、右から巻いて岩の上に出た。この付近から、灌木のヤブコギが始まった。尾根が痩せている所も現れたが、危険という程ではなかった。
 傾斜が緩んで十二社ノ峰に到着したことは判ったが、藪に囲まれており、GPSを頼りに三角点を探した。山頂標識を見ると、その先で刈り払いの小広場があり、三角点が頭をのぞかせていた。山頂標識は、少し先にも付けられていたが、三角点の脇とはいえない位置であった。残雪期に登った際に付けたもので、その時には地形も変わっているのかもしれない。
 予定していた引き返し時間の11時になっていたので、進むのはここまでということになった。この先も藪は濃いようであった。雪の中であったが、先週の四郎岳に比べると気温は高く、落ち着いて休むことができた。
 下山は、千曲平近くの林道分岐部へ落ち込む尾根を使うことにした。緩やかにカーブを描いているので、方向には注意する必要はあるが、問題の無い尾根のようである。山頂から方向を見定めてから尾根を下った。笹藪が少し煩わしかったが、下りのために足は進んだ。途中からはブナ林も広がり、紅葉と雪の眺めを同時に楽しむことができた。谷奥には、小出俣山付近の稜線の連なりを望むことができたが、山頂は雪雲に覆われたままであった。
 雪の上の足跡を見て、足が止まった。人の手よりも二回り程大きく、それ以前にも度々現れていたカモシカか鹿の足跡とは違っていた。クマの足跡であった。途中でも、ブナの木に付けられたクマの爪痕が目にとまっていた。足跡の縁は崩れておらず、小雪が時折舞っていたが、それも積もってはいないので、つい最近のもののようであった。これはちょっとヤバイということで、ホイッスルを取り出して吹き鳴らし、ストックで木の幹を叩いて音を立てながら歩くことにした。しばらくは、クマの足跡と一緒であったが、右手の谷間に去っていった。インターネットの記録でも、小出俣山の記録にはクマの遭遇が多く出ている。この一帯は、クマの生息地になっているようである。それだけ、原始的な山域ということになる。
 高度が下がると、ブナ林の中に、美しく色づいたモミジが目立つようになり、カメラを構えながらの歩きになった。快調なペースで、林道に下り立つことができた。この尾根は、傾斜的にはスノーシューでも上がれそうで、積雪期のコースとしてよさそうであった。
 林道歩きも、積雪期とは違って、楽に林道入口に戻ることができた。意外に早い時間で登山終了になった。事前に予想したコースタイムとは大幅に違ったが、これも藪山の面白さである。次回登る機会があるならば、もう少しスムーズな進行になるであろう。

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