苗場山、阿寺山

苗場山
阿寺山


【日時】 2005年10月1日(土)〜25日(日) 前夜発2泊2日 各日帰り
【メンバー】 1日:単独行 2日:三名グループ
【天候】 1日:曇り 2日:曇り後雨

【山域】 苗場山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
神楽ヶ峰・かぐらがみね・2029.6m・三等三角点・新潟県
 苗場山・なえばさん・2154.3m・一等三角点補点・新潟県
【コース】 登り:払川コース 下山:田代高原コース
【地形図 20万/5万/2.5万】 20万/5万/2.5万】 高田/苗場山/苗場山
【ガイド】 アルペンガイド「谷川岳と越後の山」(山と渓谷社)、分県登山ガイド「新潟県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「谷川岳・苗場山・武尊山」(昭文社)
【温泉】 街道の湯 500円

【山域】 越後三山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
阿寺山・あでらやま・1509.0m・二等三角点・新潟県
【コース】 広掘登山口より新開道下山
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田、日光/十日町、八海山/五日町、兎岳、八海山
【ガイド】 アルペンガイド「谷川岳と越後の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「越後三山、巻機山、守門岳」(昭文社)
【温泉】 こまみの湯 500円

【時間記録】
9月30日(金) 9:10 新潟=(関越自動車道、越後湯沢IC、R.17 経由)
10月1日(土) =0:30 三俣  (車中泊)
5:30 三俣=5:50 第2リフト駐車場〜6:16 発―6:38 和田小屋―7:26 下の芝―7:56 中の芝―8:11 上の芝―8:16 小松原湿原分岐―8:29 田代高原分岐―8:35 神楽峰―8:52 雷清水〜8:57 発―9:42 苗場山―10:05 赤倉山分岐―10:25 苗場山〜10:46 発―11:28 雷清水―11:46 神楽峰―11:49 田代高原平分岐―12:06 小湿原―13:01 ゲレンデ上部―13:26 車道―15:09第2リフト駐車場=(三俣、R.17、六日町、)=19:00 広堀 (車中泊)
10月2日(日) 6:27 広堀登山口―6:55 沢分かれ―7:03 竜神碑―7:38 蛇食清水―8:05 ブナ林―9:42 阿寺山〜9:50 発―10:23 神生の池〜11:00 阿寺山〜11:45 発―12:42 ブナ林―12:56蛇食清水―13:20竜神碑―13:26 沢分かれ―13:50広堀登山口=(R.291、小出、小出IC、関越自動車道 経由)=17:40 新潟

 上信越国境にある苗場山は、4キロ四方に及ぶ平らな山頂を持ち、矮小化したオオシラビソの原生林の間に湿原が広がっている。この山の名前は、日本有数の豪雪地の辺境秋山郷を著した鈴木牧之の「北越雪譜」によって世に広められた。登山道は各方面から通じており、和田小屋より神楽峰を経ての祓川コースや、車を利用すると短時間で登ることのできる小赤沢コースの利用者が増えている。最近、苗場から田代スキー場に通じるゴンドラを利用して、田代高原から神楽峰へ登る登山道が整備されている。

 越後三山のひとつに数えられる八海山は、三山のうちでは標高は最も低いものの、山頂部に険しい鋸歯状の岩峰を連ね、古くからの信仰の山として知られている。阿寺山は、最高峰の入道岳の南に位置するピークで、山頂一帯には草原が広がり、小さな池が点在して穏やかな風景を見せている。麓の山口の集落から阿寺山を経由して八海山へ至る登山道は、御池道とも呼ばれている。

 山仲間から、今度の日曜日に空いていて紅葉の楽しめる山はという質問を受けた。今年は紅葉が遅れており、どうしても標高の高い山を選ぶ必要があり、日本百名山クラスが候補になってしまう。木の葉の紅葉はまだであろうことを考えると、草原のある山が良い。思いついたのは、阿寺山であった。八海山は岩場の連なる山として有名であるが、その隣の阿寺山は、それとは正反対に、山頂部に草原や小さな池が点在する山である。この山に登る者は少なく、静かな山を楽しむことができるのは間違いない。阿寺山から八海山へという縦走コースも考えてみたのだが、週末の天気が悪そうなため、阿寺山への往復とした。
 阿寺山と組み合わせる関係で、土曜日は中越方面の山ということになるため、苗場山に行くことにした。土曜日の天気予報も、曇り後雨というものであったので、ガスの中から現れる湿原の眺めでも楽しむつもりであった。
 苗場山なら、新潟を早朝に出ても間に合うが、早起きは苦手である。前夜発としたが、高速の深夜割引を利かすために、ゆっくりの出発になった。深夜の林道走行はいやなため、三俣で夜を過ごした。
 登山口に通じる苗場山林道は、途中でゲートがある。昼間は管理人がいて、通過のための届けをするのだが、夕方から朝にかけては誰もおらず、ゲートは解放されている。山菜採りを通さないためのようであるが、早朝に入山すればフリーパスなので、ゲートがあっても意味が無い気もする。1991年に初めて登った時には、六日町営林署の許可書をあらかじめ入手して提出したのも思い出である。
 第2リフト駐車場の駐車場には、5台の車が停まっているだけで、思ったよりも登山者は少なかった。やはり天気予報が悪かったせいであろうか。
 登山道を進むと、すぐに和田小屋へと続く車道に飛び出す。汗ばんできたところで和田小屋に到着するので、ここで最初の休憩となる。リフトが目の前の高みに延びており、そこまではひと登りのように見えるが、そうあまくはない。熊の立て看板に送られて、登山道に進んだ。
 ゲレンデの脇から、木立に囲まれたじめついた道が続く。緩やかな登りであるが、石がごろついており、歩き難い。尾根上に出ると、直に下ノ芝に到着する。下ノ芝自体は小規模な草原にしかすぎないが、ほっとひと息入れる休憩ポイントである。このコースでは、下ノ芝、中ノ芝、上ノ芝と次第に規模が大きくなっていき、最後には広大な苗場山山頂湿原が現れるのは劇的といってよい。
 その先も一定の傾斜の登りが続き、リフトの終点部を過ぎると、中ノ芝に到着する。色づいた灌木が、黄色に染まった草原にアクセントを付けている。背後を振り返ると、雲が広がっているものの高く、山々の眺めが広がっていた。目の前には、平標山が大きく、その背後には谷川連峰が続いていた。燧ヶ岳や越後の山、日光連山も眺めることができた。予想していなかった眺めに心も浮き出してきた。
 続く景勝ポイントの上ノ芝へは、そう遠くない。湿原も次第に規模が大きくなってくる。霧ノ塔へと続く尾根が黄色く染まっているのも目に入ってきた。上ノ芝のすぐ上で、霧ノ塔から小松湿原へ通じる道が分かれるが、以前に歩いているとはいえ、この季節にも歩きたくなった。
 神楽峰に向かって、緩やかな道を進んでいくと、山頂の少し手前で、標柱が立てられており、田代高原のゴンドラ乗り場への登山道が分かれていた。地形図にもこの道の破線が記されている。興味を持って、このコースを下ろうかと思い、GPSにトラックデーターを落としてきていた。山頂で改めて地図を確認することにして、まずは苗場山の山頂を目指した。
 神楽峰には、山頂を示す標識が登山道脇に立てられているが、踏み跡を辿って数メートル上がった灌木の中が本当の山頂である。
 神楽峰の少し先で尾根を回り込むと、大きく崖を巡らせて苗場山の眺めが飛び込んできた。苗場山の山頂は、広大な台地であるが、その周囲は急な崖に囲まれていることが、ここからの眺めで改めて理解できる。坂を下っていくと、雷清水に到着する。美味しい清水が湧き出ているので、水を汲んで飲みながら、目の前に広がる苗場山の眺めを楽しもう。細尾根に登山道が続いているのを眺めることができる。鞍部は1880mほどなので、2120mの山頂台地の縁までは、標高差240mの一気の登りになる。
 ひと休みをして元気を取り戻して、最後の登りへと進んだ。鞍部一帯は、お花畑とも呼ばれて、夏には花の多いところである。灌木に囲まれて展望が閉ざされるが、中段で、展望が開け、足を止める良い口実になる。
 ようやく山頂台地の縁に到着すると、黄金色に染まった湿原の眺めが目に飛び込んできた。大小の池が光り、その向こうには青く山々が並んでいた。ひと際目に付くのは、佐武流山で、赤倉山から苗場山の区間を歩いておらず、佐武流山までがつながっていないことが残念に思えた。写真モードに入ってしまったが、まずは三角点にお目にかかるために遊仙閣の裏手へと進んだ。
 山頂湿原の眺めをもっと楽しみたく、木道を先に進んだ。歩くに連れて変わる眺めは飽きることは無かった。赤倉山への道が分かれる分岐で、カミソリの刃のように鋭い山頂を持つ鳥甲山の眺めが広がった。神楽峰付近からも、苗場山の右肩に鳥甲山が見えていたが、山頂台地に到着してからは隠されていたので、ここまで歩いてきて良かったことになる。
 山頂に戻り、大休止とした。一帯にいる登山者が数人なのも、天気予報のせいなのかもしれないが、うれしい大外れになった。
 登りに苦労している登山者とすれ違いながら神楽峰に戻った後、田代高原への登山道に進むことにした。苗場から田代高原へと掛けられたゴンドラは、ドラゴンドラと呼ばれ、世界最長の5481mの長さを誇っている。とはいえ、苗場スキー場950mから田代スキー場1350mと400mほどの高度をかせぐ、ただ横に長いだけの効率の悪いゴンドラである。本来は、西部系列の二つのスキー場を結ぶのが目的であるが、夏季( 7/15〜9/1)と紅葉季( 10/8〜11/6)にも運行されることになった。ただ、営業時間が9:00〜16:00なので、登山には使い難い。分岐には、神楽峰〜田代高原への登山道は、ドラゴンドラ運行期間のみご利用ください。田代高原まで5.2km約2時間と書かれていた。丁度、この日は、運行日ではなかったが、最後は林道歩きで神楽スキー場へ戻るつもりなので、問題はない。
 東に向かう尾根沿いに登山道が切り開かれていた。歩く者が少ないためか、笹の切り跡がぼきぼきと鳴る道であった。一本尾根で迷う心配は無いとはいえ、初心者には心細くなりそうである。途中には、案内標識が現れるが、系統だったものではない。1890m地点で、小さな池が点在する小湿原が現れた。箱庭のような美しさであった。下るにつれて、オオシラビソからブナ林に植生が変わっていった。
途中から尾根を右にはずし、1574標高点の先で、ゲレンデ上部に下り立った。ここからゴンドラ駅に向かうと、かなりの遠回りになってしまう。神楽スキー場への連絡コースを下って、車道歩きを少しでも短くすることにした。スキーコースは、夏草が茂っていて歩けないものもあるので、ゲレンデの中で、頭をひねることになった。それでもカッサダムの堰堤に近い所で、車道に出ることができた。
 後は、車道歩きが残されているだけであったが、長く、辛い歩きになった。長さもさることながら、ダムを下るのにかなりの標高差があり、距離も長かった。結局、1時間45分の歩きで車に戻ることができた。
 田代高原コースは、ゴンドラを使っては、日帰りは無理である。山頂泊の際に、列車やバスの公共機関を使ってアプローチする登山者向けというくらいしか利用価値は浮かばない。今回歩いた神楽スキー場からの周遊コースを考えると、2時間近くの車道歩きがネックになろうか。苗場山登山くらいでは体力に余裕のある篤志家向けというべきか。利用者が多くは期待できそうもないコースで、いずれ廃道になるかもしれないという点では、歩いておく価値はあるかもしれない。
 利用価値をさらに考えると。白砂山から苗場山へ縦走を行う際に、神楽峰から神楽スキー場へ下山すると、ゲレンデ内の歩きが長くなり、向山へ登り返した後にロープウェイに乗ることになる。その点、このコースを辿って田代スキー場に下れば、尾根沿いにゴンドラの山頂駅に出ることができるので、楽ができそうである。リフトに乗る必要がないので、残雪期にスノーシューで田代高原から神楽峰に登るのも良いかもしれない。
 いつもの街道の湯で温泉に入り、六日町に向かった。翌朝は、阿寺山の登山口が判らないと困るので、八海山ロープウェイ駅で待ち合わせをしていた。夜になってから到着してみると、駐車場入口には、柵が置かれていた。先回も夜を過ごした広堀橋のたもとの広場に移動した。
 翌朝は、霧雨で道路が濡れている程度の曇り空であった。八海山ロープウェイ駅に戻り、仲間の到着を待った。他のグループが集まっていたが、八海山の登山をどうしようかと迷っていた。約束より早めに到着したところで、阿寺山の登山口に移動した。養鱒場を過ぎると広堀橋で、その先で未舗装の道に変わる。それほど走らないうちに、鎖の掛けられた、車が数台置ける広場に到着する。車の並べ方を考える必要はあるが、他の登山はほとんどいないはずである。
 挨拶を兼ねて、長岡方面の雨の状態を聞くと、激しい雨であったという。この付近は、霧雨程度であったので、意外であった。新潟から出てきたのでは、集まった段階で阿寺山の登山を諦めていたかもしれない。
 広堀登山口の標柱が立っているが、阿寺山へは、鎖の掛かった林道をそのまま進んでしまいそうになる。正解は、川沿いに続く道である。しばらくは、沢の左岸に沿った道が続く。枝沢の徒渉もあるが、飛び石伝いに渡ることができる。尾根から離れるところには、阿寺山へという標識がかかっているが、古びているので、見落とさないように注意が必要である。
 夏草が少しうるさい登山道を登っていくと、竜神碑に到着した。鐘がつるしてあるので、鳴らしたが、カーンと頭に響いた。これは、先回もやったことである。この先は、沢に沿った窪地の直線的な登りが続く。足場が悪い所もあり、忍耐の歩きになる。
 次の目標地点は、蛇食清水である。この先、しばらく沢沿いの登りが続いた後、左手に沢を離れていくことになる。地図の破線とは、コースが異なっている。950m地点で、ブナ林に出る。ここには、女心と山の空と書かれた看板が木に付けられているが、折れ曲がってきている。光が足りないのは残念であったが、ブナ林の眺めは心安らぐものがあった。
 登るにつれて、ブナ林が消えて、登山道周囲には灌木が広がるようになっていく。登りは長く続き、目標物も無いため、GPSを見ては、山頂までの登りを確かめることが続いた。雨が降り出して、傘をさしたが、短い時間で止んでくれた。
 傾斜が緩んで、峠のような乗り越し部に到着すると、ここには阿寺山と書かれた標柱が立てられている。山頂一帯に広がる草原の眺めが眼下に広がっている。黄色く色づき初めているとはいっても、緑がまだ勝っていた。
 阿寺山の山頂は、右手に見える小高いピークである。草原の中にかすかに続く踏み跡を辿ってピーク下に進むと、赤テープが付けられており、踏み跡が始まっていた。ここから山頂までは、木の枝も掻き分けながらの登りになった。枝についた雨粒を頭からかぶるのが辛かった。
 山頂は、狭い切り開きになっており、三角点が頭を出し、阿寺山と書かれた山頂標識が、立てかけられていた。雲がたれ込めていたが、巻機山や、中ノ岳中腹の日向山の眺めが広がっていた。
 草原に戻ったところで、雨も止んでいたので、神生池まえ往復してくることにした。この先は、小さな池が点在し、写真を撮りながらの歩きになった。尾根に登り返した後に、標高差50m程の下りになるので、帰り道が少し心配になる。
 神生池からは、八海山の眺めが広がっている。先回は、神生池の周囲に美しい紅葉が広がっていたのだが、今回は、紅葉には早かった。雨の予報の中、ここまで登って来られただけでも、満足すべきなのであろう。戻りの途中、振り返ると、ガスが消えて、入道岳から八ッ峰の眺めが広がっていた。
 阿寺山下の草原に戻ったところで、大休止にした。雨が降り出して、傘を差しながらの食事になった。気温も高いため雨も気にならなかったが、下山後にニュースを聞くと、この日は東京で30度まで気温が上がったとのことである。
 下りの途中、雨は本降りとなった。スパイク長靴を履いてきていたので問題はなかったが、普通の登山靴は、滑って大変だったようである。沢まで下ると、水量も増していたが、問題なく登山口まで戻ることができた。
 雨に濡れて、下山の途中から、温泉が恋しくなっていた。小出に出て温泉に入り、解散とした。

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