箕輪山、安達太良山、朴坂山

箕輪山から安達太良山
朴坂山


【日時】 2005年8月20日(土)〜21日(日) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 20日:曇り 21日:晴

【山域】 安達太良山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
鬼面山・きめんざん・1481.6m・三等三角点・福島県
箕輪山・みのわやま・1728m・なし(1716.4m・二等三角点)・福島県
鉄山・てっさん・1709.3m・三等三角点・福島県
矢筈森・やはずもり・1673m・なし・福島県
安達太良山・あだたらやま・1699.6m・二等三角点・福島県
【コース】 野地温泉
【地形図 20万/5万/2.5万】 福島/二本松/安達太良山、
【ガイド】 山と高原地図「磐梯・吾妻・安達太良」(昭文社)
【温泉】 新・野地温泉相模屋旅館 500円

【山域】 朴坂山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
 朴坂山・ほうざかやま・438.2m・一等三角点本点・新潟県
【コース】 朴坂より
【地形図 20万/5万/2.5万】 村上/中条、小国/坂町、越後下関
【ガイド】 分県登山ガイド「新潟県の山」(山と渓谷社)、新・新潟ファミリー登山(新潟日報社)

【時間記録】
8月19日 21:00 新潟=(R.49、津川IC、磐越自動車道、猪苗代磐梯高原IC、R.115、横向 経由)
8月20日 =0:30 土湯峠  (車中泊)
5:43 野地温泉登山口―5:58 旧土湯峠―6:30 鬼面山―7:38 箕輪山―7:48 箕輪山三角点―7:58 箕輪山―8:16 塩沢温泉分岐―8:45 鉄山―9:10 矢筈森―9:30 安達太良山〜9:44 発―10:01 矢筈森―10:21 鉄山―10:45塩沢温泉分岐―11:05 箕輪山〜11:22 発―12:16 鬼面山―12:50 旧土湯峠―13:05野地温泉登山口=(横向、R.115、猪苗代磐梯高原IC、津川IC、R.49、白川、上赤谷、R.290 経由)=17:00 胎内  (胎内ロイヤルパークホテル泊)
8月21日 8:00 胎内=(R.290 経由)=8:20朴坂〜8:35 発―9:04 林道分岐―9:36 要害山分岐―9:51朴坂山〜10:15 発―10:27要害山分岐―10:49 林道分岐―10::
51 林道登山口―11:14朴坂=(R.290、R.113、R.7 経由)=13:00 新潟

 安達太良山は、福島県二本松の西に連なる連峰である。「あれが阿多多羅山 あの白く光るのが阿武隈川」という高村光太郎の詩によって、あまりにも有名になっている。吾妻連峰と接する土湯峠から、南に向かって鬼面山、箕輪山、鉄山、矢筈森、安達太良山(乳首山)、和尚山といった峰々が連なって安達太良連峰を形作っている。鉄山や矢筈森の西には、火口原である沼ノ原荒涼たる姿を見せている。別名乳首山とも呼ばれる稜線上の小岩峰が、狭義の安達太良山とされているが、最高峰は箕輪山である。

 日本海の海岸平野部と荒川と女川の間に挟まれた一帯には、標高200〜400m程度の山塊が広がり、朴坂山塊と呼ばれる。その中では、盟主ともいえる朴坂山は、一等三角点も置かれ、登山者にも知られている。

 土曜日の晩に、飲み会で胎内のホテルに泊まることになった。日中は山に出かけることにしたが、胎内近くの山となれば、当然、大石山から杁差岳ということになる。奥胎内ヒュッテも新しくなったことだし、見に行ってみようかという気になった。しかも、飯豊には今年はまだ行っていない。飯豊の準備を行っていたが、金曜日の日暮れ時は、29度の猛暑。日本海に前線が停滞しており、南からの湿った空気が入り込んでいる。天気予報では、午後からは雷雨の可能性があるとのことであった。この蒸し暑い中、飯豊の急登では熱中症の恐れがある。下山の途中で夕立に捕まるのもいやである。飯豊への気持ちはしぼんでしまった。
 計画変更ということで、頭を悩ますことになった。この季節、うかつな山に出かけると、アブの餌食になる。標高の高い山で、昼過ぎには下山できそうな山を考えた。思いついたのが、箕輪山から安達太良山への縦走コースであった。コースは少し長めであるが、前夜発ならば問題なく歩けるはずであった。
 GPSのデーターを入れ替えて、安達太良山に向かった。ETCの深夜割引を利かせるため、0時を過ぎたところで高速を下りる予定であった。津川ICまで一般道を走ってから高速にのり、磐梯山SAで時間調整をしてから高速を下りた。福島へ抜けるR.115は、土湯トンネルで一気に山を越えるようになり、土湯峠への道は、旧道として、遊びの車しか通らないようになっている。
 土湯峠は、磐梯吾妻スカイラインの起点でもあり、以前は峠越えの途中で休む車で賑わっていた。大きなドライブインが営業していたが、今は廃屋と化していた。野地温泉の登山口は、温泉旅館の駐車場を利用するため、野宿はしずらい。ドライブインの前に車を止めたが、したたり落ちる雨水が、廃屋のトタンかなにかに反響するので薄気味が悪い。少し下がった所に車を止めて寝た。山中の林道奥深くでの野宿ならいざしらず、車道脇の廃屋に薄気味悪いものを感じるとは、思ってもいなかった。
 今回のコースの登山口としては、土湯峠、新野地温泉、野地温泉の三カ所が考えられる。距離が一番短そうな野地温泉から歩き出すことにした。
 旅館の左脇から登山道が始まっていた。旅館の裏手からブナ林の中を緩やかに登っていくと、じきに送電線が頭上を通過する十字路に到着した。ここが旧土湯峠で、笹原の向こうには、鬼面山の山頂が頭を持ち上げ、その右手には、箕輪山が、緑に覆われ、深皿を逆さまにしたようなボリューム感のある姿を見せていた。
 しばらく歩くと、傾斜もきつくなってきた。登山道の左手はロープが張ってあり、下は切り落ちていた。石が露出した歩き難い道であった。振り返ると、吾妻連峰の高山と東吾妻山が、大きな姿を見せていた。汗もしたたり落ちるようになってきた。足にも少し違和感があり、北海道の山の疲れが残っているようであった。
 標高差200mを登り切って到着した鬼面山の頂上はガレ場になっており、左手の高みに踏み跡を辿ると三角点が頭を出していた。目の前には、大きく箕輪山が広がっていた。一旦大きく下ってからの登り返しもかなりあるようであった。実際には80m下ってから330mの登りになる。カシミールで地図を見ていながら、事前に標高差を確認していなかったのはうかつであった。
 鬼面山からの下りは、ガレ場の中で踏み跡が判りにくくなっている所があった。左に方向を変えながら下る必要があった。鞍部に続く登山道を見下ろすことができたが、ガスでもかかっていると登山道を見失いやすそうであった。
 箕輪山への登りは、登山道が雨水で大きく掘り込まれており、その端を辿る必要があり、粘土質の斜面で滑りやすくなっていた。振り返ると、鬼面山は、眼下に遠ざかっていった。大きな山なので、じっくりと登りに専念するしかない。
 箕輪山の山頂手前で、横向温泉からの登山道が合わさった。展望も開けて、秋元湖の向こうには、磐梯山を望むことができた。その先で、台地状の箕輪山の山頂に到着した。大岩の脇の下降点開始部が山頂になっているようであったが、山頂の1728標高点は、少し奥まったところで、三角点はさらに奥にある。踏み跡があったので辿ってみた。最高点を過ぎて下りになると、踏み跡はようやく見分けられるといった状態になった。藪は、膝下の笹が主であったので辿るのは難しくはなかったが、夜露をたっぷりと含んでおり、あっという間に下半身がずぶ濡れになってしまった。台地の縁近くで、三角点にお目に掛かることができた。
 登山道に戻って、鉄山に向かった。今度は130m下って130mの登り返し。縦走といっても、この道を引き返さなければならないので、いささか気は重い。鉄山の避難小屋が見え、その向こうに沼ノ平の火口壁が見えているとあっては、先に進まないわけにはいかない。
 鞍部では、東から塩沢温泉からの道が合わさったが、この道は荒廃しており今後は草刈りを行わないという表示があった。鉄山への登りは、急な所は僅かで、鉄山の避難小屋に到着した。新しい避難小屋であったが、その手前付近で硫黄の臭いが強く感じられたので、泊まるのはどうなのだろうか。
 ここまでは灌木帯に囲まれた登山道とはうって変わって、ザレ場の歩きになった。樹林限界を超えたように展望も開け、歩くに連れて姿を変えていく沼ノ平を眺めながら、カメラを撮りながらの歩きになった。沼ノ平を横断中の登山者が有毒ガスによって死亡した事故は記憶にも新しい。火山灰が積もっているのだろうか、中央にはグラウンドのような灰色の平地が広がっている。左手の船明神山の下は、切り立った火口壁になっている。赤茶けた岩が広がる中、右手には白い岩場も混じっている。荒涼とした眺めであるが、眺めていて見飽きることがない。
 鉄山の頂上へは、緩やかな登りで到着した。山頂の少し先の岩場からは、目の前に安達太良山の眺めが広がっていた。鬼面山からの縦走は、ピークに立つごとに新しい眺めが広がるのが素晴らしい。
 鉄山からは、山頂標識の手前から右に下がって、岩場の一段下を巻く。岩場の急な下りで鞍部に下り立つと、この先は馬の背と呼ばれる細尾根で、左右の眺めが広がる。右手の沼ノ平の眺めは、この付近からが一番素晴らしい。左手の斜面の下には、くろがね小屋を見下ろすことができた。以前は、ここからダイレクトにくろがね小屋に下ることができたが、現在ではガス噴出の危険性のために、この道は閉鎖になっている。
 馬の背からひと登りすると矢筈森に到着した。登山道は下を通過しているので、ガレ場を辿って、ピークの上にたったが、山頂標識のようなものはなかった。
 矢筈森までくれば、安達太良山は目の前である。乳首山とも呼ばれる安達太良山は、この方面からは普通の小岩峰としか見えない。
 安達太良山の下部からは、鎖もかかる岩場の登りになるが、ひと登りである。頂上は岩場になっており、三角点と石碑が置かれている。二人連れが休んでいるだけであったが、大人数が休める程広くはないので、団体が登ってくると面倒である。一通り写真を撮ったところで、岩場を下って、下の広場で休むことにした。
 鉄山の山頂でのグループを皮切りに、その後は他の登山者にも出会うようになっていたが、乳首周辺の登山者は、さほど多くはない。奥岳スキー場からのゴンドラを使うとすると、ゴンドラ始発は8時30分で、五葉松平からは1時間05分のコースタイムなので、早い登山者がようやく到着する頃である。山頂付近にいる登山者は、くろがね小屋泊まりの者のようである。休んでいるうちにも、続々と登山者が登ってきた。
 帰りは、鉄山まではカメラを首に下げながらの歩きになった。雲が流れ、その間から差し込む太陽が、沼ノ平をスポットライトのように照らしていた。安達太良山は、奥岳スキー場、和尚山、そして今回の箕輪山経由の、三通りのコースで登ったが、次回は、沼ノ平を巡るコースで歩いてみよう。
 帰り道は、箕輪山への登りがやはり大変であった。雲が出てきており、振り返ると鉄山も霞んでいた。山頂には、単独行が休んでいた。その後も、登山者に出会うようになったが、時間的にも、皆、箕輪山止まりのようであった。展望がすでに閉ざされているので、登っても展望を楽しめないのは残念であろう。
 下山後、新野地温泉相模屋旅館で温泉に入った。ここの露天風呂には、丁度一年前に入り、鄙びた風情がお気に入りになった。その際に、この温泉と合わせて、箕輪山から安達太良山へのコースを歩こうという気になったといういきさつもある。
 新潟に戻る途中、激しい雨となった。予定の時刻に胎内に到着することもでき、天気の崩れも考えれば、良い計画であったということになる。
 ホテルに泊まってこまるのは、朝食をとると、山には遅くなるということである。バイキング方式の朝食をしっかりとって、ホテルを出たのは8時になっていた。この日は、当初から簡単な山に登るつもりであったので、朴坂山に登ることにした。昨年の菅名山塊に引き続き、今年の秋は朴坂山塊を重点的に歩く予定である。6月12日にも嶽薬師から朴坂山までを歩いたが、一番のメインとなる朴坂からのコースをGPSのデーターとしてとっていない。地図を見ても、登山コースははっきりしない。
 朴坂の登山口へは、朴坂橋を渡るように、国道を少し手前から下りる必要がある。しばらく来ていなかったので、女川橋を渡ってから朴坂の集落に向かったため、集落内の狭い道路に行き当たり、とまどった。回り込んで、朴坂橋に出た。朴坂橋を渡った先から集落へとカーブしながら続く道は、幅広で、登山者用に臨時駐車場という標識も置かれている。
朴坂山へは、朴坂神社経由と脇ノ沢林道経由の二通りがある。メインの朴坂神社経由で登ることにした。絵看板があり、朴坂山への登山道を示す道標も置かれている。
 幅の狭い車道を登っていくと朴坂神社のお堂の脇に登り着き、ここから登山道が始まった。以前と道の様子が違っていた。
0.5m程のコンクリート敷きが続くが、これは昔あったという栗園への道の名残のようである。登山道は枝沢を巻くように続き、周囲は杉林のため、陰気な感じがする。幸い、アブやヤブ蚊が現れないので助かった。
沢を巻いて尾根を乗り越すと、右手から踏み跡が合わさるが、これが脇ノ沢林道経由の道である。ここには小さな標識があるが、脇ノ沢林道経由朴坂とは書いてないので注意が必要である。
 この付近から周囲には雑木林が広がるようになったが、日当たりも良くなり、汗が流れ落ちるようになった。夏の低山歩きは大変である。登りの傾斜も増して、一歩ずつ息を整えながら登るようになった。
 最後に急坂を登り終えると、要害山からの縦走路に合流した。後は緩やかな稜線歩きを続けると、朴坂山に到着した。山頂の三角点脇に、木陰を選んで腰を下ろした。タオルを絞ると、水に浸けたようになっていた。山頂広場から踏み跡を辿った先の展望地に進んでみると、朴坂の集落を見下ろすことができ、目の前には光兎山、少し遠くには朝日連峰を望むことができた。時間は早かったが、ビールを飲んで一息ついた。
 下山は、滑らないように足元に注意が必要であった。それでも一回、大きく尻餅をついてしまったが。途中から脇ノ沢林道を下った。分岐のすぐ下まで林道が迫ってきており、林道の登山道入口には、朴坂山の標識が立てられている。林道の路面状態は悪くはなかったが、草が生えて、通行する車はほとんど無いようであった。林道入口には、ゲートが設けられて、一般車は入れないようになっていた。この林道は、最後には朴坂橋の脇に出るので、車にはすぐ戻ることができる。脇ノ沢林道は、下山路として用いるのが良いであろう。
 朴坂山に登って、この日の目的は果たすことができ、暑いので家に帰ることにした。

山行目次に戻る

表紙に戻る