神籠ヶ岳、枯木山

神籠ヶ岳
枯木山


【日時】 2005年4月2日(土)〜3日(日) 前夜発1泊2日 各日帰り
【メンバー】 4月2日:単独行 3日:7名グループ
【天候】 4月2日:晴 3日:曇り

【山域】 南会津
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
神籠ヶ岳・かろうがたけ・1376.3m・三等三角点・福島県
【コース】 沼山より
【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/田島/林中
【ガイド】 会津百名山ガイダンス(歴史春秋社)
【温泉】 湯野上温泉清水旅館 500円

【山域】 南会津
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
枯木山・かれきやま・1755.4m・三等三角点・福島県
【コース】 安らぎの森より

【地形図 20万/5万/2.5万】 日光/田島/湯西川、湯の花
【ガイド】 ふくしま百山紀行(歴史春秋社)
【温泉】 元湯共同浴場 400円(石鹸、シャンプー無)

【時間記録】
4月1日(金) 19:40 新潟=(磐越自動車道、会津坂下IC、会津本郷、南原、R.118 経由)=22:30 湯野上 (車中泊)
4月2日(土) 7:00湯野上=7:20 沼山〜7:55 発―8:37 尾根取り付き―9:52 1381mピーク―10:20神籠ヶ岳〜10:45 発―11:10 1381mピーク―11:47 尾根取り付き―12:14 沼山=(R.121、会津田島、五十里湖 経由)=17:00 湯西川駅  (車中泊)
4月3日(日) 5:50湯西川駅=6:25 安らぎの森〜6:45 発―7:43 もちづけ橋―10:50 1549mピーク―13:11 もちづけ橋―14:10安らぎの森=(R.121、会津田島、R.118、南原、会津本郷、会津坂下IC、磐越自動車道 経由)=17:30 新潟

 神籠ヶ岳は、会津下郷町にある大内の宿の西に位置し、登山道があって親しまれている小野岳と向かい合う山である。この山に登山道はないことから、積雪期をねらって登ることになる。
 枯木山は、福島・栃木県境の荒海山と帝釈山の中間に位置する山である。三角点は、福島県側にあるが、アプローチは、栃木県側からの方が近い。奥田博氏の「ふくしま百山紀行」には、「枯木山は、会津の山好きにはあこがれの山である。枯木山に登れば、やっと会津の通と云われるほど無名で、奥深い、何の取り柄もない、偉大な山である。そんな意味で会津らしい山の代表だと思っている。」と紹介されている。

神籠ヶ岳には、今年の2月6日に登ろうとしたものの、深い雪に阻まれ、尾根の途中で撤退になった。日曜日に枯木山の計画が入ったため、土曜日には神籠ヶ岳に再挑戦することにした。雪もしまってきて、ラッセルの苦労も無くなっているはずである。
 神籠ヶ岳は、順調に登れれば、楽に日帰り可能な山のようであるが、今回は時間の余裕を持たせるために、前夜発とした。そのわりには、朝起きる時間が遅くなって、登山口の沼山集落先の林道入口に到着したのは、早朝発と大して変わりない時間になっていた。
先回は、吹雪の状態であったが、この日は快晴の朝になった。車道脇の雪はさすがに減ったとはいえ、人の背丈程の高さの壁で残っていた。雪が締まったかなと思って蹴ってみると、ザクザクの状態であった。わかん歩きは大変そうなので、スノーシューで歩くことにした。例年なら、つぼ足可能で、スノーシューのシーズンも終わりのはずなのだが、今年は季節の移り変わりも二週間ほどは遅れているようである。
 コースは先回と同じにした。沼山集落の南にある工場らしき建物の前から始まる破線道は、脇にそって電柱が並んでいるので、雪に埋もれていてもそれと判る。スノーシューは少しは沈むものの、先回の電柱一本でトップ交代をするのと比べれば、登山道を歩いているのと変わらない。
 造林のための作業小屋なのか、立派な建物の手前で、コースを左に変えると、沢を左に見ながらの歩きになる。杉林の中を緩やかに登っていくと、1381mピークへ続く尾根の末端に到着する。先回は、ここまでで2時間25分かかり、すでに敗北感にとらわれていた。今回は42分。これでつぼ足歩きが可能なら、30分程の距離であろう。雪山の歩行時間は、寿司屋のカウンターの時価と同じで、払う時にならないと判らない。それがいやなら、明朗会計の回転寿司ならぬ登山道のある山だけを歩けば良い。
 雑木林の尾根も、豊富な雪に助けられて、快調に登ることができた。途中で傾斜がきつくなるが、雪も締まってきて、スノーシューの爪がかかりにくくなった。オプションのアイゼンも持ってきていたが、つぼ足で歩いて見ることにした。薄い新雪の層の下が堅くなっており、時折潜ることもあるが、つぼ足で歩き続けることができた。
 急登が終わると、ブナ林が広がるようになる。先回は、尾根の取り付きからここまで3時間もかかってしまい、あえなく敗退となった。再びスノーシューを履き、カメラを首から提げての、ブナ林を眺めながらの余裕の歩きになった。木立が雪の上に落とす陰が美しかった。
 1381mピークに到着すると、ようやく神籠ヶ岳の山頂が姿を現した。緩やかに下っていった先に、なだらかな山頂を見せていた。稜線の右に向かって雪庇が張り出しており、その下にはブナ林が広がっていた。いかにも会津の雪山という眺めであった。
 神籠ヶ岳への登りの途中、大内宿を眼下に見下ろすことができ、小野岳が目の前に大きく広がっていた。神籠ヶ岳の山頂は、雪原となっていたが、雪庇の踏み抜きが怖くて、縁には近寄れなかった。日差しは明るいものの、風が冷たいため、山頂の先に進んでから腰を下ろした。
 登りの途中で、失敗をしでかしたことに気が付いていた。車の中に、昼食用の弁当を忘れてきていた。といっても、昼には早い時間なので、ザックの中にあった焼き鳥缶詰を開けて、ビールを飲んだ。快調に登れたこともあり、気分は上々であった。
 こうも容易に登れると判っていたなら、別ルートでの下山を計画していたところであるが、あいにくと、GPSにルートを入れてこなかった。地図を見ながらでも下れるはずであったが、無理はしないで来た道を戻ることにした。
 風景やブナ林の眺めを楽しみながら1381mピークに戻ると、東尾根から数名のグループが登ってくるのが見えた。下山後に、沼山集落の北側に二台の車が停まっていたことをみると、1030.2m三角点尾根のすぐ北側の尾根を登ってきたように思える。神籠ヶ岳へはいろいろなコースが考えられるが、私が使ったコースが傾斜も緩やかで、もっともスノーシュー向きであろう。
 急斜面に取りかかると、表面の新雪ごとスノーシューが滑るようになったので、つぼ足になって下った。雪も緩んで、膝までが潜る状態になったが、下りのために気にはならなかった。尾根をおおよそ下ったところで、スノーシューを再び履いた。
 昼には登山を終えたので、持ち忘れた弁当を車の中で食べた。雪山ともなるともう一山という気にもならず、観光モードに入って、大内宿の見物に向かった。料金300円の駐車場に車を停め、大内宿に入ると、茅葺き屋根の建物が並んでいた。建物は、全て土産物屋やそば屋、民宿の観光用であった。観光客に混じって店をのぞきながら歩いた。集落の背後に神籠ヶ岳を望むことができた。この後は、湯野上で温泉に入り、翌日の枯木山のために湯西川に向かった。
 枯木山へは、安らぎの森から歩き出す予定であったが、待ち合わせ場所は、野岩線の湯西川駅前広場とした。湯西川駅は五十里湖の畔にあり、周囲には人家は一軒も無かった。夜中は静かで良いと思って眠りについた。
 夜中に車の窓ガラスを叩く音で起こされた。外は暗かったが、なにか予定変更で一行が到着したのかと思って、寝ぼけ眼で起き出した。起こしたのは警官であった。免許所の提示を求められ、不審尋問となった。日本全国、北は稚内から南は屋久島まで、車の中で寝てきたが、夜中の不審尋問に合ったのは、これまで一度しかない。これは福岡の英彦山でのことで、パトカーが、山中の林道を走るローリング族を追いかけ回したあげく、パーキングで寝ていた善良な登山者を見つけて、不審尋問したという、おそまつな一件である。新潟ナンバーの車だったので、不審に思ったと言い訳していた。栃木県では、新潟県の人間は珍しいとでも。神籠ヶ岳に登ってきて、明日は枯木山に登る予定といっても、理解していないようであった。これをもって、登山届けとさせてもらうと言っておいた。無線で問い合わせするにも、少々時間がかかったが、ようやく無罪放免されて、再び眠ることができた。
 翌朝の待ち合わせに問題はなく、登山口に向かった。五十里湖から先の湯西川沿いの道は長かった。湯西川温泉手前で、安らぎの森への車道に進むと、道路上に雪が現れた。結局、安らぎの森から400m程手前のウツルギ沢に掛かる橋から歩き出すことになった。
 つぼ足で、ピッケル・アイゼン、ワカンを持って歩き出した。安らぎの森は、栃木県の登山ガイドにも取り上げられている、アウトドアのための自然公園である。静かな雪原が広がっていた。安が森ロッジの前の分岐で、左の白滝沢沿いの林道に進んだ。太陽に照らされて、雪はたちまち緩んで、足がもぐるようになった。わかんを履いての歩きとなり、ペースダウンになった。
 右岸から左岸に渡る橋は、ネームプレートが雪に埋もれていたが、もちづけ橋と呼ばれるらしい。橋を渡ったところから始まる尾根を使い、1263m点を経て1549m県境ピークに登り、後は県境稜線沿いに枯木山へというのが、今回の計画であった。
 尾根の取り付き部は、雪が落ちて草付きが半分程になっていた。滑らないように注意しながら、雪を辿って尾根の上に出た。尾根沿いには、雪が残っており、歩きやすくなった。ただ、わかんを履いていても潜る状態で、トップ交代をしながらのラッセルになった。登山靴のトップを蹴り入れながらの登りと思っていただけに、予想が外れ、コースタイム的にきびしくなってきた。
 県境稜線が近づくと、ブナ林が広がるようになった。尾根の途中からは、荒海山や日留賀岳の眺めが広がっていたが、次第に雲がかかってきた。夕方からは雨の予報も出ており、天気の崩れが近づいているようであった。
 最後に急な雪原を登り切ると、1549m県境ピークに到着した。冷たい風が吹き抜け、稜線はガスで視界が悪くなっていた。枯木山方面へ続く県境稜線を眺めると、大きく発達した雪庇が割れ初めていて、通過には灌木帯のヤブコギが必要なようであった。稜線に出ても雪は柔らかく、歩きの速度は上がらないようであった。
 この先の時間を考えると、枯木山までは無理ということになり、ここまでで下山することにした。急坂を下った所のブナ林で昼食とした。林道に戻ってからの最後の林道歩きには、登頂できなかったことあり、いっそう草臥れた。
 さすがに枯木山は、簡単には登らせてくれない。まだ、会津の通とはいえないということで、もう少し精進してから再挑戦しよう。

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