黒伏山、白森、柴倉山、御所山、楠峰、白髪山

黒伏山、白森、柴倉山
御所山、楠峰、白髪山


【日時】 2004年10月16日(土)〜17日(日) 各日帰り
【メンバー】 16日:高橋、岡本 17日:単独行
【天候】 16日:曇り 17日:曇り後晴

【山域】 船形山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
黒伏山・くろぶしやま・1226.7m・二等三角点・山形県
白森・しろもり・1263m・なし・山形県
銭山・ぜにやま・1237m・なし・山形県
福禄山・ふくろくやま・1211m・なし・山形県
柴倉山・しばくらやま・1275.7m・三等三角点・山形県
毘沙門山・びしゃもんやま・1215m・なし・山形県
【コース】 黒伏山より粟畑へ縦走
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/関山峠/船形山
【ガイド】 分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「蔵王・面白山・船形山」
【温泉】 べに花温泉ひなの湯 250円

【山域】 船形山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】
御所山・ごしょざん(船形山・ふながたやま)・1500.2m・一等三角点本点・山形県、宮城県
楠峰・くすみね・1210.5m・三等三角点・山形県、宮城県
白髪山・しらひげやま・1284.2・三等三角点・山形県、宮城県
【コース】 観音寺コース
【地形図 20万/5万/2.5万】 仙台/関山峠/船形山
【ガイド】 分県登山ガイド「山形県の山」(山と渓谷社)、山と高原地図「蔵王・面白山・船形山」
【温泉】 赤湯とわの湯 100円(石鹸・シャンプー無し)

【時間記録】
10月15日(金) 20:00 新潟=(R.7、新発田、R.290、R.113、赤湯、R.13、天童、R.48、観音寺 経由)=24:00 黒伏山登山口  (車中泊)
10月16日(土) 6:17 黒伏山登山口―7:36 遅沢分岐―8:41 黒伏山―9:20 白森〜9:31 発―9:56 銭山―10:31 福禄山―10:41 福禄山鞍部分岐―11:05 柴倉山登り口―11:32 柴倉山―11:51 柴倉山登り口―12:16 巻き道終了―12:40 昼食〜13:00 発―13:23 ウバ地蔵―14:12 粟畑―14:43 柳沢林道終点
10月17日(日) 6:13 柳沢林道終点―6:44 粟畑―6:55 仙台カゴ下(水呑場)―7:07 楠峰下―7:32 定義分岐跡―8:11 御所山山頂下―8:39 御所山―9:01 御所山山頂下―9:32 定義分岐跡―10:03 楠峰下―10:19 楠峰―10:35 楠峰下―10:48 仙台カゴ下―10:59 粟畑―11:22 白髪山―11:39 昼食〜11:55 発―12:07 粟畑―12:36 柳沢林道終点=(往路を戻る)=18:00 新潟

 船形連峰は、宮城・山形県境に十字形に広がり、船形山はその最高峰である。山容が船を伏せたような姿であることから船形山と名付けられているが、これは宮城県側からの呼び名である。山形県側からは御所山と呼ばれ、これには、参拝者が五の峰を巡礼したことから「五ヶ所山」あるいは、順徳天皇が隠れ住んだことから「御所山」と名付けられたという説がある。
 御所山から西には、仙台カゴ、最上カゴ、柴倉山、黒伏山といった個性的な岩峰が連なっている。特に黒伏山の南壁は、東西500mに渡って標高差300mの大岩壁をめぐらして、見る者を圧倒する。
 黒伏山に登ろうとする目的は、残り僅かになった東北百名山巡りのためであった。旧版に載っていた紅葉の写真が美しく、登るなら秋と決めていたので、新潟からは比較的近いにもかかわらず延ばし延ばしになっていた。黒伏山に行くことを、なにかのきっかけで宮城の高橋さんに話したところ、黒伏山から柴倉山を経て、御所山への観音寺コースとの分岐である粟畑までの縦走の誘いが入った。単独なら車一台のため、黒伏山から柴倉山まで歩いて下山するつもりであったので、縦走路を歩けるならその方が有り難く、一緒に歩く話を進めた。
 新潟を前夜の8時に出発し、小国、山形を経て、丁度0時に黒伏山の登山口に到着した。地図には、大平放牧場と書かれていたが、黒伏山と向かい合う水無山の北斜面は、黒伏高原スノーパークジャングル・ジャングと呼ばれるスキー場に変わっていた。そのおかげで、アクセス道路は、立派な車道になっていたのは良いが、暴走族の夜中のワインディング走行の場になっていた。暗い中、黒伏山の登山口がどこか判らないので、林道の入口脇の広場に車を停めて寝た。幸い、林道入口付近は、直線道路が続いて面白くないのか、ここまで進んでくる車はほとんどいなかった。
 翌朝、待ち合わせ時間よりも少し早く高橋さんが到着し、さっそく、柳沢林道の終点に車を置きに出発した。林道は未舗装といっても砂利が敷いてあり、轍に所々注意する必要があるといっても、比較的走りやすい状態であった。地図から受ける感じよりも、長く、高度差のある林道であった。途中、柳沢避難小屋を通過したが、泊っている人もいるようであった。林道終点は、車20台程の広場になっていた。私の車を置いて、高橋さんの車で黒伏山登山口に引き返した。行ったり来たりと、慌ただしい朝になった。この時は、翌日もこの林道を往復することになろうとは思っていなかった。
 黒伏高原スノーパーク一帯には、多くの駐車場が設けられているが、第4駐車場の脇から荒れた林道が沢に向かって下っており、ここが黒伏山と柴倉山の登山口になる。黒伏山の岩壁が頭上を圧するように聳えていた。クライミングの山としても有名とは聞いていたが、出発の準備をしている間に、ヘルメット姿の若者グループが歩き出していった。
 坂を下って村山野川の縁に到着してみると、先行した若者グループが、徒渉に手間取っていた。以前あった丸木橋は流されてしまい、現在は徒渉が必要なようである。ここのところの長雨のせいで、靴を濡らさないで渡るためには、脱ぐしかないようであった。徒渉点の手前には、鉄パイプ組みの橋が、柴倉山からの尾根の末端に向かって架けられており、関係者以外は使用禁止と掲示されていた。ところが、周辺の案内図も掲示されており、橋と登山道の関係が書かれていた。どうも、禁止と書かれた橋を渡って事故を起こしても、当方は関知しないよという意味のようであった。後で、インターネットを使って他の山行記録を探してみると、数年前からこの仮橋は架かっているようである。橋を渡って対岸の鉄パイプの梯子を登ると、柴倉山への登山道に出て、そこからは10m程も下れば、枝沢の徒渉点に出て、ここは飛石伝いに簡単に渡ることができた。
 少し枝沢を上流に向かってから黒伏山の岩壁の下をトラバースしていく道になった。ブナ林に囲まれた静かな道であったが、苔むした岩が転がっているので、歩き難かった。この日、クライミンググループが親子連れのクマに遭遇したと、翌日他の登山者から聞くことになったが、一緒になったグループであったのだろうか。
 トラバースからは、岩壁の展望は、木立に阻まれてほとんど得られなかったのは残念であった。黒伏山から南に延びる尾根を乗り越し、さらにトラバース道が続いた。山の裏側に回りこんだところで、遅沢林道からの登山道が合わさり、ここからようやく登りが始まった。
 ようやく始まった登りであったが、急登の連続になった。高橋さんも健脚なため、快調なペースで登り続けた。ようやく傾斜が緩んで、山頂到着かと思ったが、もうひと登りあった。幸い、この後の登りは、そうきつくもなかった。
 尾根上に出ると、「右は行き止り・左は東岳・白森至」という標識が立てられていた。目指す黒伏山の山頂は、東岳ということのようであった。右に向かって、しっかりした道が続いていたので、少し進んでみた。刈り払いも新しい道であったが、崖際に続いており、縁に沿うのは生育の悪い潅木のため、路肩を踏み抜けば、そのまま転落しそうで注意が必要であった。潅木に遮られて、岩壁自体は見えないのは残念であった。ただ、歩き初めの駐車場は眼下で、高度感は充分であった。道は崖の縁に沿って長く続いていたが、適当な所で引き返した。振り返ると、ドーム状の黒伏山の山頂の眺めが広がっていた。
 黒伏山・東岳への登りにかかる所で振り返ると、岩壁が垂直に切り落ちている様子を眺めることができた。潅木帯の中を登っていくと、黒伏山の山頂に到着した。小広場になっており、立派な山頂標識が立てられ、三角点が頭を出していたが、周囲の展望はなく、岩場の存在をうかがわせるものもなかった。先は長かったため、そのまま縦走路を先に進んだ。
 黒伏山からは、標高差110mの大下りになり、その後は140mの登り返しになる。鞍部付近には、美しく紅葉したブナ林が広がっていた。今年の紅葉は少し遅くなっているようで、黒伏山の麓付近はまだ緑で、高度を上げてようやく紅葉に出会える状態であった。
 木立の間から姿を現した白森は、すっきりした三角形の山頂を持ち、魅力的な姿をしていた。白森の山頂付近には岩場も見られたが、登りのきつさは別として、特に危険な箇所もなく山頂に到着した。
 白森の姿から期待していたのだが、遮るもののない展望が広がっていた。黒伏山は、東西二つのピークが並んだ穏やかな姿を見せていた。南面の壮絶な岩壁は、思い浮かんでこない眺めであった。この先、まだまだ長い縦走路も一望でき、その先の遠くに船形山も望むことができた。ただ、船形山の山頂にはガスがかかっていた。朝日連峰や葉山、月山、大東岳、蔵王連峰といった山も遠くに見分けることができた。展望を楽しみながら、朝食の腹ごしらえをした。
 この白森の山頂にも、「白森山山頂」と書かれた新しい山頂標識が立てられていた。昭文社の登山地図では、黒伏山までを含めて、縦走路全体は赤の破線で記されている。登山道の状態がいささか不安であったのだが、整備の手は充分に入っており、問題なく歩けるようであった。
 続く1237mピークが銭山であり、ここにも立派な山頂標識が立てられていた。緩やかに起伏する稜線歩きが続き、展望と紅葉の眺めを楽しむことができた。ただ不思議なのは、かなり歩いたつもりでも、黒伏高原スノーパーク一の眺めが遠ざからずに、眼下に見え続けることであった。
 1211mの福禄山では、山頂近くで登山道が下りに転じ、脇道があったので、これが山頂への道だと思って進んだが、すぐ先で終わっていた。なだらかな山頂の中央までは、10mもなかったが、密生した潅木帯で、三角点も置かれていないので、引き返すことにした。中途半端な刈り払いの理由が判らない。
 福禄山からは、急坂の下りになった。柴倉山分岐から登ってきて黒伏山をめざす二グループとすれ違った。福禄山下の鞍部には、スキー場からの登山道が右手から合わさった。丸い金属板の標識には、大平放牧場と書かれているので、今後、登山口の名前が問題になるかもしれない。
 1209m小ピークに上がると、柴倉山の山頂が眼前に迫った。柴倉山については事前にイメージを掴んでいなかったのだが、登るのに不安を覚えるような岩壁を巡らした鋭峰であった。
 縦走路は、柴倉山の北斜面を巻いていくので、山頂への道を見落とさないように注意が必要である。稜線沿いから逸れるところから山頂への道が始まっていた。登山標識はなかったが、分岐にはテープが数本取り付けられていた。荒い刈り払い道で、急斜面が続いた。鎖場も、足場の悪い泥斜面と、5m程の岩場の二ケ所に現れた。足を滑らせると、滑落の危険性が高いため、鎖の無い所でも、慎重に木の枝を選んで掴んでいく必要があった。傾斜が弛んでからもうひと登りで、山頂に到着した。小広場で刈り払いは終わったが、GPSでは、三角点はもう少し奥を示していた。北側の崖の縁にかすかな踏み跡が続いていた。潅木をかき分けていくと、三角点の置かれた小広場に飛び出した。せっかくなら、ここまで刈り払いを勧めておけばよいものだが。東の展望が開け、眼下に縦走路が続いていた。
 昼休みの時間であったが、山頂を吹き抜ける風は冷たかった。この週末は、各地の山で、降雪があったようである。昼食にビールといっても、アルコールの相応しい山頂ではなかった。まずは、分岐に戻ることにして、支点に注意しながら、慎重に急坂を下った。
 分岐付近も谷から吹き上げる風が冷たかったので、先に進むことにした。トラバース道ということである程度予想はしていたのだが、ここまでの道に比べて、歩き辛い道になった。夏草の茂った崩壊地の通過や、手がかりのほとんどない泥斜面など、気の抜けない歩きが続いた。
 トラバースを終えて稜線通しの道に戻ると、再び歩きやすくなった。登山道の上に草が延びだしているところもあったが、歩きの支障になる程ではなかった。次に名前のあるピークとしては、弁天山であるが、ひと登りすると、同じような緩やかなピークが連なるようになった。丁度、左手は潅木帯が風よけになっていて、右手に谷を臨む展望地に出たので、昼休みにした。
 誰も来ないはずの縦走路なので、登山道の上に腰を下ろした。最上カゴも目の前に迫ってきており、船形山も近付いてきた。谷を染める紅葉も盛りであった。明日登る山は、東北百名山の登り残しの山を考えていたのでが、標高も低いため、紅葉は期待できなかった。船形山の眺めに心が動かされた。
 弁天山は、それと気が付かないうちに通過した。坂を下った鞍部には、ウバ地蔵の石像が置かれていた。ここは十字路になっており、大沢小屋方面からの道は、草が被って廃道に近かったが、柳沢林道から谷を渡ってくるらしい道は、刈り払いも新しかった。
 続く最上カゴは、山頂のすぐ北側を巻いて通過してしまった。登山道周囲の潅木に阻まれて、山頂までの距離が判らなかったのだが、山頂へ向かう踏み跡も注意していたつもりであったが目に入らなかった。帰宅翌日に読んだ新しく出たばかりの「山と渓谷11月号」には、タイムリーというべきか悪いタイミングというべきか、最上カゴのガイドが載っており、縦走路の北側から踏み跡を辿るとあった。登山道から標高差30〜40mと書かれていたが、GPSのログからは、20m以下の標高差のようである。心残りの課題が残ってしまったが、再訪の理由ができた。次に行く時には、はっきりした道ができているであろう。
 仙台カゴの鋭峰を眺めながら、ほぼ平坦な稜線を辿っていくと、人声が聞こえてきて、粟畑の十字路に到着した。御所山へのメインコースに合流ということで、縦走もほぼ終わった気分になった。
 粟畑から柳沢林道終点までは、ブナ林の中の緩やかな下りが続いた。これが、急坂ででもあったなら、翌日の登り返しの気は無くなったであろう。ブナ林の紅葉の写真を撮りながらの歩きになった。このブナ林の紅葉に浸っていたくなり、翌日は御所山を目指す決心をした。数合わせの登山よりは、その時々に心引かれる山を登っていくのが幸せと感じる。ブナの葉の緑が濃くなってくると、木の鳥居が立てられた祠があり、その先で林道終点の広場に飛び出した。
 車で黒伏山登山口に戻り、縦走は終了した。またの再会を約して、高橋さんとは別れた。黒伏山の岩壁は、日が陰って、すでに黒く沈み込んでいた。
 縦走の途中の気分の変化で、翌日は御所山を目指すことにした。この山は、宮城県と山形県で呼び名が異なっている。96年6月22日に、大滝キャンプ場から船形山に登っているが、山形県側からは登っていない。御所山を登るため、また南御所山縦走コースをつなげるためという理由ができた。
 一旦国道付近まで出て、温泉入浴と夕食、買い物を済ませ、再び黒伏高原スノーパークに戻った。予定外の登山コースのために、コンピューターを立ち上げ、GPSのトラックデーター作成と地図の印刷を行った。夜に入ってから、風が強くなったが、雲が流れる中、星が輝いていた。
 翌朝、明るくなった所で、林道終点広場に移動した。すでに五台程の車が停まっていたが、キノコ採りも混じっているようであった。
 早朝のブナ林は静まり返っており、足音も濡れ落ち葉に消された。緩やかな登り坂に、今日は早めに山歩きを終えて帰宅したかったこともあり、足を早めた。昔からの道のようで、白髪山の山腹を巻いていくうちに、体力の消耗を押さえて粟畑に到着することができる。ここまでは、昨日も歩いた区間で、ここから御所山への縦走の続きの開始になる。
 緩やかに下っていくと、仙台カゴ前(水呑場)という標識に出た。仙台カゴ方面から小さな流れが入っており、水を汲むことができた。その先も緩やかな下りが続き、続いて楠峰下に出た。楠峰へ登るつもりで、コースもGPSに落としてきていたが、帰りに寄ることにして、先を急いだ。
 登山道は、丹生川の源頭部を巻くようにして、北に方向を変えた。谷向こうに仙台カゴがそそり立っているようであったが、ガスが流れて、展望は閉ざされていた。周囲には立派なブナ林が広がっていたが、眺めを楽しむには、もう少し光が必要であった。緩やかであるが、下りばかりが続く長い道にいささかうんざりしてきた。
 定義分岐跡(廃道)の標識に出てひと息いれた。ここは、仙交小屋跡なのか、ブナ林に囲まれた広場になっていた。
 ここからようやく登りが始まった。一旦傾斜が緩んで御所山山頂下の標識が現れた。ここは1260m地点で、この先は、250mの急坂が残されている。気合いを注入して、急坂に取りかかった。溝状に掘り込まれた崩壊地の登りも現れたが、ロープも取り付けられており、問題はなかった。急斜面であるだけに、足を運んでいれば、一気に高度が上がった。
 山頂の一画に到着し、升沢・泉・後白髪コースとの分岐を左に曲ってひと登りすると、御所山の山頂に到着した。ガスが流れて展望は閉ざされていたのは、前回と同じであった。前回、ガスが晴れるのを待って、中で2時間近く話し込んだ避難小屋は、その後燃えてしまい、現在は再建された新しい小屋に変わっていた。きれいな小屋であるが、新建材を使ったような外観を見ると、昔の避難小屋を懐かしく思う気もわいてきた。風が冷たく、山頂に留まっていることはできなかった。数名いた登山者も、下山していったか、小屋に入ったかで見えなくなっていた。流れる雲の間から太陽が透けて見えかくれしているので、時間が経てば、ガスも晴れそうであったが、まだ目標があったので、山頂標識と一等三角点の写真をとるなり、下山に移った。
 急坂を下っていく頃から、他の登山者ともすれ違うようになった。ひさしぶりの晴天の予報が出ている日曜日とあって、登山者も多くくり出しているようであった。定義分岐跡に戻ると、太陽の光も林の中に差し込み、紅葉も輝きだした。戻りの途中からは、仙台カゴも良く眺めることができた。
 楠峰下に戻ったところで、楠峰の山頂を目指した。踏み跡があるかと期待したのだが、完全な薮漕ぎになった。登山道のカーブ地点から窪地を辿り、尾根上をめざした。尾根上は、腰上の笹薮になった。ここから県境尾根を辿る予定であった。意外に傾斜があり、笹を掴んで体を支え、木の枝を分けるのに体力を使った。山頂一帯は、潅木の密薮であったが、その中に小さな切り開きがあり、三角点を見つけることができた。潅木の上に背伸びすると、御所山や仙台カゴ、白髪山を良く眺めることができた。楠峰は、登山道を少し整備すれば絶好の展望台になるのだが、惜しいことである。
 方向を間違えないようにするため、GPSを確認しながら歩いたため、登りと変わらない時間が下りにもかかった。これで、二つ目の目標を果たすことができた。
 粟畑まで戻ったところで、白髪山を目指した。潅木帯をひと登りすると、笹原の台地に出て展望が広がった。前方の笹原の中に、登っていく登山道を眺めることができた。一旦右に方向を変えてからひと登りすると、山頂台地の一画に到着し、その奥で三角点広場に到着した。潅木に囲まれて、南の展望が開けているだけであった。
 ここまでの登山道は、笹が倒れこんでおり、足下が見えない状態であった。この先、白髪山から寒風山まで登山道が開かれたのも、そう昔ではないが、その後の登山者が少ないためか、笹が被り気味のようであった。
 山頂広場の展望は良くないため、笹原まで戻って、腰を下ろして昼食にした。笹原の向こうに頭を持ち上げる仙台カゴの眺めが素晴らしかった。青空が広がり、御所山の山頂も良く見えていた。御所山の山頂で、ガスが晴れるまで待たなかったことを後悔する気持ちも少しはあったが、この誰もいない山で展望を楽しんだことで、良しとしよう。
 車に戻り、最後の課題を果たしに山を下った。昨日の出発時には、太陽も充分上っておらず、下山した時には日は陰っていたため、再度黒伏山の岩壁の眺めを写真におさめたかった。まだ昼の盛りであっため、青空をバックに、黒伏山の岩壁は輝いていた。道路脇からこのような圧倒的な岩壁の眺めを楽しめるとは思っていなかった。もう少し先の紅葉の盛りには、アマチュアカメラマンの三脚が並ぶことになるのだろうか。東北の「エルキャピタン」と名付けたら良いように思うのだが、エルキャピタン自体の一般的知名度が少ないだろうか。
 二日間、紅葉の山を楽しみ、満足感と共に家路についた。新潟周辺の里山の紅葉が始めるのも遠くないことであろう。

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