赤湯

赤湯


【日時】 2004年5月16日(土) 日帰り
【メンバー】 4名グループ
【天候】 晴

【山域】 苗場山
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 赤湯・あかゆ・1030m・なし・新潟県
【コース】 赤湯林道より
【地形図 20万/5万/2.5万】 高田/岩菅山、四万/佐武流山、三国峠
【ガイド】 山のいで湯日本百名湯(山と渓谷社)、ウォーキングガイド(新潟日報事業社)
【温泉】 赤湯(500円 石鹸シャンプーなし)、岩の湯 300円

【時間記録】 7:00 新潟発=(関越自動車道、湯沢IC、R.17、苗場 経由)=9:15 小日橋〜9:24 発―9:38 ゲート―10:06 棒沢―10:45 鷹巣峠―11:01 見返りの松―11:33 赤湯〜13:31 発―14:14 見返りの松―14:32 鷹巣峠―15:38 ゲート―15:55 小日橋=(往路を戻る)=19:20 新潟

 車では入れず、歩かなければならない温泉は、今では貴重な存在になっている。新潟県では、飯豊の湯ノ平温泉と苗場の赤湯が双璧であろう。
 赤湯は、苗場山の懐深く清津川の畔にある温泉で、一軒宿の山口館がある。苗場スキー場から始まる林道の終点から二時間の歩きでようやく到着できる、秘湯中の秘湯である。赤湯からは、苗場山への赤倉山経由の旧道と昌次新道の二本の登山道が始まっている。

 五月の連休後半は、三国スキー場から上ノ倉山、白砂山、佐武流山、赤倉山へと縦走し、赤湯に下山した。当初の計画では、山行の締めくくりに赤湯に入浴するつもりで、皆に連絡してその際の着替えの下着も用意していた。二泊三日の山行の最終日は、雨が降り出す前に下山してしまおうと足を速めることになった。赤湯に到着した時は、小雨が時折ぱらつきはじめていた。赤湯から林道のゲートまでは二時間ほどの歩きのようであったが、残雪のために林道の途中に車を置いてきたため、三時間程の歩きを覚悟する必要があった。温泉に入って体がなまってしまっては、歩き通せなくなりそうであった。温泉は断念し、とうとう降り出した雨の中を下山した。
 苦労はしたものの会心の山行であったが、赤湯に入浴しなかったことが心残りであった。赤湯は苗場山の登山口にあたるが、苗場山へ日帰りで歩いてさらに温泉に入ることは難しい。温泉宿に泊まるのも、温泉だけを目指すのも、一人では侘びしいものがある。と思っていたところへ、山歩きに目覚めたK氏が、山に誘ってくれと現れた。一昨年にも湯ノ平温泉へ、温泉ハイクとして出かけ、気に入ってもらったことを思いだし、赤湯ハイキングはどうだろうと提案した。
 赤湯というと、山形県の赤湯温泉をまず思い浮かべたようであったが、苗場山の山懐にあり、二時間ほどのハイキングで歩いて到着する秘湯であると説明すると、そこにしようということになった。結局、男性三名、女性一名の計四名で出かけることになった。
 先日の山行から10日程しか経っておらず、車がゲートまで入れるかどうかは不明であった。赤湯は、4月29日にオープンするといっても、林道の整備は5月中旬以降になるようであった。ハイキングが目的で出かけるので、林道歩きが少々長くなってもかまわないつもりであった。むしろ、温泉を目的とする一般客は敬遠するだろうという腹づもりもあった。
 晴天の朝になり、車窓から眺める山の展望を楽しみながらのドライブになった。雪解けもすっかり進んで、峰峰の残雪の白さも山頂部に残るだけになっていた。それでもかぐらみつまたスキー場へのゴンドラは運行中で、大勢のスキーヤーが集まっていた。
 元橋の平標山登山口少し手前の国道脇に、赤湯・山口館の案内板が掲げられているが、ここからの山道だと歩きが長くなってしまう。いずれにせよこの山道は林道に飛び出してしまうので、車で来た場合には、赤湯林道へ車を乗り入れることになる。
 苗場スキー場の下からは、案内標識に従って車を進めると、赤湯林道に自然に入っていく。頭上を苗場・田代ゴンドラが通過するポイントが、10日前の除雪終点であったが、その先に車を進めることができた。ブルが入ったようで、路肩の残雪も削り取られた跡があった。
 清津川に向かって下降し、小日橋を渡った先の路面が少し荒れていたので、無理をしないで歩きだすことにした。実際には、歩き出してみると、その先も車の走行は問題なかった。温泉が目的ではあったが、トレッキングシューズを履き、いつもの日帰り装備のザックをかついだ。
 清津川の流れは、先日とはうって変わって、澄んでコバルトブルーの色を見せていた。林道の回りの木立は、鮮やかな新緑に染まっていた。まずは足慣らしといった歩きを終えると、ゲートに到着した。ゲート前に車は無く、他に客はいないようであった。この季節、特に土曜日に苗場山から赤湯に下山する登山者はいないはずなので、貸し切り露天風呂を楽しめそうな雰囲気であった。
 ゲートから先もしばらく林道が続くが、落石が多く、車の走行はできない状態であった。林道幅の道が終わると、その少し先で棒沢にかかる鉄製の橋に出る。橋の下流部には、釜段の滝があるようであるが、滝の落ち口が見えるだけなのが残念である。
 橋を渡ると、尾根の本格的な登りが始まる。この登りは、普通の山登りと同じレベルで、温泉ハイクと思って油断しているとアゴが出てしまう。案の定、山歩きに慣れていないK氏は、たちまち息が荒くなってしまった。急ぐ訳ではないので、回りの風景を楽しみながらゆっくり歩くことにした。登山道脇には、ミツバツツジ、シャクナゲ、タムシバ、イワウチワ、フデリンドウ、スミレ類の花が見られて、飽きることはなかった。木立を通して、雪を残した稜線が高みに見えるのは、赤倉山や苗場山のようであった。
 木の根を足がかりにするような急登も、鷹巣峠に出ると、トラバース道に変わる。といっても沢が入るごとに小さなアップダウンがあるので、そう楽なわけではない。山の斜面には、ブナ林が広がり、深山に分け入ったという気分も高まってきた。
 見返り松を過ぎると下り坂になり、沢音が近づいたところで、急斜面の下りが始まる。雪が滑り落ちた跡の泥斜面で足元が不安定であるが、先日とは異なり、木枠を埋め込んで足場が作ってあり、歩きやすくなっていた。つづら折りの登山道を下りきると、サゴイ沢にかかる鉄橋に出る。中州を抜けると清津川にかかる鉄橋に出て、その先が目的地の赤湯になる。
 河原に作ってある露天風呂をのぞくと、誰も入っていなかった。まず、山口館で入浴の申込みを行った。入浴料は、500円。玄関脇のベンチにザックを置いて、登山靴は脱いでサンダルで風呂に行くようにということであった。また、食事は、小屋の回りでするようにということであった。
 さっそく、露天風呂に向かった。赤湯の温泉は、「玉子の湯」、「薬師湯」、「青湯」の三湯がある。写真に良く出てくる露天風呂は「玉子の湯」で、熱さの異なる三つの浴槽がつながっている。「青湯」は、昼間は女性専用で、よしずに囲まれていて露天風呂の開放感は少ない。
 「玉子の湯」は、赤く濁った湯で底は見えなかった。入ってみると思ったよりも浅く、どうしても寝そべった状態になった。ほどよい温度であったので、次の浴槽はどうだろうと入ってみたが、息を殺してしばらく我慢するのがやっとであった。
 貸し切り状態であったため、お互いの記念撮影に興じた。風呂から上がると、河原を吹き抜ける風が心地よかった。先回は、増水して岩がぶつかる音が不気味にこだましていたのとはうってかわって穏やかな流れになっていた。
 風呂から上がって、小屋の前でビールを開けて昼食をとった。休んでいると、男女二人連れが到着した。この二人も風呂から上がってきたので、女性のHさんに「玉子の湯」に入ってきてもらうことにした。他に客のいないせっかくの機会を逃すことはない。Hさんが上がってきたところで、最後にもう一度温泉に入った。
 二度の入浴とビールで、すっかり体はなまってしまった。温泉ハイクは、入浴自体が結構な運動量になるようである。2時間ゆっくり休んだところで、重い腰を上げた。
 帰りは、見返りの松への登りで、すっかり息が上がってしまった。鷹巣峠からの下りも、湯上がり気分はどこかに消えて、汗をかきながらの歩きになった。車に戻ったのは4時になり、山に登った訳ではないのだが、たっぷりと歩いた気分になっていた。
 最後に、山歩きの汗を流すため、湯沢の岩の湯で温泉に入ったが、三度目の入浴で、疲れもどっと出てきた。

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