0415

人ヶ谷山、大鱒谷山


【日時】 2004年3月28日(日) 日帰り
【メンバー】 単独行
【天候】 晴

【山域】 川内山塊
【山名・よみ・標高・三角点・県名】 
 人ヶ谷山・ひとがたにやま・830m・無し・新潟県
 大鱒谷山・おおますだにやま・729.3m・三等三角点・新潟県
【コース】 箕輪林道より
【地形図 20万/5万/2.5万】 新潟/御神楽岳/越後豊川
【ガイド】 なし
【温泉】 みかぐら荘 500円

【時間記録】 5:00 新潟発=(磐越自動車道、津川IC、上川、広谷、箕輪林道 経由)=6:25 除雪終点〜6:50 発―7:40 尾根取り付き―8:47 558m―9:23 稜線分岐―9:44 人ヶ谷山〜9:50 発―10:03 稜線分岐―10:54 峠分岐―11:05 大鱒谷山〜11:25 発―11:33 峠分岐―12:02 林道―12:56 尾根取り付き―13:40 除雪終点=(箕輪林道、広谷、上川、R.49 経由)=16:10 新潟着

 川内山塊の東部の、会越国境より流れでる室谷川の左岸に、谷沢川を挟んで日本平山と向かい合うひと続きの山稜がある。北より大鱒谷山、人ヶ谷山、大峰と続き、鍋倉山の先で、日本平山からの稜線が合流している。一般登山道の無いこれらの山も、箕輪林道を利用することによって、残雪期に登り易くなっている。
 土曜日に、弥彦山のお花見山行を行ったので、翌日は雪山に出かけることにした。雪もしまってきており、冬の雪とは明らかに違ってきている。行きたい山は幾つか考えていたが、人ヶ谷山から大鱒谷山へ登ることにした。98年4月12日に所属する山の会の山行で、人ヶ谷山から大峰、鍋倉山に登っているが、人ヶ谷山からは逆方向になる大鱒谷山には登っていない。このコースなら、雪の稜線歩きをたっぷり楽しめそうであった。
 時間の節約のために、高速を使って津川に向かった。御神楽温泉へ道を分け、御番沢川を渡った先が、箕輪林道の入り口になる。林道は除雪されており、どこまで進めるかと期待を持ったが、城山の北側で終点になっていた。車が一台停まっており、出発の準備をしている間にもう一台の車が到着した。ずいぶんと人気の山だと思ったら、釣り客ばかりであった。下山時には、別な車がいたので、三台以上は釣り客が入ったようである。
 道ばたの雪を蹴ってみると、硬く締まっていた。アイゼンとピッケル、念のためにわかんといった装備にを持った。林道の雪はつぼ足で歩ける状態であった。人ヶ谷山へ登る上で一番問題になるのは、林道からの取り付きをどう判断するかということである。コースは、人ヶ谷山を源頭とする沢の左岸の558点を経て山頂北側に突き上げる尾根である。取り付きの橋の名前が読めれば良いのだが、雪に埋もれて名前は隠されている。渡る橋の何番目かと間隔で現在地を判断していくことになるが、GPSを持っていれば、その心配はなくなる。明るく太陽に照らされた林道を、沢を見下ろしながら進んだ。所々で白い稜線が姿を現した。結局、50分の林道歩きで、尾根の取り付きに到着することができた。
 林道から分かれて杉林に足を踏み入れると、足が潜る状態になったので、わかんを履いた。今シーズンは、スノーシューばかりで、ワカンは初めてであった。わかんを履くと、雪に潜ることもなく快調に歩くことができた。沢の左岸に沿っての、見通しの利かない杉林の歩きがしばらく続いた。杉林が終わると、目の前に尾根が急に立ち上がり、その側面には雪原が広がっている。尾根通しは藪が少し出ているため、雪原を直登し、適当な所で尾根上に出る必要があった。
 わかんでキックを入れながら雪原を登った。雪が柔らかく、ピッケルは根元までもぐってしまった。ストックの方が良かったなと、装備の判断の誤りを思った。尾根上に出るのが少し早く、一ヶ所雪にクラックが入って藪が出た所の通過に手間取ったが、その後は、雪の尾根が続いた。先回の4月に入っての山行では、ここのヤブコギに手間取った覚えがある。
 傾斜もゆるくなり、息を整えながら木の間隔の開いた尾根を登っていくと、558m点に到着した。この先は、尾根の幅も広がり、気持ちの良い雪原歩きが続いた。といっても、一定の傾斜の登りが続き、息が切れた。単独行で交代要員はいないため、黙々とワカンを履いた足を進めるしかなかった。
 尾根は、人ヶ谷山の北東で稜線に合流する。稜線部は雪庇が発達し、その端は落ちて2m程の壁になっていた。幸い、尾根の延長線部は雪庇が発達しておらず、難なく稜線部に上がることができた。分岐からほど遠くない人ヶ谷山にまず向かった。
 雪庇が発達していたが、幅広の雪堤ができており、気持ちの良い稜線歩きになった。人ヶ谷山は、北東側に稜線の張り出しがあって尖ったピーク状に見える。雪が割れており、どうやって登ろうと思いながら近づいていくと、東から尾根が合わさり、そちらに回り込むと稜線の上に立つことができた。少し先の最高点まで進んだ。先回は、この先の大峰から鍋倉山へと進んだのだが、今日はここから引き返すことになる。大峰へ続く稜線は、雪庇が発達して、先回よりは辿るのは難しそうであった。
 人ヶ谷山の山頂の北側は木立が広がっており、谷沢川を挟んで西に向かい合う日本平山の眺めが損なわれているのは少し残念であった。もっとも、稜線歩きの途中、遮るものの無い展望が開ける地点もあったので、この点は後で満たされることになった。東には、津川周辺の低山群を前景にして、真っ白な飯豊連峰の眺めが広がっていた。稜線の雪も真っ白であったが、金曜日に天気が少し崩れたのが、山では雪になったようである。稜線を振り返ると、歩いてきた足跡が長々と続いていた。
 分岐に戻り、大鱒谷山への稜線を眺めた。白い稜線がかなたへと続いていたが、全般的に下りになるためか、大鱒谷山の山頂は良く判らなかった。下降点は急であったため、一旦登ってきた尾根を戻り、トラバースして雪庇の切れ目から再び稜線上に出た。続く小ピークは、亀裂が入っているなと思いながら近づいていくと、足元に大穴があいた。左の木立に回り込んで登った。この後は特に問題のない雪綾歩きが続いた。飯豊連峰の眺めは終始目に入っていたが、次第にカタガリ山の黒々とした岩峰が近づいてきた。人ヶ谷山の山頂からは、御神楽岳の山頂は大峰に隠れていたが、笠倉山と並んだ姿を現してきた。川内山塊東部の重鎮である日本平山と鍋倉山が並ぶ姿を眺めることもできるようになった。
 箕輪林道の通過する峠へ向かう尾根の分岐付近は、なだらかな雪原になっていた。ここから大鱒谷山へは、小さなピークを越した先であった。大鱒谷山の山頂は、雪庇が大きく発達し、亀裂が入っていた。左の木立から回り込んで山頂に立った。山頂は狭く、雪庇の崩落が怖くて、縁には寄れなかった。大人数であったら、尾根の分岐まで戻って休んだ方が良さそうであった。
 喉も渇いていた。お待ちかねのビールを開け、春山に乾杯した。同じ雪山であっても、日差しは暖かく、春の山であった。カタガリ山は、目の前に迫っており、その基部には、箕輪林道が通過しているのが目にとまった。
 分岐からは、箕輪林道の峠に向かった。コースは大きくカーブしており、600m付近の急坂は、左の斜面を下る必要があったりで、意外に気を抜けなかった。展望が閉ざされてGPSの助けがなかったりすると迷い易そうであった。峠が近づくと、尾根は痩せて薮っぽくなったので、雪庇の切れ目から右手の雪原に下りて林道を目指した。沢状地形に沿って進むと、峠の少し南で林道に飛び出した。ガードレールは雪に埋もれていたが、カーブミラーが良い目印になった。
 林道の歩きが最後の頑張りどころになった。雪は緩んで、わかんを履いても潜る状態になっていた。大きくカーブするところは、ショートカットした。箕輪林道は、舗装された車道で、雪に埋もれた状態でも、デブリが落ち込んだ所は数カ所で、危険な所はほとんど無いことは有りがたい。山スキーの後がかすかに残っていた。人ヶ谷山の取り付きに戻り、さらにもうひと頑張り。1時間40分の歩きで車に戻ることができた。もう少し時期を遅くすれば、雪も締まって楽に歩けたことであろうが、春山を満喫するのにこれくらいの苦労は覚悟する必要がある。
 雪割草のお花見と雪山登山。これが、越後の春の楽しみ方である。
 
山行目次に戻る
表紙に戻る